#4.
⽬次 • 医療的ケアって︖ • なんで苦⼿︖ • 普段の様⼦を聞いてみよう 〜ABCDEアプローチを参考に〜 • 患者特有の注意点を聞いてみよう • 患者と家族の価値観を知ろう
#5.
医療的ケアって︖ • ⽇常⽣活に必要な医療及び医療的⾏為 気管切開 在宅酸素 ⼈⼯呼吸器管理 経管栄養 吸引 インスリン注射、導尿 なども含まれる
#6.
なんで苦⼿︖ • 基礎疾患が分からない、Problem Listが多すぎる • 内服や医療的ケアが多すぎる • 患者⾃⾝と意思疎通が図りづらい場合がある • この患者にとって、これって正常︖異常︖ なにがなんだか分からない︕
#7.
なんで苦⼿︖ • 基礎疾患が分からない、Problem Listが多すぎる • 内服や医療的ケアが多すぎる • 患者⾃⾝と意思疎通が図りづらい場合がある • この患者にとって、これって正常︖異常︖ 詳しいことは後で確認するとして、 まずは「普段の様⼦」を把握しよう
#8.
とは⾔っても、、、 気切チューブの 種類、サイズ ⼈⼯呼吸器の 種類、主設定・副設定 経⿐胃管、胃瘻、腸瘻 サイズ、種類、挿⼊⻑ ⼼疾患の種類 ⼿術内容 今の⾎⾏動態 てんかん、姿勢障害、 不随意運動 それぞれに対する内服 基礎疾患、併存疾患 合併しやすい疾患 なにがなんだか分からない︕ →ABCDEアプローチ+α
#9.
ABCDEアプローチ+α A︓気道 B︓呼吸 C︓循環 D︓神経 E︓環境 F︓家族 I︓感染 N︓栄養 どんな患者でも、⾏われているケア・治療は 全⾝状態を安定させるために⾏われている →救急でのアプローチが参考になる
#10.
ABCDで診るポイント • A︓⾃然気道(エアウェイ含む)/気管切開/気管喉頭分離 • B︓室内気/在宅酸素(HOT)/在宅⼈⼯呼吸器 使⽤タイミング(終⽇/夜間のみ、など) • C︓チアノーゼ/⾮チアノーゼ性⼼疾患 循環動態・⼼機能に影響を及ぼす内服(βブロッカーなど) • D︓神経障害の有無(不随意運動、てんかんなど)、発達の程度 発作頻度も(⽉1回、毎⽇、体調不良時のみ、など)
#11.
EFINで診るポイント • E︓体温、体表⾯の異常(褥瘡、関節拘縮、⾻格変形など) • F︓家族構成、主たる介護者、主治医、学校などの⽣活の場 移動⼿段(⾞がないと移動できないなど) • I ︓重症感染症の既往歴、過去の保菌歴(多剤耐性菌の有無) • N︓経⼝摂取/経管栄養(経⿐胃管、胃瘻、腸瘻) ⾷事内容、胃残の変化 過去の状態と合わせて聞くとbetter 例︓元々夜間のみ在宅酸素→2か⽉前から⽇中も必要 反復性尿路感染→予防内服開始後は⼀度もなし 元々全量経管栄養→1か⽉前から経⼝摂取開始
#12.
とある初診外来にて、、、① 2歳6か⽉男児 BW 15kg 昨⽇からの発熱、咳嗽を主訴に⺟と来院 ベビーカーで⼊室、視線合い、笑顔でバイバイしている 経⿐胃管あり、気管切開・気切チューブあり HR 100/min、BP 95/40mmHg、RR 20/min, SpO2 98%(室内気)、BT 38.5℃ 呼吸⾳ 両側肺野で分泌⾳軽度聴取、⺟が気管切開孔から吸引すると改善する 〇〇⼤学病院⼩児科より、帰省時に有事診療を受ける際の紹介状を持参 Problem List #Pierre Robin sequence #⼝蓋裂(修復術後) #⼼室中隔⽋損症(⼼内修復術後) #栄養障害(経管栄養導⼊中) 内服︓なし ⾷事︓経⼝摂取 1⽇3回(刻み⾷)、半固形ラコール 150ml/回 1⽇2回
#13.
①の患者だと • • • • • • • • Pierre Robin sequenceは よく分からないけど、 全⾝状態はそこまで悪くない︖ A︓気管切開・気切チューブ挿⼊中、吸引の頻度が普段より多い B︓RR 20/min, SpO2 95%(室内気) 普段もこれくらい ※2歳まで⼈⼯呼吸器装着、現在は夜間のみ在宅酸素使⽤中 C︓HR 100/min、BP 95/40mmHg、循環動態は正常⼼と⼀緒 D︓つかまり⽴ち可能、笑顔でバイバイする E︓BT 38.5℃(普段36℃台)、視診では咽頭発⾚軽度のみ F︓⺟が主たるケアを担っている、遠⽅の⼤学病院かかりつけ ベビーカーで移動、⾞はありいつでも来院可能 I ︓誤嚥性肺炎での⼊院歴あるが、ここ1年は落ち着いている N︓いつも通りの⾷事で胃残増加なし 経⼝摂取でムセなし
#14.
とある初診外来にて、、、② 6歳男児 BW 12kg 昨⽇からの発熱、咳嗽を主訴に⽗と来院 バギーで⼊室、視線合う、表情の変化はっきりしない 気管切開あり、⼈⼯呼吸器がつながっている 腹部に胃瘻が造設されている HR 80/min、BP 75/30mmHg、RR 24/min, SpO2 95%(⼈⼯呼吸器あり)、BT 37.5℃ 呼吸⾳ 両側肺野で分泌⾳聴取、⽗が吸引するとわずかに改善する 〇〇病院⼩児新⽣児科より、帰省時に有事診療を受ける際の紹介状を持参 Problem List #重症新⽣児仮死(Ap 1/1/3)#早産・超低出⽣体重児(24週4⽇、730g出⽣)#てんかん #新⽣児慢性肺疾患Ⅱ型(気管切開、在宅呼吸器導⼊中) #栄養障害(経管栄養導⼊中) 内服︓バルプロ酸、レベチラセタム、レボカルニチン、エリスロマイシン、カルボシステイン、 アンブロキソール ⾷事︓半固形ラコール 200ml/回 1⽇3回 導尿︓1⽇1回
#15.
②の患者だと • • • • • • • • 呼吸状態が悪く発熱・頻脈あり 胸部X線と⾎液検査は確認かな A︓気管切開・気切チューブ挿⼊中、吸引の頻度が普段より多い B︓RR 24/min, SpO2 95%(⼈⼯呼吸器管理) 今は副設定(普段より設定が⾼い)なのに1回換気量少ない C︓HR 80/min(普段50台)、BP 75/30mmHg(普段通り) D︓視線合うが元気ない、発熱前後からはけいれん発作なし E︓BT 37.5℃(普段35℃前半)、視診では咽頭発⾚軽度のみ F︓⽗が主たるケアを担っている、遠⽅の⼦ども病院かかりつけ バギーで移動、帰省先でこの⼦が乗れる⾞がない I ︓誤嚥性肺炎での⼊院歴あるが、ここ1年は落ち着いている N︓いつも通りの栄養だが胃残が少し多め
#16.
家族は⼀番の情報源 • 普段の様⼦を⼀番知っている • 体調が悪いときのことも⼀番知っている • 今回、受診しようと思った理由がある 患者のことを家族に聞いてみよう︕
#17.
患者特有の注意点を聞いてみよう 体調を崩しているなというサインはありますか︖ いつもと様⼦が違うところはありますか︖ ・胃残が増えてきたら熱が出ることが多いです ・熱が出るとけいれんが群発するようになるので⼼配です ・循環器科の先⽣からはSpO2が80%を切ったら要注意と⾔われています ・⽬がチカチカしたら脳卒中様発作の前兆なので、アルギニンを投与するよう⾔われています • 体調不良のサインは患者によって様々だが、患者毎(≠疾患毎)に特徴的な サインがみられる、ことがある • たまに疾患特有の注意が必要な兆候があるので、聞いたことない疾患は ⼀度かかりつけ医に確認する(時間がなければとりあえず検索してみる)
#18.
基礎疾患の調べ⽅(5分ver.) • インターネットで検索する 難病情報センター(https://www.nanbyou.or.jp/) GeneReviews⽇本語版(http://grj.umin.jp/) は概ね正しいので、項⽬が存在すれば⾮常に有⽤ ⼤学病院などの公的な医療機関のHPも悪くない 時間があり英語が得意なら、総論的な論⽂を調べるのがベスト • かかりつけ医に聞く 電話がつながるまでに5分かかるかもしれないが、つながれば すぐに詳細が分かる(名前を伝えただけで通じることも)
#19.
①の患者(再掲) • • • • • • • • A︓気管切開・気切チューブ挿⼊中、吸引の頻度が普段より多い B︓RR 20/min, SpO2 95%(室内気) 普段もこれくらい ※2歳まで⼈⼯呼吸器装着、現在は夜間のみ在宅酸素使⽤中 C︓HR 100/min、BP 95/40mmHg、循環動態は正常⼼と⼀緒 D︓つかまり⽴ち可能、笑顔でバイバイする E︓BT 38.5℃(普段36℃台)、視診では咽頭発⾚軽度のみ F︓⺟が主たるケアを担っている、遠⽅の⼤学病院かかりつけ ベビーカーで移動、⾞はありいつでも来院可能 I ︓誤嚥性肺炎での⼊院歴あるが、ここ1年は落ち着いている N︓いつも通りの⾷事で胃残増加なし 経⼝摂取でムセなし
#20.
①の患者だと 体調を崩しているなというサインはありますか︖ いつもと様⼦が違うところはありますか︖ 1)咳がうまく出せず、吸引の頻度が増えてきます 2)⽇中も酸素が必要になってきたら、⼊院になることが多いです 3)しんどくなると、いつもなら⾷べられる刻み⾷がうまく⾷べれなくなります A︓気管切開・気切チューブ挿⼊中、吸引の頻度が普段より多い B︓RR 20/min, SpO2 95%(室内気) 普段もこれくらい ※2歳まで⼈⼯呼吸器装着、現在は夜間のみ在宅酸素使⽤中 N︓いつも通りの⾷事で胃残増加なし 経⼝摂取でムセなし だから、、、 • 1)のような話が出てきたら、すでに状態が悪くなっている、かもしれない • 2)3)のような話が出てきたら、まだそこまでしんどくない、かもしれない • よく分からない時は、遠慮なくかかりつけ医に電話で相談しよう︕
#21.
①の患者でたまに陥るパターン (よくわかんないけど、今は元気そうだし⼤丈夫でしょ。) ⾵邪ですね。お薬出しておくのでそれで様⼦をみましょう。 (あんまり頼りにならないな。家で頑張るか、、、)あ、はい。 • 全⾝状態良好で急性上気道炎と診断し、対症療法指⽰ • 翌⽇夜、咳嗽で眠れず在宅酸素 2L/minでSpO2 90%前後のため救急受診 強い陥没呼吸・多呼吸あり、胸部レントゲンで右肺野に完全無気肺形成あり →呼吸状態維持できず⼈⼯呼吸器管理可能な病院に救急搬送 無気肺を形成する前に治療開始できたら、、、 (結果が変わらないこともあります)
#22.
①の患者でうまくいったパターン 体調を崩しているなというサインはありますか︖ いつもと様⼦が違うところはありますか︖ 咳がうまく出せず、吸引の頻度が増えてきたのが⼼配です ⽇中も酸素が必要になってきたら、⼊院になることが多いです • 現時点では全⾝状態良好のため、吸引頻度がさらに増えたら再診を指⽰ • 多呼吸ないが呼気延⻑あり、さらに吸引頻度増えてきたため翌⽇⽇中再診 O2 0.5L/minでSpO2 96%、胸部レントゲンでは気管⽀陰影増強あり 兄が少し前にゼイゼイした⾵邪→患児の迅速抗原検査でRSウイルス陽性 →今後増悪する可能性を考慮し、家族と相談の上⼊院管理開始 • 加湿酸素投与開始、病院スタッフによる頻回吸引を⾏い、4⽇後に退院
#23.
②の患者(再掲) • • • • • • • • A︓気管切開・気切チューブ挿⼊中、吸引の頻度が普段より多い B︓RR 24/min, SpO2 95%(⼈⼯呼吸器管理) 今は副設定(普段より設定が⾼い)なのに1回換気量少ない C︓HR 80/min(普段50台)、BP 75/30mmHg(普段通り) D︓視線合うが元気ない、発熱前後からはけいれん発作なし E︓BT 37.5℃(普段35℃前半)、視診では咽頭発⾚軽度のみ F︓⽗が主たるケアを担っている、遠⽅の⼦ども病院かかりつけ バギーで移動、帰省先でこの⼦が乗れる⾞がない I ︓誤嚥性肺炎での⼊院歴あるが、ここ1年は落ち着いている N︓いつも通りの栄養だが胃残が少し多め
#24.
②の患者だと 体調を崩しているなというサインはありますか︖ いつもと様⼦が違うところはありますか︖ 1)頻脈になってきて、胃残が増えてくると調⼦が悪くなることが多いです 2)⼈⼯呼吸器を副設定に上げても1回換気量が増えないのは、集中治療室に ⼊った時以来です 3)体調が悪くなるとけいれん発作が増えます B︓RR 24/min, SpO2 95%(⼈⼯呼吸器管理) 今は副設定(普段より設定が⾼い)なのに1回換気量少ない D︓視線合うが元気ない、発熱前後からはけいれん発作なし N︓いつも通りの栄養だが胃残が少し多め だから、、、 • 1)2)のような話が出てきたら、すでに状態が悪くなっている、かもしれない • 3)のような話が出てきたら、まだそこまでしんどくない、かもしれない • よく分からない時は、遠慮なくかかりつけ医に電話で相談しよう︕
#25.
②の患者でたまに陥るパターン 3か⽉前に発熱きっかけでICUに⼊って、⽣死の境を彷徨った のが⼼配で、、、 (えぇ︕︖そんなのうちじゃ診れないよ、、、) 悪くなる前に今すぐ⼊院しましょう。 (せっかくの帰省だけど仕⽅ないか、、、)よろしくお願いします • ⾎液検査でCO2貯留、WBC・CRP上昇あり 胸部レントゲンは側弯の影響で肺野の透過性がよく分からない。。。 →とりあえず肺炎として広域抗菌薬で治療開始、胃残もあるので絶飲⾷で • 2⽇後に解熱し呼吸器設定も戻せたが、⾎液検査・胸部レントゲンは変化なし 抗菌薬はそのまま7⽇間投与し、徐々に経腸栄養を増やし2週間で退院 この⼊院と広域抗菌薬投与、必要だった、、、︖ (この早期治療が功を奏することもあります)
#26.
こんなやりとりになることも、、、 体調を崩しているなというサインはありますか︖ 💢 痰の⾊が緑になってきたんです。 多分採⾎したらCRPが5以上になってると思うので確認してください。 5以上だったら⼊院ですよね︖ いえ、今のところ全⾝状態は落ち着いているようですし、 必ずしも⾎液検査までは不要だと思います また、CRPの値だけで⼊院か決まるわけでは そう⾔われて家で様⼦をみてたら2⽇後にICUに⼊ったんですよ︕︖ 今度もそうなったらどうしてくれるんですか︕︕ 前回と今回の原因が同じわけではありません その都度状態を診ながら必要な検査や治療を つまり先⽣は何もしてくれないんですね︕ もういいです︕帰ります︕︕こんなとこ⼆度と来ません︕︕︕
#27.
患者・家族の価値観を知ろう • 医療的ケア児・者は多くの(時に致死的な)疾患や治療経験があり、 患者・家族はかなり濃厚な「病い=病気への主観的な考え」を持っている その患者・家族特有の価値観がある場合も多い • 受診するまでに、今の状態と今までの体験と照らし合わせて、 多くの不安(重症化するかも、またあんなことになったらどうしよう)を 抱えて受診していることが多い • 細かい病気のことは分からなくても、患者・家族の「病い」や価値観を理解 することで、患者・家族が納得しながら検査・治療を進められるような 関係性を築けると理想的 ※「患者中⼼の医療の⽅法」を意識していますが、不勉強なのでモドキです もっと詳しく知りたい⽅は、是⾮調べてみてください
#28.
②の患者でうまくいったパターン 体調を崩しているなというサインはありますか︖ 3か⽉前に発熱きっかけでICUに⼊って、⽣死の境を彷徨ったのが ⼼配で、、、 ⼀度かかりつけ医に前回⼊院したときの様⼦を確認してみますね • ⾎液検査でCO2貯留、WBC・CRP軽度上昇あり 胸部レントゲンは側弯の影響で肺野の透過性がよく分からない。。。 →かかりつけ医に連絡、普段からWBC, CRPは軽度上昇しており、 現時点での全⾝状態や検査結果が普段と著変ないことを確認 ⼊院適応やけいれん発作が増えたときの対応⽅法についても確認
#29.
②の患者 続き 前回ICUに⼊室した際の状況について確認しましたが、 今のところそこまで全⾝状態は悪くない印象です。 もちろん、⾒知らぬ⼟地での発熱なので⼊院で慎重に様⼦をみること も出来ますが、どうしますか︖ 体調が悪くなるとけいれん発作が増えるので、まだそこまでしんどく ない気がします ⼀旦家で様⼦をみてもいいでしょうか︖ 分かりました。院内で情報共有しておきますので、 もし本⼈がしんどそうになってきたらいつでも受診してください • 家族と相談の上、有事はいつでも再診可とし、⾃宅で対症療法指⽰ 3⽇後の再診時には解熱しており、呼吸器設定も元に戻せていた
#30.
②の患者 その後(理想形) 元気になってよかったですね 今回、この⼦が⽣まれて初めての遠出で、祖⽗⺟に会いに来たんです 3か⽉前のこともあり、発熱が怖くてすぐに受診しましたが、 しっかりと対応してくださりとても安⼼できました また帰省の際に困ったことがあれば、当院に連絡ください • かかりつけ医と連携し、今後帰省時の有事対応は当院で⾏う旨について確認 • 以降年1〜2回のペースで帰省し、軽微な体調不良で受診することはあるが、 いずれも⼊院までは⾄らずに済んでいる 数年後、弟も⽣まれ、家族みんなで顔を⾒せに来てくれた 今では体調を崩す機会も減ったため、帰省以外でも家族旅⾏に⾏く機会が 増えているらしい
#31.
Tips(まとめ) • 「その⼈の普段の様⼦」を意識しよう • ABCDEアプローチ+αで考えると 頭が整理される、かも • 患者特有の気をつける点や 患者・家族の「価値観」を聞いてみよう