#4.
今日、いちばん伝えたいこと 同意書は、患者が理解して決めるためのものです。
署名をもらうだけのものでは、ありません。 「同意」とは、この道のりのことです 説明 › 理解 › 納得 › 決める 署名は、この道のりの、最後のしるしにすぎません。
#5.
署名について、もうひとつ 署名があっても、同意書の中身が不十分なら、
説明したことには、なりません。 中身が不十分な同意書にサインをもらっても、それだけで、法的に十分とはいえません。
#6.
はじめに 1 自己紹介を、少しだけ 武田美貴と申します。画像診断専門医として、CTやMRIを読影しています。いまは、医療事故の裁判で、患者側の協力医として、意見書を書いています。
これまでに携わった案件は、100件をこえました。裁判で、同意書があとからどう読まれるかを見てきた立場から、お話しします。 武田 美貴 合同会社ナルカス
#7.
はじめに 前回は、「訴えられないカルテ」でした 日々の診療を、どう記録に残すか。それが、前回のお話でした。
そのなかで、同意書にも、少しだけ触れました。様式のまま、追記がなければ、「聞いていない」と言われてしまいます。
今日は、その同意書を、くわしく取り上げます。
#8.
はじめに 2 今日話すこと 01 なぜ、説明義務違反に問われてしまうのか 02 同意書の内容は、具体的に 03 そして、同意の取り方 今日のセミナーのあとには、自分の同意書の、どこに手を入れればいいかが、分かります。
#9.
逆算 3 なぜ、説明義務違反に問われてしまうのか 医療の争いは、多くの場合、患者さんが亡くなったり、重い後遺症が残ったりしたときに起こります。
そのとき、同意書について問われるのが、説明義務違反です。 つきつめると、患者さんやご家族が、「説明を、聞いていない」。
あるいは、「十分に、理解していなかった」ということです。
#10.
逆算 同意書の作り方を、どちらから考えるか よくあるほう 「訴えられない同意書」を、作ろうとする この回のほう どういう同意書が説明義務違反に問われるかを知って、そうならないように作り込む 今日は、作り込むほうの話を、していきます。
#11.
内容 説明義務違反に問われる同意書には、共通点があります。 必要なことが、書かれていないことです。 では、必要なこととは、何でしょうか。
#12.
ここで一度、みなさんの現場を その同意書に、重大な合併症は書いてありますか。
めったに起きない合併症も、書いていますか。 手元の一枚を思い浮かべて、チャットで教えてください。
#13.
「めったに起きない」は、合併症が起きた途端、通じなくなります 説明のその場では、「めったに起きません」と言うと、患者さんは、深くは受け止めません。
ところが、実際に起きてしまえば、「めったに起きないと言いましたよね」と、問われます。
その人にとっては、確率は100パーセント。だから、めったに起きないことほど、きちんと説明しておきます。
#14.
内容 4 「検査の同意書」ではなく、たとえば「造影CTの同意書」 検査なら検査、手術なら手術と、ひとつの様式でまとめていないでしょうか。
造影CTには、造影CT専用の様式を。その検査で実際に起こることを、具体的に書けるようになります。
あとで、この同意書を評価するのは、協力医や弁護士、裁判官です。ざっくりした内容では、きちんと説明したかどうかを、判断してもらえません。
#15.
内容 5 作り込むとは、最悪とその頻度まで、書くことです 起こりうる合併症を、最悪まで書きます。造影剤なら、まれにショックで死亡することがある、というところまでです。
頻度の数字は、添付文書とガイドラインから入れます。
一般的な言葉で構いません。ただ、その検査や手術で実際に起こりうることまで書いて、はじめて説明したといえます。
#16.
内容 一行で、こんなに変わります ありがちな一行 「吐き気やかゆみが出ることがある、と説明。同意いただいた。」 作り込んだ一行 「まれにショックから死亡することがある、と頻度とともに説明。質問に答えたうえで同意いただいた。」 軽い副作用だけでは、足りません。最悪のことと、その頻度まで書いて、はじめて説明したといえます。
#17.
ここで一度、みなさんの現場を その同意書は、術式ごとに、分かれていますか。
それとも、どの手術・検査でも、同じ一枚ですか。 自分の科のものを思い浮かべて、チャットで教えてください。
#18.
内容 同じ術式でも、患者さんごとに、リスクは違います 年齢や、体の状態によって、起こりやすいことは変わります。たとえば、次のとおりです。 ・ 動脈硬化が強ければ、カテーテルのリスクが上がります。
・ 腎機能が低ければ、造影剤のリスクが上がります。
・ 高齢なら、合併症からの回復が、遅れます。 定型の文章のままでは、その人に固有のリスクは、書かれません。だから、その人に合わせたリスクを、書き足します。
#19.
内容 AIに作らせた同意書も、そのままでは、定型フォーマットと同じです いまは、同意書の文面も、AIで作れます。整った文章が、すぐに出てきます。
ただ、AIは、あなたの病院の事情も、その手術のことも、目の前の患者さんのことも、知りません。
出てきた文面を、そのまま貼る。それも、フォーマットのまま使うことと、同じです。
AIに作らせたものだからこそ、使う前に、病院の顧問弁護士などに、リーガルチェックをしてもらうことが望ましいです。
#20.
その署名は、何の記録ですか その場でもらった署名は、 説明を「聞いた」記録です。
患者さんが内容を理解して、自分で決めた記録では、ありません。
#21.
取り方 6 では、どうすれば、理解して決めてもらえるか それには、患者さんに、考える時間が、いります。
その場で一時間、二時間とかけられるなら、それでかまいません。でも、忙しい診療で、そうはいきません。
だから、その時間は、仕組みで補えます。たとえば、次のような形です。
#22.
取り方 7 仕組みの一例が、二段構えです あくまで一例です。できる形から、でかまいません。 1 前もって渡す 入院が決まった時点で → 2 持ち帰ってもらう 家で、調べて、家族とも相談 → 3 次に会って、聞く 質問はありませんか、と その場で署名まで、をやめてみる。この一手間で、変わります。 2から3を、チェックリストにしておけば、取り忘れがありません。渡すのは医師でなくても構いません。
#23.
現場から なぜ、持ち帰ってもらうのか 患者さんは実は、自分の病気を考える時間を、持てていません。
自分のことなのに。
「難しくて分かりません」「先生におまかせします」。
だから、考える時間を、こちらから渡すのです。
#24.
取り方 受けない、と決めたときも、同じです 「この手術は受けない」「この検査は受けない」 それも、患者さんが理解して決めたことです。
受けない、という結論だけでは、なぜそう決めたかが残りません。
受けない理由と、どうなったら受診してほしいか(例:歩けないほどの頭痛や嘔吐)まで、カルテに残します。 これは、前回お話しした「判断の理由を、一行残す」ことと、同じです。
#25.
ここで一度、みなさんの現場を その同意書、いつ渡していますか。 その場で、署名まで
説明して、そのままサインをもらう → 前もって渡して、あとで内容を確認
一度持ち帰ってもらい、次に会ったとき聞く みなさんは、どちらですか。チャットで教えてください。
#26.
記録 そして、説明したことは、カルテにも残します 署名だけでは、何を説明したかは、残りません。
説明した内容、患者さんが聞いてきたこと、それにどう答えたか。短くても、カルテに残します。
いつ、誰が説明したか。その日付も、あわせて残します。 ※ カルテそのものの残し方は、前回のセミナー(訴えられないカルテ)で、詳しくお話ししました。
#27.
帰結 争いになるのは、患者さんが納得できていないときです これまで見てきた争いで、足りなかったのは、多くの場合、患者さんの納得でした。
では、なぜ、納得しないまま、署名するのか。
内容を、理解できていないからです。
理解して、自分で決めていれば、結果が悪くても、争いには、なりにくくなります。 説明は、自分を守るためだけでは、ありません。
患者さんが、納得するための、ものです。
#28.
帰結 8 今日のまとめ 1 内容は、術式ごと・患者ごとに。最悪と、頻度まで、具体的に。 2 取り方は、二段構え。渡して、持ち帰って、もう一度聞く。 同意書は、患者が理解して決めるためのもの。
その作り込みと、二段構えが、患者さんを守り、あなたも守ります。
#29.
おわりに 同じ一手間が、患者さんの満足につながります。
その満足が、めぐって、訴訟の少ない医療につながります。 もし次の機会があれば、患者さんが自分で決めるインフォームドコンセントについて、お話しできればと思います。 Q & A ここからは、みなさんのご質問に、答えていきます。 武田 美貴(画像診断専門医/医療事故裁判の意見書作成) 合同会社ナルカス
#30.
Q & A いただいた質問に回答します 1/9 No. 質問 回答 1 病院の決まった同意書を使っているので、様式を変えられないのですが、患者さん固有のリスクについては、説明したうえでカルテに残すという対応でもよいのでしょうか。 カルテに残すという対応でもよいと思います。 ただ、まずは今使っている院内の同意書について、顧問弁護士などのリーガルチェックを一度受けてみてください。そこで「この部分は変えた方がよい」と言われれば、院内でも様式を見直すきっかけになると思います。 2 合併症をすべて同意書に書こうとするとかなり長くなってしまう場合も全部記載できる限り書くのがいいのでしょうか。 全部を細かく書こうとすると、どうしても長くなります。その中でも、頻度は少なくても重大な合併症については、ぜひ盛り込んでいただきたいと思います。 3 説明しても『先生にお任せします』『特に質問ありません』で終わる患者がいます。患者が本当に理解して決めたと言えるかは、先生ならどう確認、判断されますか? 「先生にお任せします」「特に質問はありません」と言われたこと自体は、そのまま記録してよいと思います。ただ、私はそこで終わらず、「大丈夫というのは、あなたにとってどういう状態ですか」「分からないというのは、どこが分からないですか」と少し掘り下げます。患者さん自身に言葉にしてもらうことで、私たち医療者との認識のずれが見えてくることがあります。 4 患者さんから特に質問がなかった場合、『質問なし』と書くこと自体には意味がありますか?それより、理解をどう確認したかまで残した方がよいのでしょうか? 「質問なし」と書いておくこと自体にも意味はあると思います。ただ、その時点では質問がなくても、後から疑問が出てくることがあります。私は「疑問が出てきたら、いつでも聞いてください」と伝えておいて、手術や検査の前などにもう一度「新しい質問はありませんか」と聞くのもよいと思っています。
#31.
Q & A いただいた質問に回答します 2/9 No. 質問 回答 5 同意書の説明をするときに、同意書のみではなくさらにカルテにまで記載するべきでしょうか。それとも追記の場合では同意書に追加で記載をすれば良いでしょうか。 カルテにも記載してください。 カルテ開示の際に、同意書が最初から開示資料の中に入っていないこともあります。ですので、同意書を使って説明したことや、患者さん固有のリスクについて説明したことは、カルテにも残しておくのがよいと思います。 6 説明を受けて怖くなる患者さんはいらっしゃると思います。ただ、その検査や治療をするメリットの方がリスクを上回る場合にも必要以上に怖くなってしまわれると患者さんの利益にもならないと思います。このような「正しく恐れる」ためのコミュニケーションはどうされていますでしょうか。 私は、必要以上に怖くなっても、それはそれでよいと思っています。隠さず説明したうえで、一度立ち止まって考えてもらうことが大切だからです。造影CTでも「怖くなりました」と言われたら、「では一度やめますか。帰って考えて、必要だと思ったらまた予約してください」とお話しすることがあります。大切なのは、きちんと知ったうえで決めてもらうことだと思います。 7 持ち帰る時間がない緊急時ではどのようにするべきでしょうか。 緊急時は、その場で必要な説明をして同意を取ることになります。ただ、そこで終わりにせず、患者さんの状態が落ち着いたら、もう一度きちんと説明してください。 緊急時の説明だけで完結させないことが大切だと思います。
#32.
Q & A いただいた質問に回答します 3/9 No. 質問 回答 8 本人が納得理解していても、家族が反対のときはどのように対応するのが良いでしょうか。もし本人が亡くなった場合には訴えてくるのは家族となるかと思われました。 だからこそ、時間がある場合には一度持ち帰って、家族で話していただくのがよいと思います。そして「家族と話しました」というだけでなく、誰と話したのか、長男なのか長女なのかなど、どの範囲のご家族と話し合ったのかまでカルテに残しておくとよいと思います。 9 ご提案いただいた二段構え、いい方法だと思う一方、対応が難しい状況もあろうかと思います。最低限どのあたりを抑えておくといいでしょうか? すべての施設で同じ形にするのは難しいと思います。だからこそ、どのタイミングで同意書を渡すのがよいかを施設ごとに考えて、仕組みにしていくことが大切です。施設の規模や運用によって違うと思いますので、トライアンドエラーで作っていくことをぜひ考えてみてください。 10 抗がん剤であれば同意書が必要となるかと思いますが、たとえばステロイドであれば同意書までとっていることが少ないとは思いますが、どの程度の薬剤から同意書が必要なのかどうか基準はあるのでしょうか。 明確な線引きをここで示すのは難しいですが、私はステロイドについても同意を取ることを考えてよいと思っています。 抗がん剤だけでなく、どの薬剤について同意を取った方がよいのか、一度施設の中で洗い出してみるのもよいと思います。 11 先日オンポンプの説明をせずにオフポンプの手術をしたということでニュースになりましたが、手術に関しても全ての選択肢を提示しなければいけないのでしょうか。 「すべての選択肢を必ず説明しなければいけない」とまでは、ここでは言い切れません。ただ、重大な手術であればあるほど、一度持ち帰って患者さん自身にも考えたり調べたりしてもらうことは大切だと思います。そこでオンポンプ、オフポンプなど疑問が出てきたら、その疑問をきっかけに説明を深めていくのがよいと思います。
#33.
Q & A いただいた質問に回答します 4/9 No. 質問 回答 12 緊急で当日にオペをしなければならない場合に同意書を取る場合、気を付けるべきことはございますでしょうか? 緊急時には、その場で必要な説明と同意を行います。ただし、状態が落ち着いた段階で、改めて通常の同意書を使って説明することが大切です。緊急時の説明だけで終わらせないようにしてください。 13 たとえば事前に説明動画を見てもらい、当日は患者さん固有のリスクの説明と質疑だけを医師が行うような運用は有効でしょうか? 動画を使うこと自体はよいと思います。ただ、本当に動画を見たか、理解できているかを確認する必要があります。 持ち帰ってご家族と一緒に見てもらって、次に来たときに確認するような形でもよいと思います。 14 自分が説明したことを短くカルテにまとめるのが苦手です。自分で思うポイントを全部書こうとすると長文になってしまいます。コツなどはありますか? まずは少しだけでも書いておくことが大切です。後から補足しても構いません。前回の講演でもお話ししましたが、サマリー形式でまとめておくと、後から読んだ人にも誤解が少ないと思います。 15 手術中の所見によっては、予定していなかった追加処置が必要になることがあります。このような可能性については、術前の同意書や説明でどこまで具体的に伝えておく必要がありますか。 事前に思い浮かぶ追加処置であれば、可能性が低くても「こういうことが起こる可能性があります」と一言説明しておくとよいと思います。事前には説明できなかったことについては、後から必ず説明してください。
#34.
Q & A いただいた質問に回答します 5/9 No. 質問 回答 16 軽い認知症があり、普通に会話はできても説明内容を十分理解できているか判断に迷う患者さんの場合、どの段階でご家族にも説明に入ってもらうのがよいでしょうか。 軽い認知症がある場合には、一度持ち帰っていただいて、ご家族と相談してもらうのがよいと思います。患者さんごとに意思決定能力を選別するのが難しいこともありますので、近いご家族にも一緒に説明を聞いていただくことを、ある程度ルーティンにしてもよいと思います。 17 治療を受けない理由も残すというお話がありましたが、患者さん自身が『なんとなく嫌』『もういいです』くらいしか理由を言わない場合、その言葉をそのまま残しておく、でよいでしょうか? 「なんとなく嫌」という言葉自体も大切ですが、私はそこで終わらず、「その“なんとなく”ってどういうことですか」「どの部分が嫌ですか」と聞くようにしています。少し言葉にしてもらうだけでも、患者さん自身が何を嫌だと思っているのか考えるきっかけになります。 18 同意書を取った場合、カルテにはどの程度記載すればよろしいでしょうか?すべて文字で起こす必要がありますでしょうか?それとも「同意書を使って説明、すべて同意された」等でもよろしいでしょうか? 「同意書を使って説明し、同意を得た」という程度の記載でもよいと思います。ただ、患者さんから質問があった場合には、何を質問されたのか、それにどう答えたのかまで簡単に書いておくと、よりよいと思います。 19 準委任契約というのは医師と患者本人のみに適応される契約になりますか?そこに家族や親戚はどこまで入るのでしょうか? 準委任契約自体は、基本的には医師と患者本人との間のものだと思います。 ただ、実際に患者さんが亡くなられた後などに訴えたりクレームを言ったりするのは、ご家族であることが多いです。その意味では、患者さん本人だけでなく、その後ろにご家族がいることも含めて考えておいた方がよいと思います。
#35.
Q & A いただいた質問に回答します 6/9 No. 質問 回答 20 家族がいない方の場合、友人、会社関係者等の肉親以外であっても付き添い者がいればその方にもご署名いただいたほうがよいでしょうか。 友人や会社関係者に署名してもらうというのは、私は避けた方がよいと思います。 家族がいない場合には、ケースワーカーや行政、成年後見人などに相談して、どう進めるかを考えていくのがよいと思います。 21 患者さんの意思決定能力をどのように判断したらよいでしょうか? 意思決定能力を患者さんごとにきれいに選別するのは、実際には難しいと思います。ですので、迷うケースだけを選ぶのではなく、近いご家族にも一緒に説明を聞いていただくことを仕組みにしてしまうのも一つの方法だと思います。 22 問題、特に合併症が発生してしまった後の対応について、どのように対処すればよいか、フローチャートなどはありますでしょうか。 私は特定のフローチャートは作っていません。 合併症が起きた場合、同意書に記載していた合併症であれば、まず患者さんの状態が落ち着いた段階で改めて説明すればよいと思います。もし事前に説明していなかった低頻度の合併症であれば、「非常に低い確率でしたが、今回起きました」と、可能であれば2%、3%など具体的な頻度も示して説明すると、患者さんにも伝わりやすいと思います。 23 緊急時の話になりますが、処置や検査のメリットとデメリットの両方を患者と家族に説明して、それでも患者と家族がやるかどうか判断していただくのが現実的な運用になると感じます。合併症を含めたデメリットをすべて説明するのは難しいと感じます。どうでしょうか? 緊急時でも、治療すれば必ず元の状態に戻るわけではない、ということは説明しておいた方がよいと思います。たとえば救命できても機能が落ちたり、リハビリが必要になったりすることがあります。事前に予測できることについては、できる範囲で説明しておくことが大切です。
#36.
Q & A いただいた質問に回答します 7/9 No. 質問 回答 24 刑事でも民事でも同意書など注意するべきポイントは同じと考えてよろしいでしょうか。 私は刑事事件は扱っていないので、そこは断定できません。ただ、まず民事で問題にならないようにきちんと対応していくことが大切だと思います。民事で適切にできていれば、同意書について注意する基本的なポイントは大きくは変わらないと私は考えています。 25 高齢者など、認知機能の低下した患者様だと、リスクの説明を理解しきれなくて、不必要に怖がってしまい、認知の修正もとても難しいケースが少なくありません。ご家族のみに説明したりするのでしょうか? またご家族はいても疎遠だったり、行政の担当者が誰もついていないようなケースでは対応に悩みます。 ご家族だけに説明するのではなく、ご本人にも説明します。 その結果、怖くなって治療を受けないと決めたとしても、それもご本人の意思です。一度持ち帰ってご家族と話していただくのがよいと思います。身寄りや支援者が乏しい場合には、ケースワーカーや成年後見人などに相談し、誰に相談してどのような回答だったのかもカルテに残しておくとよいと思います。 26 患者さんによって通常よりリスクが高いことは分かっていても、その患者さんで実際にどの程度リスクが上がるのか、数字では示せない場合は、どのように説明・記録しておくのがよいでしょうか。 数字で示せない場合は、言葉で説明すればよいと思います。 たとえば高齢だから回復が遅くなる可能性があるとしても、「何%遅くなります」とまでは言えません。それでも「高齢なので回復に時間がかかる可能性があります」と、その患者さんについて予測できることを具体的に説明して記録しておくことが大切です。
#37.
Q & A いただいた質問に回答します 8/9 No. 質問 回答 27 集中治療緩和での積極的抜管などのガイドラインが更新されましたが、実際そのガイドライン通りの運用で問題なしと考えて行動して良いのでしょうか。裁判での前例がないとやはり変わるのが難しいように思ってしまいます。 ガイドラインが出ているのであれば、まずはそのガイドラインを遵守する形でよいと思います。 私たち協力医が後から評価するときも、「その時点のガイドラインではどうなっていたか」というところを見ますので、まずはそこを基準に考えるのがよいと思います。 28 ケースワーカーや成年後見人も医療に関する意思決定には関わらないケースが多いように思いますが、身寄りのないお年寄りで認知機能低下がある場合はどうされていますか? ケースワーカーや成年後見人に医療の意思決定そのものをしてもらうというより、「この場合、誰に相談して、どう進めればよいでしょうか」と相談することが大切だと思います。そして、誰に相談して、どのような回答を得たのかまでカルテに残しておくとよいと思います。 29 定型説明は動画で行う施設も増えていると思いますが、その内容理解確認はどのように行うのがよろしいでしょうか?できれば定型説明は動画、患者個別のリスク説明などを対面で行いたいです。 簡単なQ&Aやクイズを入れて、動画の内容を理解できているか確認する方法はよいと思います。 たとえば「動画では食事は何時間前までと言っていましたか?」というように、動画で説明した内容を患者さん自身に答えてもらう方法です。 30 「同意書に線を引くことで説明した証になる」という話を聞いたことがありますが、真実ですか?全文引くこともできないので、要所だけ引けば良いですか? 線を引くこと自体は、説明したことを示す一つの方法にはなると思います。ただ、全文に線を引いたり、最初から下線を印刷しておいたりするのは、あまり意味がないと思います。 それより、その患者さん固有のリスクを一言追加したり、それについて説明したことをカルテに残したりする方がよいと思います。