総合診療科
救急科
緩和ケア科
滋賀医科大学
臨床医のための法医学③いまさら聞けない死亡診断書の書き方
#臨床医のための法医学 #死亡診断書 #死体検案書
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最終更新:2020年12月11日
臨床医のための法医学②死因究明と死体検案
#ER #救急 #CT #死因 #死亡診断 #死因究明 #臨床医のための法医学
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最終更新:2020年12月11日
臨床医のための法医学①臨床で遭遇する院外CPA,警察通報とその後
#ER #死因 #解剖 #異状死 #臨床医のための法医学
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最終更新:2020年12月11日
【研修医向け ルール・マナーの総論】コミュニケーション編
#初期研修医向け #研修医 #コミュニケーション
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最終更新:2022年12月21日
5分で学べる効率的で漏れのない申し送り【I-PASSをご紹介】
#看護師 #看護師向け #救急外来 #研修医 #コミュニケーション #ICU #申し送り
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最終更新:2021年6月7日
ERでの効果的なコミュニケーション
#コミュニケーション
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最終更新:2020年8月18日
マスメディアとの付き合い方を考える〜COVID-19でのTV出演を経験して
#コミュニケーション #COVID-19 #マスメディア
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最終更新:2021年4月30日
患者ケアの質向上につながる!メディカルスタッフとのコミュニケーションのコツ
#コミュニケーション #飯塚病院 #チーム医療 #メディカルスタッフ
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最終更新:2022年6月7日
【ICU奮闘編】救急医が本気で緩和ケアに取り組んでみた(救急×緩和ケア)
#救急 #コミュニケーション #緩和ケア #ICU #救急×緩和ケア #知識をつなぐ2020
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最終更新:2021年6月7日
【救急外来編】救急医が本気で緩和ケアに取り組んでみた
#緩和ケア #救急医
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最終更新:2021年1月15日
知っておこう、銃創・爆傷
#爆傷 #弾道学 #銃創 #ヒドロキソコバラミン #テロ対策 #ターニケット #放射線被爆 #クラッシュ症候群
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最終更新:2022年12月21日
低体温症の診療
#低体温 #敗血症 #敗血症性ショック #advanced care planning #低体温症
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最終更新:2022年11月21日
5分でわかる 10秒で治せる あご 脱臼整復
#脱臼 #高齢者
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最終更新:2022年10月9日
2022.6.28時点 サル痘について
#感染症 #サル痘
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最終更新:2022年6月28日
研修医が救急外来で迷子になる症候はこれだ〜問診で救急迷子からの卒業〜
#意識障害 #救急外来 #医学生 #研修医 #てんかん #問診 #救急科 #失神 #初期研修医 #一過性意識消失
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最終更新:2022年4月7日
NLP Practitionerと考える 医療現場でのコミュニケーションと心の保ち方 滋賀医科大学 法医学 中村 磨美 ★このスライドは、作者が個人的に作成したものであり、 所属大学・講座の見解を代表したものではありません。
医療従事者のメンタルヘルス問題 救急外来(ED)で働く医療従事者の34.6%が、燃え尽き症候群に相当する感情疲労/抑欝を申告、17.1%がEDでの仕事を辞めたいと回答。 (フランス) Biomed Res Int. 2019 Jan 21;2019:6462472. 医療従事者の34.3%が中等度の、5.4%が重度の燃え尽き症候群に相当。 (中国) BMC Public Health. 2022 May 23;22(1):1033. COVID-19診療に携わる医療従事者の52.7-87.8%がモラルハラスメントに曝され、PTSD、燃え尽き症候群、仕事対人機能障害のリスクにあった。 (ニューヨーク) Depress Anxiety. 2021 Oct;38(10):1007-1017.
医療従事者のメンタルヘルス問題の要因 厚生労働省:事業場におけるメンタルヘルス対策の取り組み事例集(2020年3月) 労働の過酷さ (長時間勤務・不規則な勤務) と同じくらい 対人関係 がストレスになっている
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Bad news伝達における医療従事者のストレス Bad News伝達(“Breaking Bad News”)において多くの医療者は困難と精神的ストレスを感じ、自身の感情(悲しみ、罪悪感、失敗といったネガティブな感情)をコントロールするのが難しいと感じている。 Breaking Bad Newsに関する適切なコミュニケーション教育を受けていないと、燃え尽き症候群や感情疲労のリスクが上昇する。 Lancet. 2004;363(9405):312-319. doi:10.1016/S0140-6736(03)15392-5 【表】Breaking Bad Newsに関する医師の感情を調査した研究 Lancet. 2004;363(9405):312-319
5.
目的と概要 このスライドでは、Breaking Bad Newsを始めとした患者家族コミュニケーションをストレスと感じる医療職において、少しでもそのストレスを緩和することを目的として 深刻な病状を伝えられたときに、患者さんや家族の心の中で何が起こっているのか どうしたら少しでも効果的に情報を伝えられるのか どのように自分の心の健康を保てるのか をNLP(神経言語プログラミング)PractitionerのAyaとの対話を通じて考えていきます。 なお、このスライドはNLPの観点を元に作成しているため、精神科医学的な観点・概念とは一部異なることがあります。 よろしくお願いします。 こちらこそ!
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人物紹介 スイス在住10年のNLP Practitioner コロナ禍が引き金となり精神的に限界に達する中で、NLP(神経言語プログラミング)に出会う。カリフォルニアの学校に2年間オンラインで通い、NLPトレーナーの資格を取得。その過程で精神的に立ち直っただけでなく、人生の幸福度や精神の安定性もアップ。人間関係も、以前よりも無理をせず楽しんで築けるようになった。 現在はフリーランスでNLPコーチ・カウンセラーとして働き、企業、プロフェッショナル、個人の方の自己実現や成長を幅広く支援。好奇心旺盛で何の相談でも受付中。 卒後13年目の医師 もともと救急外来を中心に診療、毎分毎分何が来るかわからない日々は刺激的でやりがいがあったけど、救命できないCPAが続くと気持ちが疲れることも。 自分の趣味研究のため死後CTを撮っていたが、ある時それがCPRスタッフの精神的・技術的フィードバックになりそうだと気付く。 今は法医学者、ご遺体を解剖する日々。遺族に解剖結果を説明するのがニガテ(特に小児)。
7.
Bad Newsを告げられた時の患者さんや家族の心の動きを理解したい
8.
患者さんの心の3つの動き 深刻な病状などを伝えられることが辛いのは当然ですが、そこにはどのような構造的要因があるのでしょうか。 病気等の告知は、患者さんに3つのレベルで影響を与えます。 アイデンティティの変化の始まり 体験から生起する認知サイクルの始まり 情報の飽和、不消化 どれもあまり 馴染みのない概念だね 一つずつ順番に 説明するね
9.
アイデンティティの変化の始まり 文化人類学者・社会学者のグレゴリー・ベイトソンは、人間のコミュニケーション、変化、学習には左図のような5つの異なった階層があることを指摘しました。 上位の階層ほど安定しており、個人にとって内面的にかけがえのないものとなります。 下位の環境などが変わっても、上位のアイデンティティや価値観が変わるとは限りません。しかし上位のアイデンティティの変化があると、中長期的にはその下の階層全てに変化が生じると考えられています。 特に望まない変化の場合、その階層が上位であればあるほど多くの悲しみを伴い、適応するのが困難だったり、適応するのに時間がかかったりします。 自身の深刻な病気や伴侶の喪失などは、「健康な自分」「旅行できる自分」「◯◯の伴侶としての私」などのアイデンティティに影響を及ぼす典型的な事例です。
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体験から生起する認知サイクルの始まり 新しい状況に接した時に起こること 自分に関わる新しい情報や状況に接したときには、左図のようなプロセスが起こります。 この4段階は順番に起こるもので、一つのステップを飛ばして次に進むことはできません。②感情消化の済まないうちに、③受容や④意思決定にスキップしようとすると、逆になかなか意思決定ができず、かえって時間がかかりもどかしい思いをします。 この過程に必要な時間は状況の重大さや個人によって差があります。 緊急ですぐに意思決定をしなければならない状況は、①〜③に十分時間が取れないので、精神面でのハードルも高くなります。
11.
情報の飽和、不消化 病気の告知を受けた患者さんや家族の内面プロセスの構造をまとめます。 今までのスライドで、アイデンティティの崩壊が起こり、また新しい状況を認知するサイクルが始まったものの、おそらく完結していないことに触れました。 このことで、病状などの医学的な情報を理解するのに使える脳のキャパシティが大きく低下しています。 これら全てのために、適切で論理的な意思決定をするハードルが非常に高くなっています。 アイデンティティの崩壊 不完結な認知サイクル 情報全般の飽和、不消化 医学情報に基づいた、適切で論理的な決定のハードルが上がる
12.
なるほど・・・感情の処理ができていない状態で医学的なことを言っても、患者さんやご家族には論理的に理解・判断する余裕がなんだね。相手に余裕がない中で、きちんと理解して同意してもらうためには、こちらにも工夫が必要だね。 下表を見ると、説明を受ける側にも重視するポイントはあるみたいだね。 とはいえ、情報を明確にするとかプライバシーを確保する、というのはわかるけど、「態度や振る舞い」って一番漠然として難しい・・・ 【表】致死的な外傷患者の病状説明において家族が重要視した点 Trauma. 2000;48(5):865-873. doi:10.1097/00005373-200005000-00009
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態度や振る舞いは、具体的には表情、身振り(ボディーランゲージ)や声のトーンのことだと思うよ。 メラビアンの法則によると、身振り(視覚情報)や声のトーン(聴覚情報)といった非言語情報がコミュニケーションに90%以上の影響を与えることが知られているよ。言語情報のインパクトはたった7%。 NLPの基礎テクニックとしてコミュニケーションの際に身振りや声のトーンを相手に合わせ、信頼や安心感(ラポール)を築く技術が確立しているよ。次の章で紹介するね。 Ready & Burton. 2004, Neuro-linguistic Programming for Dummies. Sussex, England: John Wiley & Sons, Ltd.
14.
患者さんや家族に効果的な コミュニケーションがしたい
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医療現場での効果的なコミュニケーション どのようにしたら、少しでも患者さんや家族に寄り添って、効果的なコミュニケーションができるでしょうか。 ここではNLPの基本であるラポールという概念・技術を紹介します。 ラポールとは 医療従事者がラポールを築く効果 ラポールの築き方 「ラポール」というのは精神科の授業でも習ったね。 でも具体的にどうしたら良好なラポールが築けるか、 よく分からないよ。 実践的なアドバイスがあるよ。まずはラポールが何かということからもう一度確認してみよう。
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ラポールとは ラポールとはNLPで最も基本的な概念で、他者や自分自身に対して抱いている安心感、親近感、信頼感のことです。 NLPは人間の脳の認知処理プロセスに関する知識体系ですが、脳の中でも人間で特異的に発達している機能(以下「人間的脳回路」)と進化の過程で受け継いできたその他の機能(以下「生物的脳回路」)ではプライオリティが異なることが分かっています。人間的脳回路は人生の質を志向しますが、生物的脳回路は生物として生き延びることにプライオリティがあります。 さらに生物的脳回路の取捨選択の基準は、私たちの幼少期の体験に基づいて形作られ、その後アップデートされることは稀です。人間的脳回路(≒意識)と生物的脳回路(≒無意識)の価値基準にズレがある場合、ほとんどの場合は無意識の方が現実の選択やひいては環境に強く作用します。(この二つの脳体系の志向のズレが、成年以降の望んではいないのに繰り返してしまうパターンや努力しても変えられない行動の根幹にある場合が多く見受けられます。) 初歩的な意味でのラポールとは相手の生物的脳回路に対して「私はあなたを獲って食べるような危険な生物ではない。あなたと同類の、安心できる生き物だよ。」とシグナルを送ることです。 本人も意識していない深い部分に対して、安心感を与えるって・・・ 具体的にはどういう効果があるの? インフォームドコンセントを サポートする効果があるよ。 詳しく説明するね。
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医療従事者がラポールを築く効果 普段私たちが意識していないにも関わらず、私たちの思考や選択に大きな影響をもつ無意識は、人間の大脳が司る意識や論理的思考のパフォーマンスを上げるための大切な土台になります。 そのため、医療従事者が患者さんや家族に対していかにラポールを構築するかはとても重要なテーマになります。 ラポールがあることで、以下のような効果が期待できます。 医療従事者に「話を聞いてもらえた」「気持ちを分かってもらえた」と心から思える。 認知プロセスが円滑化し、生起した感情を消化しやすくなる。 医療情報などの論理的情報を処理するキャパシティーが上がる。 ラポール・安心感 大脳のパフォーマンスUP 認知プロセスの円滑化 論理的思考、意思決定力UP 実際、どうやって ラポールを築くの? いくつか基本を 説明するよ。
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ラポールの築き方の基礎 このページでは、ラポールを築く基本的な技術を紹介します。 ミラーリング ミラーリングという技術の名前は「鏡」に由来します。 その名の通り、相手の所作を映し返すようにします。 あまりあからさまにならないように、相手からワンテンポ遅らせると効果的です。 具体例: 相手が足を組んだら、自分も足を組む。 相手が机に肘をついたら、自分も肘をつく。 バックトラッキング バックトラッキングは相手の音声をレコーダーのように返す技術です。 まず、相手と話すスピードを合わせます。たとえば相手が自分よりゆっくり話す場合は、自分も同じペースで話します。 また、相手のキーワードをリピートします。 具体例: 「手術はこわいんです。」 ◯「こわいですよね。でも…」 △「そうですよね。でも…」 タイミング ミラーリングやバックトラッキングは、特に効果的なタイミングがあります。 相手に会って、挨拶をしたり話を始めるとき。 相手がパニック状態になっているとき。 相手が不安感、悲しみを感じていたり、感情や情報を一生懸命消化しようとしているとき。 相手と別れるとき。 いきなり患者さんとやる自信ないかも。 友達、家族、同僚などを相手に練習してみてもいいんじゃない?小さい子供相手にやるととっても楽しいよ。
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動きをミラーリングするのは、かえって相手の神経を逆なでしないかな? 的確な質問をありがとう。 確かに、稀にミラーリングされることで神経を逆なでされたり、居心地が悪いと感じる人もいるよ。ミラーリングをどのように感じるかは個人によって違うので、やりとりしている相手の様子に注意を払うことが大切だよ。 ミラーリングが逆効果になっていると思ったら、ミラーリングをやめてどのように相手の様子が変化するか観察したり、バックトラッキングに比重を移したりするのが良いと思うよ。 多くの場合はワンテンポ遅らせてミラーリングすることで、違和感を解消できるよ。 ワンテンポ遅らせたミラーリングは、初めは多少意識的な練習が必要だよ。でも自転車のギアを変えたりするのと同じで、慣れてくると意識せず楽にできるようになるよ。 ワンテンポ遅らせたミラーリングの具体例: 相手が「先行きに不安を感じています。」と言いながら足を組んだ。その後さらに相手が1分くらい話している。 ⇨自分は、相手が話している間は足を組まない。 ⇨次に自分が話し始めるときに自分の足を組む。
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説明する相手が ・呆然としていて反応に乏しい/体が固まっていてほとんど動かない という場合や、逆に ・なんとかして欲しいという思いから思いつくままの情報や感情を早口で訴える など、ミラーリングやバックトラッキングが困難ではないかと思う状況があるよ。 現場の経験に基づいた質問をありがとう。NLPのカウンセリングでも、こういった状況に遭遇することはあるよ。 【反応に乏しい/体が固まっている場合】 一番効果的なのは自分が差し出した手を、相手にぎゅっと握ってもらうことだよ。 手を握るのが適切でない場合は、相手の腕をしばらくしっかりと持ってあげることなども効果的だよ。同じ人間/生物として向き合っていることを感じてもらうのが大切だから、できれば物理的な接触があることが望ましいよ。 感染症対策で物理的な接触が不適切な場合は、ストレスボールなどを握ってもらうことも効果があると思うよ。 相手と同じペースで呼吸をしてラポールを高めることも有意義だよ。 【早口での訴えが止まらない場合】 感情や出来事を消化する際に、喜怒哀楽を感じ始めるとピークに達するまでは平常に戻ってこられない人も多いよ。相手は早口で話すことによって感情や情報を消化し、かつピークに達そうとしているので、数分程度であれば落ち着くまで聞いてあげることは大きなサポートになるよ。相手の今の状況や気持ちに寄り添う態度が、ミラーリングやバックトラッキングを超えるラポールにつながると思うよ。 どうしても止まらない場合は、ある程度聞いたところで、副交感神経の働きが高まるよう深呼吸を数回したり、水を飲んだりすることを薦めるといいと思うよ。
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他に、ミラーリング・バックトラッキングで気を付けなければならないことはなんだろう? 質問をありがとう。他に大切だと思うことを3つ伝えるね。 初めのうちは、ミラーリングとバックトラッキングは1つずつやってみるのがいいと思うよ。慣れてきたら、両方同時に無理なく自然にできるようになるよ。 次に、トライアルアンドエラーの姿勢を持つことだよ。初めのうちはミラーリングやバックトラッキングに対して自分の中で違和感を感じたり、あまりうまくできなかったと思うこともあるかもしれないけれど、好奇心を持ってやってみるという姿勢が成長につながるよ。手術などと違って相手に致命的なダメージを与えることはないから、努力している自分に対して寛容な姿勢を持つことも大切だよ。 最後に、もしミラーリングやバックトラッキングが自分にとって過大な負担になっていると感じる場合は、自分に正直に全体としてミラーリングやバックトラキングの量を減らす、どちらかにする、どちらもやめるなどの選択をすることが大切だよ。
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自分の心の健康を保ちたい
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自分自身の心の健康の保ち方 医療従事者にとって、患者さんとのコミュニケーションがうまく取れなかったり、患者さんの悲しみを受け止め続けたりすることは心理的に大きなストレスです。そんな中で、どうしたら少しでも自分の心の健康を保てるでしょうか。 ここでは基本的な考え方や簡単なエクササイズを紹介します。 セルフケアの大切さ 心の健康の捉え方 ネガティブ感情の消化に役立つエクササイズ(ポジションチェンジ) ネガティブ感情をせめて翌日以降に持ち越したり蓄積させないようにできればいいんだけど・・・ 蓄積すると辛いよね。ネガティブ感情の捉え方や役に立つかもしれないエクササイズを紹介するね。
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セルフケアの大切さ 患者さんや家族の悲しみに対面したり共感することで生じる心理的ストレスは「共感疲労(Compassion Fatigue)」や「二次性トラウマ・代理性ストレス(Secondary traumatic stress:STS)」と称され、医療者の燃え尽き症候群(Burnout)や災害時における救援者PTSDの原因となることが示されています。(東洋学園大学紀要.2021;29:48-62. doi:10.24547/00000757) 燃え尽き症候群を防ぐためには、まずSTSというものがあると知り、リスク因子(恒常的ストレス、多忙、混雑、人手不足)を認識し、セルフケアできるようにすることが大事と言われています。(Emerg Nurse. 2019;27(5):19-22. doi:10.7748/en.2019.e1957) 心理的負担が高い状況においても職務にやりがいや達成感を感じている場合、ストレスの軽減や除去を図ると逆効果になることも考えられ、むしろ心理的負担を抱えた一人の人間としての全体的なありようやストレスに折り合いをつけていくプロセスが大切になってくるとの所見もあります。(東洋学園大学紀要.2021;29:48-62. doi:10.24547/00000757 ) 医療現場に生涯にわたって 持続可能な形で従事していけるといいな 日頃からのセルフケアが 大切になりそうだね
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そもそも心の健康を保つとは、どういうことでしょうか。それは、悲しみ、怒り、ストレスなどを否定したり、体験しないということではありません。なぜなら人生は表裏一体で、ネガティブな感情が貴重な価値観や体験の裏返しであることも多いからです。悲しみを例にとって考えてみましょう。 医療従事者が患者さんや家族について深い悲しみを感じるのは、高い志や共感力があるためです。自分が辛い思いをしないことの対価として、その志や共感力を捨てることはできません。また患者さんや家族が失ったものを深く悲しまれるのは、それだけ今までの人生が充実していたり、家族を愛していたことの裏返しです。 このように考えると、悲しみは決して厄介なものなどではなく、ご自身にも、患者さんや家族にも、とても大切で尊いものと捉えられるのではないでしょうか。 では、どうしたら悲しみをはじめとするネガティブな感情とうまく付き合うことができるでしょうか。 心理学で、修練を積んだ禅師と初心者の方の瞑想中の脳波を比較する実験があるそうです。両者が瞑想状態に入った後に、突然大きな音を出します。すると、両者ともに音を聞いた直後には脳波に大きな乱れが見られます。ただ禅師はすぐに元の状態に脳波が戻るのに対し、初心者は動揺した状態の脳波がしばらく継続するそうです。 悲しまないのではなく、悲しみや動揺をなるべく引きずらず、自分の心のホームベースに速やかに帰って来ることが大切になります。物事に動じない心とは、乱れない心ではなく、乱れ続けない心です。 出典:田坂広志、風の夜話 第24話 真の「不動心」とは何か 心の健康の捉え方
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悲しみやその共感をきちんと受け止めて自分の中で付き合いつつ、心のホームベースを築くことが、セルフケアになりそうだね そういうスタンスで人生に臨めたら、本当に素晴らしいよね。 心のホームベースは自分自身に対して抱いている安心感、信頼感、肯定感、優しさ、敬意などが土台になると思うよ。自分に対するラポールが大きければ大きいほど、人にも大きいラポールを与えて支援できるんじゃないかな。 セルフケアが十分か自信がなかったら、どうすればいいかな ネガティブ感情を引きずっていることに自分で気付けないこともあるけど、その場合は親しい友人や同僚の意見を聞いてみるのがお勧めだよ。人は大切に思っている人のことをとてもよく見ているものだよ。聞きづらいと思うかもしれないけれど、聞いたことで絆が深まったりすることが多いように感じるよ。 NLPには心のもやもやを軽減・解消するのに役立つ良いエクササイズがあるよ。
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ポジション・チェンジ:目的 ここでは自分のケアや学びを深める一つの方法として、NLPのポジション・チェンジというとても簡単で効果的なエクササイズをご紹介します。 これ、どのくらい時間がかかるの? 5分くらいで簡単にできるよ。 私自身も愛用していて、その度にいろいろな学びや発見があるよ。 目的 あまりうまくいかなかった患者さんや家族とのやりとりから、次に生かせる学びを得る。 自分の中のもやもや感を解消する。 メリット 今の体験を次に活かせる最も有効な方法の一つ。 自身にとってのフィードバックループを完結し、次に進める精神的な素地を作る。 自分の体験や感情と相手のそれがはっきりと分離できる。 用意するもの ポストイットもしくは紙を3枚と筆記具を用意する。 個室でなくても、衝立などがあって少し自分一人で落ち着ける環境が望ましい。
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ポジション・チェンジ:手順 以下の手順は、丸暗記しなくても、一つのステップが終わった時点で次のステップを読めば大丈夫です。 あまりうまくいかなかったと思う患者さんや家族とのやりとりを選びます。また、一度に二人以上と話していた場合は、その中の一人を選びます。(他の人について理解を深めたい場合には、エクササイズを繰り返します。) 2枚の紙に自分の名前、相手の名前、3枚目に「善意の第三者」と書きます。これは架空のオブザーバーで、実際に現場にいた第三者ではありません。 床に紙を三角形に配置します(左図)。紙の間隔は50cmくらいあるとやりやすいですが、5cm程度でも大丈夫です。 まず〈自分の名前〉の紙の上に立ち、〈相手の名前〉の方向を見ます。すると、その時の自分の体験が自然によみがえってきます。自分の体験、自分自身の感情や相手に対する態度を確認してください。確認できたら、この紙から離れます。(目を閉じた方が再体験しやすいという方が多いようです。) 腕をクロールを泳ぐように回すなど、体を大きく動かしてください。 次に〈相手の名前〉の紙の上に立ち、〈自分の名前〉の方向を見ます。今度は、相手の体験がどのようなものだったかがすーっと湧き上がって来ます。相手の体験や感情がどのようなものだったか確認できたら、この紙から離れます。 体を大きく動かします。 相手の 名前 善意の 第三者 自分の 名前
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コミュニケーションの3方向レビュー:手順 次に〈善意の第三者〉の紙の上に立ち、他の二人の方向を見ます。(このポジションは架空のオブザーバーでその場にいた第三者ではありません。)二人のやりとりを観察してください。確認ができたら、紙から離れます。 体を大きく動かします。 再び〈自分の名前〉の紙の上に立ってください。すると、相手やオブザーバーのポジションでの経験や学びが自然に吸収されます。始めにこの紙の上に立ったときと、今回の体験、感情、態度の違いに気付かれるかもしれません。確認したら、紙から離れます。 うまくいきましたね!これでエクササイズは終了です。紙を片付けてください。 次回への具体的な改善策は見つけられなかったけど上手くいってるんだろうか・・・ ちょっとスッキリしているから整理はできたのかな これは具体的な改善策を見つけるためというよりは、心が少しスッキリするためのエクササイズだから、うまくできたんだね! それぞれのポジションの間で体を動かすのはBreak stateといって、重要な手順の一つです。 複数の香水の匂いを比べるときに、店舗で次の香水に移る前にコーヒー豆の匂いを嗅ぐように薦められることがあります。これは前の香水の匂いの印象を、次に引きずらないようにするためです。 体を動かすのは同じ理由からです。一つのポジションの印象を次に引きずらないための重要なステップなので、飛ばさないようにしましょう。
30.
このエクササイズはどのようなタイミングでやったらいいの? レビューしたいやりとりの印象が残っていれば、それからどのくらい時間が経過していても大丈夫だよ。自分の内面のニーズに応じてやるのが一番で、数回やってみると、 自分に合ったタイミングがなんとなく分かってくると思うよ。 うまくいったコミュニケーションの振り返りでは効果がない? 良いアイデアだね!もちろん効果があって、成功体験や学びが深まると思うよ。 是非やってみてね。 エクササイズの実施で意識する事など何かポイントはある? あまり深く考えないでやるのがポイントだよ。過去の体験にアクセスして学びやスッキリ感を得るのには、私たちの無意識が寄与するところが大きいから、あまり論理的に考え過ぎず、「なんとなく」の感覚でやってみてもらうのがいいと思うよ。
31.
おわりに 貴重なお時間を使って最後まで読んでいただいて、本当にありがとうございました。医療従事者の方を心から応援しており、少しでもお役に立てていれば幸いです。 質問、感想などがあれば、ぜひお気軽にご連絡ください!個別のカウンセリングやウェビナーやレクチャーも行っております。 連絡先:AyaTransformation@gmail.com 前職(救急医)も現職(法医)もご家族にBad Newsばかりお話しするので、ネガティブな感情に曝されることから嫌だなーと思い、Ayaに相談してみました。新しい視点からわかりやすいスライドを作っていただき、本当に感謝します。 医療従事者の仲間が少しでも前向きで気楽に明日の仕事に向かえるといいなと思います。