#4.
札幌東徳洲会病院 Hybrid ER(since 2024) 北海道初、二次救急医療機関
#5.
上腸間膜動脈血栓症の 病態と診断
#6.
腸管虚血を病態生理で考える キーワードは「オームの法則」と「圧格差」 腸管循環生理 灌流圧=動脈圧ー静脈圧ー組織圧 灌流量=灌流圧/抵抗 ②動脈狭窄/閉塞 ③静脈狭窄/閉塞 ①心拍出量低下 ④腹腔内圧上昇
#7.
上腸間膜動脈血栓症は腸管虚血の一部 プラーク破裂か塞栓症かで考え方が変わります 腸管循環生理 灌流圧=動脈圧ー静脈圧ー組織圧 灌流量=灌流圧/抵抗 ①心拍出量低下 ・低左心機能 ・循環血液量減少 上腸間膜動脈血栓症 上腸間膜動脈塞栓症 ②動脈狭窄/閉塞 非閉塞性腸管膜虚血 ・血栓性=動脈硬化 ・塞栓性=心原性塞栓など ④腹腔内圧上昇 上腸間膜静脈血栓症 門脈血栓症 ③静脈狭窄/閉塞 →門脈血栓症など ・腹腔内出血 ・急性膵炎 ・熱傷による皮膚硬化 腹部 コンパートメント 症候群
#8.
上腸間膜動脈領域の虚血 急性の場合にはAMI(=Acute Mesenter ic Isc hemia)と呼ばれることも 病名 時相 原因・病態 プラーク破綻 解離 急性上腸間膜動脈血栓症 心原性 急性上腸間膜動脈塞栓症 治療 ①血栓回収/溶解 ②血栓摘出術 ③バイパス術 A to A emboli 非閉塞性腸管膜虚血 上腸間膜静脈血栓症 慢性閉塞性上腸間膜動脈 閉塞症 凝固異常・炎症 慢性 動脈硬化による狭窄 致死率 34% 1) 70% 1) (27〜100%) (13〜68%) 女>男 34% 1) (13〜68%) 女>男 急性 心拍出量↓ 血管抵抗↑ 発症率 19% 1) 全身管理 (+持続動注) (5〜52%) 抗凝固療法+AT-Ⅲ補充 13% 1) (+持続動注) 女=男 (2〜26%) 女 男 66% 1) (18〜88%) 70% 1) (50〜83%) 44% 1) (25〜69%) ①ステント留置 ②バイパス術 1) Schoots IG et al., Br J Surg. 2004;91(1):17-27. より引用(近年、塞栓症は減り、血栓症やNOMIは増えている)
#9.
上腸間膜動脈血栓症/塞栓症の考え方 病態が違えば、好発部位も治療方法も違う 上腸間膜動脈血栓症 危険因子: 上腸間膜動脈塞栓症 危険因子: 動脈硬化性疾患、透析、 心房細動、低左心機能、 食後腹痛、体重減少 僧帽弁疾患など 症状:急性/進行性の腹痛 症状:突然発症の激痛 部位:殆ど起始部 部位:中結腸動脈以遠が多い
#10.
上腸間膜動脈血栓症/塞栓症の診断 結局、造影CTを撮影するしかないが、いつ撮るのかが大事 問診すべきこと 検査すべきこと 落とし穴になり得ること 主症状 十二誘導心電図 突然発症の持続する腹痛 心房細動 腹部の圧痛は無いことが多い 乳酸値は上昇しないことが多い 発症した瞬間、何していたか明確 血液検査 随伴症状 Dダイマー上昇 嘔吐が多い、下痢が少ない 危険因子 動脈硬化・心房細動 上腸間膜動脈血栓・塞栓症疑ったらCTA撮影すべし! (1mm以下のスライス厚で三相撮影)
#11.
小括:上腸間膜動脈血栓症の病態と診断 病態生理と診断のポイント • • 腸管の虚血は「動脈血流の低下」のみならず「静脈圧や組織圧の上昇」でも起こる。 • 上腸間膜動脈血栓症は「動脈硬化+プラーク破綻」で生じる病気 • 上腸間膜動脈塞栓症は「心臓や大動脈から血栓が飛来」して生じる病気 • どちらも最終的には腸管壊死を起こし得る(梗塞) 疑わしい症例では造影CT(動脈相+平衡相)を撮影して評価すべし • 突然発症の腹痛腹痛では必ず頭の片隅に置いておく • 更に、心房細動がある場合、かなり疑わしい
#12.
上腸間膜動脈血栓症の 治療戦略
#13.
腸管虚血の治療選択肢は「OR」から「AND」へ 取捨選択ではなくコンビネーションの治療へ IVR or 手術 旧教科書的記載 適応:壊死を伴わない虚血腸管 (Golden hour 6〜8時間) 禁忌:壊死を伴った腸管虚血 安静を保てない症例 IVR & 手術 新教科書的記載 絶対適応:壊死を伴わない虚血腸管 →理想的治療 相対適応:救済可能部分のある虚血腸管 →短腸症候群の回避 禁忌:救済可能部分のない虚血腸管
#14.
腸管虚血の治療戦略は時間と場所で異なる 近位閉塞は危険だが、早期であれば血行再建で治療可能 温存可能性 問題点:急性期脳梗塞のような 確立された指標が無い 時間
#15.
腸管虚血の治療戦略は、その先には何があるのか、で異なる 治療戦略は関連診療科で協議が望ましい 温存可能性 As soon as possibleでカテしよう! 結果良ければ全て良し?! 元通りでなくても生活を守りたい! でも、結構辛い治療になる。 リハビリ頑張れるかな? ここで急死することを避けたとて、 本当に望む生活ができるのか? 時間
#16.
本邦における上腸間膜動脈血行再建の課題 我々はウロキナーゼありきで治療していた 血栓溶解療法 現在、日本ではウロキナーゼ使用不可能 rt-PAも「適正使用のお願い」が出ている 現在のホットトピックス 血栓吸引療法 各病院で工夫している(脳血栓回収デバイスの流用など…) Penumbra社IndigoTM systemの承認 外科的血行再建 得意な施設もあると聞いていますが、あまり馴染みがありません 開腹Fogartyやバイパス術
#17.
ウロキナーゼは戻ってこない、rt-PAも使えない? 欧州でのアルテプラーゼ出荷制限は解除されたが、薬価的には厳しいかも? https://medical2.eisai.jp/fileviewer/pdf_downloader.php?access_key=63ff0dcbb67b7#toolbar=0 最終アクセス:2025/05/30
#18.
札幌東徳洲会病院方式・血栓吸引デバイスの選択 ウロキナーゼ亡き今、物理的血栓回収に尽力するしかない 1. マイクロシステムで遠位を確保 Parent Plus 60® 2. 吸引カテーテルで血栓吸引 8 or 9Frシース 3. 暫くするとガイディングシースが軟化 (25cm長) 4. ガイディングシースそのもので血栓吸引 その他物品: ・180cm アングル型ラジフォーカス® ・ThrombusterⅡ® 4Fr コブラ型カテーテル ・Master HF® ・Meister®
#19.
TM Penumbra社Indigo systemによる血栓吸引療法 BAC K LOC K SYRINGEよりも迅速且つ確実に引けるらしい? 必要人員:最低3人 ①主術者:カテーテル操作(IVR, CVIT専門医必須) ②助 手:セパレーター操作(IVR, CVIT専門医不要) ③遮断係:ポンプの把握+吸引チューブ操作(IVR, CVIT専門医不要) カテーテル本体 セパレーター 急速・大量に吸引するので、相当量が瀉血される →遮断係が実は一番重要かも?
#20.
晩期の再灌流は正義なのか? 虚血再灌流障害には警戒しなければならない 温存可能性 広範腸管虚血の再灌流は危険 救済できる腸がないのみならず、 カリウムなど有害物質が上昇し得る (cf:Crush症候群) Golden Hourを過ぎた 血行再建は慎重 or 禁忌 本当の意味でここを見極める指標は無い 切除は必要不可欠 時間
#21.
小括:上腸間膜動脈血栓症の治療 治療戦略の考え方も戦術の選択も変化してきている • • 急性腸管虚血の治療戦略は時間と場所で異なる • 上腸間膜動脈根部に近ければ近い程、早期に虚血が完成してしまう • 発症早期でなくても温存腸管を増やすために血行再建を行うことがある • 晩期の血行再建は虚血際灌流障害による合併症死のリスクがある IVRの方法論は変化してきている • 血栓溶解療法はウロキナーゼ供給停止によって実質的に選択困難になっている • 血栓吸引療法は新たなDeviceの発売によって今後急速に進化していくと思われる
#22.
急性腸管虚血における 連携と協働
#23.
急性腸管虚血診療の特徴 急性腸管虚血診療は、(ちょっと)外傷診療に似ている(かも知れない) • 最終目標=「心身共に発症前に近い状態での社会復帰」 • 必要条件1:確実な救命 • 必要条件2:機能障害の最小化 → 「急性期死亡」を回避 「短腸症候群」「人工肛門」を回避 • • 必要条件3:整容的障害の最小化 病態の可逆性は時間経過の中で変わり、複数の診療チームが介入する • 複数の職種、チームが同じ方向を向かなければならない • 生理学的兆候が不安定な場合、治療の選択肢が狭まる
#24.
IVRチームとカテ待機呼び出して! 外科とOPE待機も一報しといて! RSIで挿管するからもう準備して! 左右大腿動静脈シースもね! 輸血何単位院内にあるか確認! 輸液温めておいてねー! 5分後ブリーフィング するよ! 重症外傷受け入れ決定 あれこれ同時進行で準備中
#25.
しかし、実際は難しい?
#26.
「血行再建の後で試験開腹してくれませんか?」 本邦における急性腸管虚血はどれだけ適切にできているのか? 麻酔科が何て言うか分からないですが… 手術・IVR・集中治療は 適切にコラボできているか? 術場が開くか確認してみますケド… ↓ 相互理解の進化と 共通認識の形成が ICUで粘ってよ 必要不可欠
#27.
#28.
それぞれのパートを違う職種が担う 全ての職種ができないとならないことがある 次の人にバトンを渡さなければならない 正しくバトンを渡すのは「技術」である
#29.
救”腸”の連鎖、もしくは、救”生”の連鎖 それぞれの職種・チームが果たすべき役割を果たし、相手にバトンを繋げる 早期発見 早期根本治療 集中治療 市民教育 院内体制整備 院内体制整備 トリアージ教育 技術訓練 腹部開放管理 STAT報告 デバイス更新 Advanced Care Planning
#30.
早期発見を早期根本治療に繋げる「お節介」 それぞれの職種・チームが果たすべき役割を果たし、相手にバトンを繋げる 突然発症の腹痛!脈が不正だ! SMAOいるの? DOAC飲み忘れている! カテ準備?オペは? 情報提供 準備を前倒せる トリアージレベル適正化 SMAO疑いなら DYNAMICですよね! 右外腸骨蛇行強いです 情報提供 SMAはL1下縁です 撮影条件適正化 ZIO VINCENT SMAOありました! SMAOありました! 画像再構成 STAT報告 経路設計
#31.
札幌東徳洲会病院方式・腹部救急+集中治療 IVRチームは誰にバトンを渡すのか? (+) 手術室 血行再建 腸管 壊死 (ー) 腹部開放管理 計画的再手術 集中治療室 一般病床
#32.
我々もAdvanced Care Planningの一翼を担い得る IVRチームは誰にバトンを渡すのか? (+) 手術室 血行再建 腸管 壊死 意識清明な本人と会えた 唯一のスタッフになるかも 知れない (ー) 腹部開放管理 せん妄 廃用症候群 計画的再手術 集中治療室 一般病床
#33.
小括:急性腸管虚血における連携と協働 各自の役割を果たしながら、少しだけ「お節介」するとスムーズに動けるかも? • • 急性腸管虚血の治療はチーム戦である • 各職種が全員自分のベストを尽くすことが必要である • 各メンバーが治療の全体像を理解して次にパスを出す構えが必要である • IVRの技術的成功が患者の予後を決定付けるとは限らない IVRチームは意識清明な本人を知る最後の医療者になり得る • スピード命の診療補助は救命治療として間違いなく必要である • その中で「看護」や「人間としての関わり」がどれだけできるかが課題
#34.
ご清聴ありがとうございました。