テキスト全文
中心静脈カテーテル事故の原因とリスク評価
#1. 中心静脈カテーテルによる
事故を起こさないために
#2. CVC関連事故はなぜ起こるのか? 事前のリスク評価が甘い
誤穿刺
ガイドワイヤー
空気塞栓
感染
#3. CVC関連事故はなぜ起こるのか? 事前のリスク評価が甘い
誤穿刺
ガイドワイヤー
空気塞栓
感染
CVC挿入時のハイリスク患者の考慮事項
#4. CVC関連事故のリスク因子
凝固障害
脱水
やせ(BMI<20)
肥満(BMI>30)
呼吸機能障害
#5. ハイリスク患者へのCVC挿入を考慮するときは
以下の項目について複数人で検討する どうしてもCVCを挿入しないといけないのか?
抗血小板薬や抗凝固薬は休薬できないのか?
PICCで代替できないのか?
致死的合併症など患者個別のリスク説明を行った上で同意を得ているか?
血管損傷時に対応できるバックアップ体制があるか?
#6. 中心静脈カテーテル同意書 院内文書に記載されている事項について説明するだけではなく、患者特有のリスクがあれば必ず説明する。
誤穿刺事故の事例とリスク回避策
#7. CVC関連事故はなぜ起こるのか? 事前のリスク評価が甘い
誤穿刺
ガイドワイヤー
空気塞栓
感染
#8. 誤穿刺事故の例
総頚動脈の誤穿刺→頸部血腫→窒息死
椎骨動脈の誤穿刺→上縦隔血腫,胸腔内出血で死亡
肺の誤穿刺→緊張性気胸で死亡
腕神経叢の誤穿刺→神経麻痺が後遺
#9. 誤穿刺のリスク回避策
細い針を使う
深く刺さない(内頸では3cm以下に留める)
超音波プレスキャンにより,動静脈の位置関係を把握する
リアルタイム超音波ガイド下穿刺では,シャフトではなく,常に針先を描出する
ダイレーターを挿入する前に,超音波でガイドワイヤーが静脈内にあることを確認する
胸部X線で気胸,血胸の確認を行う(挿入直後だけでなく,数時間後も撮影が望ましい)
#10. 超音波ガイド下穿刺のピットフォール「シャフト錯視」 エコーで針先を描出できておらず,シャフト部分を視ているにもかかわらず,それを針先と思いこむことで,誤った方向に進んでいるのに気がつかないまま,針を深く進めてしまうことがあるので注意! 本当はシャフトなのに針先と思い込む
ガイドワイヤー事故の事例とリスク回避策
#11. CVC関連事故はなぜ起こるのか? 事前のリスク評価が甘い
誤穿刺
ガイドワイヤー
空気塞栓
感染
#12. ガイドワイヤー事故の例
ガイドワイヤー血管突き抜け→カテーテル血管外留置→胸腔内輸液→死亡
奇静脈損傷→胸腔内出血→死亡
ガイドワイヤー抜き忘れ→死亡
金属針によるガイドワイヤー切断→ガイドワイヤー血管内残存→除去手術
#13. ガイドワイヤー事故のリスク回避策
深く挿入しない(内頸では20cm以下)
挿入時に抵抗を感じたら,強引に挿入しない
抜くときに抵抗を感じたら,必ず針と一緒に慎重に抜去する
ガイドワイヤー切断事故防止のためには,金属針よりも留置針を使用するほうがよい
カテーテル挿入時は,ガイドワイヤーがカテ尻から出たことを必ず確認する
カテーテルからの逆血が確認できない場合は,血管外留置を疑い,そのカテーテルを使用しないことはもちろん,すぐに抜去せず,CTで確認し,心臓血管外科にコンサルトする
#14. CVC関連事故はなぜ起こるのか? 事前のリスク評価が甘い
誤穿刺
ガイドワイヤー
空気塞栓
感染
カテーテル抜去時の空気塞栓のリスクと予防策
#15. カテーテル抜去時の空気塞栓
空気塞栓による死亡例がある
座位で起こりやすい
#16. カテーテル抜去時の空気塞栓予防策
カテーテル抜去は座位ではなく,仰臥位またはトレンデレンベルグ体位で行う
抜去後は刺入部を5分以上圧迫する
抜去後の刺入部には,密封性ドレッシング材(テガダーム®など)を貼付する
#17. CVC関連事故はなぜ起こるのか? 事前のリスク評価が甘い
誤穿刺
ガイドワイヤー
空気塞栓
感染
カテーテル関連血流感染の予防プロトコール
#18. カテーテル関連血流感染(CRBSI)
Catheter Related Blood Stream Infection
中心静脈カテーテル留置中に発熱など感染症状を認めた場合に疑う
敗血症となり致死的になりうる他,真菌性眼内炎になると失明の危険性もある
#19. 5つのプロトコール遵守でCRBSIがほぼゼロに!
1)手洗いの徹底
2)マキシマム・バリア・プリコーション(帽子,マスク,ガウン,滅菌グローブ,十分な大きさの滅菌シート)
3)クロルヘキシジンによる皮膚消毒
4)大腿静脈アプローチをなるべく避ける
5)不要なカテーテルは即抜去
中心静脈カテーテルの必要性とエコーガイド下穿刺の重要性
#21. 毎日回診するたびに
「このカテ抜いちゃだめなの?」
という声が上がるのが理想的
#22. おわりに 中心静脈カテーテルの必要性を常に疑いましょう
エコーで血管が見えれば安全に刺せるわけではありません
エコーガイド下穿刺実習で正しい方法を学びましょう