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肝機能障害の読み解き方

投稿者プロフィール
島田利彦

医仁会武田総合病院

77,264

420

投稿した先生からのメッセージ

病態把握がスムーズになるように、肝機能検査を分類して整理しています。

概要

肝機能障害では症状を伴わず、検査所見から原因を類推する必要がある場面が多い。検査で肝機能障害を見た場合に、どのように分析していくかについて、症例を題材に考えていく。

本スライドの対象者

医学生/研修医

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テキスト全文

肝機能障害の基本と症例紹介

#1.

Essential & effortless肝機能障害

#2.

症例: 20歳代 女性 右季肋部~背部痛  著明な低吸収をきたす肝臓

#3.

TP H   8.7 g/dl ALB H   5.4 g/dL T.BiL H   2.0 mg/dL AST P   724 U/l ALT H   188 U/l ALP H   499 U/l LDH P   690 U/l γ-GTP P  1398 U/l AMY P   863 U/l CPK  129 U/l T-Chol H   307 mg/dL HDL-Chol   64 mg/dL TG H   695 mg/dL BUN H  23.1 mg/dL CRE H  1.79 mg/dL UA P  16.3 mg/dL Na L  131 mEq/l K H   6.3 mEq/l Cl L   83 mEq/l Ca L  8.2 mg/dL 血糖 H   22

肝機能障害の特徴と原因

#4.

肝機能障害の特徴は?考えられる原因は?

#5.

TP H 8.7 g/dl T.BiL H 2.0 mg/dL AST P 724 U/l ALT H 188 U/l ALP H 499 U/l LDH P 690 U/l γ-GTP P 1398 U/l AMY P 863 U/l CPK 129 U/l T-Chol H 307 mg/dL HDL-Chol 64 mg/dL TG H 695 mg/dL BUN H 23.1 mg/dL CRE H 1.79 mg/dL UA P 16.3 mg/dL Na L 131 mEq/l K H 6.3 mEq/l Cl L 83 mEq/l Ca L 8.2 mg/dL 血糖 H 220 mg/dL ALB H 5.4 g/dL A/G

#6.

  # アルコール依存症   # アルコール性脂肪肝 # アルコール性肝炎 # アルコール性膵炎 # 拒食症 診断

アルコール性肝炎とウイルス性肝炎の比較

#7.

ちなみにアルコール性肝炎の典型的な病像は?ウイルス性肝炎とはどう違う?

#8.

アルコール性肝炎  vs. ウイルス性肝炎 アルコール性肝炎が進行して肝硬変になるのではない。アルコール性肝炎はどのステージからでも発症する「発熱・腹痛をきたす急性熱性疾患」

#9.

症例: 70歳代女性 無症状 血液内科通院中 

#10.

WBC 3900 Hb  7.9  MCV 87 Plt 18.3 CRP 1.16 T Bil  0.4 AST  54 ALT  45 ALP  444 G-GTP 126 LAP  84 AMY  25 著明な高吸収を示す肝臓CT画像 正球性貧血・軽度の肝機能障害

骨髄異型性症候群とヘモクロマトーシス

#11.

UIBC  L 10 μg/dl 飽和率 96 % フェリチン精密測定 H 5990 ng/mL BNP P 1505.9 pg/ml 心エコー: 心尖部血栓を認める:18x27mm 等輝度で内部血流なし 可動性あり LV wall motion:diffuse hypo   EF(bi)=30%  

#12.

# 骨髄異型性症候群 # 頻回輸血によるヘモクロマトーシス(心・肝) 診断

#13.

症例クイズ 肝機能検査の概略のみからどのような疾患を想定できる? 肝機能障害をどのように 切り分けていくか?

肝機能検査のアプローチと急性肝障害

#14.

肝機能検査を5グループにわけてみる   AST, ALT          肝細胞障害  T-Bil (D-Bil)       胆汁うっ滞1  ALP, G-GTP    胆汁うっ滞2  PT, APTT, Alb, ChE   肝予備能    血小板           門脈圧亢進(脾腫)

#15.

肝機能障害へのアプローチ 1.   AST/ALT   肝細胞障害 Hepatocellular injury:      a.  AST 優位かALT優位か: AST優位ならアルコール性や肝硬変  (AST/ALT > 2はアルコール性の可能性が高い)    b.  CPKやLDH上昇ないか:  心筋梗塞、横紋筋融解や心不全によるうっ血肝          c.   急性肝障害の原因 ABCDEF+I     ・ Acetaminophen,   HAV,   Autoimmune  自己免疫性肝炎      ・ HBV           ・ HCV           ・ HDV(HBVと2重感染) ,  Drugs       ・ HEV(シカ肉),  その他稀な疾患  (BCS,  Wilson病)          ・ Fatty liver (重症のReye, HELLPを含む)      ・ Ischemia  (ショック・門脈塞栓・BCSなど:  LDH↑↑、画像変化に乏しい)     

#16.

肝機能障害へのアプローチ 1.    AST/ALT   肝細胞障害 Hepatocellular injury:         d. Fulminant hepatitis (肝性脳症・PT 40%以下)       劇症肝炎をきたす疾患は比較的限られる        薬剤 : 抗結核薬、抗がん剤、アロプリノール、アセトアミノフェン       HBV       虚血       Reye症候群

胆汁うっ滞の評価と診断

#17.

肝機能障害へのアプローチ 2. T-Bil      肝由来であれば胆汁鬱帯でD-Bil、ALP・GGTP上昇を伴うことが多い.                  ・ Isolated hyperbilbinemia (他に症状所見のない単独のBil上昇)は      indirect優位で体質性黄疸、溶血や無効造血、巨大血腫が多い     (肝疾患の可能性は少ない)      ・ 抱合比と予備能は劇症化の目安になる 

#18.

肝機能障害へのアプローチ  3. ALP/GGTP   Bil上昇がなければ、不完全な胆道系閉塞を示唆する         a. Infiltration pattern (肉芽腫): 肝内胆管レベルの微小閉塞        粟粒結核・サルコイドーシス・梅毒・レプトスピラ・多発癌転移 etc. b. 胆管での圧上昇による分泌亢進       PBC 原発性胆汁性肝硬変    ファーター乳頭部癌(総胆管の不完全閉塞)

#19.

Bil上昇のないALP, G-GTP上昇3つのパターンの模式図 PBCなどの肝内胆管病変 多発肝肉芽腫性病変 不完全な胆管閉塞

肝細胞障害と胆汁鬱滞の鑑別

#20.

肝機能障害へのアプローチ  2-3  臨床で良く遭遇する重大な病態 「T-bil上昇 + ALP, G-GTP上昇」 をどう考える?           胆汁うっ滞(Cholestasis)の原因はなにか      →  機能的胆汁うっ滞(原疾患を加療) なのか          物理的閉塞(ドレナージが必要)なのか          →  まずは腹部エコーで閉塞所見を確認: 肝内~肝外胆管拡張を確認           機能的胆汁うっ滞 ; 敗血症・薬剤・重症ウイルス性肝炎などで起こりえる.        閉塞との鑑別は難しいことも (病歴と経過も重要。次頁)                    

#21.

 肝細胞障害か、胆汁鬱滞か  The R value =       [(ALT level ÷ ALT正常上限) / (ALP level ÷ ALP正常上限)]                                     R value > 5 肝細胞障害を示唆 (単独では判断しない)       R value < 2 胆汁鬱帯を示唆        敗血症による胆汁うっ滞の特徴          T-Bil<10, AST/ATL軽度上昇, ALP正常の3倍程度まで                            Nisha Chand Hepatology 2007;45:230-241 World J Hepatol 2021 November 27; 13(11): 1688-

#22.

肝機能障害へのアプローチ 4 - 5.    PT /Alb /コリンエステラーゼ        肝合成予備能        凝固(PT,APTT)  数日間        コリンエステラーゼ  約10日間     アルブミン  2から3週間      5.  血小板減少                  門脈圧亢進症 (脾腫);  肝繊維化を反映       HCVでは肝硬変の進展と比較的相関性が高い           (血小板10万以下は肝硬変を示唆)

尿ビリルビンとフェリチンの解釈

#23.

雑記帳1.  尿ビリルビン   尿定性検査で尿Bilが陰性なのに血清T-Bilが上昇している場合の解釈は?    尿中BilはD-bil上昇を示す →  尿中Bil陰性ならI-Bilが上昇している  ALP   ・ALP単独の上昇(GGTPは正常) → 骨型ALP:成長期や骨折後にみられる   ・多発性骨髄腫でALPは上昇する?                        →  原則上昇しない。ALPは骨形成マーカー                          多発性骨髄腫はpure osteolytic(骨吸収)   ・ALP単独の低下          → 亜鉛欠乏かも(ALPの活性に亜鉛が必要)

#24.

雑記帳2.  アンモニア NH3   Non hepatic hyperammonemia 非肝性高アンモニア血症   肝硬変がなくてもアンモニアは上昇する      ・ PS shunt (門脈大循環シャント)      ・ アンモニア産生菌による尿路感染      ・ バルプロ酸        ・ 先天性尿素サイクル異常      ・ 多発性骨髄腫の一部      ・ 痙攣後     ・ 検体放置 門脈大循環シャントの模式図

#25.

雑記帳3.  フェリチンの上昇 : 非特異的炎症に加えて 1. Metabolic syndromeの一部   = DIOS (Dysmetabolic iron overload syndrome) 2. ヘモクロマトーシス   3. 成人スティル病, 血球貪食症候群, マクロファージ活性化症候群

肝機能検査の重要ポイントとまとめ

#26.

初動についてのまとめ(概略) 常に薬剤とアルコールを念頭に

#27.

症例クイズの鑑別診断

#28.

肝機能検査のTake home points   AST, ALT    肝細胞障害  T-Bil (D-Bil)      胆汁うっ滞 (強)  ALP, G-GTP    胆汁うっ滞 (弱)  PT, APTT, Alb, ChE    肝合成予備能    血小板 門脈圧亢進(脾腫) ICG, Child-Pugh も要学習

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