テキスト全文
千葉大学医学部附属病院放射線科の紹介
#2. スマートフォンの方は, 横向きでの閲覧がオススメです.
40代女性の腹壁腫瘤の症例
#4. Case: 40代女性 子宮体癌術後の経過観察中. 左腹壁の腫瘤を自覚したため,精査が施行された.
デスモイド腫瘍のキー画像解析
#5. キー画像 軸位断像 T2WI 斜冠状断像 脂肪抑制T1WI(造影後) 5
#6. キー画像 軸位断像脂肪抑制T2WI 斜冠状断像 脂肪抑制T1WI(造影後) 6
腹壁腫瘤の診断に関する質問と解答
#7. Question 診断は? ①: デスモイド腫瘍 ②: 子宮体癌の腹膜播種 ③: 腹直筋血腫 ④: 腹壁膿瘍 7
#10. キー画像 軸位断像 T2WI 斜冠状断像 脂肪抑制T1WI(造影後) 10
デスモイド腫瘍の診断と画像所見
#11. キー画像 軸位断像 T2WI 高信号部と低信号部が混在 斜冠状断像 脂肪抑制T1WI(造影後) 不均一だが強い造影効果 11
#12. キー画像 軸位断像脂肪抑制T2WI 斜冠状断像 脂肪抑制T1WI(造影後) 12
#13. キー画像 軸位断像脂肪抑制T2WI 背側主体に帯状低信号+ 斜冠状断像 脂肪抑制T1WI(造影後) 尾側に線状の造影効果+ 13
デスモイド腫瘍の定義と画像診断
#15. TODAY’S MESSAGE 若年女性に生じた腹壁腫瘤の鑑別として デスモイド腫瘍を想起しよう.
#16. デスモイド腫瘍とは? デスモイド腫瘍の画像診断 腹壁腫瘤を呈する鑑別疾患
#17. デスモイド腫瘍とは? デスモイド腫瘍の画像診断 腹壁腫瘤を呈する鑑別疾患
#18. 1) デスモイド腫瘍(デスモイド型線維腫症) Ø 体幹や四肢,腹腔内などに 生じる間葉系腫瘍. Ø 転移はしないが,局所浸潤性が 強く,中間悪性(locally aggressive)と表される. Ø 5-15%ほどの症例は家族性大腸 腺腫症(FAP)に関連して発症 する(ガードナー症候群). 18
#19. 1,2) デスモイド腫瘍の疫学 Ø年間の発症率は2〜4人/100万人とまれ Ø女性 > 男性 Ø15-60歳に好発(発症ピークは約30歳) Ø妊娠や外傷,既往手術との関連あり Ø腹壁腫瘤を示す疾患のうち,頻度が高い.
#20. デスモイド腫瘍とは? デスモイド腫瘍の画像診断 腹壁腫瘤を呈する鑑別疾患
デスモイド腫瘍の画像診断における特徴
#21. 2) デスモイド腫瘍の画像診断(CT/MRI) Ø 体幹や四肢,腹腔内などに 軟部腫瘤を形成する. Ø 境界: 明瞭 or 不明瞭(浸潤). Ø 筋膜に沿った線状の進展を示す ことがある(fascial tail sign, 図の曲矢印). 文献2より引用 21
#22. 2-4) デスモイド腫瘍の画像診断(CT/MRI) 1) 2) Ø 細胞密度と膠原線維の割合に よって信号強度は変化する. Ø 細胞密度 低👇 膠原線維 多👆 T2WI 低信号 3) 4) Ø 細胞密度 高👆 膠原線維 少👇 T2WI 高信号 Ø 内部の壊死や出血などでも 信号強度は変化するので注意. 1)Case courtesy of Dr Michael P Hartung, Radiopaedia.org, rID: 75363 2) Case courtesy of Dr Ammar Haouimi, Radiopaedia.org, rID: 66365 3) 文献3より引用, 4) 文献4より引用 22
#23. 2-5) デスモイド腫瘍の画像診断(CT/MRI) Ø 帯状の T2WI 低信号域(図の直 矢印)は,細胞密度が低く膠原 線維が豊富な領域を反映して おり,特徴的な所見(62-91%). Ø 不均一な造影効果を示す. Ø 腫瘍の活動性と造影効果は 相関しており,薬物療法の治療 効果を反映する. 文献2より引用 23
#24. デスモイド腫瘍とは? デスモイド腫瘍の画像診断 腹壁腫瘤を呈する鑑別疾患
腹壁腫瘤の鑑別疾患の詳細
#25. 2,3) 腹壁腫瘤の鑑別疾患(デスモイド以外) Ø腹直筋血腫 Ø悪性腫瘍の腹膜播種 Ø悪性腫瘍の腹壁転移 Ø腹壁膿瘍 Ø尿膜管遺残 など
#26. 腹壁腫瘤を形成する鑑別疾患(腹直筋血腫) Ø 単純CTで高吸収. Ø 造影 CT で extravasation (+). Ø 腹部外傷や運動などの病歴. 文献3より引用 26
#27. 腹壁腫瘤を形成する鑑別疾患(腹膜播種) Ø 不整結節/腫瘤. Ø 腹膜肥厚や腹水貯留などを 伴い,多くは多発病変を形成. Ø 腹膜を主座とする局在が多い. Ø 悪性腫瘍の既往歴. 文献3より引用 27
#28. 腹壁腫瘤を形成する鑑別疾患(腹壁膿瘍) Ø 多房性・単房性の液体貯留腔. Ø 膿瘍壁や隔壁にリング状濃染. Ø 消化管など腹壁外に病変の 主座があることが多い. Ø 免疫抑制・易感染性患者. 文献3より引用 28
腹壁腫瘤の診断の流れの復習
#29. 今回の症例で診断の流れを復習!! ① 若い女性の腹壁腫瘤!! ② T2WI の信号強度は不均一だ けどずいぶん信号が低いところも あるなー😌 29
#30. 今回の症例で診断の流れを復習!! ① 若い女性の腹壁腫瘤!! ② T2WI の信号強度は不均一だ けどずいぶん信号が低いところも あるなー😌 ③ 造影するとよく染まるけど,T2WI の信号が低いところは比較的造影 効果も弱そう. 30
#31. 今回の症例で診断の流れを復習!! ① 若い女性の腹壁腫瘤!! ② T2WI の信号強度は不均一だ けどずいぶん信号が低いところも あるなー😌 ③ 造影するとよく染まるけど,T2WI の信号が低いところは比較的造影 効果も弱そう. 31
#32. 今回の症例で診断の流れを復習!! ① 若い女性の腹壁腫瘤!! ② T2WI の信号強度は不均一だ けどずいぶん信号が低いところも あるなー😌 ③ 造影するとよく染まるけど,T2WI の信号が低いところは比較的造影 効果も弱そう. ④ fascial tail sign でもよいかも. デスモイド腫瘍かも💡 32
腹壁腫瘤の鑑別と参考文献
#33. TODAY’S MESSAGE 若年女性に生じた腹壁腫瘤の鑑別として デスモイド腫瘍を想起しよう.
#34. Ø 腹壁腫瘤をみた場合,病変の主座やT2WIでの低信号帯の 有無,造影効果などに着目して鑑別疾患を考えよう.
#35. 参考文献 1. Vinod Ravi, et al. Desmoid tumors: Epidemiology, risk factors, molecular pathogenesis, clinical presentation, diagnosis, and local therapy. In: UpToDate, Post TW (Ed), UpToDate, Waltham, MA.(Accessed on June 21, 2021.) 2. Murphey MD, et al. From the archives of the AFIP: musculoskeletal fibromatoses: radiologicpathologic correlation. Radiographics. 2009;29(7):2143-2173. 3. 西城誠ら. 【症状からアプローチする画像診断:知っておいてほしいCT/MRI所見】腹壁腫瘤. 臨床画像. 2013;29(10月増刊):231-235. 4. 常陸真. 【骨・軟部腫瘍の鑑別診断のポイント】(第2章)軟部腫瘍 筋間腫瘍の鑑別. 画像診断. 2019;39(4):S206-S209. 5. 岩田慎太郎. 希少がん入門(第44回) デスモイド腫瘍. Clinic Magazine. 2019;46(5):58-59.