#4.
どうしても退院
されるなら、この
書類に署名下さい ・・・ https://loosedrawing.com/ 患者さん 「本書類は、私(患者)が担当医の助言に反して退院することを証明する。医師は退院に伴う身体的・精神的リスクがあることを説明した。
私は何かあっても病院に一切の法的責任を問わないことを誓う。」 主治医
#5.
同様の場面に遭遇したことはありますか?どんな感情を抱きましたか?病院として対応は決まっていますか? https://loosedrawing.com/illust/540/
#6.
退院後に病状が悪化したら自己責任?
#7.
本日の内容 自主退院とは
患者さんとの対話
意思決定能力の評価
フォローアップ
#8.
1.自主退院とは
#9.
自主退院とは 医師が退院を勧めるよりも先に、患者さんの意思で退院すること 英語: Patient-directed discharge, Leave before medically advised, Discharge against medical advice *本スライドでは「自主退院」という呼称に統一します
統一された定義がないため、実際に”自主退院”と定めるかどうかは医師の裁量による
Ann Intern Med. 2022;175:1761–1762. doi:10.7326/M22-2964
#10.
自主退院は、再入院のリスクとなる CMAJ. 2013 Oct 1;185(14):1207-14. Ann Epidemiol. 2020;52:77. 自主退院/全退院
割合 30日以内の再入院
(自主退院) 30日以内の再入院
(定期退院)
#11.
自主退院のリスク因子 Am J Med. 2021 Jun;134(6):721-726. J Gen Intern Med. 2023 Dec 19. Healthcare (Basel). 2021 Jan 21;9(2):111.
#12.
自主退院は健康格差の一つの表現型 →社会として取り組むべき課題
#13.
2. 患者さんとの対話
#14.
自主退院の構造 入院治療を推奨する医療者 ためらう患者さん しばしば起こる対立構造を乗り越えるには? https://loosedrawing.com/illust/540/
#15.
対立構造が生まれる背景 患者さんにとって、病状悪化のリスク
医療者にとっても、退院後に病状が悪化した場合に
責任を追及される法的なリスク N Engl J Med 2023; 388:1230-1232
#16.
患者さんの認識 -なぜ自主退院するのか? Qual Saf Health Care. 2010 Oct;19(5):420-4.
#17.
対話で解決可能な場合もある どうしても外せない仕事があるAさんの病状:
例1) 不安定狭心症で放置すると致死的なリスクがある 例2) 蜂窩織炎/菌血症で静注の抗菌薬が望ましい
経口抗菌薬では治療失敗するリスクがある 例2)では、治療失敗のリスクも説明したうえで、
経口抗菌薬による外来通院加療も選択肢かもしれない
#18.
「退院したい」患者さんに出会ったら 退院したいと思う理由を聴く
→患者さんの心配事は対処可能かもしれない
例: 疼痛でつらい→疼痛コントロールの強化
外来でも治療可能か評価する
→外来移行して治療する選択肢もあるかもしれない
Am J Med. 2021 Jun;134(6):721-726.
#19.
3.意思決定能力の評価
#20.
対話でも解決困難な場合 どうしても外せない仕事があるAさんの病状:
例1) 不安定狭心症で放置すると致死的なリスクがある Aさん「それでも退院する!」 患者さんは自分の意思を表明している
しかし、意思決定能力が十分でないかもしれない
#21.
意思決定能力を評価する基準 Grisso T, 1998.
#22.
意思決定能力はどうやって評価する? 面接を通して4つの基準を満たしているか評価する
構造化された面接 [所要時間 約20分]MacArthur Competence Assessment Tool for Treatment (MacCAT-T) などのツールがある
参考: 日本意思決定支援推進機構HP → 日本語での実施例の動画がある N Engl J Med. 2007 Nov 1;357(18):1834-40.
#23.
Modified from N Engl J Med. 2007 Nov 1;357(18):1834-40. 自主退院のケースを想定して質問の例の表現を修正
#24.
意思決定能力を評価するのは誰か? A. 主治医が評価できる
患者さんとの関係性を築いているメリットがある
・適切な情報提供が行われていることが前提
・患者さんを励まし、意思決定支援を行う
困難な症例では、
①精神科コンサルト ②代理意思決定者へ相談
N Engl J Med. 2007 Nov 1;357(18):1834-40.
#25.
4.フォローアップ
#26.
意思決定能力も十分であったとき どうしても外せない仕事があるAさんの病状:
例1) 不安定狭心症で放置すると致死的なリスクがある Aさん「それでも退院する!」
退院するリスクを理解しており、病状を認識し、論理的思考もできていた
自主退院とするが、退院して終わり、免責の文書に署名
してもらって終わりではない
#27.
自主退院する時に “次善の策”を考える (harm reduction approach)
・退院処方
・フォローアップの約束/再診の指示
・緊急受診の指示 (例: もう一度胸痛が起きたらすぐ受診してください)
→再度受診することを歓迎する Canadian Journal of Emergency Medicine (2023) 25:31–42. Ann Intern Med.2022;175:1761–1762. https://psnet.ahrq.gov/web-mm/discharge-against-medical-advice
#28.
診療録へ記載する事項 ・退院に至った特定の出来事と共同意思決定の試み
(事実に基づく記載とし、感情的な言葉を避ける)
・患者さんが退院したい理由
・患者さんに入院継続するよう励ましたこと
・意思決定能力の評価
・退院処方、再診予約、緊急受診の指示 Am J Med. 2021 Jun;134(6):721-726.
#29.
まとめ 自主退院を希望する患者さんと出会ったら
・先入観を持たず、退院を希望する理由を聴く
・意思決定能力を評価し、意思決定支援を行う
・次善の策を考える
・診療録を丁寧に記載する
Am J Med. 2021 Jun;134(6):721-726.
#30.
自分が経験したときの反省点 意思決定能力を評価するという視点が欠けており、カルテにも記載できていなかった。
易しい言葉で説明するなど、意思決定支援の視点をもう少し持っておくべきだった。
精神科の常勤医師がおらず、コンサルテーションは実際には難しい状況であった。
#31.
TAKE HOME MESSAGE 自主退院は個人の責任だけでなく社会的課題です
自主退院を希望する背景に注目しましょう
よりよい共同意思決定が患者さんと医師を守ります