#4.
part.1 ⼩児の気管⽀喘息とは ⼩児の気管⽀喘息の特徴 ・気道の慢性炎症 により、発作性に気道が狭窄し咳嗽や喘鳴、呼吸困難を繰り返す ・⼩児でも気道 リモデリング を認め、慢性炎症による不可逆的な変化を起こす ・成⼈と⽐較して アトピー型 が多く、特異的IgE抗体を⾼率に認める ・5歳以下は 乳幼児喘息 と呼ばれ、解剖学的・⽣理学的な違いに注意が必要 ・有病率は国内では横ばい〜低下傾向 ・ICSなど⻑期管理の普及に伴い、⼊院数や喘息死は顕著に減少 → 2017年に0-14歳の喘息死ゼロを達成、以後も⼀桁で推移
#5.
気管⽀喘息の診断 反復する典型的な喘息症状 喘息らしさ (喘鳴・咳嗽・呼気延⻑を伴う呼吸困難) 繰り返す・運動や⼤笑いで誘発される 夜間、早朝に悪化・感冒罹患後に遷延 気管⽀拡張薬や吸⼊ステロイド薬が有効 遷延性・慢性咳嗽 アレルギー疾患の既往歴・家族歴 気道過敏性を⽰す症状 呼吸の状態、β刺激薬への反応 ⾎液・⽪膚検査でのアレルギー評価 呼吸機能検査、可逆性試験 気道過敏性試験、FeNOなど 喘息以外を除外することも重要(例) 先天異常・発達異常 感染症 ・先天性⼼疾患 ・喉頭、気管軟化症 ・副⿐腔炎 ・細気管⽀炎 その他 気管⽀喘息と診断 ・声帯機能不全 ・胃⾷道逆流症
#6.
乳幼児喘息の診断 5歳以下の場合 5歳以下の場合 以下のいずれかを満たすもの ・24時間以上続く呼気性喘鳴を3回以上 ・β刺激薬吸⼊後に各症状が改善する β刺激薬に反応が乏しい場合 ・重症度に応じた⻑期管理を 1か⽉間 実施 診断的治療 で改善し、中⽌後に再燃する 乳幼児の特殊性 ・未熟性により解剖学的に 気道内径が狭い ・平滑筋が少なく、気道内分泌物は多い ・循環や換気の問題で低酸素⾎症になりやすい ・ウイルス感染による悪化・反復性の喘鳴あり 特に低年齢の RSウイルス や ライノウイルス 感染症は喘息発症のリスクが⾼い 診断や治療に悩むことも多く 「喘息の気がある」と表現 乳幼児喘息と診断 せざるをえない場⾯もあります
#7.
反復性喘鳴を持つ幼児の将来的な喘息発症の予測 API (Asthma Predictive Index) modified API ⼤基準 ・1年間に4回以上の喘鳴エピソード p 医師診断による両親の喘息既往 ⼤基準 p 医師診断による児のアトピー性⽪膚炎 p 医師診断による両親の喘息既往 ⼩基準 p 医師診断による児のアトピー性⽪膚炎 p 医師診断によるアレルギー性⿐炎 p 吸⼊アレルゲン感作 p ⾮感冒時の喘鳴 ⼩基準 p 末梢⾎好酸球増多(4%以上) p ⾮感冒時の喘鳴 ⼤基準 1項⽬、⼩基準 2項⽬以上で陽性 p 末梢⾎好酸球増多(4%以上) 確実な予測というわけではないが 将来的な喘息リスク があるかの参考になる p ⽜乳、卵、ピーナッツへの感作 ⼤基準 1項⽬、⼩基準 2項⽬以上で陽性
#8.
⼩児喘息の重症度分類 未治療患者はスライド13の分類を参考にするが、現在の治療に応じた 真の重症度 の把握が必要 現在の治療を考慮した重症度(真の重症度) ⾒かけの重症度 間⽋型 ・年に数回 咳嗽・軽度の喘鳴 ・β刺激薬吸⼊で短期間で改善 軽症持続型 ・⽉に1回以上、週に1回未満 ・時に呼吸困難を伴うが、⽇常は問題なし 中等症持続型 ・週に1回以上、毎⽇はない ・時に中・⼤発作、⽇常や睡眠に弊害 重症持続型 ・毎⽇発作あり ・週に1-2回 中・⼤発作になる 治療ステップ1 治療ステップ2 治療ステップ3 治療ステップ4 間⽋型 軽症持続型 中等症持続型 重症持続型 軽症持続型 中等症持続型 重症持続型 重症持続型 中等症持続型 重症持続型 重症持続型 最重症持続型 重症持続型 重症持続型 重症持続型 最重症持続型 例えば、LTRA定期服⽤中に⽉に1回以上の発作があれば、真の重症度は 中等症持続型
#9.
part.2 ⻑期管理について ⻑期管理の基本 ・気道炎症を抑制することで症状の改善、呼吸機能や気道過敏性の正常化 QOLを改善させ、寛解・治癒を⽬指すこと ・重症度に応じた薬物療法とともに増悪因⼦への対応、患者教育が必要 ⼩児の気管⽀喘息における主な⻑期管理薬(コントローラー) * テオフィリンは近年あまり使⽤されない ICS・ICS/LABA 抗ロイコトリエン拮抗薬 ⽣物学的製剤
#10.
⻑期管理のサイクル 治療管理⽬標の共有 ⻑期管理薬の決定 ⻑期管理薬での治療 セルフモニタリング 薬物療法を⾏うだけではなく 増悪因⼦の対応、患者教育、 パートナーシップ向上 などが 決定 調整 患者教育 増悪因⼦への対応 (環境整備・併存症治療) パートナーシップの獲得 喘息の⻑期管理に重要 治療 評価 重症度 増悪因⼦ コントロール アドヒアランス 副作⽤ 呼吸機能 特に、以下は注意して評価 ・コントロール状態 ・増悪因⼦ ・治療の副作⽤
#11.
⼩児喘息の⻑期管理プラン(5歳以下) ・ICS︓吸⼊ステロイド ・ICS/LABA︓吸⼊ステロイド/⻑時間作⽤性β刺激薬配合剤 ・LTRA︓ロイコトリエン受容体拮抗薬 治療ステップ4 治療ステップ3 治療ステップ2 治療ステップ1 基本 治療 追加 治療 ⻑期管理なし LTRA 下記のいずれかを使⽤ Ø LTRA 下記のいずれかを使⽤ 下記のいずれかを使⽤ Ø 中⽤量ICS Ø ⾼⽤量ICS (LTRAの併⽤も可) Ø 低⽤量ICS 基本治療の2剤併⽤ 上記にLTRAを併⽤し 以下に変更を考慮 Ø 低⽤量ICS/LABA 以下を考慮 Ø 中⽤量ICS/LABAに 変更 Ø ICSのさらなる増量 発作時の短期追加治療(2週間以内のβ刺激薬)、増悪因⼦への対応、患者教育、パートナーシップ アドエア® は ⽣後8か⽉ から適応あり使⽤可能、⽣物学的製剤は5歳以下では適応なし
#12.
⼩児喘息の⻑期管理プラン(6〜15歳) ・ICS︓吸⼊ステロイド ・ICS/LABA︓吸⼊ステロイド/⻑時間作⽤性β刺激薬配合剤 ・LTRA︓ロイコトリエン受容体拮抗薬 治療ステップ2 治療ステップ1 基本 治療 ⻑期管理なし 下記のいずれかを使⽤ Ø 低⽤量ICS Ø LTRA 治療ステップ4 治療ステップ3 下記のいずれかを使⽤ Ø 中⽤量ICS/LABA 下記のいずれかを使⽤ Ø 低⽤量ICS/LABA Ø 中⽤量ICS Ø ⾼⽤量ICS 以下の併⽤も可 Ø LTRA Ø テオフィリン 以下を考慮 追加 治療 LTRA 基本治療の2剤併⽤ 以下のいずれかを併⽤ Ø ⽣物学的製剤 Ø LTRA Ø ⾼⽤量 ICS/LABA Ø テオフィリン Ø ICSのさらなる増量 Ø 経⼝ステロイド薬 発作時の短期追加治療(2週間以内のβ刺激薬)、増悪因⼦への対応、患者教育、パートナーシップ ICS/LABAがICS増量の上に表記、⽣物学的製剤も追加治療の中で最も上に表記
#13.
2023年ガイドラインでの主な変更点 ・ICS/LABAの扱いが変更 ① アドエア® が⽣後8か⽉から使⽤可能と添付⽂書が変更され、保険適応となり、 5歳以下の治療ステップ3・4における追加治療 に追加された ② ICS増量による成⻑抑制などの副作⽤リスクから、6〜15歳の治療ステップ3・4では ICS増量よりLABAの追加 が同列〜上よりの表記に変更された ・⽣物学的製剤の新規薬剤(テゼペルマブ)追加と表記位置変更 ① テゼペルマブが12歳から使⽤できる新規⽣物学的製剤として追加された 主な特徴は好酸球数やFeNO、アレルゲン感作などの⽬⽴たない ⾮アレルギー性の喘息に対しても効果が期待できる点 ② 6〜15歳の治療ステップ4における追加治療の中で⼀番上での表記に変更された
#14.
⼩児喘息で使⽤可能な⽣物学的製剤 オマリズマブ メポリズマブ デュピルマブ テゼペルマブ ゾレア® ヌーカラ® デュピクセント® テゼスパイア® 作⽤機序 抗IgE抗体 抗IL-5抗体 抗IL-4/13抗体 抗TSLP抗体 投与間隔 2〜4週間毎 4週間毎 2週間毎 4週間毎 適応年齢 6歳以上 6歳以上 12歳以上 12歳以上 ⾃⼰注射 ◯ ◯ ◯ ✕ 投与量 体重・総IgE値 から設定する 6-12歳 40 mg 初回 600 mg 12歳以上 100 mg 以後 300 mg 体重 < 20 kg 総IgE >1500 IU/mL 好酸球数が⾼いほど効果を 期待できる は使⽤できない アレルギー性⿐炎と 蕁⿇疹にも適応あり 好酸球数 150 /μL 以上 2023年9⽉から ⽣後6か⽉以上の 重症アトピーにも適応 または 1年以内に300 /μL 以上 結節性痒疹、⿐茸を伴う 慢性副⿐腔炎に適応 コメント 210 mg 新規薬剤 2022年9⽉に承認 ⾮アトピー型喘息 への効果も期待 → 年齢の問題で オマリズマブ と メポリズマブ を総IgE値や好酸球数で使い分けることが多い
#15.
⻑期管理のポイント ⻑期管理のポイント ・アドヒアランスを向上できるよう患者指導と処⽅を⼯夫する 例︓適切な吸⼊器具の使⽤、1⽇1回製剤を活⽤するなど ・ピークフロー や JPAC喘息コントロールテスト 、可能なら呼吸機能やFeNOなど 客観的に評価できるパラメータを本⼈・家族とともに定期的に評価する ・悪化時には、喫煙や線⾹、アレルギー性⿐炎など増悪因⼦を確認する ・適応がある場合、スギや ダニ の ⾆下免疫療法 を積極的に導⼊する 患者指導にはアレルギーポータル( https://allergyportal.jp / )の 疾患情報や患者向け冊⼦などを紹介することもおすすめです
#16.
part.3 急性増悪(発作)への対応 急性増悪(発作)対応の基本 ・発作強度を速やかに判断し、迅速に治療を進める ・「家庭での対応」と「医療機関での対応」の違いを意識して指導する ・原因を検討し、適切な⽣活指導と⻑期管理の⾒直しを⾏う ⼩児の気管⽀喘息における主な急性増悪(発作)治療薬(リリーバー) 酸素投与 アスプール®持続吸⼊ *アスプール®︓イソプロテレノール β刺激薬(吸⼊・経⼝) 家庭でも可能 全⾝性ステロイド(経⼝・静注) ⼈⼯呼吸管理 医療機関での対応
#17.
家庭での対応 • 「強い喘息発作のサイン」を具体的に提⽰ • 患者ごとに症状悪化時の アクションプラン を提⽰する ・唇や⽖の⾊が⽩っぽい 強 い 喘 息 発 作 の サ イ ン ・息を吸う時に⼩⿐が開く ・息を吸う時に胸が凹む あり ・β刺激薬を吸⼊ ・苦しくて話せない ・必要に応じて救急⾞要請 ・息を吐く⽅が吸うより時間がかかる ・脈がとても速い ・歩けない ・横になれない、寝られない ・ぼーっとしている ・過度に興奮している ・速やかに医療機関を受診 なし 治療反応性をみて β刺激薬の ・吸⼊・内服の反復 吸⼊・内服 ・貼付薬の併⽤ ・医療機関を受診
#18.
医療機関での対応(① 発作強度の判定) ⼩発作 症状 主 要 所 ⾒ ⼤発作 呼吸不全 興奮 平静 興奮 錯乱 意識 清明 やや低下 低下 不能 会話 ⽂で話す 句で区切る 単語〜可能 起座呼吸 横になれる 座位を好む 前かがみ 喘鳴 軽度 著明 陥没呼吸 なし〜軽度 著明 チアノーゼ なし あり ⾝体所⾒ SpO2 参 考 所 ⾒ 中発作 ⾝体所⾒ PEF PaCO2 ≧ 96% 92〜95% ≦ 91% 呼気延⻑ 呼気時間が吸気の2倍未満 呼気時間が吸気の2倍以上 呼吸数 正常〜軽度増加 増加 吸⼊前 > 60% 30〜60% < 30% 吸⼊後 > 80% 50〜80% < 50% < 41 mmHg 減少または消失 41-60 mmHg 不定 測定不能 > 60 mmHg
#19.
医療機関での対応(② 薬物療法プラン) 発作強度 初期治療 追加治療 ⼩発作 β刺激薬吸⼊ β刺激薬吸⼊反復 中発作 酸素吸⼊ ⽬安︓SpO2 ≧95% β刺激薬吸⼊反復 ⼤発作 ⼊院・酸素吸⼊・輸液 ステロイド薬全⾝投与 ・β刺激薬吸⼊反復 ・アスプール®持続吸⼊ ステロイド薬全⾝投与 アスプール®開始・増量 (アミノフィリン点滴) (アミノフィリン点滴) ⼊院加療 ⼈⼯呼吸管理 呼吸不全 ⼊院・酸素吸⼊・輸液 ステロイド薬全⾝投与 意識障害があれば ⼈⼯呼吸管理 アスプール®持続吸⼊ アスプール®増量 アミノフィリン点滴 ⼈⼯呼吸管理 ・中発作では 努⼒呼吸が消失し、酸素が不要となれば1時間程の経過観察後に帰宅可 ・アスプール®持続吸⼊は、通常開始から 30分以内に効果が確認できる → 反応に乏しい場合は、速やかに ⼈⼯呼吸管理へ移⾏ する
#20.
Take Home Message • 乳幼児期は診断や評価が難しいが、慢性疾患としての 重症度に応じて 適切な治療ステップ を選ぼう • ⻑期管理は薬物療法以外に患者教育や治療⽬標の共有、 増悪因⼦への対応なども意識する必要がある • 急性増悪(発作)時の対応をしっかり個別で指導しよう