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急性腹症のCT

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73

急性腹症のCT

投稿者プロフィール
新米外科医

信州大学医学部附属病院

62,114

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概要

急性腹症のCT

本スライドの対象者

研修医

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テキスト全文

急性腹症のCTにおける基本概念と検査方法

#1.

急性腹症のCT

#2.

  Air 遊離ガス (肺野条件F5を並べて検索する、気胸・後腹膜気腫も一緒に確認)   Bowel 腸管 (腸管拡張:小腸3・結腸6・盲腸9cm以上、先細り像の有無)   Dirty fat 脂肪織濃度上昇 (左右差がないか確認する、加えて腹水などの液体貯留も)   Obturator 閉鎖孔ヘルニア (痩せてる女性の腸閉塞で要注意、鼠径部も確認)   Mune 肺・心臓 (下肺野は肺野条件F5で気胸・胸水を検索、心臓は心嚢水の有無)   Ischemic 腸管虚血 (疑わしければ造影されている腸管と比較、早期後期の比較も)   Nephro 腎臓・尿路 (尿管結石・腎盂拡張の有無を確認、腎梗塞による造影不良領域)   Artery 大動脈・SMA解離/塞栓 (偽腔形成、SMAの分枝が追えるか)   Lady 婦人科疾患 (卵巣の造影不良、周囲の脂肪織濃度上昇があるか) 急性腹症のCT:ABDOMINAL ※腹腔内液体貯留のCT値 腹水:0-15HU 血性腹水:20-40HU 血腫・凝血塊:40-70HU 活動性出血:85-350HU 肺野条件・単純・造影早期・造影後期 並べて読影 4画面モードで[Shift]を押しながら各画面を選択 → スクロールが連動する

69歳女性の症例と腹部膨満の評価

#3.

69歳 女性 主訴:倦怠感 既往歴 慢性腎不全(血液維持透析導入後) 重症下肢虚血(右大腿切断、左下肢ステント留置) 虫垂炎 内服歴 クロピドグレル ネキシウム 他 腹部膨満 臍左側~下腹部に 圧痛あり

#4.

69歳 女性 主訴:倦怠感 腸閉塞の疑いで 当科にコンサルテーション 腹部膨満 臍左側~下腹部に 圧痛あり

腹部CT画像の解析と麻痺性イレウスの診断

#5.

画像 腹部CT (単純・造影)

#6.

※ 既に血液透析を導入されている患者では造影CTを施行して構いません。 以前に使用されていた高浸透圧性造影剤の場合は血管内容量増大に伴う 心不全などのリスクがあり検査後に緊急透析を行われていたようですが、 最近は低浸透圧性造影剤なのでそのようなリスクは少なく、 透析スケジュールは変更不要とされています。 Supplement

#7.

画像 小腸拡張あり 小腸ガス多量 造影不良腸管なし 閉塞機転なし

#8.

画像 麻痺性イレウスの診断で内科で入院加療。

入院後の経過と敗血症性ショックの可能性

#9.

入院後経過 軽度不穏状態 ↓ 意識障害・血圧低下 ↓ 下顎呼吸出現 ↓ 心肺停止 ↓ 死亡確認

#10.

入院後経過 麻痺性イレウス ↓ 腸管内圧上昇 ↓ Bacterial translocation ↓ 敗血症性ショック ?

再読影と十二指腸潰瘍穿孔の疑い

#11.

再読影

#12.

画像 肺野条件(F5) → air ?

#13.

画像 後腹膜気腫

#14.

画像 十二指腸 十二指腸潰瘍穿孔の疑い

#15.

診断 十二指腸潰瘍穿孔の疑い

反省点と腸閉塞の診断過程

#16.

反省点 後腹膜気腫を特定できなかった。

#17.

反省点 理由は…?

#18.

反省点 腸閉塞の疑いでコンサルト ↓ ↓ ↓ 画像所見、疼痛部位も腸閉塞を示唆 ↓ ↓ ↓ 麻痺性イレウスの診断で保存加療 拡張した腸管、閉塞機転、造影不良を 探す“モード”になっている。 他疾患の可能性を検索する読影を していない。

腸閉塞の疑いに関する画像所見の重要性

#19.

画像 腸閉塞の疑いでコンサルト → 画像所見、疼痛部位も腸閉塞を示唆。

#20.

画像 肺野条件(F5)で確認すれば後腹膜気腫を同定できた可能性がある。

後腹膜気腫の特定と麻痺性イレウスの考察

#21.

Air 遊離ガス (単純CT&F5で検索、気胸・後腹膜気腫も一緒に確認) Bowel 腸管 (腸管拡張:小腸3・結腸6・盲腸9cm以上、先細り像の有無) Dirty fat 脂肪織濃度上昇 (左右差がないか確認する、加えて液体貯留も) Obturator 閉鎖孔ヘルニア (痩せてる女性の腸閉塞で要注意、鼠径も確認) Mune 肺・心臓 (下肺野は単純CT&F5で検索、心臓は心嚢水の有無) Ischemic 腸管虚血 (疑わしければ造影されている腸管と比較する) Nephro 腎臓・尿路 (尿管結石・腎盂拡張の有無を確認、腎梗塞も) Artery 大動脈・SMA解離/塞栓 (偽腔形成、SMAの分枝が追えるか) Lady 婦人科疾患 (卵巣の造影不良、周囲の脂肪織濃度上昇があるか) 急性腹症のCT:ABDOMINAL ※腹腔内液体貯留のCT値 腹水:0-15HU 血性腹水:20-40HU 血腫・凝血塊:40-70HU 活動性出血:85-350HU

#22.

画像 右後腎傍腔の液体貯留・少量気腫を認めている。

#23.

考察 ・腸閉塞の疑いでコンサルテーションされ、臨床症状と  画像所見で麻痺性イレウスと診断した。 ・麻痺性イレウスの原因を透析患者に度々生じる腸管麻痺  と判断し、画像中に原因がないか検索する必要があった。 ・肺野条件でairを検索していれば後腹膜気腫を特定できた  可能性があった。

急性腹症CT読影の重要なポイント

#24.

Take home message ・コンサルテーションの時点でバイアスが生じている。 ・急性腹症のCT読影において、ルーチンで肺野条件下の  読影をする必要がある。 ・腹腔内のfree airのみならず、後腹膜気腫や気胸がないか。 ・主訴と疾患像が一致しないことがあるので注意が必要。  (特に血液維持透析患者、糖尿病患者)

#25.

肺野条件・単純・造影早期・造影後期 並べて読影が大事 肺野条件 単純 造影早期 造影後期 Take home message

#26.

4画面モードで[Shift]を押しながら各画面を選択→スクロールが連動する 肺野条件 単純 造影早期 造影後期 Take home message

救急医療における画像診断の意義と注意点

#27.

Supplement 日本医療安全調査機構 医療事故調査・支援センター 医療事故の再発防止に向けた提言 第8号 救急医療における画像診断に係る死亡事例の分析 【救急医療における画像診断の意義】 救急医療における画像検査は確定診断を追求することより、緊急性の高い死につながる疾患(killer disease)を念頭において読影することが重要である。特に、頭部外傷による少量の出血、大動脈瘤切迫破裂や大動脈解離の画像所見、腸管穿孔による遊離ガス像に注目する。

#28.

Supplement 日本医療安全調査機構 医療事故調査・支援センター 医療事故の再発防止に向けた提言 第8号 救急医療における画像診断に係る死亡事例の分析 【救急医療における画像診断】 知識と技術の不足が画像診断の見落としにつながるだけでなく、『既存の疾患や患者の主訴のみに注目してしまう』『症状が典型的でない』『症状が軽度である』『症状が一時的に軽快する』などの理由で積極的にkiller diseaseを探しにいくという姿勢を忘れることが見落としにつながる。

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