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小﨑里華

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小児の食物アレルギー 〜食物ごとの特徴を意識する〜

投稿者プロフィール
どっと@小児科

総合病院

27,588

135

概要

以前小児の食物アレルギーについてのスライドを作成しましたが、実際の臨床では個々の食物ごとに、特徴を説明することが必要です。今回は補足版として、食物ごとの特徴をまとめたいと思います。

◎目次

・はじめに

・食物アレルギー診療のポイント

・もくじ

・part.1 鶏卵

・鶏卵のポイント

・重症度毎のおおまかなイメージ

・卵黄による食物蛋白誘発胃腸症(消化管アレルギー)

・part.2 牛乳

・牛乳のポイント

・低アレルゲンミルクについて

・part.3 小麦

・小麦のポイント

・part.4 ピーナッツ

・ピーナッツのポイント

・ピーナッツアレルギーの予防:日本ではどうするべき?

・part.5 クルミ・ナッツ類

・ナッツ類の分類:基本的に個別に評価が必要

・ナッツ類のアレルギーが増えている要因と問題点

・まとめと注意

・Take Home Message

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医

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テキスト全文

小児の食物アレルギーの概要と診療ポイント

#1.

補⾜︕︕ ⼩児の⾷物アレルギー ー ⾷物ごとの特徴を意識する ー どっと@⼩児科

#2.

はじめに 以前、⼩児の⾷物アレルギーについてのスライドを作成しましたが 実際の臨床では個々の⾷物ごとに、特徴を説明することが必要です 今回は補⾜版として、⾷物ごとの特徴をまとめたいと思います

#3.

⾷物アレルギー診療のポイント ① 確実な診断 ② 重症度の評価 ③ 症状誘発時の対応を指導 ④ ⾷べられないもの・⾷べられるものを確認 今回は主に④についてです 少しでも理解しておけば、 過剰な診断・除去を防ぐことが可能 です

鶏卵アレルギーの特徴と管理方法

#4.

もくじ 1. 鶏卵 2. ⽜乳 3. ⼩⻨ 4. ピーナッツ 5. クルミ・ナッツ類 ピーナッツは最近、原因⾷物の 5番 ⽬ に な り ま し た が 、 便 宜 上 4番 ⽬ と し て 説 明 し て い き ま す

#5.

part.1 鶏卵 頻度 ⼩児の即時型⾷物アレルギーで 最も多い 検査 卵⽩・オボムコイド(Gal d 1)*卵⻩は摂取可否の判断に不適 ⽣活 乳児期は除去の負担も⼤きくないが、成⻑とともに⾷事の幅が広がり、 ⽣活での制限が⼤きくなるため、早めに介⼊したい 基本的に除去するもの 基本的に除去不要なもの 鶏卵とその加⼯品 鶏⾁・⿂卵 (マヨネーズやパン類など多品⽬) 卵殻カルシウム ウズラやアヒルの卵

#6.

鶏卵のポイント① 卵アレルギーとは、卵⽩のアレルギー である 加熱卵⻩ 1個 加熱卵⽩ 1g 卵⽩を少量摂取できれば、卵⻩・卵⻩の加⼯品は摂取できることが多い ゆで卵は、加熱後に放置することで卵⻩に 卵⽩の蛋⽩が染み込む ことに注意 卵⻩を調理に使⽤できることは、⽣活では想像以上にメリットがある

#7.

鶏卵のポイント② 卵の抗原性は、加熱によって⼤きく低下 する 抗原性 ⽣卵 温泉/半熟卵 卵焼き ゆで/薄焼き卵 卵⽩の主なタンパク質であるオボアルブミンは 熱でアレルゲン性が低下する 基本的には ゆで卵・薄焼き卵の摂取量で重症度を把握 する 電⼦レンジでは加熱が不⼗分になることに注意

#8.

重症度毎のおおまかなイメージ 加熱卵⽩の量 重 症 度 ⾷べられるものの⽬安 〜 1 g 完全除去〜厳密な量を微量摂取(経⼝免疫療法に準ずる) 1-5 g 加熱卵⻩1個、クッキーやビスケット1枚、⼩さめのパン 5-15 g うずらの卵1個、コロッケ、ドーナッツなど 15-40 g カステラ、シフォンケーキなど 40 g 〜 茶碗蒸し、スープなど低加熱料理を少量ずつ試す (1個相当) 可能であれば給⾷の除去解除を検討 (⽣卵を⾷べられる必要はない) *マヨネーズは加熱卵⽩とほぼ同等量の摂取が可能

#9.

卵⻩による⾷物蛋⽩誘発胃腸症(消化管アレルギー) 近年、卵⻩を摂取後に繰り返し嘔吐する乳児が増加している 病型はFPIES(food protein-induced enterocolitis syndrome)と呼ばれる 卵⻩ 特徴 ① 卵⻩摂取後 1-6時間程度で繰り返す嘔吐 ② じんましんや咳は伴わない ③ 特異的IgEは通常陰性(⾮IgE依存性反応) ④ 1-2歳ころまでに⾃然に改善することが多い 卵⽩の即時型アレルギーが合併することもあるが 基本的には卵⽩は摂取できる場合が多い

#10.

part.2 ⽜乳 頻度 ⼩児の即時型⾷物アレルギーで 2番⽬に多い 検査 ⽜乳・カゼイン(Bos d 8)*この2項⽬はほぼ同じ数値になる ⽣活 除去によるカルシウム⽋乏に注意が必要 基本的に除去するもの 基本的に除去不要なもの ⽜乳とその加⼯品 ⽜⾁・乳化剤 (ヨーグルトやチーズなど多品⽬) 乳酸菌 (乳酸菌飲料は除く) ヤギ乳・ヒツジ乳 乳糖 (重症例を除く)

牛乳アレルギーの頻度と重症度

#11.

⽜乳のポイント ⽜乳アレルギー管理の肝は タンパク質含有量 である ⽜乳 10mLに対する乳製品の量/タンパク質含有率の⽬安 ⽣クリーム ヨーグルト/⽜乳 バター 50g 0.6% 16g 2% 10g 3% チーズ 脱脂粉乳 1-4g 8-40% 1g 36% ⽜乳を少量摂取できれば、バターは摂取できることが多い 基本的には ヨーグルト/⽜乳換算量 で重症度を把握する *チーズは クリーム<プレーン<パルメザン と種類によって異なる

#12.

低アレルゲンミルクについて 加⽔分解によって、カゼインを分解(除去) している 加⽔分解乳 アミノ酸乳 ⼤⾖乳 ミルフィーHP® エレメンタルフォーミュラ® ボンラクト® ニューMA-1® 乳児期は他からカルシウムを補充することが困難であり ときに低アレルゲンミルクの使⽤をすすめる 普通ミルクと⽐較して⾵味はやや劣ること、⾼価であることなどに注意が必要

#13.

重症度毎のおおまかなイメージ ⽜乳 重 症 度 ⾷べられるものの⽬安 〜 3 mL 完全除去〜厳密な量を微量摂取(経⼝免疫療法に準ずる) 3-15 mL バター1かけ、ヨーグルト味ラムネ、⾷パンなど 15-50 mL ヤクルト、ドーナッツ、⼩さめのチョコレートなど 50-200 mL ヨーグルト、プリン、アイス、キャンディチーズなど 200 mL 〜 ピザ、グラタン、スライスチーズなど *給⾷の除去解除は地域で相談が必要(扱いの差が⼤きい) 例︓200mlで飲⽤⽜乳解除、その後1-2年誘発歴なしで解除など

小麦アレルギーの管理と重症度の評価

#14.

part.3 ⼩⻨ 頻度 ⼩児の即時型⾷物アレルギーで 3番⽬に多い 検査 ⼩⻨・ω-5 グリアジン ⽣活 除去により乳児期から⽣活での負担が⼤きい *ω-5 グリアジンは特異度は⾼いが感度が低い 基本的に除去するもの 基本的に除去不要なもの ⼩⻨と⼩⻨・グルテンを含む加⼯品 味噌・醤油・穀物酢 古代⼩⻨・デュラムセモリナ⼩⻨ *⽶粉パン (グルテンの使⽤が少なくないため、 基本的には避けた⽅が無難) *⼤⻨は交差抗原性があり、注意が必要 ⻨茶は量が少なく、多くは摂取可能

#15.

⼩⻨のポイント ⼩⻨アレルギー管理の肝も タンパク質含有量 である うどん 10gに対する乳製品の量/タンパク質含有率の⽬安 うどん そうめん パスタ 薄⼒粉 パン 強⼒粉 10g 2.6% 7g 3.5% 5g 5.2% 3g 8.0% 2g 9.3% 2g 11.7% 基本的には うどん換算量 で重症度を把握する うどん・そうめん・パスタなど、麺の種類によっても異なることに注意

#16.

重症度毎のおおまかなイメージ うどん 重 症 度 ⾷べられるものの⽬安 〜 5 g 完全除去〜厳密な量を微量摂取(経⼝免疫療法に準ずる) 5-10 g クッキー・ビスケット 1枚、唐揚げ 3個など 10-50 g コロッケ 1個、餃⼦ 1個など 50-100 g とんかつ、天ぷら、カレー・シチューなど 100 g 〜 ⾷パン 1/2個、ホットケーキ 1枚、ゆでパスタ 50gなど (うどん半⽟) *給⾷の除去解除はうどん200g、⾷パン1枚を問題なく摂取できる ことを確認し、⾃宅で⽇常摂取に問題がない状況をみて検討する

ピーナッツアレルギーの予防と注意点

#17.

part.4 ピーナッツ 頻度 ⼩児の即時型⾷物アレルギーで 5番⽬に多い 検査 ピーナッツ・Ara h 2 ⽣活 調理過程で隠し味などで使⽤されやすく、誤⾷が多いことに注意 *Ara h 2は特異度は⾼いが感度が低い ナッツ(⽊の実類)と混同されやすいが、ピーナッツは⾖類で別物である 基本的に除去するもの ピーナッツ(落花⽣)とその加⼯品 誤⾷に注意するもの 担々麺、カレー、焼き⾁のタレ ゴマダレ、五平餅、沖縄郷⼟料理など 基本的に除去不要なもの ピーナッツ以外のナッツ類 (必要に応じて感作の評価を検討) ジーマミー⾖腐=ピーナッツ⾖腐

#18.

ピーナッツのポイント 予防 という⼿段を知っておく ⾷物アレルギーの予防研究の始まりはピーナッツアレルギー LEAP試験︓湿疹または卵アレルギーのある⽣後4-11ヶ⽉の乳児に対して、ピーナッツの 早期導⼊により、ピーナッツアレルギーのリスクを下げることができる Du Toit G, at al. N Engl J Med 2015; 372:802-13 近年の各国におけるピーナッツ早期摂取の推奨(⼀部) ・⽶国(2017 NIAID) ピーナッツはハイリスク児は4-6ヶ⽉、他の乳児も6ヶ⽉までに開始 ・オーストラリア(2017 ASCIA) ピーナッツを含め⽣卵以外のものは12ヶ⽉までに開始 ・⽶国・カナダ(2020 AAAAI/ACAAI/CSACI) ピーナッツや卵なども4-6ヶ⽉に開始 ・ヨーロッパ(2021 EAACI) ピーナッツや卵なども4-6ヶ⽉に開始 NIAID︓National Institute of Allergy and Infectious Diseases ASCIA︓Australasian Society of Clinical Immunology and Allergy AAAAI︓American Academy of Allergy, Asthma, and Immunology ACAAI︓American College of Allergy, Asthma & Immunology CSACI︓Canadian Society for Allergy and Clinical Immunology EAACI︓European Academy of Allergy and Clinical Immunology

#19.

ピーナッツアレルギーの予防︓⽇本ではどうするべき︖ ⽇本の授乳・離乳の⽀援ガイド(2019年改定)にピーナッツについての⾔及はない ⽇本のピーナッツアレルギー有病率から全員に指導する必要性は低いかもしれないが 少なくともアレルギーのリスクが⾼い⽅に情報提供は考慮するべきと考える 個⼈的には これらの要素があれば ① 親族のピーナッツアレルギー歴 ② 家族や⾝近な環境でのピーナッツ摂取 ③ 重度の湿疹や他の⾷物アレルギーの合併 ・4-6ヶ⽉からのピーナッツ摂取 ・⽣活環境からのピーナッツ排除 などを提案することが多い 当然ですが早期摂取する場合、粒のまま摂取することは危険 です スムースタイプのピーナッツバター/クリームを何かに溶かすのがおすすめです

クルミ・ナッツ類のアレルギーとその問題点

#20.

part.5 クルミ・ナッツ類 頻度 ⼩児の即時型⾷物アレルギーで 4番⽬に多い 検査 粗抗原 クルミ カシューナッツ コンポーネント Jug r 1 Ana o 3 ⽣活 アーモンド ハシバミ (ヘーゼルナッツ) 近年の低糖質などのブームで摂取する頻度が増えており、誤⾷も少なくない 特に洋菓⼦/和菓⼦やカレー、サラダ(ドレッシングを含む)などに注意する ナッツ類はひとくくりにされやすいが、分類学上は別物であり、評価が必要

#21.

ナッツ類の分類︓基本的に個別に評価が必要 ただ、クルミ・ピーカンナッツ、カシューナッツ・ピスタチオ は交差抗原性が⾼い → クルミが陽性ならピーカンナッツも除去、カシューナッツが陽性ならピスタチオも除去 マメ科 クルミ科 ウルシ科 ピーナッツ クルミ カシューナッツ (Ara h 2) (Jug r 1) (Ana o 3) ⼤⾖ ピーカンナッツ ピスタチオ バラ科 アーモンド カバノキ科 ハシバミ (ヘーゼルナッツ) 参考︓おいしく治す ⾷物アレルギー攻略本 改定第2版

#22.

ナッツ類のアレルギーが増えている要因と問題点 おそらく… 国内のナッツ類の消費量増加 POINT.1 ミックスナッツによる多種類の感作 ナッツ類はそれぞれ別の抗原ではあるが、家庭内で 乳児の⽣活環境中に ナッツ類の抗原量増加 経⽪感作 ミックスナッツを摂取している場合、多種類のナッツ に感作されていることも少なくない POINT.2 ピーナッツと⽐べて早期摂取が困難 ピーナッツはピーナッツバターを使⽤できるが、 ナッツ類は乳幼児には窒息などのリスクがあり、 アレルギーの増加 アーモンド飲料を除いて、予防的に摂取することや 負荷試験を⾏うことが現実的に難しい

食物アレルギーのまとめと参考文献

#23.

まとめと注意 今回は⾷物アレルギーの主な原因⾷物について特徴をまとめました 実際の専⾨外来では、おいしく治す⾷物アレルギー攻略法だけでなく 加⼯⾷品のアレルゲン含有量早⾒表など様々な資料を参考にして 栄養⾷事指導を⾏います なお、⾷べられるものの⽬安はあくまで ⽬安 であり、 基本的に重症度に合わせて、個々評価する必要があります

#24.

Take Home Message • 卵は 加熱 を意識する • ⽜乳・⼩⻨は タンパク質の含有量 に注意する • ナッツ類はそれぞれのナッツをしっかり評価しよう

#25.

参考⽂献 • ⾷物アレルギー診療ガイドライン 2021 • そのまま使える︕シーン別⾷物アレルギーの栄養⾷事指導 南⼭堂 • おいしく治す⾷物アレルギー攻略法 改定第2版 • Halken S, et al. Pediatr Allergy Immunol. 2021;32:843–858. • Fleischer DM, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2021; 9: 22-43.e4

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