#4.
倫理的問題 善とはなにか?良い行動とはなにか?
「たったひとつの答え」がない問題 → あっちを立てればこっちが立たず
特に人の生死や幸福に関わる問題
#5.
例 75歳女性、身寄りなし
万引きを繰り返して刑務所に入所し刑期満了となったが家がなく、
また心不全を発症し酸素が必要ということで依頼があり入院
入院後も酸素は切れず、だんだん喘鳴がひどくなってきた…
エコーではEF25%、右心負荷所見
今後悪化した場合にどこまでやるのか?
本人は「しんどい」ばかりで話し合いにならない…
#6.
倫理的問題 「うーわ、どうしよう…」
「なんかモヤモヤする…」
「このままでいいのかな…」
(どちらかというと)負の感情 → 倫理的問題への気づき
#7.
患者本人と話し合える場合 https://www.healthliteracy.jp/comm/post_8.html
#8.
パターナリズム 良い点
決断が早い
患者側の「考えるしんどさ」は減る
(「先生にすべてお任せしたい」という患者は意外といる)
悪い点
独りよがりの方針決定になる
患者の意思が尊重されないことがある
#9.
インフォームドディシジョン 良い点
「患者の希望」に沿った決定ができる
悪い点
情報収集のための時間がかかる
情報の質の担保が難しい
「患者の自己責任」でよいのか?
#10.
シェアードディシジョン 良い点
患者も医療者もお互い納得
悪い点
医療者が誘導することもできてしまう
バランス感覚が必要 患者中心の医療の方法
Patient Centered Clinical Method(PCCM)
#11.
患者中心の医療の方法 日本の家庭医療専門医のコアコンピテンシー
カナダのウェスタン大学のMoira Stewartらが提唱
#12.
患者中心の医療の方法 https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=11590
#13.
患者中心の医療の方法 https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=11590 疾患を探る質問だけでない問い
患者がどういった体験をしているか
かきかえ:解釈、希望、感情、影響
始まりから目の前に至るまでの道程
健康観
どういった状態を望んでいるか
これまでどういった経験を乗り越えてきたか
#14.
患者中心の医療の方法 https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=11590 患者を取り巻く環境
近位:家族、経済的安定、教育、雇用、趣味、社会的サポートなど
遠位:コミュニティ、文化、経済、医療制度、社会歴史、地理、エコシステムなど
家族志向ケア
SDH(Social Determinant of Health)
SDGs(Sustainable Development Goals)
#15.
患者中心の医療の方法 https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=11590 医療者の推奨と患者の希望のすり合わせ
どちらかに偏らない意思決定
これを継続して積み重ねることで医師患者関係が強化される
#16.
例 こんにちは、今日は足のむくみと
いうことですが、いつから自覚
されましたか?… 68歳男性
当院はまったくの初診
問診票は主訴:あしのむくみ
大きな既往はなさそう、内服薬もなし まずは症状のOPQRSTAか…
浮腫の分布を確認して…
DVTぽさはあるかな…
癌の検索とかも必要かな…
#17.
例:家庭医的な思考が入ると こんにちは、今日は足のむくみと
いうことですが、お家は香川の方
なんですよね?
こちらにはどんなご用事で来られた
のですか? 68歳男性
当院はまったくの初診
問診票は主訴:あしのむくみ
大きな既往はなさそう、内服薬もなし なんか元気そうだけどなぜ
いきなりこんな大病院に?
住所はどこかな…
え、香川??
#18.
例:家庭医的な思考が入ると なるほど。
では一通り、腎臓や肝臓や膵臓の
値を血液検査で見てみましょう 68歳男性
当院はまったくの初診
問診票は主訴:あしのむくみ
大きな既往はなさそう、内服薬もなし
2週間前から神戸に旅行にきている
観光地を歩いたりカフェで本を読んだり
寝泊まりはネットカフェで
妻が1年前に亡くなり独居
地元にあんまり友人もおらず
入院するなら当院がいいと思って
受診した
知り合いが膵癌でむくみが出てた
昔健診で数値がぎりぎりだったので
心配
#19.
例:家庭医的な思考が入ると 今の所入院は必要なさそうです
膵臓も値は正常でした
食事や睡眠時の姿勢の影響は
あるかもしれません
ただ、尿に赤血球が出ています
これは泌尿器科で調べる必要が
あります
コロナも流行してきているところ
ですし、地元の病院で精査
されたほうがよいかと思います 身体診察・採血・尿検査・レントゲン・心電図を施行
心、腎、肝、アルブミンは正常
尿沈渣で赤血球>100
そういえば尿が濃い感じはあったと
排尿時痛、頻尿、排尿障害なし
コロナワクチンは2回目が半年前
#20.
臨床における意思決定支援 患者本人と話し合える場合
主流はシェアードディシジョン
患者中心の医療の方法も使いつつ
「ここに至るまでの道程=Narrative」を確認しつつ
「患者の想い」を引き出すコミュニケーションが重要
#21.
患者本人と話し合えない場合 代理意思決定者
proxy:本人が前もって指名した人
surrogate:そうでない人 基本的には家族(法的根拠はない)
社会の変化→いろんな関係性の人が関わる可能性が増えている
代理意思決定者の決断が絶対ではない
誰もいない場合は医療チームに委ねられる
推定意思を大事にする
#22.
どう進めていくのか いろんな立場の人
複数名で話し合う
#23.
話し合いのツール:臨床倫理4分割表 https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2014/PA03059_02
#24.
話し合いのツール:臨床倫理4分割表 https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2014/PA03059_02
#25.
倫理4原則 自律尊重
Autonomy 公正
justice 善行
beneficence 無危害
non-maleficence
#26.
例 75歳女性、身寄りなし
万引きを繰り返して刑務所に入所し刑期満了となったが家がなく、
また心不全を発症し酸素が必要ということで依頼があり入院
入院後も酸素は切れず、だんだん喘鳴がひどくなってきた…
エコーではEF25%、右心負荷所見
今後悪化した場合にどこまでやるのか?
本人は「しんどい」ばかりで話し合いにならない…
#27.
例:部長と病棟師長に相談→プチカンファ 論点:呼吸状態悪化時に挿管やNPPVを行うかどうか
医学的適応
肺気腫からの右心不全+心房細動+左心不全 HFrEF
ベッド上寝たきり
陽圧換気によって静脈還流が減る可能性あり
悪化し挿管した場合に抜管できる可能性は低い
#28.
例:部長と病棟師長に相談→プチカンファ 患者の意向
事前指示はなし
「しんどい」というばかりで難しい話はできない
マスク自体を嫌がって外すことが多い
点滴自己抜針もあり
ケアに対して怒って手を出そうとすることもある
#29.
例:部長と病棟師長に相談→プチカンファ 周囲の状況
身寄りなし
弁護士が保佐人としてついているが医療行為の同意はできない
病床は余裕あり、呼吸器の確保はできる
人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン
心不全ガイドライン、高齢心不全患者の治療に関するステートメント
#30.
例:部長と病棟師長に相談→プチカンファ QOL
マスクなどは「不快」である可能性が高い
NPPVや挿管は不快な状態を長く続けることになるかもしれない
呼吸苦の症状緩和につながるかどうかも微妙
モルヒネは効果があるかもしれない
善行
beneficence 無危害
non-maleficence 患者にとっての善とは何なのか?
#31.
話し合いのツール:臨床倫理4分割表 表を埋めることは重要ではない
表だけで答えが決まるものでもない
まとめる過程やまとめたものから新たな視点を得られることがある
関わる人々で情報共有ができる
どこに倫理的ジレンマがあるのかわかりやすくなる
1回きりでなく繰り返し行ってもよい
#32.
進化版? 臨床倫理ネットワーク日本(http://clinicalethics.ne.jp/)
事例検討シート
#33.
ガイドライン 多くのガイドラインが出てきている
人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン
救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン
透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言
終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン
身体拘束予防ガイドライン
宗教的輸血拒否に関するガイドライン
etc.
#34.
Take Home Message 倫理的問題に敏感になろう
倫理的問題を感じたときには複数人で相談しよう
相談する際に倫理4原則と臨床倫理4分割表が参考になる
一度で決めようとせず考え続けよう
倫理コンサルテーションチームとも協議してみよう
#35.
参考図書