#4.
高齢者のうつ病の評価 • スクリーニング:PHQ-2 ▸ 「興味の喪失」「抑うつ気分」の2項目。3点以上で陽性→ PHQ-9 へ進む • 診断・重症度評価:PHQ-9 ▸ 感度は高いが特異度は限定的。双極性障害・適応障害・身体疾患による抑うつなどを除外 • GDS(老年期うつ病評価尺度):高齢者特化だが、治療反応性のモニタリングには不向き • コーネルスケール:介護者から評価できるため、認知機能障害がある患者に有用 • 診断的治療:迷う場合は治療反応をみることも一つの戦略 ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ N Engl J Med 2014; 371: 1228–1236.
#5.
なぜ高齢者の抗うつ薬は難しいか 若年成人と同じ感覚で処方すると痛い目を見る、5つの理由 薬物動態の変化 ポリファーマシー 副作用への脆弱性 腎・肝代謝の低下で血中濃度が上が りやすく、半減期も延長 CYP2D6/2C19/3A4を介する相互 作用が頻発 通常用量の半分から開始が原則 抗凝固薬・NSAIDs併用で出血リス ク増大 低Na血症(SIADH)、転倒・骨折 、QT延長、セロトニン症候群、パ ーキンソニズム等 併存疾患の多さ 効果発現が遅い 認知症・心疾患・パーキンソン病・ 痛み・不眠など 若年では2~4週で評価可能だが、 高齢者では遅ければ8~12週、時に 16週かかる 併存疾患から薬を選ぶ必要がある 途中での切替に注意 ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~
#6.
治療の全体像 薬物療法は数ある選択肢の一つ。単独より組み合わせが効果的なことも多い 薬物療法 精神療法 その他 • 第1選択:SSRI • CBT、対人関係療法 • 運動療法(有酸素+対人) • 中等症~重症で第一に検討 • 問題解決療法 • 高照度光療法 • 効果発現に4~12週 • 薬と同等のエビデンス • ECT(重症・自殺切迫) • Start low, go slow • 電話・遠隔でも有効 • 反復経頭蓋磁気刺激(rTMS) • ケタミン 重症例では「薬+精神療法+運動」を意識的に組み合わせる ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ JAMA 2017; 317:2114.
#7.
症例 #1 | どの抗うつ薬を選ぶ? 症例 82歳女性。1年前に夫を亡くしてから「気力が出ない」「何も楽しめない」と訴える。 食欲低下が強く、ここ3か月で体重が4 kg減少し、入眠困難・中途覚醒も顕著。BMI 18.2。 既往:高血圧、軽度の慢性腎臓病(eGFR 48)、不眠でゾルピデム頓用をほぼ毎日内服。 PHQ-9:16点。家族と相談し抗うつ薬を始めることになった。転倒リスクは低いと判断している。 Q. 第一選択として最も妥当な薬剤はどれか? A セルトラリン 25 mg/日 B ミルタザピン 7.5 mg 就寝前 C アミトリプチリン 10 mg 就寝前 D デュロキセチン 20 mg/日 ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~
#8.
症例 #1 | 解答と解説 答え:B ミルタザピン • 不眠 + 食欲低下 + 抑うつ症状という症状プロファイルで第一に想起するのはミルタザピンで、鎮静・ 食欲増進作用が「副作用」ではなく「治療効果」になる。ただし、転倒リスクには注意。 • セルトラリン(A)も第一選択候補だが、不眠+食欲低下ではミルタザピンの方が利益が大きい • アミトリプチリン(C)はTCA。抗コリン作用、起立性低血圧、転倒リスクなどでBeers基準で高齢者に は原則回避 • デュロキセチン(D)は神経障害性疼痛合併例で有用。本症例は痛みの訴えがない。CKDで使うなら30 mg/日まで • Pearl:「眠れない・食べられない・抑うつ」の高齢者にミルタザピン就寝前 ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ UpToDate 2026; AGS Beers Criteria 2023.
#9.
抗うつ薬 早見表 ★=高齢者で第一選択候補 分類 △=慎重に 薬剤(商品名) 活性化/鎮静 開始用量 → 最大 高齢者で特徴的なポイント SSRI セルトラリン (ジェイゾロフト) ★ 中性 25 mg → 100 mg 扱いやすく相互作用少。SIADH・転倒に注意 SSRI エスシタロプラム (レクサプロ) ★ 中性 5–10 mg → 20 mg QT延長は軽度。高用量で要注意 SNRI デュロキセチン (サインバルタ) 中性~活性化 20 mg → 60 mg 疼痛合併例で有用。BP・尿閉に注意 SNRI ベンラファキシン (イフェクサーSR) 活性化 37.5 mg → 225 mg 拡張期高血圧、中止症候群が顕著 非定型 ミルタザピン (リフレックス/レメロン) 鎮静・食欲増進 7.5–15 mg → 45 mg 不眠・体重減少に好適。眠気・体重増加 非定型 ボルチオキセチン (トリンテリックス) 中性 10 mg → 20 mg 認知機能温存に期待。悪心が初期に多い 非定型 トラゾドン (デジレル/レスリン) 鎮静 25 mg → 150 mg 実質「不眠用」。起立性低血圧・priapism TCA ノルトリプチリン/アミトリプチリン △ 鎮静 10 mg → 75 mg 抗コリン・QT・転倒。高齢者は原則回避 ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ Matta J, Yamada Y, Baharlou S. Depression in Older Adults Rapid Review. UpToDate 2026.
#10.
SSRI ── 高齢者の第一選択 作用機序 シナプス前のセロトニントランスポーター(SERT)を選択的に阻害 → シナプス間隙のセロトニン濃度↑ なぜ第一選択か • 認容性が良く、過量服用時も比較的安全 • 用法が単純(1日1回)で、認知機能低下例でも導入しやすい • TCAと比べて抗コリン・心毒性が少ない クラス共通の副作用(高齢者で特に意識) 低Na血症 (SIADH) 転倒・骨折リスク↑ セロトニン症候群 開始2~4週がピーク。倦怠 ・意識障害で気づかれる メタ解析でSSRIと脆弱性骨 折の関連 他のセロトニン作動薬(ト ラマドール等)併用で ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ 出血傾向 抗血小板・NSAIDs・抗凝 固薬併用で要注意 パーキンソニズム 稀だが、Lewy小体型では 悪化することあり UpToDate 2026.
#11.
セルトラリン SSRI sertraline ・ 商品名:ジェイゾロフト プロファイル 用量 • 高齢者で最もエビデンスが豊富、扱いやすい • 開始:25 mg/日(朝食後) • 中性~やや活性化。眠気が比較的少ない • 1~2週ごとに25 mgずつ増量 • PTSD、強迫性障害、パニック障害にも適応あり • 目標:50–100 mg/日(最大100 mg/日 国内承認) 注意したい副作用 臨床のコツ • 悪心・下痢・不眠(開始1~2週で多い) • 迷ったらセルトラリンから。腎・肝で用量調節不要 • 低Na血症(SIADH)、出血リスク • 胃腸症状は食後内服で軽減 • ワルファリン・NSAIDsとの併用に注意 • 中止症状は中等度。漸減推奨 ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ UpToDate 2026. Banerjee S et al. Lancet 2011.
#12.
エスシタロプラム SSRI escitalopram ・ 商品名:レクサプロ プロファイル 用量 • シタロプラムのS体。CYP相互作用が比較的少ない • 開始:5–10 mg/日(夕食後) • 中性プロファイル、忍容性は良好 • 1~2週ごとに5 mgずつ増量 • 全般性不安障害にも有効 • 65歳以上は10 mg/日が原則最大(国内添付文書) 注意したい副作用 臨床のコツ • QT延長(用量依存)。10 mgを超える場合は心電図確認 • 高齢者で「もう一つのSSRI第一選択」 • 低Na血症、出血リスク(SSRI共通) • PPI(オメプラゾール等)併用で血中濃度↑に注意 • 中止症候群は中等度 • セルトラリンと比べ若干鎮静寄り ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ UpToDate 2026. FDA Drug Safety Comm 2011.
#13.
SNRI ── 第二選択/疼痛合併で活躍 セロトニン + ノルアドレナリン両方の再取り込みを阻害 • 位置づけ:SSRI不応例の切替先、または神経障害性疼痛・線維筋痛症を併発した抑うつ(特にデュロキセチン) • 活性化作用が比較的強い(特にベンラファキシン)。倦怠・意欲低下を伴う症例にも検討 • 拡張期血圧上昇(用量依存)。高血圧管理を確認しながら増量 • 中止症候群がSSRIより強い。とくにベンラファキシンは要漸減 • セロトニン症候群、低Na血症、出血リスクはSSRIと共通 高齢者で使う2剤の使い分け デュロキセチン(サインバルタ) ベンラファキシン(イフェクサーSR) 疼痛合併例で第一に想起 活性化作用が顕著、倦怠・無気力に 半減期が短く中止症候群は中等度 神経障害性疼痛にもエビデンス(保険適応外) CKDではeGFR<30で禁忌に近い 血圧上昇(用量依存性)・中止症候群が顕著 ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ UpToDate 2026.
#14.
デュロキセチン SNRI duloxetine ・ 商品名:サインバルタ プロファイル 用量 • うつ + 慢性疼痛(糖尿病性神経障害、変形性関節症、線 • 開始:20 mg/日(朝食後) 維筋痛症)が最適 • 1~2週で40 mg/日 → 60 mg/日が目標 • 中性~やや活性化。高齢者でも比較的良好な忍容性 • 重度肝障害・eGFR<30は禁忌 • ストレス性尿失禁にも応用例あり 注意したい副作用 臨床のコツ • 悪心(最頻、開始1週がピーク)、口渇、便秘 • 「膝が痛い」と言う高齢者の抑うつにまず検討 • 拡張期血圧上昇、起立性低血圧 • 悪心は朝食後内服+漸増で乗り切れることが多い • 出血リスク、肝障害 • 中止時は2週以上かけて漸減 ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ UpToDate 2026. Nelson JC. Am J Geriatr Psychiatry 2014.
#15.
ベンラファキシン SNRI venlafaxine XR ・ 商品名:イフェクサーSR プロファイル 用量 • 低用量はSSRI様、中等量以上でSNRI作用が出る • 開始:37.5 mg/日(朝食後) • 活性化作用が顕著で、倦怠・意欲低下例に • 1~2週ごとに37.5 mgずつ増量 • 2剤無効例の切替候補としても有効(STAR*D Step 3) • 通常75–150 mg/日、最大225 mg/日 注意したい副作用 臨床のコツ • 拡張期血圧上昇(特に150 mg/日超) • 毎月の血圧モニタリングを忘れずに • 中止症候群が抗うつ薬中で最強級 • 中止時は数週~数か月かけて漸減 • 悪心、不眠、性機能障害 • 高齢者では即放型(IR)より徐放型(SR)が忍容性◎ ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ UpToDate 2026. STAR*D Trial. Am J Psychiatry 2006.
#16.
非定型 ── 不眠・食欲・忍容性で選ぶ3剤 SSRI/SNRIで届かない領域を埋める3剤 — 不眠・食欲低下・難治例・忍容性で選ぶ ミルタザピン NaSSA トラゾドン セロトニン調整薬 非定型 / Atypical ボルチオキセチン マルチモーダル • 不眠+食欲低下で第一選択級に使われている • 睡眠の質改善目的で少量併用が定番 • 認知機能・遂行機能への効果が示唆 • 高齢者で重宝 • 抗うつ単剤としては弱め(補助的に) • 性機能障害・体重増加が少ない • 体重増加が用量依存 • 起立性低血圧・α1遮断に注意 • 悪心が初期に出やすい 3剤共通の勘所 SSRI/SNRIではなくこの3剤を選ぶ場面 • セロトニン副作用が軽い:症候群・出血・低Naリスクが小さい • 不眠・体重減が前景:→ ミルタザピンで一石二鳥を狙う • プロファイルで選ぶ:食欲・睡眠・性機能の副作用パターンで使い分け • 睡眠の質を底上げしたい:→ 少量トラゾドンを併用 • 少量開始:高齢者ではミルタザピン7.5mg・トラゾドン25mgから • 忍容性で脱落しそう:→ ボルチオキセチン(嘔気・性機能・体重に強 い) ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ UpToDate 2026. STAR*D Trial. Am J Psychiatry 2006.
#17.
ミルタザピン NaSSA ノルアドレナリン作動性・ mirtazapine ・ 商品名:リフレックス/レメロン 特異的セロトニン作動性 プロファイル 用量 • α2拮抗+5HT2/3拮抗 → セロトニン・ノルアド遊離↑ • 開始:7.5–15 mg 就寝前 • 強い鎮静と食欲増進。「眠れない・食べられない」高齢者 • 1~2週ごとに15 mgずつ増量、目標30 mg に最適 • 最大45 mg/日 • 悪心が少ない 注意したい副作用 臨床のコツ • 眠気(低用量で強く、増量で軽減・逆転することあり) • BMI低下 + 不眠 + 抑うつに選択 • 体重増加、口渇、便秘 • 「日中の眠気が強い」なら30 mgへ増量で軽減することも • 高齢者は鎮静による転倒リスクに注意 • 治療抵抗例でベンラファキシン併用("California rocket • 稀に好中球減少 → 発熱時は血算確認 fuel") ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ UpToDate 2026. Banerjee S et al. Lancet 2011.
#18.
トラゾドン セロトニン調整薬 trazodone ・ 商品名:デジレル/レスリン プロファイル 用量と滴定 • 5HT2拮抗+SERT弱阻害+H1拮抗 → 強い鎮静 • 不眠:25–50 mg 就寝前 • 実質的に「不眠の補助」用途が多い • 抗うつ目的:150 mg程度から、最大300 mg • 抗うつ作用は高用量(150–300 mg)でようやく見られる • 高齢者は半量から開始 注意したい副作用 臨床のコツ • 起立性低血圧 → 夜間トイレで転倒 • ベンゾ系よりはマシな睡眠薬? • 持続勃起症(priapism)─ 稀だが注意 • 抗うつ単剤としては第一選択にはならない • 日中の眠気・ふらつき • 眠気で日中ぼーっとする訴えに注意 ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ UpToDate 2026.
#19.
ボルチオキセチン マルチモーダル vortioxetine ・ 商品名:トリンテリックス プロファイル 用量 • セロトニン再取り込み阻害+5HT受容体マルチモーダル作 • 開始:10 mg/日(朝) 用 • 1~2週評価後に20 mg/日へ • 認知機能(処理速度・遂行機能)改善のシグナル • 高齢者は10 mgから始めるのが無難 • 性機能障害・体重増加が比較的少ない 注意したい副作用 臨床のコツ • 悪心(最頻、用量依存。1~2週で軽減) • 認知機能低下を伴う高齢うつで考慮 • 下痢、便秘 • 悪心対策に食後内服+段階的増量 • 中止症候群は比較的軽い(半減期66時間) • 薬価:10mgで166円/錠(後発品なし) ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ McIntyre RS. Int J Neuropsychopharmacol 2014.
#20.
TCA ── 原則として高齢者では避ける アミトリプチリン/ノルトリプチリン/イミプラミン etc. • Beers基準で「高齢者で潜在的不適切薬」に分類 ▸ 抗コリン作用:口渇、便秘、尿閉、せん妄、認知機能悪化 ▸ 起立性低血圧:転倒・骨折リスク ▸ 心毒性・QT延長:過量服用で致死的 • 緑内障・前立腺肥大・尿閉では禁忌〜要注意 • どうしても使うなら:ノルトリプチリン(抗コリン作用が比較的軽い)を低用量から ▸ 神経障害性疼痛で低用量(10–25 mg)使用は許容されるが、抗うつ目的では他剤優先 ▸ Tip:認知機能正常・ロバストな高齢者で「不眠+神経障害性疼痛+うつ」が揃えば一石三鳥で考慮 ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ AGS Beers Criteria 2023. UpToDate 2026.
#21.
症例 #2 | どの抗うつ薬を選ぶ? 症例 76歳男性。糖尿病性末梢神経障害で両足の灼熱痛があり、半年前から「やる気が出ない」「外出しなく なった」。 PHQ-9:14点。BMI 24、HbA1c 7.4%、血圧 138/86 mmHg。 本人は「眠気で運転に支障が出るのは困る」と訴える。 Q. 第一選択として最も妥当なのはどれか? A セルトラリン 25 mg/日 B ミルタザピン 15 mg 就寝前 C デュロキセチン 20 mg/日 D ノルトリプチリン 10 mg 就寝前 ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~
#22.
症例 #2 | 解答と解説 答え:C デュロキセチン • 糖尿病性神経障害の疼痛 + 抑うつという組み合わせはデュロキセチンが第一。痛みと気分症状を同時に 治療できる • セルトラリン(A)も妥当だが、痛みへの効果は乏しく、別途疼痛対策が要る • ミルタザピン(B)は鎮静が強く、運転に影響する懸念。本人の希望と合致しない • ノルトリプチリン(D)は神経障害性疼痛にエビデンスはあるが、高齢糖尿病患者では起立性低血圧・尿 閉・転倒で原則回避 • Pearl:「痛み + 抑うつ」のキーワードでデュロキセチンを思い出す ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ UpToDate 2026. AGS Beers Criteria 2023.
#23.
薬の選び方 ── 4つの問いで決める クラス間の効果差は小さい。「副作用と症状プロファイルのマッチング」で選ぶ ① ② ③ ④ 目立つ症状は? 不眠+食欲低下 → ミルタザピン | 倦怠・無気力 → ベンラファキシン or ボルチオキセチン | 不安併存 → SSRI 併存疾患は? 神経障害性疼痛 → デュロキセチン | 認知機能低下 → ボルチオキセチン | 心疾患・QT長め → セルトラリン 避けたい副作用は? 眠気回避 → セルトラリン or ボルチオキセチン | 転倒・ふらつき回避 → セルトラリン or ボルチオキセチン | 優先 → ボルチオキセチン 性機能 薬剤相互作用は? NSAIDs・抗血小板薬併用 → SSRI/SNRIは慎重に(消化管出血) | 症候群) トラマドール併用 → SSRI/SNRIは慎重に(セロトニン 迷ったら「セルトラリン or エスシタロプラム」が安全な default ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ UpToDate 2026.
#24.
開始・モニタリング Start low, go slow ── ただし「目標用量まで上げきる」ことも重要 標準的なフォロータイムライン 0週 1〜2週 2〜4週 4週 8〜12週 開始 電話/受診 受診 効果判定 (中間) 効果判定 (本) 若年用量の1/2から 認知・腎肝で再考 副作用と服薬 アドヒアランス確認 副作用評価・初期反応 問題なければ増量 無効 → 切替検討 部分反応 → 継続 寛解せず → 増強 or 切替 原則 • 「一般的な開始用量の半分」で始める。ただし最終的には若年と同様の目標用量を目指す(高齢者の under-treatment は頻発) • 4週で全く反応がない場合、その後8週続けても反応しない可能性が高い → 早めに切替検討 • 初回エピソードは寛解後6〜12か月は継続。再発例・遷延例ではより長期 ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ UpToDate 2026.
#25.
高齢者で注意したい副作用 副作用 起こりやすい薬 症状・気づき方 モニタリング・対応 低Na血症 (SIADH) SSRI > SNRI 倦怠、頭痛、混乱、痙攣 開始 2~4週 がピーク 開始2~4週で Na 確認 Na<130 → 中止・切替 転倒・骨折 全クラス 起立性低血圧、ふらつき めまい、夜間頻尿で中途 起立性血圧、転倒歴を聴取 眠剤併用を見直す QT延長 エスシタロプラム > 三環系 失神、動悸、不整脈 高用量・併用薬時に心電図 K・Mg補正 セロトニン症候群 セロトニン作動薬の重複 発熱、振戦、ミオクローヌス 発汗、混乱 トラマドール・リネゾリド など併用に注意 出血傾向 SSRI/SNRI 皮下出血、消化管出血 PPI併用、抗血小板/凝固 薬の見直し 中止症候群 ベンラファキシン めまい、感冒様症状 感覚異常、不安 数週~数か月で漸減 忘れたら再開 ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ N Engl J Med 2014; 371:1228.
#26.
治療反応性が乏しいとき 「効かない」と判断する前に:診断・用量・期間・服薬を確認 ① まず確認すべきこと • 用量は十分か? ─ 目標用量まで上げ切れているか • 期間は十分か? ─ 高齢者では8〜12週、時に16週 • 服薬アドヒアランスは? • 診断は正しいか? ─ 残薬・通院間隔を確認 ─ 双極性、認知症、身体疾患などを再評価 ② 次の一手 増量 切替 (switch) 増強 (augment) ECT 忍容性があり 部分的反応がある場合 全く反応なし 副作用で限界の場合 別クラスへ アリピプラゾール 2–10 mg リチウム ミルタザピン併用 精神科コンサルト 重症・自殺切迫 精神病性 摂食拒否で生命危険 ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ UpToDate 2026. Lenze et al. Lancet 2015 (Aripiprazole augmentation).
#27.
症例 #3 | いつ・どう中止する? 症例 78歳女性。初発の大うつ病に対しベンラファキシンSR 150 mgで治療開始。 8か月で寛解(PHQ-9:3点)し、本人と家族から「もう薬を減らしたい」と相談。 うつ病の家族歴なし、再発エピソードもなし。 Q. 最も適切な対応は? A 本人の希望に沿って今日中止する B 寛解後12か月まで継続し、その後数週かけて漸減 C 減らすなら半量に即時減量し2週後再評価 D 再発予防のため5年以上継続を推奨 ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~
#28.
症例 #3 | 解答と解説 答え:B 寛解後12か月継続→数週かけて漸減 • 初回エピソードでは寛解後6〜12か月の継続治療が標準。高齢者は再発率が高いため12か月寄りで考え る • ベンラファキシンは中止症候群が強い薬剤の代表。急な中止(A・C)は感冒様症状・めまい・感覚異常 など • 漸減は数週~数か月かけて段階的に。半減期が短い薬ほどゆっくり • 再発リスクが低い症例で5年以上の継続(D)は過剰治療 • Pearl:「中止症候群リスクが高い薬」=ベンラファキシン、デュロキセチン ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ UpToDate 2026. Gabriel & Sharma. CMAJ 2017;189:E747.
#29.
抗うつ薬の中止と中止症候群 中止症候群:通常 中止後 1〜3日で出現、1〜2週で消失 症状(FINISH) 中止症候群リスク • Flu-like ─ 感冒様症状(倦怠、筋痛) • 高:ベンラファキシン • Insomnia ─ 不眠、悪夢 • 中:デュロキセチン、エスシタロプラム、セルトラ • Nausea ─ 悪心、めまい リン • Imbalance ─ ふらつき、めまい • 低:ボルチオキセチン、ミルタザピン • Sensory ─ 感覚異常(電撃様、しびれ) • Hyperarousal ─ 不安、焦燥、易怒性 漸減のコツ • 最低4週、半減期が短い薬や長期投与例では数か月かけて段階的に減量 • 中止症状が出たら、元の用量に戻して安定化 → より緩徐に再開 • 再発と中止症候群の鑑別:再発は2週以降に出現し持続、症状が異なる ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~ Gabriel M, Sharma V. CMAJ 2017; 189:E747.
#30.
Take Home Messages 1 2 3 4 5 高齢者うつ病は身体化・アパシーで現れる 「抑うつ気分」を訴えないからこそ、積極的に拾いに行く 迷ったら セルトラリン or エスシタロプラム 最もエビデンスが豊富で、相互作用が少ない 症状プロファイルで微調整 不眠+体重減少→ミルタザピン | 疼痛→デュロキセチン | 認知低下→ボルチオキセチン Start low, go slow ─ ただし上げ切る 若年用量の半分から開始し、1-2週ごとに漸増する 中止は計画的に、漸減で 中止症候群はベンラファキシンで顕著 ジェリトーーク! ~みんなの老年医学~
#31.
参考文献 1. Espinoza RT, Unützer J. Diagnosis and management of late-life depression. UpToDate, 2026 (last updated Jun 19 2025). 2. Taylor WD. Depression in the elderly. N Engl J Med 2014; 371:1228–1236. 3. Kok RM, Reynolds CF 3rd. Management of depression in older adults: A review. JAMA 2017; 317:2114–2122. 4. Lenze EJ et al. Efficacy, safety, and tolerability of augmentation pharmacotherapy with aripiprazole for treatment-resistant depression in late life. Lancet 2015; 386:2404–2412. 5. Banerjee S et al. Sertraline or mirtazapine for depression in dementia (HTA-SADD). Lancet 2011; 378:403–411. 6. Gabriel M, Sharma V. Antidepressant discontinuation syndrome. CMAJ 2017; 189:E747. 7. AGS Beers Criteria® Update. J Am Geriatr Soc 2023. 8. Whooley MA et al. Case-finding instruments for depression: Two questions are as good as many. J Gen Intern Med 1997; 12:439–445. 9. Matta JG, Yamada Y, Baharlou S. Depression in Older Adults — A Rapid Review. Brookdale Dept of Geriatrics, Mount Sinai.
#32.
次回以降の参加はこちら もっと学びたい方へ 参加はこちらのQRコードから イベントページをフォロー 詳細を勉強したい方は 『老年医学のトビラ』を参照