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DKA対応の基本と病態理解
#1. DKA対応 実践編 — 治療がうまくいかない。そのとき次に何を見る? — 症例 → 問い → 病態 → 次の一手 順天堂大学医学部附属静岡病院
糖尿病・内分泌内科学 伊藤 直顕
#2. 数字が合わないときは、病態を読み直す INTRO 2 治療が予定通り進まない → 循環・ケトン・K・Cl・尿量・Na・Ca・臓器障害・誘因 「インスリンを増やす」前に、ボトルネックを特定する
#3. PART 1 DKAそのものの落とし穴 診断と治療の「数字」を、病態に戻して考える 3
DKAの診断と治療の落とし穴
#4. CASE 1|血糖286、pH 7.31。DKAではない? PART 1 4 救急外来/治療経過 Glucose 286 mg/dL pH 7.31 PaCO₂ 24 mmHg HCO₃⁻ 12 mmol/L AG 25 mmol/L pHがほぼ正常でも、DKAを除外できますか? 症例の違和感を3秒でつかむ
#5. ANSWER|pHだけでDKAを除外しない PART 1 6 pHだけでDKAを除外しない 1 AG 25:高AG代謝性アシドーシス 2 β-OHB 6.2なら強いケトン血症 3 混合性障害でpHは正常域に見える CLINICAL PEARL|HCO₃⁻・AG・β-OHB・PCO₂を統合する
#6. CASE 2|DKAなのにK 5.2。Kは足りている? PART 1 7 救急外来/治療経過 Glucose 480 mg/dL β-OHB 6.5 mmol/L pH 7.18 / K 5.2 mmol/L 血清Kが高めなら、K補充は不要ですか? 症例の違和感を3秒でつかむ
血清KとDKAの関係性の再評価
#7. ANSWER|血清Kが正常〜高値でも総体内Kは枯渇 PART 1 9 血清Kが正常〜高値でも総体内Kは枯渇 1 インスリン欠乏・高浸透圧・酸血症でKは細胞外へ 2 浸透圧利尿・嘔吐でKは体外へ喪失 3 補液+インスリンで血清Kは急低下する CLINICAL PEARL|開始値で安心せず、推移と尿量を追う
#8. CASE 3|血糖180、HCO₃⁻ 14。まだDKA? PART 1 10 治療開始後 Glucose 180 mg/dL β-OHB 0.4 mmol/L AG 10 mmol/L HCO₃⁻ 14 mmol/L Cl 118 mmol/L HCO₃⁻が低いままなら、インスリンを続けますか? 症例の違和感を3秒でつかむ
#9. ANSWER|Cl上昇による正常AG代謝性アシドーシス PART 1 12 Cl上昇による正常AG代謝性アシドーシス 1 β-OHB低下とAG改善=DKA改善 2 keto-anion喪失とCl負荷でHCO₃⁻は低く残る 3 生食の累積量と輸液組成を確認する CLINICAL PEARL|ケトンが低いのにHCO₃⁻が低いならClを見る
#10. CASE 4|血糖が230まで低下。インスリンを止める? PART 1 13 救急外来/治療経過 Glucose 520 → 230 mg/dL しかし β-OHB 3.8 mmol/L アシドーシスは残存 血糖<250 mg/dLでインスリンを止めますか? 症例の違和感を3秒でつかむ
輸液管理とNaの変動に関する考察
#11. ANSWER|ブドウ糖を加えてインスリンを継続 PART 1 15 ブドウ糖を加えてインスリンを継続 1 血糖正常化とDKA resolutionは別 2 5–10%ブドウ糖で低血糖を防ぐ 3 ketogenesisを止め、β-OHB<0.6まで治療する CLINICAL PEARL|インスリンは血糖だけでなくケトン産生を止める
#12. CASE 5|血糖は下がった。でもNaが上がった。輸液を変える? PART 1|Na・浸透圧 16 救急外来/治療経過 Glucose 600 mg/dL Na 145 mmol/L ↓ 補液+インスリン Glucose 300 mg/dL Na 150 mmol/L Naが5 mmol/L上昇した。すぐ輸液を変更する? 症例の違和感を3秒でつかむ
#13. ANSWER|治療初期のNa上昇だけで輸液を変えない PART 1|Na・浸透圧 18 治療初期のNa上昇だけで輸液を変えない 高血糖改善 → 細胞外浸透圧↓ → 水が細胞内へ → 血清Na↑し得る Glucose ↓ 100 mg/dL → Na ↑ 約1.6 mmol/L 輸液判断:血糖・補正Na・有効浸透圧・尿量・入出量・循環動態 高度Na上昇時は自由水欠乏も再評価。ケトーシス抑制にインスリンを継続し、必要時はブドウ糖を併用 CLINICAL PEARL|治療初期のNa上昇だけで慌てない Na × Glucose × Osmolalityを読む
#14. CASE 6|血糖600、Na 130。本当に低Na? PART 1|Na・浸透圧 19 救急外来/治療経過 Glucose 600 mg/dL Na 130 mmol/L 高血糖あり 臨床的脱水あり Na 130。低Na血症として治療する? 症例の違和感を3秒でつかむ
多尿の原因とDKA改善後の評価
#15. ANSWER|高血糖補正後のNaを計算する PART 1|Na・浸透圧 21 高血糖補正後のNaを計算する 高血糖 → 細胞外浸透圧↑ → 水:細胞内→外 → 実測Na↓ Corrected Na ≈ Measured Na + 1.6 × [(Glucose−100)/100] 1.6は教育用の近似。係数には議論がある CLINICAL PEARL|高血糖では実測Naだけを見ない 補正Na + effective osmolality + 臨床的脱水
#16. CASE 7|インスリン投与中なのに血糖が下がらない PART 1 22 救急外来/治療経過 Glucose 520 → 480 mg/dL 頻脈・口腔乾燥・多尿 循環血液量不足が疑わしい ここですぐインスリンを増量しますか? 症例の違和感を3秒でつかむ
#17. ANSWER|まず循環と実投与を見直す PART 1 24 まず循環と実投与を見直す 1 脱水→腎血流低下→糖・ケトン排泄低下 2 対抗ホルモン亢進とインスリン抵抗性が持続 3 ルート・ポンプ・投与量、BP/HR/CRT/尿量を確認 CLINICAL PEARL|インスリンを増やす前に、循環を見直す
#18. PART 2 DKAだけでは説明できない 治療後に残る所見を、別病態のサインとして読む 25 A|尿量・電解質 → B|Vital・循環・感染 → C|臓器所見 → D|誘因・鑑別
低Kと尿濃縮障害の関連性
#19. CASE 8|血糖もケトンも改善。でも多尿が止まらない PART 2|尿量・電解質 26 救急外来/治療経過 β-OHB ↓ pH 改善 尿量 300–500 mL/h 多尿が持続 まだ高血糖による浸透圧利尿ですか? 症例の違和感を3秒でつかむ
#20. ANSWER|浸透圧利尿以外へ鑑別を広げる PART 2|尿量・電解質 28 浸透圧利尿以外へ鑑別を広げる 1 DKA改善後も続くかを時間軸で確認 2 Na・尿浸透圧・尿糖・出納を再評価 3 低K・高Ca・薬剤・尿崩症を考える CLINICAL PEARL|多尿は「DKA改善後」に意味が変わる
#21. CASE 9|K 2.8で多尿。DKAの浸透圧利尿? PART 2|尿量・電解質 29 救急外来/治療経過 Glucose・β-OHBは改善 K 2.8 mmol/L 多尿と脱水が持続 K低下は補充だけで終えてよいですか? 症例の違和感を3秒でつかむ
#22. ANSWER|低Kが尿濃縮障害を悪化させる PART 2|尿量・電解質 31 低Kが尿濃縮障害を悪化させる 1 低Kは集合管のAVP反応・AQP2発現を低下させうる 2 尿濃縮障害→多尿→脱水→K喪失の悪循環 3 K補充と同時に尿量・尿浸透圧を追う CLINICAL PEARL|Kは不整脈だけでなく、尿量にも影響する
DKA改善後の感染症の見逃し
#23. CASE 10|補液中なのに脱水が改善しない。Caを見た? PART 2|尿量・電解質 32 救急外来/治療経過 血糖・ケトンは改善 高Na傾向/多尿/脱水持続 Ca高値 補液不足だけで説明できますか? 症例の違和感を3秒でつかむ
#24. ANSWER|高Caによる腎性尿崩症を疑う PART 2|尿量・電解質 34 高Caによる腎性尿崩症を疑う 1 高Caは腎のAVP抵抗性と濃縮障害を起こしうる 2 多尿→脱水→GFR低下→Ca排泄低下の悪循環 3 「DKAの標準経過ではない多尿」は別病態を探す CLINICAL PEARL|多尿が続くならK・Ca・尿浸透圧を見直す
#25. CASE 11|DKAは改善。でも頻脈・頻呼吸が残る PART 2|Vital・感染 35 救急外来/治療経過 β-OHB ↓ / pH 改善 循環血液量 改善傾向 HR 130–140 /min RR 28 /min Temp 36.5℃ 熱がない。感染症は否定してよい? 症例の違和感を3秒でつかむ
#26. ANSWER|発熱がなくても感染を外さない PART 2|Vital・感染 37 発熱がなくても感染を外さない 頻脈|HR 脱水・感染・疼痛/不安
不整脈・甲状腺中毒・肺塞栓・循環不全 頻呼吸|RR Kussmaul呼吸・感染/肺炎
肺塞栓・低酸素・その他呼吸器疾患 感染源:問診・身体所見・尿路・呼吸器・皮膚/軟部・カテーテル等 血液培養は全例一律でなく、感染を疑う場合に適切に採取 CLINICAL PEARL|熱がない ≠ 感染がない vital signsの“残り方”を見る
血圧低下と循環不全の評価
#27. CASE 12|血圧160→105。補液を増やす? PART 2|Vital・循環 38 救急外来/治療経過 BP 160/90 ↓ BP 105/65 mmHg 疼痛・不安は改善 血圧低下だけで循環不全と判断しますか? 症例の違和感を3秒でつかむ
#28. ANSWER|単独値ではなく灌流を統合する PART 2|Vital・循環 40 単独値ではなく灌流を統合する 1 初期高血圧は交感神経緊張も影響 2 HR・CRT・尿量・乳酸・意識を統合 3 出血・心機能低下・敗血症も除外 CLINICAL PEARL|血圧ではなく、灌流を見る
#29. CASE 13|DKA改善の翌日、AST/ALTが上昇 PART 2|臓器所見 41 救急外来/治療経過 β-OHB ↓ pH 改善 AST / ALT ↑ 新しい異常値 DKA治療のせいとして観察だけでよいですか? 症例の違和感を3秒でつかむ
#30. ANSWER|TELTはあり得るが、除外診断 PART 2|臓器所見 43 TELTはあり得るが、除外診断 1 DK/DKA治療後の一過性上昇は報告あり 2 脂肪沈着などが仮説。機序は未確定 3 虚血・薬剤・感染・胆道・筋障害も評価 CLINICAL PEARL|新しい異常を「治療のせい」で終わらせない
腹痛の再評価とDKAの関連
#31. CASE 14|アシドーシス改善後も腹痛が治らない PART 2|臓器所見 44 救急外来/治療経過 β-OHB ↓ pH 改善 腹痛 持続 局在・反跳痛を再評価 DKAによる腹痛として待ちますか? 症例の違和感を3秒でつかむ
#32. ANSWER|持続痛は腹部疾患を再評価 PART 2|臓器所見 46 持続痛は腹部疾患を再評価 1 DKA由来の腹痛は改善と並行しやすい 2 膵炎・胆道疾患・腸管虚血・感染を検討 3 局在・反跳痛・炎症反応・画像適応を再評価 CLINICAL PEARL|「DKAだから腹痛」で思考を止めない
#33. CASE 15|ケトン陽性。DKAだけでよい? PART 2|誘因・鑑別 47 救急外来/治療経過 大量飲酒歴 数日間の摂取低下 嘔吐・脱水 ケトン上昇 DKAとしてインスリンだけで治療する? 症例の違和感を3秒でつかむ
#34. ANSWER|ケトアシドーシスの背景を再評価 PART 2|誘因・鑑別 49 ケトアシドーシスの背景を再評価 DKA alcoholic
ketoacidosis starvation
ketosis 慢性大量飲酒 + 低栄養 + 嘔吐/摂取不良 → thiamine deficiencyも考える チアミンはアルコール使用障害・低栄養など、欠乏リスクが高い患者で検討 CLINICAL PEARL|ケトンを見たら、飲酒と摂取歴を聞く DKA全例ではなく、欠乏リスクが高ければチアミンを検討
治療が進まないときの再評価順序
#35. 治療が進まないときの再評価順序 SYNTHESIS 50 1 循環・灌流 2 β-OHB / pH 3 Na × Glucose × Osmolality 4 K / Cl / Ca・尿量 5 Vital:HR / RR / Temp 6 臓器障害 7 感染・飲酒・摂取歴 異常値そのものではなく、“改善しないもの”を探す
#36. DKA対応 実践編|Take Home TAKE HOME 51 01 pHだけでDKAを除外しない 02 血清Kが正常でも、総体内Kは枯渇している 03 血糖が下がっても、DKAは終わっていない 04 Naは血糖・補正Na・有効浸透圧と読む 05 効かなければ、循環・尿量・Vitalを読み直す 06 治療後の異常を、すべてDKAのせいにしない 07 ケトンを見たら、飲酒と摂取歴を聞く 数字ではなく、病態を読む