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低Na血症の初期評価と治療方針
#1. その低Na、本当にSIADHですか? 救急外来で見逃したくない低Na血症 ― 初期評価から治療決定まで 【当直シリーズ⑤】糖尿病の救急対応| Dr. Ito 当直シリーズ①②③④ | 糖尿病の救急対応も参照 順天堂大学医学部附属静岡病院 糖尿病代謝内分泌内科
伊藤 直顕
#2. 本日のアジェンダ 当直で危険な低Naを見逃さない 01 症候性か評価する 緊急治療の要否を判断 02 本当に低Naか確認する 偽性・高張性を除外 03 尿浸透圧・尿Naで分類 原因を絞り込む 04 SIADHと決めつけない 副腎不全を必ず除外 05 補正しすぎない ODSを防ぐ安全な補正
低Na血症の診断と分類の重要性
#3. なぜ低Na血症は難しいのか 「診断」より「分類」が重要な疾患 🔀 原因が多い SIADH・副腎不全・心不全・脱水など多岐にわたる ⚕️ 治療が真逆 水制限 vs 輸液 vs ステロイド ― 誤れば悪化 ⚠️ 補正しすぎるとODS 橋中心髄鞘崩壊症(ODS)は不可逆的神経障害 🔍 SIADHと副腎不全が似ている 検査値が重なり鑑別が困難
#4. フローチャートの落とし穴 フローチャートは有用なツールですが、すべての患者に当てはまるわけではありません。 💊 利尿薬・エンレスト 尿NaとFENaを偽高値にする → 分類の誤りに注意 💊 バクタ(ST合剤) K保持性利尿薬様作用 → 尿Naが上昇 🏥 透析患者・下肢切断患者 正常範囲の解釈が通常とは異なる 📋 フローチャートは「参考値」。病歴・薬歴・身体所見を必ず統合して判断する。
症候性低Na血症の緊急対応
#5. STEP 1 まず「症候性か」を評価する 意識障害・痙攣・呼吸抑制を伴う場合は緊急治療の絶対適応です。
症状の重症度がすべての判断の起点となります。 軽症 悪心・倦怠感・頭痛 中等症 嘔吐・傾眠・歩行障害 重症 痙攣・昏睡・呼吸抑制 重症症候性 → 直ちに3%食塩水投与を検討
#6. STEP 2 本当に低Na血症か確認する 偽性低Na血症(等張〜高張) 高血糖 補正Na=
実測Na+1.6×
(血糖-100)/100 高TG血症 脂質が水分画を占拠し希釈 M蛋白血症 多発性骨髄腫などで偽性低下 低Naなのに浸透圧が正常なら偽性低Naを疑う
なお浸透圧と計測浸透圧に差があれば
エタノール摂取を疑う 高血糖例では補正Naを算出して真の低Na血症かを判定します。治療前に必ず確認しましょう。
尿浸透圧によるADH活性の評価
#7. STEP 3 血清浸透圧で低Na血症を分類する 高張性 >295 mOsm/kg(高張物質) 等張性 280–295 mOsm/kg(偽性) 低張性 <280 mOsm/kg(対象) 浸透圧測定 血清浸透圧を測定する 臨床で問題となる低Na血症の大多数は低張性(<280 mOsm/kg)です。等張性・高張性は偽性または高張物質による二次性を示します。
#8. STEP 4 尿浸透圧<100 → ADHは働いていない
腎臓が水を排泄できる状態 尿浸透圧>100 → ADHが活性化
原因検索が必要 Beer potomaniaでは摂取溶質量が低下し、
十分な自由水排泄ができません。
尿浸透圧が低くても安心できない例があります。 尿浸透圧でADH活性を判定する 低NaなのにADH活性が疑われます。
心不全、肝硬変、ネフローゼ、副腎不全、
SIADHが疑われます。
SIADHと副腎不全の鑑別ポイント
#9. SIADHと副腎不全は区別できるか 両者は検査値が酷似しており、臨床症状と合わせた鑑別が不可欠です。 項目 SIADH 副腎不全 血圧 正常 低血圧が多い 食欲低下 軽度 著明 倦怠感 軽度〜中等度 著明 好酸球増加 なし あり(30%) 血清K 正常 軽度高値のことあり 尿Na 高値 高値 尿浸透圧 高値 高値 治療 水制限 ステロイド投与 副腎不全を見逃すと生命の危機 → 疑ったらコルチゾール採血 + ステロイド投与
#10. 副腎不全4つの手がかり 低血圧 起立性低血圧・ショックバイタル 食欲低下・悪心 消化器症状が目立つ 強い倦怠感 ADL低下・ぐったり感 好酸球増加 血算で見落とさない
原因別の治療方針と注意点
#11. 原因別:治療の方向性は真逆になる 🔵 SIADH 水制限(800〜1000 mL/日)
重症例:3%食塩水 ± バポタン 🔴 副腎不全 ヒドロコルチゾン 100mg IV
+ 生理食塩水輸液 🟠 脱水 生理食塩水で循環血液量を補正
水制限は禁忌 🟢 心不全・肝硬変 水・塩分制限 + 基礎疾患治療
過剰輸液は禁忌 原因を間違えると治療が悪化を招く。分類に時間をかける価値がある。
#12. 症候性低Na血症への初期対応 重症症候性(痙攣・昏睡)では3%食塩水を直ちに開始します。 処方例(院内調製) 生理食塩水 80 mL+ 10%食塩水 20 mL
= 約3%食塩水 100 mL
恐らくこれが一番作成しやすい 初期投与速度 0.6 mL/kg/hr
最初の1〜2時間で
Na +1〜2 mEq/Lを目標 効果判定 症状改善を確認 1〜2時間後に再評価、改善すれば速度を落とす。
意識改善したら、3%負荷ではなく、原因疾患に応じた治療へ移行。
ODSを防ぐための補正目標
#13. ODSを防ぐ:補正目標の上限を守る 安全域 慢性/不明 急性(<48時間) 慢性低Naを急速補正すると橋中心髄鞘崩壊症(ODS)が生じる。不可逆的な神経障害。 発症時期が不明な場合は必ず慢性として扱う。 🔑 迷ったら 慢性低Naとして治療する
上限 ≦8 mEq/L/日
#14. 補正量だけを見てはいけない 血清Na変化は「入るNa量」と「出るNa量」のバランスで決まります。投与量だけを管理しても不十分です。 ⚠️ SIADH改善後の急激な水利尿
→ 予想外のNa上昇に注意 意識すべきは
「投与液のNa濃度」と「尿中Na+K濃度」の差です。
過補正が生じた場合は再低下療法(ブドウ糖投与による補正)を検討します。
当直フローのクイックリファレンス
#15. クイックリファレンス:当直フロー 原因診断 尿Na評価 尿浸透圧判定 血清浸透圧確認 症候性評価 電解質を提出する際は必ず尿電解質、尿Cre、浸透圧、尿浸透圧を提出してください。
抗生剤投与前に培養を取るくらい重要なことです。