#4.
感染症診療の原則 患者の免疫状態
「どの免疫が低下しているか」 感染臓器 感染微生物 抗菌薬の選択
#5.
免疫 自然免疫 獲得免疫
#6.
c 簡単に言うと ①皮膚や粘膜のバリアでバイキンを遮断
バイキンがバリアを破って侵入
→②マクロファージや好中球がやっつける
殻(莢膜)を持ったバイキンは生き残る
→③液性免疫(主にB細胞)によりやっつける
細胞の中に隠れて生き残る(細胞内寄生菌)
→④細胞性免疫(主にT細胞)によりやっつける
#7.
免疫不全を4つのカテゴリーに分ける バリア破綻
好中球減少
液性免疫の低下
細胞性免疫の低下
#8.
患者背景からの微生物推定 黄色ブドウ球菌
レンサ球菌
腸球菌
大腸菌
クレブシエラ
緑膿菌
嫌気性菌
カンジダ
液性免疫 細胞性免疫 バリア 好中球 聖路加国際病院感染症科 森先生より
#9.
バリア障害 黄色ブドウ球菌
レンサ球菌
腸球菌
大腸菌
クレブシエラ
緑膿菌
嫌気性菌
カンジダ
体表面や粘膜に常在している微生物
「Bacterial translocation」 手術、放射線、化学療法、中心静脈カテーテルなど
による皮膚、消化管粘膜の破綻 好中球 液性免疫 細胞性免疫 聖路加国際病院感染症科 森先生より
#10.
多剤耐性菌:
MRSA, ESBL
糸状菌:
アスペルギルスなど 液性免疫 細胞性免疫 好中球減少 「Bacterial translocation」に加えて
多剤耐性菌
真菌(糸状菌)など 血液腫瘍(AMLなど)、化学療法などによる好中球減少 黄色ブドウ球菌
レンサ球菌
腸球菌
大腸菌
クレブシエラ
緑膿菌
嫌気性菌
カンジダ
聖路加国際病院感染症科 森先生より
#11.
莢膜を持つ細菌:
肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、 クレブシエラなど
真菌:
クリプトコッカス 液性免疫低下 通常の細菌に加えて莢膜を有する細菌に感染しやすくなる 脾摘、血液腫瘍(多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病)などによる液性免疫低下 黄色ブドウ球菌
レンサ球菌
腸球菌
大腸菌
クレブシエラ
緑膿菌
嫌気性菌 バリア 好中球 細胞性免疫 聖路加国際病院感染症科 森先生より
#12.
好中球 液性免疫 細胞性免疫低下 細胞内寄生菌
細菌: リステリア、ノカルジア、 サルモネラ、レジオネラ
結核、非定型抗酸菌
ウイルス: ヘルペスウイルス、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス、インフルエンザ
真菌: カンジダ、クリプトコッカス、ニューモシスチス、アスペルギルス
寄生虫: トキソプラズマ 主に細胞内寄生菌に感染しやすくなる 血液腫瘍(悪性リンパ腫)、抗がん剤、ステロイド、糖尿病、肝硬変、加齢などによる細胞性免疫低下 黄色ブドウ球菌
レンサ球菌
腸球菌
大腸菌
クレブシエラ
緑膿菌
嫌気性菌 バリア 聖路加国際病院感染症科 森先生より
#13.
#14.
Table of Contents 免疫不全の考え方
予防抗菌薬
血液腫瘍の各論
発熱性好中球減少症(FN)
#15.
予防の対象 ①細菌感染症
②真菌感染症
③ヘルペスウイルス感染症
④ニューモシスチス肺炎
#16.
Clin Infect Dis. 2011 Feb 15;52(4):e56-93.
#17.
Clin Infect Dis. 2011 Feb 15;52(4):e56-93. 好中球100/µl以下の状態が7日以上予想される
ハイリスク患者において
フルオロキノロンの予防内服を考慮する
#18.
#19.
Clin Infect Dis. 2011 Feb 15;52(4):e56-93.
#20.
Clin Infect Dis. 2011 Feb 15;52(4):e56-93. 基本はCandida感染症予防
Aspergillus感染症予防は適宜考慮
#21.
抗真菌薬の分類 FLCZ VRCZ MCFG L-AmB
#22.
#23.
Clin Infect Dis. 2011 Feb 15;52(4):e56-93. HSVとVZVの再活性化を減らすため
アシクロビルの予防内服を行う
#24.
#25.
#26.
抗微生物薬の予防投与 細菌 → レボフロキサシン(LVFX)
真菌 → フルコナゾール(FLCZ)
ボリコナゾール(VRCZ)
ウイルス → アシクロビル(ACV)
PCP → ST合剤 500mg/day 200mg/day 4mg/kg×2 200mg/day 1錠/day
#27.
抗微生物薬の予防投与 細菌 → レボフロキサシン(LVFX)
真菌 → フルコナゾール(FLCZ)
ボリコナゾール(VRCZ)
ウイルス → アシクロビル(ACV)
PCP → ST合剤 500mg/day 200mg/day 4mg/kg×2 200mg/day 1錠/day
#28.
Table of Contents 免疫不全の考え方
予防抗菌薬
血液腫瘍の各論
発熱性好中球減少症(FN)
#29.
#30.
造血器腫瘍のWHO分類 近大医学部 血液・膠原病内科スライドより
#31.
急性骨髄性白血病(AML) AML非寛解時では好中球の数だけでなく機能の低下も伴っている
AMLの治療ではアントラサイクリン系とシタラビンの化学療法が中心となり, 高度の骨髄抑制と粘膜障害を起こす 「バリア破綻」「好中球減少」
#32.
急性リンパ性白血病(ALL) 疾患そのものによる細胞性免疫低下があり,治療の際に高用量のステロイドを使用する 「バリア破綻」「好中球減少」
「細胞性免疫低下」
#33.
慢性骨髄性白血病(CML) 急性転化を起こすと急性白血病と同様の対応を要するが, 慢性期(CML-CP)では感染症のリスクはあまり高くない.
#34.
慢性リンパ性白血病(CLL) 疾患そのものによる液性免疫低下があり,
治療に細胞性免疫低下を起こす薬剤を使用する 「バリア破綻」 「好中球減少」
「液性免疫低下」「細胞性免疫低下」 ベンダムスチン,フルダラビン,リツキシマブ
(再発難治例→イブルチニブ, アレムツズマブ)など
#35.
悪性リンパ腫 日本では多くが非ホジキンリンパ腫であり,
B細胞リンパ腫とNK/T細胞リンパ腫に分かれる
中でも「AITL」と「ATLL」は高度な細胞性免疫低下をきたす疾患である. 「バリア破綻」 「好中球減少」
「液性免疫低下」「細胞性免疫低下」 AITL:血管免疫芽球性T細胞リンパ腫
ATLL:成人T細胞白血病リンパ腫
#36.
#37.
多発性骨髄腫 疾患そのもので「液性免疫低下」を起こす
ここ十数年で多くの新規薬剤が開発され, 病気の予後は激変. (バリア破綻)
「液性免疫低下」「細胞性免疫低下」 ボルテゾミブ(プロテアソーム阻害薬;PI)
レナリドミド(免疫調整薬;IMiDs)
カルフィルゾミブ(PI)
ポマリドミド(IMiDs)
ダラツムマブ(モノクロナール抗体) など ボルテゾミブなどプロテアソーム阻害薬(PI)はヘルペスウイルス属感染症の発症リスクが高い
→アシクロビルの予防投与が推奨されている
#38.
Amar Safdar et al. Principles and Practice of Cancer Infectious Diseases, p35より
#39.
CASES
#40.
急性骨髄性白血病(AML)に対して寛解導入療法 (イダルビシン+シタラビン)を開始後20日目.
レボフロキサシン, フルコナゾール, アシクロビルの予防投与中に発熱を認めた.
意識清明, 体温38.4℃, 血圧120/64 mmHg, 脈拍数96回/分, 呼吸数16回/分, SpO2 96%(RA)
身体診察では口腔内の著明な粘膜傷害を認めた.
治療開始前から考えて1か月以上好中球減少が 持続している. <CASE 1> 38歳男性
#41.
AMLの症例であり
「バリア破綻」と「好中球減少」に注意する.
FNとして抗緑膿菌活性のあるセフェピム投与を 開始するが, キノロン系抗菌薬予防投与下での 口腔内粘膜障害を認めており, 抗グラム陽性球菌活性をもつバンコマイシンの併用も検討する.
治療案:
セフェピム(CFPM)2g 8時間毎
± バンコマイシン(VCM)
#42.
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)に対してCHOP療法による寛解を得た後
自家末梢血幹細胞移植(前処置:LEED療法)を行い寛解維持していた.
約2週間全身倦怠感あり38℃台の発熱が1週間持続したため救急外来を受診した.
意識清明,体温38.3℃, 血圧122/84 mmHg, 脈拍数100回/分, 呼吸数24回/分, SpO2 90%(RA)
身体診察では異常所見を認めない
胸部単純X線写真で左中肺野に結節影を認めた. <CASE 2> 47歳男性 発熱
#43.
AITLの症例であり「細胞性免疫低下」に注意する.
肺の結節影に関してはリンパ腫再発かもしれないし感染症かもしれない. 感染症でも細菌・真菌・ウイルス・寄生虫など多くの可能性が考えられるため,もっとも大切なことは ”Tissue is issue”つまり組織生検検査である.
本症例では気管支鏡検査による肺生検・培養検査・遺伝子検査によりNocardia asteroidesによる肺ノカルジア症と診断された.
治療案:
ST合剤(トリメトプリムとして15mg/kg/day) 6-8時間毎
#44.
多発性骨髄腫に対してボルテゾミブ, レナリドミド, デキサメタゾンによる治療(VRD療法)を3コース後.
大量シクロホスファミド療法で末梢血幹細胞採取.
その後はさらにVRD療法を継続し,
予防的抗ウイルス薬としてアシクロビルを投与.
原病の治療経過は順調であったが, 発熱と強い頭痛を認めたため救急外来を受診した.
意識レベルGCS:E3V4M5と低下あり,
体温39.8℃, 血圧90/55 mmHg, 脈拍数140回/分, 呼吸数24回/分, SpO2 98%(RA)
身体診察では項部硬直とKernig徴候を認めた. <CASE 3> 55歳女性
#45.
骨髄腫の症例であり「液性免疫低下」に注意する.
液性免疫低下では莢膜を有する微生物が問題となる. 本例は細菌性髄膜炎の所見を認め, エンピリック治療と してセフトリアキソン(CTRX)2g 12時間毎+アンピシリン(ABPC)2g 4時間毎+バンコマイシン(VCM)1g 12時間毎による抗菌薬治療に加え, デキサメタゾン10mg 6時間毎 投与も併用し治療を開始した.
その後血液培養・髄液培養からペニシリン感受性肺炎球菌(PSSP)が検出された.
治療案(PSSPの場合):
・ペニシリンG(PCG)400万単位 4時間毎
・アンピシリン(ABPC)2g 4時間毎
#46.
Table of Contents 免疫不全の考え方
予防抗菌薬
血液腫瘍の各論
発熱性好中球減少症(FN)
#47.
発熱性好中球減少症とは
“好中球数が500/µl未満もしくは48時間以内に500/µl未満になることが予測される中で、
体温が38.3℃以上もしくは
38℃以上が1時間以上続く状態” ※腋窩温では37.5℃
#48.
リスク評価が大切 高リスク
prolonged(>7days)and profound(≦100)neutropenia
血行が不安定
重症な粘膜炎
急性に発症した腹痛,下痢
神経学的な異常
CLBSI
肺炎,低酸素血症
他の合併症(肝機能障害,腎機能障害)
MASCC score < 21
#49.
リスク評価が大切 低リスク
予想される好中球減少期間が7日以内
合併症がほとんどない
MASCC ≧ 21 26点満点
21点以上:低リスク群
20点以下:高リスク群 MASCC スコア
#50.
Clin Infect Dis. 2011 Feb 15;52(4):e56-93.
#51.
Clin Infect Dis. 2011 Feb 15;52(4):e56-93.
#52.
Clin Infect Dis. 2011 Feb 15;52(4):e56-93.
#53.
Case (A) 52歳女性
非小細胞肺癌に対して化学療法(weekly carboplatin
and paclitaxel)行い, 治療後に帰宅.
38℃の発熱が1日続いたため救急外来を受診.
<ROS> 嘔気嘔吐なし, 腹痛下痢なし, 咳嗽なし
<PMH> 真菌感染の既往なし, COPDなし
<P/E> 感染focusなし, 脱水所見なし
<L/D> ANC 400, AST/ALT 34/42, BUN/Cr 16/0.4
<CXR> 肺炎の所見なし
#54.
治療は? セフェピム
セフェピム+バンコマイシン
シプロフロキサシン+アモキシシリンクラブラン酸
モキシフロキサシン
その他
#55.
治療は? セフェピム
セフェピム+バンコマイシン
シプロフロキサシン+アモキシシリンクラブラン酸
モキシフロキサシン
その他
#56.
Case (A) 続き 52歳女性(非小細胞肺癌に対する化学療法後)
モキシフロキサシン400mg/日の内服を開始
48時間以内に速やかに解熱し、
24時間以上発熱なく経過している
好中球 900/µlと回復
採取した培養はすべて陰性
#57.
抗菌薬治療はいつ終了する? 今すぐ
好中球1000/µlを超えるまで
合計7日間
合計14日間
予防内服に切り替える
その他
#58.
抗菌薬治療はいつ終了する? 今すぐ
好中球1000/µlを超えるまで
合計7日間
合計14日間
予防内服に切り替える
その他
#59.
Case (B) 56歳男性
初発の急性骨髄性白血病(AML)の診断となり入院.
寛解導入療法(cytarabine and idarubicin) 1コース目day13
LVFX,FLCZ,ACVの予防内服中
好中球減少(ANC50)が7日継続している.
38.2℃の発熱を認めたため当直コール.
BP130/63, PR120, RR16, SpO298%(RA)
口腔内に重症な粘膜障害あり
PICC lineあるが炎症の所見なし
他に有意な異常所見なし
#60.
治療は? セフェピム
セフタジジム
セフェピム+バンコマイシン
モキシフロキサシン
その他
#61.
治療は? セフェピム
セフタジジム
セフェピム+バンコマイシン
モキシフロキサシン
その他
#62.
VCM投与のindication ①循環動態が不安定
②画像で確認された肺炎
③血液培養からグラム陽性球菌が検出されたとき
④カテーテル関連感染症(CRBSI)が疑われる時
⑤皮膚・軟部組織感染症
⑥MRSA, VRE, PRSPなどの定着
⑦高度の粘膜障害がありキノロン系抗菌薬の予防投与を経験的治療で使用している場合
#63.
#64.
Case (B) 続き 56歳男性(AMLに対する寛解導入療法後)
CFPM+VCMを開始
48時間以内に解熱し, 全身状態は良好
まだ好中球数は80/µlと低値
肺/副鼻腔のCTでは所見なし
アスペルギルス抗原は陰性
血液培養で Staphylococcus epidermidis 陽性
-Periphery: 100CFU
-PICC: 1000CFU
喀痰培養,尿培養で陰性
#65.
治療はどのように変更する? バンコマイシンは継続するがセフェピムは終了する
バンコマイシンは継続するがセフェピムを セフトリアキソンに変更する
バンコマイシンは継続するがセフェピムを レボフロキサシン予防内服に切り替える
その他
#66.
治療はどのように変更する? バンコマイシンは継続するがセフェピムは終了する
バンコマイシンは継続するがセフェピムを セフトリアキソンに変更する
バンコマイシンは継続するがセフェピムを レボフロキサシン予防内服に切り替える
その他
#67.
Case (C) 64歳男性
治療抵抗性の再発性急性骨髄性白血病(AML)
再寛解導入療法(high dose cytarabine)の1コース目day10
LVFX,FLCZ,VACVの予防内服中
好中球減少(ANC100未満)が28日継続.
38.5℃の発熱を認めたため当直コール.
BP128/74, PR110, RR20, SpO297%(RA)
口腔内に重症な粘膜障害あり
PICC lineあるが炎症の所見なし
他に有意な異常所見なし CFPMとVCMの投与を開始
#68.
胸部単純写真
#69.
胸部単純CT
#70.
Case (C) 続き 64歳男性(治療抵抗性AML)
アスペルギルス抗原 1.1(+)
培養
- 血液:陰性
- 喀痰:陰性
- 尿:陰性
CT:副鼻腔に所見なし Probable
Invasive Aspergillosis
#71.
Case (C) 続き 64歳男性(治療抵抗性AML)
アスペルギルス抗原 1.1(+)
培養
- 血液:陰性
- 喀痰:陰性
- 尿:陰性
CT:副鼻腔に所見なし ボリコナゾール
(VRCZ)を追加 Probable
Invasive Aspergillosis
#72.
Take Home Messages 血液腫瘍患者の感染症は「原疾患」と「治療」による免疫不全を意識する
それぞれ4つのカテゴリーの免疫不全に 分類して考える
骨髄球の腫瘍は好中球の異常, リンパ球の腫瘍は細胞性免疫の異常を起こしやすい
#73.
参考文献 Clin Infect Dis. 2011 Feb 15;52(4):427-31.
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