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関節炎先行の乾癬性関節炎と血清陰性関節リウマチの概要
#1. 関節炎先⾏の乾癬性関節炎と⾎清陰性 関節リウマチはどう鑑別する︖ どう治療する︖ MajorTY@膠原病内科(@Dr_MajorTY) ⽇本リウマチ学会専⾨医・指導医
#2. はじめに ü炎症性関節炎を呈する疾患として、関節リウマチや乾癬性関節炎があり ます ü関節リウマチと乾癬性関節炎は, 同じような部位で関節炎をきたすこと があります
関節リウマチ(RA)と乾癬性関節炎(PsA)の基本情報
#3. スライド内容について ü①関節リウマチ(RA)とは︖ ü②乾癬性関節炎(PsA)とは︖ ü③RAとPsAの鑑別が微妙な場合はどうする︖
#4. 関節リウマチ(RA)とは︖ 関節炎部位 üRAは関節破壊をきたしうる炎症性の関節炎です ü関節炎は, ⼿の⼿指・⾜の⾜趾を中⼼に対称性に⽣じます ü⼿では, ⼿⾸・MP関節・PIP関節が好発部位ですが、DIP関節がおか されることは稀
#5. 関節リウマチ(RA)とは︖ ⾎液検査 üRAで分類基準にも含まれる重要な検査として, 以下があります ①リウマトイド因⼦(RF) ②抗CCP抗体(ACPA) üRAでは, RFやACPAが絶対に陽性になるわけではなく, 報告では約4 割がRFやACPA両⽅陰性の⾎清陰性といわれています[1] [1] Lenti MV, et al. Autoimmun Rev. 2022;21(9):103143.
#6. スライド内容について ü①関節リウマチ(RA)とは︖ ü②乾癬性関節炎(PsA)とは︖ ü③RAとPsAの鑑別が微妙な場合はどうする︖
乾癬性関節炎(PsA)の特徴と関節外病変
#7. 乾癬性関節炎(PsA)とは︖ 関節炎部位 üPsAもRAと同じく関節破壊をきたしうる炎症性の関節炎です üPsAは脊椎関節炎のひとつで, 末梢性病変と軸性病変にわかれます ü末梢性病変は脊椎以外のいわゆる⼿や⾜の関節炎です ü⼿や⾜のDIP関節がおかされることが典型的ですが, RAに類似する対 称性関節炎, しかもRAと似た分布を呈することがあります
#8. 乾癬性関節炎(PsA)とは︖ ⾎液検査 üPsAにはRAのような関連する⾃⼰抗体は基本的にありません üPsA分類基準にCASPAR分類があり, RF陰性が項⽬に組み込まれてい ますが, RFはPsAでは絶対に陽性にならないといった特異的な検査で はないので注意が必要です üつまり, RF陽性=PsAではない とは考えてはいけません。 [1] Lenti MV, et al. Autoimmun Rev. 2022;21(9):103143.
#9. 乾癬性関節炎(PsA)とは︖ 関節外病変 üPsAはもちろん乾癬の病態があり, ⽪膚や⽖で乾癬を認めます üしかしながら, PsAの約10〜15%は関節炎先⾏型で, この場合乾癬の ⽪膚症状がありません
RAとPsAの鑑別が難しい場合の注意点
#10. スライド内容について ü①関節リウマチ(RA)とは︖ ü②乾癬性関節炎(PsA)とは︖ ü③RAとPsAの鑑別が微妙な場合はどうする︖
#11. RAとPsAの鑑別が微妙な場合 ü①RAもPsAもお互いに同じような関節炎分布をとることがある ü②PsAでは⾃⼰抗体は基本的に陰性 ü③RAでも, RFとACPAが陰性の⾎清陰性RAがある ü④PsAでは関節先⾏型の⽪膚症状がないことがある つまり, ⾎清陰性RAと乾癬のないPsA(関節炎先⾏型)は時として同じ ような臨床所⾒を呈します
#12. ⾎清陰性RAと乾癬のないPsAの鑑別 ü⾎清陰性RAと乾癬のないPsAは鑑別が困難な場合があります ですが, PsAについては以下の点には注意です ü①⽪膚症状がないように⾒えても、髪の⽣え際や⽿介など擦過しやす い部位や⽖に, 乾癬病変がでていることがある ü② 慢性腰痛, とくに炎症性腰痛(安静で増悪, 運動で軽快)がある ⇨①はよく⾒たら乾癬があったというケースです ⇨②は軸性病変の合併を⽰唆します
血清陰性RAと乾癬のないPsAの鑑別と治療方針
#13. ⾎清陰性RAと乾癬のないPsAの鑑別・治療 ü同じ関節炎分布で, ⾎清陰性RAと軸性病変も乾癬のないPsAは鑑別は ほぼ無理と思います üじゃあ、どうするの︕︖となりますが ü安⼼してください︕︕ ü初期治療はほぼ⼀緒です︕
#14. ⾎清陰性RAと乾癬のないPsAの治療 ü RA治療 [Kawahito Y, et al. Mod Rheumatol. 2022;roac017-.] ü PsA治療 [Coates LC, et al. Nat Rev Rheumatol. 2022;1–15.] ü ①メトトレキサートを含む抗リウマチ薬で治療 ü ①メトトレキサートを含む抗リウマチ薬で治療 ü ②それでも低疾患活動性を達成できなければ, ⽣ ü ②それでも低疾患活動性を達成できなければ, ⽣ 物学的製剤(TNF阻害薬, IL-6R阻害薬, アバタセ 物学的製剤(TNF阻害薬, IL-17阻害薬, IL-23阻害 プト)やJAK阻害薬(ウパダシチミブ含む5剤あり) 薬)やJAK阻害薬(ウパダシチニブ) ü ③それでも低疾患活動性を達成できなければ, 別 の⽣物学的製剤やJAK阻害薬 ü ③それでも低疾患活動性を達成できなければ, 別 の⽣物学的製剤やJAK阻害薬 • 初期治療はメトトレキサートを含む抗リウマチ薬で治療は共通 • ⽣物学的製剤は共通して使⽤できるものはTNF阻害薬 • JAK阻害薬で共通して使⽤できるものはウパダシリニブ
#15. Take Home Message ü①乾癬がない乾癬性関節炎と⾎清陰性関節リウマチは、時におなじよ うな関節炎所⾒を呈して, 鑑別はほぼムリなときあり ü②脊椎病変・乾癬のない乾癬性関節炎と⾎清陰性関節リウマチは抗リ ウマチ薬での初期治療はほぼ⼀緒 ü③次の治療ステップは、同じものと異なるものがあるので注意