テキスト全文
プライマリケア医のための糖尿病診療のポイントと自己紹介 #1.
船橋市立医療センター 代謝内科
岩岡 秀明
2019年9月22日 日本プライマリ・ケア連合学会 大阪
プライマリ・ケア医のための 糖尿病診療のポイント #2.
自己紹介
1956年(昭和31年) 東京都台東区西浅草生まれ
1975年(昭和50年) 開成高校卒業
1981年(昭和56年) 千葉大学医学部卒業
2002年〜 船橋市立医療センター内科勤務
2012年〜 千葉大学医学部臨床教授を併任
#3.
資格・専門 日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本糖尿病学会専門医・研修指導医
日本糖尿病学会学術評議員
日本内分泌学会内分泌代謝専門医
千葉大学医学部臨床教授
医学博士
専門は糖尿病および内分泌疾患の臨床
主な編著書(現在までに全9冊を刊行)
「プライマリ・ケア医のための糖尿病診療入門」日経BP社 2018
「ここが知りたい!糖尿病診療ハンドブック Ver.4」 中外医学社 2019
「ここが知りたい!内分泌疾患診療ハンドブック Ver.2 」 中外医学社 2018
糖尿病治療の目標と慢性合併症の概要 #4.
糖尿病治療の目標 日本糖尿病学会 健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持、
健康な人と変わらない寿命の確保 糖尿病性細小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害)および動脈硬化性疾患(虚血性心疾患、脳血管障害、閉塞性動脈硬化症)の発症、進展阻止 血糖、血圧、体重、血清脂質の
良好なコントロール状態の維持 #6.
糖尿病腎症に起因する透析
年間導入件数:約16,000人2 糖尿病網膜症
年間失明者数:約3,000人2 心血管障害*
イベント発症率:
年間1,000人あたり17.2人3 糖尿病足病変
年間下肢切断数:約3,000人2 1. 厚生労働省: 平成24年国民健康・栄養調査.
2. 金藤 秀明. プラクティス 2014; 31: 145-147.
3. 門脇 孝 ほか. テーラーメイド糖尿病診療ガイド, 南山堂, 2011. P4. 2型糖尿病は細小血管および大血管合併症の主要かつ独立したリスク因子です 糖尿病患者数:950万人1 * 心血管障害:虚血性心疾患、脳血管障害 糖尿病特有の合併症とその影響 #7.
糖尿病に特有の3大合併症 神経障害
足の痛み、しびれ、感覚がにぶい、
便秘、下痢、立ちくらみ
網膜症
ものがみえにくい
腎症
タンパク尿、腎不全(むくむ、尿が作られない)
し
め
じ #8.
合併症では「えのき」も重要! え 壊疽
の 脳梗塞
き 狭心症(虚血性心疾患)
「しめじ」は細小血管障害
「えのき」は大血管障害 #9.
「しめじ」と「えのき」の違い! 「しめじ」= 細小血管障害
血糖コントロールが最も重要。
「えのき」= 大血管障害
血糖コントロール以上に、
高血圧のコントロール
脂質異常症のコントロール
禁煙
が重要。
#10.
その他の合併症 認知症も増える。
趣味を持ち、よく歩き、よく笑う。
感染症(肺炎など)になりやすく、治りにくくなる。
うがい、手洗い。
インフルエンザワクチン、肺炎球菌
ワクチンを接種する!
がん
歯周病 糖尿病とがん、急性合併症のリスク #11.
日本人糖尿病の死因1位は悪性新生物,2位は感染症 2001年から2010年までの10年間での日本人糖尿病の死因を分析した結果が2016年に発表された。
この報告によると,全症例45,708名中,死因の第1位は悪性新生物の38.3%
であり,第2位は感染症の17.0%で,第3位は血管障害(慢性腎不全,
虚血性心疾患,脳血管障害)の14.9%であった。
欧米先進国では,糖尿病患者の死因の第1位は虚血性心疾患だが,
日本人糖尿病患者にとっては,悪性新生物と感染症のほうが、血管障害より
も死因として多いのである。
#12.
糖尿病とがん 日本人糖尿病でのがん発症リスクは1.2倍。
特に、膵臓がん1.85倍、肝がん1.97倍、大腸がん1.40倍に注意。
その原因として、インスリン抵抗性による高インスリン血症が考えられている。
がん検診(人間ドック等)もお勧めする。
血糖コントロールが急に悪化した場合は、がんの併発も疑う。
#13.
日常診療で、がんを疑う場合 日常診療では,以下のようながんを疑わせるような症状がある場合には,適切な検査を行う.
急な血糖コントロールの悪化や糖尿病の発症時
理由のない体重減少
貧血の進行
便通異常
原因不明の発熱や疼痛
異常な倦怠感
頻度の高いがんを中心にチェックするため、腹部エコー・腹部CTスキャン(膵臓癌、肝臓癌)、便潜血・大腸内視鏡(大腸癌)から、検査を予定する。
#14.
糖尿病の急性合併症
特に、DKAと劇症1型糖尿病について
糖尿病ケトアシドーシス(DKA)の重症度と治療 #15.
15 糖尿病患者の不定愁訴に御用心 軽症に見える重症あり!
血管閉塞
急性心筋梗塞、脳梗塞、腸間膜動脈閉塞
感染症
肺炎、尿路感染、胆のう炎、蜂窩織炎
無痛性心筋梗塞が多い!
こめかみから心窩部まで、どんな訴えでも必ず心電図をチェックする(歯痛、顎痛、のどがつまる、胃が痛い等・・・). 15 #16.
16 感染症 感染防御能の低下,重症化,発見の遅れがある
肺結核(結核患者の14%が糖尿病)
肺結核は、どの区域にもおきる!
単純X線撮影でガスを探せ!
気腫性胆のう炎、気腫性腎盂腎炎
壊死性筋膜炎Fournier’s Gangrene(フルニエ壊疽)(陰嚢や会陰部に生じた壊死性筋膜炎)嫌気性菌(非クロストリジウム性ガス壊疽)を含む混合感染を考えて抗生剤投与すぐに外科的処置のコンサルテーションDIC、急性腎不全対策が重要 16 #17.
17 Figure 1 Photograph of patient's scrotum showing scrotal wall edema and skin discoloration Fournier’s Gangrene(フルニエ壊疽) #18.
18 糖尿病ケトアシドーシス(DKA) 極度のインスリン欠乏,インスリン拮抗ホルモンの増加
高血糖(≧250mg/dl),高ケトン血症(3‐ヒドロキシ酪酸の増加),アシドーシス(pH<7.3,HCO3-<18mEq/l)
迅速な初期治療の開始が必要
十分な輸液と電解質の補充,インスリンの投与
生理食塩水点滴
カリウムの補充
インスリンの少量持続静注(0.1単位/kg/h)
重炭酸によるアシドーシスの補正はpH7以上では不要 #19.
糖尿病ケトアシドーシス(DKA)の重症度 DKAの重症度は、血糖値とは関係無く、意識障害の程度とpHで決まる!
pH7.0未満は重症DKA !
19 DKAの治療ポイントと予防策 #20.
DKA の重症度分類 (ADA) 軽症 中等症 重症
血糖値 250以上 250以上 250以上
pH 7.25〜7.30 7.0〜7.25未満 7.0未満
意識レベル 清明 清明/ 傾眠 混迷/昏睡 20 #21.
成人DKA治療のポイント(ADA :米国糖尿病協会) 1)生理食塩水による脱水の補正
生理食塩水1.0L/hr(15-20ml/kg/hr)で開始
2)インスリンの持続静注(シリンジ・ポンプ)
ノボリンR 0.1/U/kg/hr insulin infusion
血糖値が50~70mg/dl/hrで低下しない場合、イン スリン量を2倍にする。
血糖値が250mg/dlになったら、輸液を5%ブドウ糖 +0.45%NaClに変更し、インスリン量を半減。 #22.
成人DKA治療のポイント(ADA : 米国糖尿病協会 ) 3)カリウムの補充(治療開始時)
K>5mEq/L Kは補充せず、2時間毎にKチェック
3.3<K<5 20~30mEq/LでKを補充
K4~5mEq/Lをキープする
K< 3.3 インスリンの投与は差し控え、 40mEq/L/hrでKを補充 する
(K>3.3となるまで) #23.
成人DKA治療のポイント(ADA :米国糖尿病協会) 4) 重炭酸(メイロン)補充の評価
pH>7.0 重炭酸は不要
pH 6.9~7.0 50mmol+200mlH2Oを
1時間で点滴
PH<6.9 100mmol +400mlH2Oを
2時間で点滴
5) 感染症の評価と治療 #24.
ケトーシスのうちに見つけて、DKAにしないように! 糖尿病患者の全身倦怠感、食欲不振、腹痛、悪心・嘔吐は、まずケトーシスを疑え!
尿ケトンのチェックを!
検尿(テステープ)
糖(2+~3+)かつケトン(1+~3+) →動脈血ガス分析HCO3- ≧ 15以上・・糖尿病性ケトーシスHCO3- < 15未満・・糖尿病性ケトアシドーシス
急性腹症で来院することあり
24 SGLT2阻害薬の使用と注意点 #25.
SGLT2阻害薬によるDKA SGLT2阻害薬によるDKAも報告されているので、要注意!
(極端な糖質制限食との併用)
血糖値が正常に近くてもケトアシドーシスの可能性がある。特に、全身倦怠・悪心嘔吐・体重減少などを伴う場合には血中ケ トン体を確認する。
SGLT2阻害薬投与に際しては、インスリン分泌能が低下している 症例への投与ではケトアシドーシスの発現に厳重な注意が必要である。
同時に、栄養不良状態、飢餓状態の患者や極端な糖質制限を行っている患者に対するSGLT2阻害薬投与開始やSGLT2阻害薬投与時の口渇に伴う清涼飲料水多飲は、ケトアシドーシスを発症させうるので一層の注意が必要である。 #26.
SGLT2阻害薬が、2018年12月から1型糖尿病にも認可された!(スーグラ、フォシーガ) 特に、正常血糖ケトアシドーシス(euDKA)
に注意する!
本剤を内服中で、強い全身倦怠感、悪心・嘔吐、腹痛などがあれば、たとえ血糖値が150mg/dLくらいでも、必ず血中ケトン体、PHを測定する! 26 #27.
SGLT2阻害薬の1型糖尿病への使用は慎重に! 南昌江内科クリニック
「1型糖尿病患者へのSGLT-2阻害薬処方基準」
1.BMI:22以上2. 年齢:20歳以上、75歳未満(妊娠可能年齢の女性は原則除外)3. インスリンの打ち忘れがない。4. 血糖測定(SMBG、CGM)を怠っていない。5. 糖質制限を行っていない。6. 糖尿病性ケトアシドーシスの症状および予防法が十分に理解できている。7. 体調不良時はケトン体チェックあるいは速やかな来院ができる。※リブレ使用者には薬局でケトン体電極自費購入を勧める。8. 認知症がない。9. アルコール多飲、違法ドラッグの使用がない。
※長時間の有酸素運動をされる際にも、糖質必要量を充たせずにアシドーシスの危険性が高まるので中止したほうが望ましいです!
27 #28.
免疫チェックポイント阻害薬使用患者における1型糖尿病の発症に関する Recommendation 2016年5月18日 日本糖尿病学会 免疫チェックポイント阻害薬として承認されているヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体ニボルマブ(オプジーボ®)を2014年7月4日から2016年3月31日までに使用した推定4888名中12名(0.25%)が、1型糖尿病を発症したことが報告された。
劇症1型糖尿病も、急性発症1型糖尿病も、発症している。劇症1型糖尿病は、発症後直ちに治療を開始しなければ致死的な疾患であるため、 疾患の存在を想定し、早期に発見して適切な対処を行うことが必要である。
28 #29.
免疫チェックポイント阻害薬使用患者における1型糖尿病の発症に関する Recommendation 2016年5月18日 日本糖尿病学会 そこで日本糖尿病学会では、免疫チェックポイント阻害薬投与患者における 1型糖尿病発症に対応するため、以下の方法を推奨する。
1. 投与開始前、及び投与開始後来院日毎に、高血糖症状の有無を確認し、血糖値を測定する。
2. 測定値は当日主治医が確認し、高血糖症状を認めるか検査に異常値(空腹時126 mg/dl以上、あるいは随時200 mg/dl以上)を認めた場合は、可及的速やかに糖尿病を専門とする医師(不在の場合は担当内科医)にコンサルトし、 糖尿病の確定診断、病型診断を行う。
3. 1型糖尿病と診断されるか、あるいはそれが強く疑われれば、当日から糖尿病の治療を開始する。
29 #30.
免疫チェックポイント阻害薬使用患者における1型糖尿病の発症に関する Recommendation 2016年5月18日 日本糖尿病学会 4.患者には、劇症1型糖尿病を含む1型糖尿病発症の可能性や、注意すべき症状についてあらかじめ十分に説明し、高血糖症状(口渇、多飲、多尿)を自覚したら予定来院日でなくても受診または直ちに治療担当医に連絡するよ う指導しておく。
5.該当薬の「適正使用ガイド」に、過度の免疫反応による副作用が疑われる場合に投与を検討する薬剤として記載されている副腎皮質ホルモン剤は、免疫チェックポイント阻害薬による1型糖尿病の改善に効果があるというエ ビデンスはなく、血糖値を著しく上昇させる危険があるため1型糖尿病重症化予防に対しては現時点では推奨されない。また、他の副作用抑制のために ステロイド剤を投与する場合は、血糖値をさらに著しく上昇させる危険性があるため、最大限の注意を払う。
30 劇症1型糖尿病の診断基準と症例 #31.
免疫チェックポイント阻害薬使用患者における1型糖尿病の特徴 日本糖尿病学会の委員会が、抗PD-1抗体使用後に1型糖尿病を発症した22例を分析した最新の報告によると、11例(50%)は劇症1型糖尿病の診断基準を満たし、残りの11例は急性発症型の診断基準を満たした。
平均年齢は63歳で、抗PD-1抗体の投与開始から発症までは平均115日間で、13日から504日間であった。インフルエンザ様症状は27.8%に、腹部症状は31.6%に、意識障害は16.7%に認められた。
平均血糖値±SDは617±248mg/dl、HbA1cは8.1 ± 1.3%、尿中CPRは4.1 (1.4–9.4) μg/day, 空腹時血中CPRは 0.46 (0.20–0.70) ng/mlであった。
20例中17例(85.0%)はケトーシスとなり、18例中7例(38.9%)はケトアシドーシスをきたした。
19例中10例(52.6%)は、発症時に少なくとも1つの膵酵素が上昇していた、7例中2例は発症前から膵酵素が上昇していた。
抗体GAD抗体が陽性だったのは、21例中1例だけであった。
31 #32.
32 1型糖尿病の分類 発症様式から
1) 急性発症型
2) 緩徐進行型(SPIDDM)
2型の臨床像で発症する患者のうち約5%は、
数年(平均3年間)でインスリン依存状態に進行する。
3) 劇症型
成因から
1) 自己免疫性(1A)
2) 特発性(1B)
32 #33.
33 劇症1型糖尿病の診断基準(2012) 下記1~3のすべての項目を満たすものを劇症1型糖尿病と診断する
1.糖尿病症状発現後1週間前後以内でケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る
(初診時尿ケトン体陽性、血中ケトン体上昇のいずれかを認める。)
2. 初診時の(随時)血糖値が288mg/dl (16.0mmol/l) 以上であり、かつHbA1c値<8.5%である
3.発症時の尿中Cペプチド<10μg/day、または、空腹時血清Cペプチド<0.3ng/ml かつ グルカゴン負荷後(または食後2時間)血清Cペプチド<0.5ng/ml である
<参考所見>
A) 原則としてGAD抗体などの膵島関連自己抗体は陰性である
B) ケトーシスと診断されるまで原則として1週間以内であるが、1~2週間の症例も存在する
C) 約98%の症例で発症時に何らかの血中膵外分泌酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1など)が上昇している。
D) 約70%の症例で先行感染症状(発熱、上気道炎症状、消化器症状など)を認める
E) 妊娠に関連して発症することがある
33 #34.
34 急性発症型と劇症型との比較 病型 急性発症型 劇症型
診断までの期間 数週間 数日
発症時HbA1c 著明上昇 正常~軽度上昇
膵外分泌酵素 正常 上昇
尿中CPR 10μg/day以上 10μg/day未満
発症時の
アシドーシス ± 必発
ICA,GAD抗体 +(時に-) -
頻度 60% 20%
血糖コントロール 比較的容易 困難
34 #35.
35 劇症1型糖尿病の症例 20代女性
主訴
悪心・嘔吐、口渇、呼吸困難
現病歴
200X年X月5日より、心窩部痛、食欲低下、微熱が出現。
7日 38.9度の発熱、性器出血
8日 近医産科にて妊娠第5週切迫流産の診断
9日 流産のため子宮内容除去術を施行
10日 悪心・嘔吐、呼吸困難が出現
12日 午前2時頃、当センター救急外来を受診。急性胃腸炎、過換気症候群の診断で一旦帰宅するも、午前9時、症状増悪し再受診。
既往歴
3歳:特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
35 #36.
36 入院時現症および検査所見 入院時身体所見 意識 E3V4M6・・・「もうろう」状態
BP115/58mmHg HR130/min RR34/min 体温 35.7℃
入院時検査データ
血算: WBC 47800/μl PLT 41.9×104
生化学:血糖 978mg/dl HbA1c 5.5%
Na 120mEq/l K 8.3mEq/l
BUN 49mg/dl Cr 1.37mg/dl
血液ガス:pH 6.986
PaCO2 9.2mmHg
HCO3- 2.1mmol/l
BE -27.7mmol/l
胸部X線写真
左下肺野に肺炎像
ECG
T波増高 36 糖尿病関連の検査と外来診療のポイント #37.
37 糖尿病関連の検査 血糖 978mg/dl
HbA1c 5.5%
グリコアルブミン 20.5% (11~16%)
1,5-AG 2.4μg/dl(14.0μg/dl以上)
血中CPR
入院時 0.05ng/ml未満
12/24 食前 0.05ng/ml未満
食後 0.05ng/ml未満
尿中CPR
12/17 1.5μg/day未満
抗GAD抗体 1.3U/ml
血中ケトン体(3-ヒドロキシ酪酸)
治療5時間後 1535μmol/l
尿中ケトン体 +++ 37 #38.
2019/06/03 38 本症例のまとめ 妊娠初期に発症した劇症1型糖尿病を経験した。
本症は急激に進行するため、1日でも診断が遅れると不幸な転帰をとる可能性が極めて高い。
特に内科医、産婦人科医、救急医は、風邪症状・腹部症状を主訴とする患者を診療する際には、本症を念頭におきながら、診療にあたることが重要である。
ポイントは、問診!(著明な口渇と呼吸数の増加!)
→すぐに検尿または血糖測定を!
38 #39.
清涼飲料水ケトーシス(ペットボトル症候群) 30歳未満の肥満した軽症2型糖尿病の男性が、ソフトドリンクを大量に飲み続けてケトーシス(時にケトアシドーシス)を起こす。
若年化の傾向がみられる。
糖尿病と診断されていない例も多い。
約70%はケトーシスのままであるが、約30%はDKAとなる。(重症例では、血糖値が1000mg/dl前後まで上昇して昏睡に陥る。当初は、1型糖尿病のDKAと同様の集中治療を要する。)
インスリン治療はおおむね1カ月以内に中止でき、食事療法か少量の血糖降下剤で良好なコントロールとなる。 #40.
高浸透圧高血糖症候群hyperosmolar hyperglycemic syndrome:HHS hyperosmolar non-ketotic coma : HONCnon-ketotic hyperosmolar coma : NKHCと呼ばれていたが,ケト―シスを伴うことあり,昏睡になることは稀なので,現在はHHSと称される
発症まで数日かかり,片麻痺、半身痙攣といった巣症状を伴うことあり,約1/3は脳卒中と診断される。
治療に成功すると、片麻痺、半身痙攣は消失する。
#41.
HHS 高齢者
軽症糖尿病患者(経口薬または食事療法のみ)
ステロイド、IVH、経管栄養、感染症などが誘因となる(医原性が多い)
高血糖 ≧600mg/dl
高浸透圧血症 ≧350mOsm/l
尿中ケトン (-)~(1+)
アシドーシスは認めないか軽度
(pH>7.30, HCO3- >18~20mEq/l)
致死率が高い(10〜20%) インスリン療法の適応と2型糖尿病の病態 #43.
初診時に確認するポイント 新規に治療を開始する患者で、治療方針決定のために初診時に確認すべきポイントは、主に以下の3点である。
・血糖値(高血糖の程度とその持続期間)・体重とその推移(特に急激な体重減少の有無)・尿ケトン体の有無(高血糖があり、尿ケトン体も陽性の場合は、早急にインスリン治療が必要)
また初診時には、1型糖尿病(特に緩徐進行1型)を除外するために、必ず抗GAD抗体と血中CPR(Cペプチド)も測定しておく。 #44.
インスリン療法の適応 日本糖尿病学会編・著 糖尿病治療ガイド 2016-2017 ィ25-2 #45.
インスリン導入を阻む「4つの嫌」 患者さんの誤解を解くアプローチ 1)注射は痛いから嫌だ!
2)一生打ち続けるのは嫌だ!
3)打つようになったら、もう先が短い!
4)低血糖が怖い!
これらは、すべて誤解です!
#46.
糖尿病専門医に紹介が必要な場合 1) 血糖コントロールが不良な場合
HbA1cが初診で10%以上 、または 高齢者以外の患者で8%以上が
6ヶ月以上継続する場合(栄養指導、教育入院、インスリン導入
などの専門的指導が必要な場合が多い)
2) 1型糖尿病あるいは1型糖尿病が疑われる場合
3) 急性合併症(糖尿病ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群など)への対応が必要な場合
4) 慢性合併症の検査・治療が必要な場合
糖尿病腎症 尿中アルブミン排泄量(UAE)が≧300mg/g.crで顕性腎症(糖尿病腎症第3期)以上に該当する場合
5) 治療中の患者が妊娠した場合、およびHbA1c7.0%以上で妊娠を希望する場合
6) 高度肥満の場合(BMI 35以上)
#47.
インスリン作用不足 食後高血糖 空腹時高血糖 高血糖 インスリン分泌不全 インスリン抵抗性 環境因子
・過食 ・肥満
・運動不足 ・加齢
・ストレス ・その他 遺伝因子
・膵β細胞機能低下(インスリン合成・分泌能低下)
・インスリン受容体異常
・インスリン受容体数不足
・標的細胞内のインスリン情報伝達異常 2型糖尿病の病態と成因 岩本安彦 他., 医学のあゆみ 1999; 188: 472より作図 47 #48.
2型糖尿病歴と膵β細胞機能低下 (年数) IGT 食 後
高血糖 糖尿病
第2期 糖尿病第3期 糖尿病
第1期 糖尿病の診断 糖尿病患者の膵β細胞機能の経過
膵β細胞を守る治療を考慮した場合の膵β細胞機能
UKPDSの糖尿病発症(診断:0)から6年間のサブセットにおけるHOMA-β(膵β細胞機能) (%) Lebovitz HE. Diabetes Reviews 1999; 7: 139より改変 48 #49.
体重増加 インスリン抵抗性による高血圧 インスリン抵抗性による脂質代謝異常 食後高血糖による内皮障害 正常領域 IGT領域 糖尿病領域 動脈硬化の進展 糖尿病細小血管障害の出現 インスリン分泌量 インスリン抵抗性 心血管疾患の発症 耐糖能異常(IGT)・境界型と動脈硬化の関連性 49 寺内康夫 他, 日本臨牀 2005; 63(Suppl. 2): 21より改変 動脈硬化の危険因子と予防策 #50.
動脈硬化の危険因子 高血圧
脂質異常症
糖尿病
肥満(特に内臓肥満)
喫煙
加齢 #51.
動脈硬化の予防 すべての危険因子をコントロールする。
血糖: HbA1c 6.9%以下(原則)
血圧: 130/80mmHg未満
脂質:
LDLコレステロール:120mg/dl未満
HDLコレステロール:40mg/dl以上
中性脂肪:150mg/dl未満
禁煙
内臓肥満の解消
#52.
糖尿病治療で重要なABCDE A Alcohol アルコール 少量に!
B Body weight 体重 適正化!
C Cigarette smoking 喫煙 ストップ!
D Diet 食事 適量に!
E Exercise 運動 毎日歩行! #53.
生活療法のポイント 3食きちんと食べる、20分かけて食べる、寝る前3時間は食べない、ご飯は後から食べる、これらが重要。
「緩やかな糖質制限食」(1食当たり糖質40g以内)を勧める。
3) 日時生活の中で、こまめに体を動かす。
4) ストレス解消のためには、「趣味を持ち、いろいろなことに興味を持ち、よく 笑い、よく歩く」ことが重要。
#54.
厳格な血糖管理と心血管イベントの関係(海外データ) 54 Skyler JS et al., Circulation 2009; 119: 351より作表 #55.
#55 対象:糖尿病患者903,510例 方法:糖尿病患者を対象とした研究6件のメタアナリシス及びバイアス分析(観察研究におけるバイアスの程度を定量的に評価する分析手法)により、重症低血糖の心血管疾患リスクに及ぼす影響を検討した。 推定相対リスク:変量効果モデル 試験間の不均一性:Cochrane’s Q test サブグループ間比較:χ2 test with 1 degree of freedom 試験 相対リスク
(95% CI) 相対リスク
(95% CI) ウエイト
(%) Prospective
ADVANCE 2010
VADT 2011
Subtotal: P=0.10, I2=63.8% Retrospective
Johnston 2011
Zhao 2012
Rathmann 2012
Hsu 2012
Subtotal: P=0.03, I2=65.4% Overall: P=0.002, I2=73.1% 1 2 11.12
5.97
17.08 3.45 (2.34 to 5.08)
1.88 (1.03 to 3.43)
2.67 (1.48 to 4.80) 27.62
20.03
12.66
22.60
82.92 1.79 (1.69 to 1.89)
2.00 (1.63 to 2.45)
1.60 (1.13 to 2.26)
2.26 (1.93 to 2.65)
1.93 (1.68 to 2.21) 100.00 2.05 (1.74 to 2.42) BMJ 29(347),f4533,2013 重症低血糖の心血管疾患リスクは2.05倍(海外データ) #56.
血糖コントロールの目標 日本糖尿病学会編・著 糖尿病治療ガイド2018-2019より 空腹時血糖
随時血糖(食後2時間)
HbA1c(ヘモグロビン エイワンシー)
1~2ヶ月の血糖の平均値
GA(グリコアルブミン)
2週間の血糖の平均値 糖尿病治療薬の選択と使用法 #57.
高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値) 日本糖尿病学会・日本老年医学会 #59.
SGLT2阻害薬 2型糖尿病の病態 肝臓での糖新生の抑制 骨格筋・肝臓でのインスリン 感受性の改善 ビグアナイド薬 チアゾリジン薬 主な作用 種 類 インスリン分泌の促進 より速やかなインスリン分泌 の促進・食後高血糖の改善 炭水化物の吸収遅延 ・
食後高血糖の改善 スルホニル尿素薬(SU薬) 排泄調節系 糖吸収・ 促進系
インスリン分泌 速効型インスリン分泌促進薬 : グリニド薬 インスリン抵抗性
増大 インスリン分泌能低下 糖毒性 高血糖 インスリン作用不足 経口血糖降下薬 α-グルコシダーゼ
阻害薬(α-GI) 日本糖尿病学会 編・著 糖尿病治療ガイド2018-2019 より 食後高血糖 DPP-4阻害薬 血糖依存性のインスリン分泌 促進とグルカゴン分泌抑制 腎での再吸収阻害による
尿中ブドウ糖排泄促進 改善系
インスリン抵抗性 病態にあわせた経口血糖降下薬の選択 機 序 空腹時高血糖 #60.
日本糖尿病学会の診療ガイドライン どの系統の薬剤も、第1選択薬に
なりうる。 #61.
糖尿病治療薬 薬効群別患者シェアの推移 Data Source; Medi-Trend 2010年~2017年 年次推移(7月~6月計) #62.
糖尿病治療薬 薬効群別患者シェアの推移 2017年時点での日本での患者シェアで、
SU薬は、DPP-4阻害薬、ビグアナイド薬に次いで、いまだに第3位である。
第4位 α-GI
第5位 インスリン
第6位 SGLT2阻害薬 #63.
2019/06/03 63 SU薬による低血糖昏睡に注意!死亡例あり! 共通する特徴
1 高齢者
2 腎機能軽度低下(血清Crは正常あるいは軽度上昇)・・・高齢者は、血清Crでは腎機能を評価できない!
3 グリベンクラミド(オイグルコン)または
グリメピリド(アマリール)内服中。
4 良好な血糖コントロール(HbA1c≦ 7.0%)
5 患者の理解力にやや難(認知症も含む)
6 家族も含めたシックデイルールの説明無し 63 低血糖のリスクとメトホルミンの適正使用 #64.
当院に緊急入院した低血糖患者の転機 全45症例 糖尿病患者の低血糖症 29例 28.9% 24.1% #65.
糖尿病患者の低血糖(29症例) 加療状況 ・加療中の医療機関 平均のHbA1c (低血糖入院中測定された10例) HbA1c (%) 6.31±1.55
6%以下 6例 82.3% #66.
(2)SU剤について 糖尿病加療患者29症例中22例でSU薬を内服 腎機能について eGFR 50.8±32.3 ml/min/1.73m2
60 ml/min/1.73m2以下 20例 (70.0%) (4)平均総投薬数 6.73±3.86種類 #67.
SU薬の位置づけの変遷 かつては第1選択薬であった。
最近は低血糖、体重増加、食後高血糖抑制が弱いこと、心血管イベントを減らすエビデンスが無いことなどから、なるべく使わない薬となってきている。
特にオイグルコンは使用しないこと。
アマリールも0.5mgから開始し、最大2mg(1mg)までとする。
SU薬を使う場合は第4選択肢として、原則としてグリミクロンを最少用量(20mg)から開始し、最大80mg(40mg)までとする。 #68.
2型糖尿病患者の第一選択薬となるための条件 1 低血糖をきたさない
2 体重増加をきたさない
3 副作用が少ない
4 空腹時高血糖だけでなく、食後高血糖も改善する
5 心血管合併症を減らすエビデンスがある
6 安価である
7 服薬アドヒアランスが高い #69.
2型糖尿病の第1選択薬 日本人でも禁忌でなければメトホルミンが第1選択薬。
メトホルミンが禁忌の場合
腎機能低下、心不全、肝硬変、呼吸不全、
アルコール多飲者、感染症、
禁忌でなければ80歳以上の高齢者でも使用可能。
禁忌の場合は、DPP-4阻害薬が第1選択薬となる。 #70.
メトホルミンの日本での副作用報告 (2010年5月から2014年4月) 報告された乳酸アシドーシス発症数は50例、このうち死亡例は10例
死亡例は禁忌例(手術直後、肝硬変、腎機能低下、感染症、80代で寝たきりの方など)への使用
この間のメトホルミンの推定処方数は約140万人
乳酸アシドーシスの発症頻度は1.9例/10万人/年
(ドイツでの報告では3例/10万人/年)
適正使用さえ守れば、安全性には問題の無い薬
長期使用時は、ビタミンB12の測定を! DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬の使い分け #71.
メトホルミンの適正使用に関するRecommendation 日本糖尿病学会 2019年8月改訂 中等度腎機能障害患者における1日最高投与量の目安eGFR(mL/min/1.73㎡))
45≦eGFR<60;1500mg
30≦eGFR<45; 750mg
特に、eGFR30以上45未満の患者には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する。
eGFR 30未満 禁忌
#73.
インクレチン関連薬 DPP-4阻害薬
内服薬(現在9種類が市販)
血糖低下作用は中等度 HbA1c約1%
単独では低血糖をきたさない
体重は不変
重篤な副作用が無い
服薬しやすい(1日1回か2回、食前でも食後でも可、週に1回も登場)
GLP-1受容体作動薬
注射薬(現在5種類が市販)
1日1〜2回の皮下注射、週に1回注射の製剤が登場
血糖低下作用はDPP4阻害薬よりも強い(HbA1c1.5〜2.0%)
体重を減らす薬剤あり
(副作用) ごく稀に急性膵炎
#74.
DPP-4阻害薬の問題点 心血管病変を減らすエビデンスが無い
4つの大規模試験で「非劣性」
長期投与での安全性が不明
膵癌のリスクは現時点では有意差無し
急性膵炎→膵炎の既往がある患者には使用しない
関節炎・関節痛→RAや他の自己免疫疾患
がある患者には使用しない
水疱性類天疱瘡
3 高価 #75.
DPP-4阻害薬選択のポイント 腎排泄型か胆汁排泄型か?
腎不全では胆汁排泄型を使用する
用量変更が不要
1日1回内服か1日2回内服か?
1回のほうが服薬アドヒアランスが高い
3 1週1回製剤は、特に在宅医療で有用
#76.
DPP-4阻害薬はどれを選ぶ? 腎排泄型から1剤 (ジャヌビアなど)
胆汁排泄型から1剤 (テネリアなど)
1週1回製剤から1剤 (マリゼブなど)
基本的には、3剤あれば十分 #77.
GLP-1受容体作動薬の 分類と使い分け 1) ヒトGLP-1由来製剤
体重減少効果はほとんど無い
副作用(悪心、嘔吐、下痢、便秘)は少ない
減量は不要で血糖を下げたい患者向き
単独でも、すべての薬剤との併用でも使用可能
ビクトーザ 1日1回
トルリシティ 1週1回
2) Exendin-4(トカゲの毒)由来製剤
体重減少効果がある
副作用が多い
減量が必要な患者向き
バイエッタ 1日2回 SU、ビグアナイド、チアゾリジンとの併用必要
リキスミア 1日1回 SU、ビグアナイド、持効型インスリンとの併用必要
ビデュリオン 1週1回 SU、ビグアナイド、チアゾリジンとの併用必要
心血管イベント抑制のエビデンスと治療アルゴリズム #78.
心血管イベント抑制のエビデンスがあるGLP-1受容体作動薬 ビクトーザ LEADER n=9340
オゼンピック SUSTAIN-6 n=3297 (日本発売準備中)
トルリシティ REWIND n=9901
albiglutide (Harmony Outcomes n=9463) (世界的に発売中止)
経口オゼンピック PIONEER 6 n=3183
MACEは非劣性だが、心血管死・総死亡は約50%減少
経口オゼンピックを胃で十分に吸収させるために、同薬は起床時にコップ半分(約120mL)程度の水とともに服用し、その後最低30分は絶飲絶食状態を保つ(朝食はその後)必要がある。
食物を摂った状態ではオゼンピックが胃粘膜に吸着せず、薬剤の効果は著しく低下する。
MACE: 心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中
#79.
エビデンスがあり、世界で広く使われているSGLT2阻害薬 ジャディアンス EMPA-REG OUTCOME 7034人
100%に心血管病あり
MACE:有意に改善 腎機能保護あり
2) カナグル CANVAS PROGRUM 10142人
63%に心血管病あり
MACE:有意に改善 腎機能保護あり
足の切断・骨折が有意に増加
3) フォシーガ DECLARE 17160人 60%は心血管病無し
MACE:有意差なし 腎機能保護あり
心不全による入院は有意に改善
MACE: 心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中
#80.
SGLT2阻害薬の位置付け ADA(米国糖尿病協会)のガイドライン
肥満している心血管病のハイリスクな患者では
メトホルミンに次ぐ第2選択薬。
(ジャディアンス、カナグル、フォシーガ) #81.
SGLT2阻害薬の適正使用に関すRecommendation 日本糖尿病学会(2019年8月7日) Recommendation
1. 1型糖尿病患者の使用には一定のリスクが伴うことを十分に認識すべきであり、使用 する場合は、十分に臨床経験を積んだ専門医の指導のもと、患者自身が適切かつ積極的にインスリン治療に取り組んでおり、それでも血糖コントロールが不十分な場合にのみ 使用を検討すべきである。
2. インスリンやSU薬等インスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。
3. 75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能 低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与する。
4. 脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬の併用の場合には特に脱水に注意する。
5. 発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。
#82.
SGLT2阻害薬の適正使用に関すRecommendation 日本糖尿病学会(2019年8月7日) 6.全身倦怠・悪心嘔吐・腹痛などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシ ドーシス(euglycemic ketoacidosis; 正常血糖ケトアシドーシス)の可能性があるので、 血中ケトン体(即時にできない場合は尿ケトン体)を確認するとともに専門医にコンサルテーションすること。特に1型糖尿病患者では、インスリンポンプ使用者やインスリ ンの中止や過度の減量によりケトアシドーシスが増加していることに留意すべきであ る。
7.本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、外陰部と会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)を疑わせる症状にも注意を払うこと。さらに、必ず副作用報告を 行うこと。
8.尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問 診では質問紙の活用も推奨される。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーショ ンすること。
#83.
その他の薬剤 α-GI
利点 食後高血糖を抑制する、低血糖をきたさない、体重を増やさない
欠点 服薬アドヒアランスが悪い
心血管イベントを抑制するエビデンスが無い
2) グリニド薬
利点 食後高血糖を抑制する、体重を増やさない
欠点 服薬アドヒアランスが悪い、低血糖のリスクがある
心血管イベントを抑制するエビデンスが無い
チアゾリジン薬
利点 インスリン抵抗性を改善する
欠点 副作用が多い(浮腫、骨折)、体重が増加する、膀胱がんのリスク
心血管イベントを抑制するエビデンスが無い #84.
2型糖尿病 高血糖管理のアルゴリズム(私案) 基本療法 生活療法(食事療法、運動療法、禁煙、節酒)
第1選択薬 メトホルミン
第2選択薬 メトホルミンが禁忌の場合はDPP-4阻害薬
心血管病がハイリスクな場合はSGLT2阻害薬
3剤目の併用候補薬 αーGI
4剤目の併用候補薬
少量のSU薬(グリミクロンまたはアマリール)
GLP-1受容体作動薬
インスリン療法
BOT →Basal Plus →強化療法(BBT)
または混合型製剤
在宅医療での糖尿病管理と重要ポイント #85. 糖尿病標準診療マニュアル (2018年9月) 日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会 作 成:日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会
糖尿病標準診療マニュアル作成委員会
公開日:2018 年 9 月 1 日 (第 14 版)
http://human-data.or.jp/pdf/DMmanual_14_180901.pdf
インスリンの適応かを判断する
食事・運動療法にて数ヶ月以内に反応があるか?
ステップ1 単剤で開始 A) ビグアナイド薬(eGFR30ml/min以上)
ステップ2 1剤併用 B) DPP-4阻害薬
ステップ3 さらに1剤併用 C) SU 薬 D) SGLT2阻害薬
E) α─グルコシダーゼ阻害薬
ステップ 4 多剤併用 や インスリン や GLP-1 受容体作動薬 を考慮
#86.
ADA/EASD 「コンセンサス・レポート 2018」 ASCVD: 動脈硬化性心疾患 #87. Standards of Medical Care in Diabetes 2019 ADA http://care.diabetesjournals.org/content/42/Supplement_1 禁忌でなくかつ忍容性があれば、メトホルミンを最初の薬剤として使用することを推奨する(エビデンスレベルA)。
メトホルミンを長期間使用する場合は、ビタミンB12 の欠乏を疑うことが必要である。特に貧血または末梢神経障害がある患者では、その原因がビタミンB12欠乏である可能性がある。定期的なビタミンB12量の測定を考慮すること(エビデンスレベルB)。
新規に診断された2型糖尿病患者で、高血糖症状がある場合やHbA1c10%以上、または血糖値が300mg/dL以上であれば、インスリン療法(経口薬併用の有無は問わない)の開始を考慮すること、HbA1cが目標レベルより1.5%以上高値であれば、2剤併用での治療開始を考慮すること(エビデンスレベルE[専門家の臨床経験・コンセンサス])。
動脈硬化性の心血管病がある患者では、生活習慣のマネジメントに加え、メトホルミンを用いた治療を開始する。さらに、心血管イベントと心血管死を減らすことが明らかにされている薬剤(SGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬)を併用すべきである(エビデンスレベルA)。
#88.
Standards of Medical Care in Diabetes 2019 ADA 血糖降下作用がより強い注射療法が必要な患者の多くでは、インスリンよりも先に、GLP-1受容体作動薬を使用すべきである。(エビデンスレベルB)
6) 高血圧を合併した2型糖尿病患者には、原則として収縮期血圧140mmHg未満、拡張期
血圧90mmHg未満を目標として治療すべきである(エビデンスレベルA)。 心血管病のハイリスク患者で、安全に治療が行える場合には、 130/80mmHg未満という
さらに低い目標が適切かもしれない(エビデンスレベルC)。
7) アルブミン尿が無い場合の高血圧治療では、ACE阻害薬(ACEI)、ARB、
サイアザイド系利尿薬、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の
いずれかを使用すべきである(エビデンスレベルA)。
8) ACE阻害薬(ACEI)またはARBの使用は、尿中アルブミン/クレアチニン(UACR)30-299mg/gCreの腎症2期では推奨、UACR≧300mg/gCreの腎症3期では強く推奨される(エビデンスレベルA )。 #90.
症例 81歳、男性 2型糖尿病、アルツハイマー型認知症、慢性腎不全、高尿酸血症
43歳で糖尿病発症、71歳からインスリン導入、認知機能低下によりインスリン注射は妻が実施。認知症の進行のため、訪問診療を開始した。
訪問時、自宅に上白糖が大量にあり、妻に聞くと、自ら大量に買い込んで紅茶に大量に入れて飲んでいるという。上白糖を人工甘味料に変えるよう指導し、まずは妻が自宅のシュガーポット内の上白糖を人工甘味料に差し替えた。
その後、本人が通う商店に妻が出向き、上白糖を購入しに来た場合は、人工甘味料を販売するよう協力を仰いだ。
初診時8.3%あったHbA1cは6.7%まで低下、インスリン注射中止に向けて、地域を巻き込んだケアを継続中である。
治療
当初 ノボラピッド30ミックス 1日2回(朝8 ・夕8) 現在 トレシーバ 8単位(月・水・金)
ボグリボースOD錠0.2mg 2錠 朝・夕 マリゼブ 1錠 週1回
ネシーナ6.25mg錠 1錠 朝 アリセプト5mg錠 1錠 朝
アリセプト5mg錠 1錠 朝
「高齢者のための糖尿病診療」 丸善出版 2019年、高瀬義昌先生 p144、症例2から一部改変して転載 #91.
在宅医療での重要ポイント 1) 服薬アドヒアランスの維持
2) 介護者の負担軽減
3) 有害事象の回避
できる限り治療を単純化し、服薬回数を減らし、一包化する。
週に1回のDPP-4阻害薬または週に1回のGLP-1受容体作動薬をベースとする。
「高齢者のための糖尿病診療」 丸善出版 2019年、高瀬義昌先生 p139から転載
高齢者糖尿病の初期治療ガイドラインとまとめ #92.
在宅医療で特に有用な薬剤 週に1回内服のDPP-4阻害薬
マリゼブ
週に1回注射のGLP-1受容体作動薬
トルリシティ
3 配合薬 エクメット (DPP-4阻害薬とメトホルミンの配合薬)
4 トレシーバの隔日注射 42時間効果が持続するため、やむを得ない場合は訪問看護
による隔日注射も可能。
5 混和が不要な新しい混合型製剤ライゾデグ
ノボラピッド30%とトレシーバ70%の混合型製剤
1日1回または2回注射 #93.
高齢者糖尿病で重要な薬剤 メトホルミン
禁忌でなければ、80歳以上でも使用可能
DPP-4阻害薬 または GLP-1受容体作動薬
特に、週に1回製剤は有用
SGLT2阻害薬
サルコペニアには注意する
α-G I
服薬アドヒアランスが悪いことが欠点
#94.
高齢者施設や在宅医療での糖尿病初期治療ガイドライン A) 内服による治療(軽症例)
随時血糖値300mg/dl未満、HbA1c10%未満
禁忌でなければメトグルコ 250mg錠を朝・夕 1日2回から開始
腎機能検査は必須(eGFR30ml/min未満は禁忌)
禁忌でなければ80歳以上でも可
2週間後に増量する(500mgを1日2回)
禁忌の場合はDPP-4阻害薬
腎機能低下があればテネリアまたはトラゼンタ 1日1回1錠 朝
α-GI DPP-4阻害薬との併用も可能 ベイスン、セイブル、グルコバイ
1日2回朝、夕の食直前1錠ずつ
SU薬 あくまでも第4選択薬
グリミクロン 20mg 1日1回朝またはアマリール 0.5mg 1日1回朝
オイグルコンは使用してはいけない!
「高齢者のための糖尿病診療」 丸善出版 2019年、岩岡秀明 p170から転載
#95.
高齢者施設や在宅医療での糖尿病初期治療ガイドライン B) 注射による治療(中等症例)
随時血糖値300〜400mg/dl、HbA1c10〜12%かつ全身状態良好
1) 持効型インスリン(ランタスXRまたはトレシーバ)1日1回朝(または夕)食直前皮下注射を、上記の内服薬と併用する
実測体重0.1U/kgから開始して、2単位ずつ漸増する
目標空腹時血糖値は100〜150mg/dl
2) 血中CPR(Cペプチド)を測定し、空腹時血中CPRが1.0ng/mL以上ありインスリン分泌能が保たれている場合には、インスリンではなく、GLP-1受容体作動薬の使用も可能、トルリシティ 週に1回皮下注射を、上記の内服薬と併用する
ただし、DPP-4阻害薬との併用は不可!
「高齢者のための糖尿病診療」 丸善出版 2019年、岩岡秀明 p170から転載 #96.
高齢者施設や在宅医療での糖尿病初期治療ガイドライン C) 至急、糖尿病専門医のいる病院に転送(重症例)
随時血糖値400mg/dl以上、HbA1c12%以上または尿中ケトン体陽性
または
脱水、発熱、衰弱等で全身状態不良
「高齢者のための糖尿病診療」 丸善出版 2019年、岩岡秀明 p170から転載
#97.
本日のまとめ 1 低血糖をきたすSU薬はなるべく使わない。
使う場合も3〜4剤目としてグリミクロンを最少量から!
2 高齢者の目標値は、ガイドラインに従い「HbA1cに下限を設定」し、個別に設定する。
3 第一選択薬はメトホルミン、禁忌の場合はDPP-4阻害薬である。
4 「食事をとれないときは、糖尿病の薬は飲まないこと」を、
ご家族にもきちんと指導する。→ 糖尿病薬は一包化から外す。
5 SGLT2阻害薬は、肥満している心血管病のハイリスクな患者では、第2選択薬である。
肥満している患者では、基礎インスリンよりも先に、GLP-1受容体作動薬を使用すべきである。 #98.
医療・生命倫理をテーマとした名作映画10選 (順不同) 外国映画
カッコーの巣の上で (1975年)ブレードランナー (1982年)パッチ・アダムス (1998年)海を飛ぶ夢 (2004年)M★A★S★H (1970年) ビューティフル•マインド (2001年)
日本映画
ディア•ドクター (2009年)ヒポクラテスたち (1980年)白い巨塔(田宮二郎主演) (1966年)赤ひげ (1965年) 糖尿病診療ハンドブックの紹介 #99.
「ここが知りたい!糖尿病診療ハンドブック Ver.4」 2019年3月 中外医学社