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糖尿病内分泌代謝内科
東京北医療センター 外科
集中治療室や救命センターといった重症患者管理における血糖コントロールは非常に重要です。
本スライドでは、新規入院患者を診る全ての医師が知っておくべき血糖コントロールのうち、特にインスリン持続静注にフォーカスして解説しています。
文献
1) N Engl J Med. 2001 Nov 8;345(19):1359-67.
https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa011300
2) N Engl J Med. 2009 Mar 26;360(13):1283-97.
https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa0810625
3) JAMA. 2008 Aug 27;300(8):933-44.
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/182432
4) CMAJ. 2009 Apr 14;180(8):821-7.
http://www.cmaj.ca/content/cmaj/180/8/821.full.pdf
5) Chest. 2010 Mar;137(3):544-51.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20018803
6) 日本版敗血症診療ガイドライン2016(J-SSCG2016)
https://www.jsicm.org/pdf/jjsicm24Suppl2-2.pdf
※本スライドは、Antaaウェブサイト上に掲載された「Antaa×中外医学社」の共同企画記事を再編集して作成されました。
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急性期血糖コントロールとインスリン持続静注 石澤 嶺(地域医療振興協会 東京北医療センター 外科) ─ その処方例から注意点/エビデンスまで
2 プロフィール 石澤 嶺(いしざわ りょう) 地域医療振興協会 東京北医療センター 外科 東京医療センターにて初期研修の後、そのまま救命センターで後期研修を開始し救急外来および救命センターでの集中治療に従事。 現在は外科医として赤羽の東京北医療センターで研鑽を積んでいる 趣味は研修医教育。その一環として「救急医 ざわさん」名義でTwitterやブログで情報発信を行っている。 ブログ: http://zawa99.hatenablog.com/ Twitter: @ryo31527
本スライドについて 集中治療室や救命センターといった重症患者管理における血糖コントロールは非常に重要です。 本スライドでは、新規入院患者を診る全ての医師が知っておくべき血糖コントロールのうち、特にインスリン持続静注にフォーカスして解説しています。 3 ※本スライドは、Antaaウェブサイト上に掲載された「Antaa×中外医学社」の共同企画記事を再編集して作成されました。
急性期の血糖コントロールについて施設ごとのプロトコールがあれば、それに従うのが安全です。 その上で考えるべきは、以下の2つです。 ①メインの輸液への混注②シリンジポンプによるインスリン持続静注 急性期は血糖の変動が激しく、インスリンの定時打ちが思わぬ低血糖を招くこともあり、慎重に行う必要があります。 4
【ポイント】定期打ちでコントロール不良なら持続静注を考慮!
処方例① メインの輸液への混注 輸液のブドウ糖5g~10gあたり、即効型インスリンを1単位混注します。 6 処方例② インスリンの持続静注 定期打ちでコントロール不良であれば、持続静注を考慮します。次のスライドでその詳細を解説します。
処方例① メインの輸液への混注 輸液のブドウ糖5g~10gあたり、即効型インスリンを1単位混注します。 7 処方例② インスリンの持続静注 定期打ちでコントロール不良であれば、持続静注を考慮します。次のスライドでその詳細を解説します。
看護師さんへ下記のような指示を出します。 血糖値は2時間おきに測定 2mL/hr から投与開始 血糖値(mg/dL)とインスリン投与量は以下の通り 69以下 … インスリン中止、50%ブドウ糖20mL ivし、DrCall 70-109 … インスリン中止し、Dr call 110-139 … 0.5単位/時間減らす 140-199 … そのまま 200-249 … 0.2単位/時間増やす 250-299 … 0.4単位/時間増やす 300-349 … 0.6単位/時間増やす 350-399 … 0.8単位/時間増やす 400以上 … 1.0単位/時間増やし、DrCall 血糖値が109以下 及び 350以上の時は、上記処置後1時間で血糖値を再検し、再度注入量を調節する 8
血糖値の下がり方は個人差が大きいので、実際には微調整が必要です。インスリンの持続静注を行う場合には、経験が多い医師に指示を仰ぎましょう。 インスリン持続静注を開始すると、インスリンの作用によりカリウムが低下する場合があります。 4〜6時間おきにカリウム値をチェックし、低カリウム血症にならないように注意しましょう。 ※ 9 インスリン持続静注の注意点
血糖コントロールのエビデンス
血糖コントロールのエビデンス 高血糖が感染防御能の低下や創傷治癒を遅らせる可能性があることは、1990年代から指摘されていました。 2001年のNEJM誌で発表された「Leuven Ⅰ trial」では、外科系ICU患者1,548名において血糖値を80~110 mg/dLに管理するIntensive Insulin Therapy(IIT)を行うと、血糖値を180~200 mg/dLに管理する群に比較して、ICU死亡率を下げる可能性が示唆されました1)。 N Engl J Med. 2001 Nov 8;345(19):1359-67. https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa011300 11
しかし、その後はIITを行うことで死亡率を改善するエビデンスは示されたことはありません。 2009年のNEJM誌に発表された「NICE SUGAR trial」では、IITはむしろICU患者では低血糖を増加させ、90日死亡率を増加させることが示されています2)。 N Engl J Med. 2009 Mar 26;360(13):1283-97. https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa0810625 12
その後複数のメタアナリシスの結果3)〜5)もあり、血糖コントロールの重要性は認識されつつも、IITは行われなくなりました。 JAMA. 2008 Aug 27;300(8):933-44. https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/182432 CMAJ. 2009 Apr 14;180(8):821-7. http://www.cmaj.ca/content/cmaj/180/8/821.full.pdf Chest. 2010 Mar;137(3):544-51. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20018803 日本版敗血症診療ガイドライン6)などにも記載がありますが、現在の血糖コントロールの目標は144~180mg/dLとされています。 日本版敗血症診療ガイドライン2016(J-SSCG2016)https://www.jsicm.org/pdf/jjsicm24Suppl2-2.pdf 13
まとめ
まとめ 以上、重症患者さんの血糖コントロールについて簡潔にまとめました。 血糖コントロールが不良な場合には合併症に注意しつつ、インスリンの持続静注を導入しましょう。 その際には頻回の血糖チェックとカリウムのチェックを忘れずに行いましょう。 15
文献・WEBサイト 引用文献 1) N Engl J Med. 2001 Nov 8;345(19):1359-67. https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa011300 2) N Engl J Med. 2009 Mar 26;360(13):1283-97. https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa0810625 3) JAMA. 2008 Aug 27;300(8):933-44. https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/182432 4) CMAJ. 2009 Apr 14;180(8):821-7. http://www.cmaj.ca/content/cmaj/180/8/821.full.pdf 5) Chest. 2010 Mar;137(3):544-51. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20018803 6) 日本版敗血症診療ガイドライン2016(J-SSCG2016) https://www.jsicm.org/pdf/jjsicm24Suppl2-2.pdf 推薦図書・参照WEBサイト 『入院患者の血糖コントロール』(田中 祐司/編)、レジデントノート 15(6)、羊土社、2013 https://www.amazon.co.jp/gp/product/4758105510/ 『集中治療999の謎』(田中 竜馬/編)、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2015 https://www.amazon.co.jp/gp/product/4895928012/ 『IIT以降の血糖管理』、慈恵会ICU勉強会 http://www.jseptic.com/journal/108.pdf 16