テキスト全文
熱傷患者における栄養療法の概要と重要性
#2. 内容
HYPERMETABOLISM
カロリー計算
経腸栄養の方法
症例呈示
#3. 内容
HYPERMETABOLISM
カロリー計算
経腸栄養の方法
症例呈示
熱傷患者のハイパーメタボリズムとその影響
#4. HYPERMETABOLISM CATABOLISM ANABOLISM 同化 異化 熱傷患者では異化亢進状態になり,エネルギー需要が増大する
#5. Hypermetabolismのため,敗血症診断の際の,体温,脈拍,呼吸の基準値が,
高めに設定されている 【参考】熱傷に伴う敗血症の診断基準 burn sepsis criteria (米国熱傷学会)
#6. 熱傷患者のHypermetabolismは1年以上続く
栄養サポートチームによる早期介入の重要性
#7. 長期間の栄養管理が必要 栄養サポートチーム(NST)の早期介入
管理栄養士によるフォロー
#8. 薬剤による代謝調節Pharmacological modulation プロプラノロール(β遮断薬)→異化抑制
オキサンドロロン(テストステロン誘導体)→同化促進 Propranolol Oxandrolone
#9. プロプラノロール(インデラル®) 非選択的βブロッカー
Hypermetabolismを是正することによる創傷治癒促進効果があると言われている
以下の報告あり
術中出血量減少(α受容体優位による血管収縮↑)
肥厚性瘢痕減少(fibroblast過剰増殖↓)
入院期間短縮
当科では,0.5-1.5mg/kg/dayを内服投与している
#10. 内容
HYPERMETABOLISM
カロリー計算
経腸栄養の方法
症例呈示
カロリー計算と経腸栄養の方法について
#11. 内容
HYPERMETABOLISM
カロリー計算
経腸栄養の方法
症例呈示
#12. 熱傷面積を変数とした公式がいくつか提唱されているが,カロリーオーバーになりやすいことが指摘されている.
#13. BEE×1.5~2.0/day
と計算するのが実用的
#14. 内容
HYPERMETABOLISM
カロリー計算
経腸栄養の方法
症例呈示
経腸栄養の実施時期とその効果
#15. 内容
HYPERMETABOLISM
カロリー計算
経腸栄養の方法
症例呈示
#16. かつての経腸栄養 熱傷性ショック期(受傷後2日程度)は腸管血流が低下していると考えられるため,経腸栄養を避ける方針だった.
食べられる患者も入院後2日間は絶食指示が出されていた.
受傷後3日以降に経腸栄養を開始する際は,胃カメラを用いて,チューブを幽門を越えた位置に留置していた.
#17. J Burn Care Res 2020 高齢広範囲熱傷患者の早期(24時間以内)経腸栄養で敗血症・創感染・肺炎・死亡率がすべて減少
#18. 経腸栄養についての現在の考え方 受傷24時間以内に経腸栄養を開始する.
チューブは幽門を越えなくてよい(胃内でOK)
具体的な症例と治療経過の詳細
#19. 内容
HYPERMETABOLISM
カロリー計算
経腸栄養の方法
症例呈示
#20. 内容
HYPERMETABOLISM
カロリー計算
経腸栄養の方法
症例呈示
#21. 55歳 女性焼身自殺
85%TBSA
Burn index=80
PBI=135
#22. 治療経過 【デブリードマン】
① 受傷当日:体幹前面+体幹後面+四肢
② Day 3:顔面+両前腕
【自家培養表皮(CEA)+自家分層植皮(STSG)】
① Day 25:前胸部+両上肢
② Day 53:両下肢
③ Day 88:背部
栄養療法における脂肪肝の影響と対策
#23. 栄養療法 胃内にEDチューブ留置
24時間以内に経腸栄養開始
投与カロリーはBEE×1.5 kcal/dayを指標にした
経腸栄養剤はペプタメンAF(脂肪40%)を使用した
亜鉛製剤(ポラプレジンク)を入院時より投与した
プロプラノロールも入院時より投与した
#24. 受傷当日 約3ヶ月後 発熱が続くため,感染源検索のために撮影したCTで,脂肪肝が認められた
↓
栄養をペプタメンAFからペプチーノ(無脂肪)に変更したところ、肝機能は改善した
#25. Molecular Med 2009 死亡した小児広範囲熱傷患者の剖検写真@Shriners hospital 肝腫大 脂肪肝
#26. J Surg Res 2011 小児広範囲熱傷患者(平均熱傷面積60%)に対し,ミルクを与えた群と,低脂肪栄養(Vivonex)を与えた群とで比較
@Shriners hospital
銅と亜鉛の栄養管理における注意点
#27. 敗血症↓ 生存期間↑ 生存曲線に有意差 低脂肪栄養により予後改善
#28. 広範囲熱傷患者の脂肪肝 Hypermetabolismにより末梢組織の脂肪分解が亢進する 大量の脂肪酸が肝臓に運ばれる 肝臓で処理しきれず,脂肪が蓄積する→脂肪肝 肝機能が低下し,脂肪の処理能力がさらに低下する(悪循環) 肝臓だけでなく,膵臓や脾臓にも脂肪が蓄積する
→膵炎
→脾機能低下
#29. Day 214 #広範囲熱傷
・背部臀部に潰瘍残存
・採皮部(下腿)が難治性潰瘍化
#貧血(Hb 5.7 g/dL)
・原因不明
・消化管出血は否定
・ビタミン欠乏性貧血も否定
・カテーテル感染を繰り返した経緯から,静脈ライン挿入がためらわれ,輸血もできない状況
#30. NSTによる指摘とアドバイス 栄養評価を目的に,血清銅を測定したところ低値(2μg/dL 正常値:68-128)であり,貧血の原因である可能性あり.
亜鉛製剤により銅吸収が阻害されていた可能性があるため,亜鉛製剤の投与を中止した.
同時に銅補充のため,ココアを飲んでもらった.
経腸栄養剤はエレンタール(銅0.2mg/300kcal)に変更した.
熱傷患者における微量元素の重要性
#31. μg/dL g/dL Hb 5.7 銅 2 ポラプレジンク中止 輸血なし 銅補充 入院日数
#32. Day 344
臀部潰瘍に対する自家分層植皮
+細胞懸濁液スプレー(RECELL®) 21 POD
#33. 銅について 抗酸化物質であるSuperoxide dismutase(SOD)やカタラーゼの成分である.
熱傷患者においては創から損失しやすい.
欠乏により,造血障害,神経障害,創傷治癒遅延が起こる.
消化管における吸収は同じ2価の陽イオンである亜鉛と競合する.
#34. 本剤は亜鉛を含有するため,亜鉛により銅の吸収が阻害され,銅欠乏性を起こすことがあるので留意すること.
栄養状態不良の患者で銅欠乏を伴う汎血球減少や貧血が報告されているので,患者の症状や臨床検査値に注意すること.
異常が認められた場合には適切な処置を行うこと. 厚労省からのアラート 2016年
熱傷患者の栄養管理のまとめと今後の課題
#35. まとめ 熱傷患者ではHypermetabolismにより,エネルギー需要が増大した状態が1年以上続くため,長期間の栄養管理が必要となる.
熱傷性ショックであっても,経腸栄養は早ければ早いほど良い.
広範囲熱傷患者は脂肪肝になりやすいので低脂肪栄養が推奨される.
ビタミンや微量元素は熱傷創から流出するため,多めに補充すべきであるが,亜鉛と銅は消化管吸収で競合しあうことに注意する.