テキスト全文
介護保険制度の基礎知識と実務
#1. 地域で困らないために〜介護保険・在宅医療の知っておきたいポイント〜 2026年1月28日 プライマリ・ケアセミナー
橋本市民病院 総合内科 野田幸治
PGY8
#2. 実務知識 医師として最低限知っておくべき「介護保険制度」の仕組みと書類実務を説明できる。 多職種連携 多職種連携を理解し、退院調整において最適な選択肢を検討して提案できる。 在宅医療の理解 在宅医療(訪問看護・診療)の可能性を知り、病院医療から地域へ背中を押せるようになる。 本日の到達目標
#3. 介護における必須知識 介護保険の基礎
→__段階(非該当~要介護5)、(40~64歳)________、________________へ相談 介護保険主治医意見書
→審査会の他に__________作成で使用、________が分かるようにに記載 施設の種類と特性
→まずは3つ(要介護3以上の____、要介護1以上リハの____、認知症→____) 訪問看護・特別指示書
→__________指示書を出せるタイミング(____、増悪、____、気管カニューレ)
介護保険の重要性と認知症の現状
#5. 介護保険の基礎と「裏側」を知る 主治医意見書の記載テクニック 施設の種類と特性を整理する 在宅医療(訪問看護・診療)の実践 本日のプログラム
#6. Chapter 1 介護保険の基礎と 「裏側」を知る
介護保険の対象者と区分の理解
#7. 介護保険って何か? みんなの介護 Webページより ・介護が必要な方に介護費用の一部を現物給付する制度
・介護保険は全国の市町村が保険者
・その地域に住んでいる被保険者の介護保険料と税金で賄われる
#8. 非該当を含め
全部で8段階 世帯年収で
自己負担率が
1~3割と変動
#9. 介護区分は3つだけ覚える 要介護 1 2 3 4 5
#10. ・第1号被保険者(65歳以上) ・第2号被保険者(40〜64歳)
→この年齢は非常に大事 介護保険の対象者は?
#11. (自験例:60代前半 アルコール依存症背景でAKAで入院し、改善したが退院困難など) 第2号被保険者のための特定疾病(16種類) (意外と)第2号被保険者は特定疾病に該当しない人がいる
#12. 1. 区分は8段階 非該当・要支援1〜2・要介護1〜5
1=元気な認知症、3=車椅子生活、5=寝たきり 2. 特定疾病かどうか 介護保険には1号と2号が存在する。40~64歳は特定疾病か確認 3. 相談先は地域包括 「地域包括支援センター」へMSWや地域連携室を通じて連絡するのが定石。 小括:介護保険 3つのポイント
主治医意見書の記載テクニック
#13. Chapter 2 主治医意見書の 記載テクニック Chapter 2
#14. 主治医意見書について 主治医意見書について書いたことありますか? 書く際に心がけていることはありますか?
もしくは書き方で勉強したことはありますか? 主治医意見書はどこで使われているか知っていますか?
#16. 介護認定審査会 コンピュータ判定(1次)の後に、人間の視点(2次)で検討するために使用される。 ケアプラン作成 ケアマネが医学的リスクを把握し、安全な生活設計図を描くための「説明書」となる。
#18. 審査会の構成 ・医師、薬剤師、看護師、ケアマネ
社会福祉士等の専門家5名程度。 ・意見書から「コンピュータでは判別
が難しい手間」を議論。 ・「要支援2か要介護1か」の境界線
が最大の議論ポイント。 介護認定審査会:誰が判定しているか?
訪問調査と介護認定の実際
#19. 訪問調査によって得られたチェック項目の評価が正しいか? 意外と訪問調査の時に、誤って比較的介護度が軽い状況と評価される場合があります。
例えば移動や移乗が自立している。と訪問調査で評価されたけれど、実際には「見守り」が必要など 「手間」の具体的記述 「要支援2」と「要介護1」を判断する 審査会で特に注目される場所3つ 一次判定で拾い上げられなかった介護の手間がないか 医師のための介護・福祉のイロハ, 大橋博樹著より一部改変して転載 次のページへ +α 第2号被保険者の場合に
特定疾病に該当するか
#20. 心身が安定 認知症がなく、自ら予防に取り組める状態。 心身が不安定 認知症がある、または疾患による急激な悪化リスクがある状態。 要支援2と要介護1:運命の分かれ目 ・認知症があるかどうか(あればMMSE等の点数を具体的に記載)
・6ヶ月以内に状態が変化して介護の手間が増すかどうか
要支援2と要介護1は結構違います(施設入所・ケアマネージャー等)
#21. ・診断名は介護が必要な病名から
・2号被保険者は特定疾患を記載する
・不安定ならその理由 過小・過大評価せず記載 ・介護の手間について具体的に記載
・具体的かつ可能な限り専門用語以外で
#22. 生活機能低下の直接の原因となっている傷病または
特定疾病の経過及び投薬内容を含む治療内容 ・介護負担を要する疾病の内容を影響の大きい順から記載
・(2号被保険者の場合)特定疾病を記載する
・特に認知症と判断する場合は、長谷川式認知症スケールや
MMSEなどの数値を具体的に記載したり、経過を記載する。
#23. ・脊柱管狭窄症に伴う下肢の筋力低下に伴い、立ち上がりやトイレ動作が不安定になっている。フレイル予防の為、離床が必要だが、家族の見守りが必要になるため、負担が大きい。
・服薬アドヒアランスが悪く、家族管理となっている。
介護者の家族への暴言暴力が見られ、家族の疲弊がみられる。 特記すべき事項の例
施設の種類と特性の理解
#24. Chapter 2 施設の種類と特性を理解する Chapter 3
#27. 介護度・介護保険を聴取する これまでの説明の通り、介護保険は主治医が判断して作成した意見書で訪問調査をして複数人で考えた
ADLに対して必要な介護を検討した結果だから信頼する。ただし認定を受けてから時間が経っていると難しい どんな薬を内服しているか? どんな種類の施設に入所しているか? 例えば認知症がある人なら抗精神薬を内服していないか? 出ている介護度によって入所できる施設は限られます。また施設によっても特性や得意不得意があるので
施設の種類によって、認知症に困っている人なのか、基本的ADLに介助が必要なのか想像できます。 救急外来でのADLの評価方法(私見)
#28. 多種多様なニーズ・背景に対応する施設 ChatGPTで作成
#29. 介護を提供 介護保険法
特養・老健・介護医療院などなど
原則、要介護認定が必要 住まいを確保 高齢者住まい法サービス付き高齢者住宅の根拠となる法律。主な入居条件は60歳以上、介護認定 医療を提供 医療法
いわゆる療養病院など、医療処置が必要で入院を要する患者が対象 福祉で保護 老人福祉法 経済的・環境的理由で困窮する高齢者の施設。軽費老人ホーム・有料老人ホームなど
#30. まず覚えるべき3施設 特別養護老人ホーム(特養)
入居要件:要介護3以上
役割:身体介護、日常生活
支援が中心
特徴:介護度が高く、看取り
まで行っている施設も
嘱託医がいる
(ただし実態は外勤医師が週に1〜数回来て処方) 例外的に特例入所というものがある。
要介護1以上でやむを得ない事情がある時に 介護老人保健施設(老健)
入居要件:要介護1以上、原則
3〜6月の期限付き
役割:リハビリテーションを
行い自宅へ戻る
特徴:常勤医師・リハビリ職
がいる。
(どこまで医療介入してもらえるかは施設による
本来の目的とは合わないが看取りを行っている
ところもあるらしい) グループホーム
入居要件:要介護1以上、
認知症の診断があること
役割:認知症がある人の共同
生活場所
特徴:医療的な介入は難しい
ただし認知症の対応に
慣れており、周辺症状
が結構ある人もいる
(この施設からの入院は、せん妄・不穏により
転倒などのリスクがあったりするため自分は特に
入院のデメリットを説明することがあリます。)
在宅医療の実践と訪問看護
#31. 自施設の周りにどんな施設があるか? どんな施設へ
退院するか?
どんな施設から
入院になったか? 施設の体制・
後だては?
どこまでして
もらえるか? さらに覚えるとすれば
#32. 例題(私見がたくさん入ります) 特別養護老人ホームXX苑から搬送されたXX歳男性。
昨日から咳があったが様子を見ていた。本日発熱が
あり、喘鳴も出現したため搬送。 医学情報:高齢者の発熱、気道症状もある、酸素いる?
心不全、COPDなどの既往ないか?
内服薬は?過去の起炎菌は? 頭の中
特養からの入院なら要介護3以上、ADLは車椅子レベルかな。
元々ADL低い・車椅子レベル前後 食べるのに介助は?排泄は?食形態は?
特養なら急変時対応は聞いているところ多いから、情報ないかな。
ADLは元々低いから入院疾病さえ改善したら施設退院が妥当かな。
#33. 例題(私見がたくさん入ります) グループホーム入所中のXX歳男性。さっきの様な経過。
既往歴:HT、DLP、脳梗塞、認知症
常用薬:エナラプリルマレイン酸、ロスバスタチン、
バイアスピリン、ランソプラゾール、メマンチン、
トラゾドン、ブレクスピプラゾール 頭の中
グループホーム入所中だから、認知症で困りそうな人なんだな。
介護度は何が出ているか確認したいな。体が元気そうで介護度が高めに出ている
なら周辺症状が強いのかもしれないな。
内服薬に抗精神薬があるな。最近増えてないのかな。増えたのなら最近周辺症状
で困ったのかもしれない。入院でもせん妄・不穏で困るかも。入院のデメリット
はしっかり目に伝えとかないとな。
あまりに廃用が進行したら元の施設に戻れなくなる可能性もあるかもな。
#34. Chapter 4 在宅医療
(訪問看護を中心に)
の実践
訪問看護の保険利用と条件
#35. Icebreak Quiz 日本で「自宅で亡くなる人」の 割合はどのくらい?
#37. 昭和51年に「病院」と「自宅」が逆転。
しかし、「最期は自宅で」と希望する人は約5割。
このギャップを埋めるのが在宅医療のミッションです。
#38. 在宅の「目」であり「手」 24時間365日の緊急対応。 点滴・経管栄養・褥瘡の専門処置 家族の不安解消と介護指導 在宅看取り(死後の処置)の実施 そもそも訪問看護とは何か? 訪問入浴など
#39. 訪問看護の利用できる保険は? ① 医療保険
② 介護保険
#40. 訪問看護の利用できる保険は? 正解は
介護保険・医療保険
の両方で利用可能!
特別訪問看護指示書の活用法
#41. 認定があれば優先される。限度額内で他のサービスと調整する 別表7に該当する場合、または特別訪問看護指示書(特指示)がある期間。 訪問看護:医療保険か介護保険か?
#43. 現場とギャップ 厚生労働省「訪問看護のしくみ」より引用 厚生労働大臣が定める疾病等別表第7
#44. 特別訪問看護指示書のタイミング ・原則1ヶ月に1回発行可能
・指示書の発行により2週間、医療保険での訪問看護を利用できる 月に1回発行 月に2回発行 ・急性増悪時(何らかの感染症や状態悪化時)
・退院直後 ・真皮をこえる褥瘡(DESIGN分類D3以上)
・気管カニューレを使用している
#45. 特別訪問看護指示書の小技 月に1回発行 月に2回発行 ・急性増悪時
・退院直後 ・褥瘡(DESIGN分類D3以上)
・気管カニューレ 月の後半で退院だったら
月替わりでもう一度
特別訪問看護指示書を
発行可能で実質4週間 ないものをあると
言ってはいけませんが
褥瘡がある人は検討の
余地があるかも
#46. 訪問看護指示書・特別訪問看護指示書を
出すタイミングは理解できましたか? 原則は介護保険が適用される。
介護保険では介護の利用上限が適応される。頻回な訪問や手厚い看護は難しい。
週に数回の状態観察、点滴、訪問入浴、排便管理、緊急時の相談・訪問など これに加えて ・癌末期で自宅看取りを希望している患者
・入院するほどでもないが1日1回は点滴を行いたい患者
・褥瘡ができていて毎日の処置が必要な患者
・気管カニューレを利用している患者
(別表7に記載されている疾患を有する患者)
訪問診療の事例と重要ポイント
#47. 訪問診療事例(時間あれば) 70代男性。
【原病歴】腰痛を主訴に当院整形外科へ受診したところ、MRIで
転移性骨腫瘍の疑いがあり原発巣精査目的に内科へ紹介となった。
【既往歴】高血圧症以外に特記事項なし
【生活歴】ADLは元は自立 妻と2人暮らし
アレルギーなし 飲酒なし 喫煙20本(60歳で禁煙)
【経過】各種腫瘍マーカー、造影CT、上下部内視鏡検査、腹部エコーなどで特記すべき所見がなく原発不明癌の診断で、高次医療機関へ紹介し、化学療法が施行された。しかし入院して1コース目にアナフィラキシーショックをきたしICUへ入室、救命できたがADLは原病の進行も伴って寝たきりまで悪化していた。看取り目的に当院へ転院することとなった。
#48. 訪問診療事例(時間あれば) 幸いなことに、疼痛緩和と点滴で経口摂取が可能となった。
リハビリにも意欲的になり立ち上がりまでは可能となった。
一般病床しかない病院であったため、転院、退院、施設入所で検討。
近隣には緩和ケア病棟はなく、療養病院も点滴が不要にまで回復しており管理料が取れないためか受け入れ先がなさそうだった。
自宅退院は妻の不安があり、最終的に話し合った結果
「看護小規模多機能型居宅介護施設(通称:看多機)」へ退院、週末には自宅へ戻り、平日などは基本的に施設で過ごすこととなった。
退院後は短期間ではあったが小康状態となり、徐々に食事摂取ができなくなり最後は入院して看取りとなった。
#49. 訪問診療に紹介いただく時に(私見) (・年齢/主病名:介護保険や訪問看護で必要)
・ADL:在宅でどう過ごすか、必要なサービスは
・医療処置:必要な医療処置はあるか、点滴や穿刺
・居住環境:自宅?施設?最期の場所の希望は?
・説明内容と反応:説明内容の理解度/ACPに関わる 逆に 検査内容/これまでの経過、化学療法レジメン・何コース目など
もちろんある方がありがたいのですが、、、在宅で過ごす上では
上のような内容がより重要となると思います。
(実際これらの内容が紹介状の3/4を占めて欲しい情報がないということはあったりします)
#50. Take Home Message 介護保険の基礎
→8段階(非該当~要介護5)、(40~64歳)特定疾病、地域包括支援センターへ相談 介護保険主治医意見書
→審査会の他にケアプラン作成で使用、介護負担が分かるように記載 施設の種類と特性
→まずは3つ(要介護3以上の特養、要介護1以上リハの老健、認知症→GH) 訪問看護・特別指示書
→特別訪問看護指示書を出せるタイミング(退院、増悪、褥瘡、気管カニューレ)