#4.
前編目次 1 誤解していませんか? ~そもそも、裁判とは? 2 意見書は、医学的事実について述べるのが基本です ~決して、相手のミスを追求する場ではありません!
#5.
そもそも、裁判とは? ➢ 裁判って、正義が勝つ!みたいなイメージ、ありませんか? ➢ 実は、それほど人情にあふれる場ではなかったりします 法律は一律であり、何人にとっても文章は同じですよね しかし、平等なのはここまで です! 大事なのは、対象事象と、相当する法律に対する担当裁判官の解釈で、 出される判決内容が決まるということです
#6.
つまり… ➢ 運が悪ければ、勝てる裁判も負けます! → どの裁判官に当たるかは、本当に運なのです ➢ さらに、裁判官は膨大な案件を担当 します ここ、2番目に大事! → 以下の2つが、裁判の勝敗を左右します ✓ 公判という限られた時間で、担当裁判官に、事故の内容をいかに簡潔かつ正確に伝えるか ✓ こちらの主張のほうが合理的に正しいことをいかに理解してもらうか
#7.
小括 ➢ どの裁判官に当たるかは、双方にとって等しく不明です ➢ しかし、こちらの主張のほうが合理的に正しいと裁判官に 理解してもらうことは、意見書の内容を作り込む ことで、 よりその確率を高められると考えています
#8.
前編目次 1 誤解していませんか? ~そもそも、裁判とは? 2 意見書は、医学的事実について述べるのが基本です ~決して、相手のミスを追求する場ではありません!
#9.
私が、意見書を作成する時気をつけていること 意見書は、医学的事実のみを述べて、相手のミスには基本的に言及しない ➢ 意見書は複数回作成を依頼されることがありますが、 とりあえず公判内では一度であることが多いと思います ➢ その一度の意見書が、相手側のミスの指摘に終始するのは、良い意見書とは 言えないと考えています(これは、特に患者側の意見書の場合です) ➢ 病院側の意見書の場合は、病院が行った医療行為の正当性のみに言及する、 という内容の意見書となります
#10.
さぁ、意見書作成! その前に ➢ まず、意見書を作成する前に、意見書は誰に対して作成するのかを確認しておきます それは、担当裁判官 です えっ?相手方に対する反論なのでは? と思っていた先生!それは違います ➢ 冒頭にも書きましたように、裁判とは、 「担当裁判官に、こちら側の主張に沿った判決を出してもらうための戦い」です
#11.
例えば、ある医療行為で患者が死亡してしまった… ➢ 以下のように、捉え方が両極端であることがほとんどです 病院側 患者遺族側 最善を尽くしましたが、 結果としてお亡くなりになってしまいました この病院に来なければ、死ぬことはなかったはず
#12.
小括 ➢ 捉え方が両極端である事実に関して、お互いが相手のミスを主張しても、 話は平行線になる可能性が高い です
#13.
では、どのように意見書の内容を組み立てていくのか? ➢ まず、対象となっている患者さんの背景や病気について、どのようなアプローチや 治療法が現代の標準医療であるのかを、丁寧に文章で確認していきます ➢ その際、一番重要なことは、 (ここでは、実際の症例の検討は、一旦置いておきます) 「とても忙しい裁判官でも、意見書を読めば追加で調べたりせずとも、内容がスッキリ 理解できる」レベルに、意見書を落とし込むこと です 裁判官は、当然ですが医学的な専門トレーニングを受けているわけではありません しかし判決を出すには、医学的な専門知識が必要であることが多くなっています そこで、基礎的な医学知識を意見書に盛り込んでおくと、裁判官は担当事件の医学的知見のアップデートを 行いながら、意見書の内容を吟味することができます 必然的に意見書の文章は長くなりますが、追加で調べる手間がかからないことのほうが、 メリットとして実感してもらいやすい印象です
#14.
では、どのように意見書の内容を組み立てていくのか? ➢ また、担当弁護士にとっても、そのように落とし込まれた意見書はメリット満載です → 意見書は、当然ですが 提出した側の証拠 となります 公判は証拠に基づいて審議されるので、意見書で用いられている言葉や単語が採用されます その言葉や単語の定義を明確にしておくと、反対尋問などで相手方から予想外の反論を受けても、 担当弁護士は安心して反証することができる、とのことです とにかく、担当弁護士の公判での仕事の中心は、 当方の主張を裁判官に有利に理解してもらうこと です 公判の組み立ては担当弁護士の腕の見せ所ですが、 緻密な組み立ても、知識の裏付けがあってのことです 私が契約している弁護士事務所では、この知識の裏付け作業に、膨大な時間を費やしています
#15.
そのために… ➢ 意見書に使う医学用語は、「患者の家族に説明する時以上に簡単にする」ことに 注力していきます → 医療事故裁判では、その内容の専門性から、医療事故専門の裁判所で行うことが多くなっています しかし、医学の分野は多岐に渡るため、裁判ごとに医学知識の更新、追加が必要なこともしばしばです なので、意見書にはできるだけ簡単な言葉を使った説明を用いるようにしています しかし、相手は裁判官です。元々頭が切れる方が多いので、曖昧な表現は厳禁です ➢ 特に、定義に関する説明は、過不足なく、かつ簡便に行うことが求められます 後腹膜の説明が、今までで一番難しかったです 2年間説明しても、まだ満足できる説明に至ってません…
#16.
定義の例 後腹膜臓器 腫瘤 腹膜の裏側にある臓器のことで、腎臓や膵臓などが含まれる 医学的には、原因が炎症性か腫瘍性かはっきりしない、限局性の腫脹のこと など… ➢ 医療者にとってはよく耳にする言葉ですが、 改めてその内容を問われると、「あれ?」と思うような小さなことです 患者さんに病状を説明するときに、「先生、それってなんですか?」と聞かれるような ことを、簡単な言葉で説明していきます
#17.
参考文献としては… ➢ やはり、疾患のガイドライン に沿って説明するのが、鉄板です (当然ですが、最新版で確認していきます) ➢ その際私がよく使うのは、看護師さんや看護学生向けの説明をしているホームページ です → 看護師さんや看護学生向けのホームページは、専門知識をよりかみ砕いた表現で説明していて、 なおかつ患者向けのホームページと比べると、専門性が高い内容となっていることが多いです 私はよく、看護roo(カンゴルー)というサイトを使います 解説しているのが、医師だったり、看護科の教授だったりするので、内容がしっかりしています
#18.
疾患の概念説明の次は… 実際の事件についての説明をしていきます ➢ 最初にも記載しましたが、実際に受けた治療内容の批判ではなく、標準治療とされる 治療内容と、実際に受けた治療とで乖離がある部分を客観的に指摘していきます ➢ 特に、事前説明の内容が十分であったか、がまず議論されることが多いようです 重要な点 ✓ 説明で用いられた数字が、適切な引用であったか? → 手術の場合、死亡率や障害が残る可能性など、具体的に提示があった数字に妥当性があるか? ✓ 他の選択肢が提示されていたか? → 他の治療法、他施設での治療を検討することの是非、自施設で行うことの妥当性など 治療を受けたご本人やご家族が、客観的に当該施設で治療を受けることが 最善である、と判断できる材料が提示されていたか?を検討していきます
#19.
参照する資料の数字や概念など、必ず信頼ある資料を引用する ➢ 執筆する際に用いる 資料や数字は、できれば論文から引用することが望ましい → 定義などは変化することは少ないので、治療法以外のことに関する記述は、 古い論文を引用しても構わないと思います 教科書的なことを記載する際には、教科書の言い回しをそのまま引用します ➢ 執筆する際に用いる論文は、できれば IFが高い雑誌から引用することが望ましい です → 総論だけではなく、症例報告の論文も読み込んでいくと、最新の治療法に導かれることもあります ここは先生方が得意な分野と思います 徹底的に論文を検索することにより、新たな視点に導かれることもしばしばです 私は、孫引きの孫引きまでさかのぼることもあります 1つのテーマに関して、10編以上の論文を読むこともあります
#20.
意見書では、最後の最後まで自分の意見は封印すべし! ➢ ここで重要なことは、自分の意見は徹底的に封印すること です → 意見書を執筆される先生方は、もちろん経験豊富でいらっしゃいます 相手方もそれは十分承知しています ➢ しかし、戦略として、 「意見書を作成した相手方医師は、臨床医として〇〇の部分で経験が不足していると思われる」 「経験豊富な医師であれば、このような意見を述べるはずがない」 などと、今までの先生方のご経験を真っ向から否定されることが、しばしばあります! これ、結構傷つきますよ・・・。私も、最初は正直に傷ついていました
#21.
しかし! 素直に喜びましょう! ➢ 相手方は、意見書を作成した医師を批判することしかないくらい、 先生が作成された意見書でダメージを食らっている、というサインとなります ➢ ここで、追加の意見書を作成したとしても、相手方の医師に対する批判や、 相手方が行った自分への批判に関する反論は、一切しません(きっぱり) 私の経験では、このような批判が出てきてから、当方に風向きが有利になってきたことを 実感しました。相手を批判しても、裁判官から好感を持たれることはないですからね ➢ あくまでも「担当裁判官にいかに好印象を持ってもらえるか」のみに注力しましょう
#22.
疾患の概念について解説したあとは… 当該事件の具体的な内容に踏み込んでいきます ➢ 基本は、医師の作成した診療録の精査となります しかし、事件の診療録を精査すると、診療録の内容が薄いことが高確率で見られます ➢ これは非常に残念なことです しかし逆をいうと、きっちりとした診療録を作っていると、 トラブルを回避できる可能性がある、ということですね これは日常診療を行う上で、とても参考となっている経験です (普通に診療を行っているだけでは、気づくことができなかったかもしれないと思っています)
#23.
内容が薄い診療録、とは?(大きくこの2つ) 診療記録がほとんど書かれていない! ✓ 信じられませんが、訴えられた事案のカルテでは、診療記録が充実していないことが 多いのも事実です 手術同意書が、フォーマットのまま ✓ 難しい手術であるのに、同意書がフォーマットのまま、内容が追加されていないことで、 「聞いていない」という家族などの印象になることもあります とにかく、説明したこと、本人や家族から聞いたことなどは、 できるだけ詳しくカルテ記載していくことが、自分の身を守ることにつながります (コンサルした場合は、助言いただいたDr.の名前も必ず記載するようにします)
#24.
運悪く、内容が薄い診療録にあたってしまったときは? ➢ これが一番困ります しかし、これには裏技があります 後編では、この裏技について徹底解説します また、気になる意見書の報酬や、「意見書を書くと通常診療で気まずくならない?」 など、意見書作成に興味があるけれど、 先生方が疑問に思うことについても解説していきます To Be Continued …