テキスト全文
EBMの理論とその誤解について #1.
「エビデンスに偏った医療」に陥らないための 5 Steps 総合診療科
KH EBMの理論と応用 理論編 #2.
EBMとは・・・ Evidence-based medicine 根拠に基づく医療
EBM≠エビデンス
EBMは問題解決の方法論であり、診療現場での決断においてどのようにエビデンスを活かしていくかを示すものである 日内会誌 106: 2545~2551, 2017 #3.
EBM≠エビデンス 「この治療薬が有効だというRCTがあったので、そうしましょう」
「ガイドラインで推奨しているので、そうしましょう」
「学会が推奨しているので、そうしましょう」
RCT・ガイドライン・学会推奨=エビデンス
「エビデンスがあるから、この方針で行きます」はEBMではありません。
「熱があるから、抗生物質を投与します」に似ています。
つまりは「アセスメントがない」のです。 EBMの問題解決方法論と5つのステップ #4.
EBMは問題解決の方法論 EBMの4 要素
日内会誌 106: 2545~2551, 2017 ※エビデンスは、どうやって目の前の問題を解決するか
アセスメントするために検討する要素の1つに過ぎない。 #5.
EBMは問題解決の方法論 2つのEBM
Evidence-based medicine; EBM イービーエム エビデンスに基づく医療
Evidence-biased medicine; EBiM イーバイエム エビデンスに偏った医療
EBMとEBiMの違い
1)エビデンスをアセスメントするのがEBM、エビデンスを信じるのはEBiM
アセスメントするは科学、信じるのは宗教や政治
ガイドライン・厚労省・学会の言うことを盲目的に信じてはいけない
2)患者ファーストがEBM、エビデンスファーストはEBiM
患者ファーストとは患者・社会の問題を起点に動き出すこと、
エビデンスファーストとはこんなRCTが出たという広告を起点に動き出すこと #7.
EBMは問題解決の方法論 EBMの5 steps(EBiMに陥らないためのツール)
問題の定式化
2.問題についての情報収集
3.情報の批判的吟味
4.情報の患者への適用
5.1~4のstepの振り返り #8.
EBMは問題解決の方法論 EBMの5 steps(EBiMに陥らないためのツール)
問題の定式化 PICO Patient, Intervention, Comparison, Outcome
2.問題についての情報収集 二次資料の上手な利用
3.情報の批判的吟味 内的妥当性の評価(アセスメント)
4.情報の患者への適用 外的妥当性の評価(アセスメント)
5.1~4のstepの振り返り 自分自身への批判的吟味
#9.
EBMは問題解決の方法論 EBMの5 steps(EBiMに陥らないためのツール)
問題の定式化 PICO Patient, Intervention, Comparison, Outcome
2.問題についての情報収集 二次資料の上手な利用
3.情報の批判的吟味 内的妥当性の評価(アセスメント)
4.情報の患者への適用 外的妥当性の評価(アセスメント)
5.1~4のstepの振り返り 自分自身への批判的吟味
※PICOはほぼ常識化しており、情報収集についてはAI利用など最新の方法について解説しきれませんので、Step 1. 2. は割愛します。 #10.
EBMは問題解決の方法論 EBMの5 steps(EBiMに陥らないためのツール)
問題の定式化 PICO Patient, Intervention, Comparison, Outcome
2.問題についての情報収集 二次資料の上手な利用
3.情報の批判的吟味 内的妥当性の評価(アセスメント)
4.情報の患者への適用 外的妥当性の評価(アセスメント)
5.1~4のstepの振り返り 自分自身への批判的吟味
※ EBiMに陥らないためには、3. 〜5. のStepがとても大切! 批判的吟味の重要性と手法 #11.
EBMは問題解決の方法論 EBMの5 steps(EBiMに陥らないためのツール)
問題の定式化 PICO Patient, Intervention, Comparison, Outcome
2.問題についての情報収集 二次資料の上手な利用
3.情報の批判的吟味 内的妥当性の評価(アセスメント)
4.情報の患者への適用 外的妥当性の評価(アセスメント)
5.1~4のstepの振り返り 自分自身への批判的吟味
※ EBiMに陥らないためには、3. 〜5. のStepがとても大切! #12.
批判的吟味 研究の課題は何か?
研究デザインは適切か?
サンプルの選定やサイズは適切か?
データの収集や結果の測定は適切か?
潜在的な交絡因子が考えられているか?
統計手法は妥当か?
研究課題について著者はどのような結論に達したか?
倫理的な問題は考慮されているか?
Critical Appraisal of Clinical Research. J Clin Diagn Res. 2017 May; 11(5): JE01–JE05. AGREEⅡによるガイドライン評価の方法 #13.
批判的吟味のためのツール ※ROBINS-I、AMSTAR 、AGREEは『Minds診療ガイドライン作成マニュアル』の中で、概要や使い方が日本語で紹介されている。 #14.
AGREEⅡ The Appraisal of Guidelines for Research and Evaluation Ⅱ
The AGREE Next Steps Consortiumが開発、 2009年(初版2003年)に発行
6領域23項目と全体評価2項目の25項目からなるガイドライン評価ツール #15. AGREEⅡ 領域1.対象と目的は、当該ガイドライン全体の目的、取り扱う健康上の問題、対象集団に関する事項である(項目 1-3)
領域2.利害関係者の参加は、ガイドラインが適切な利害関係者により作成されているか、ガイドラインの利用者として想定した人々の意向をどの程度反映するものであるかに焦点を当てている(項目 4-6)
領域3.作成の厳密さは、エビデンスの収集と統合に用いられた手順・推奨を導きだす方法・改訂に関する事項である(項目 7-14)
領域4.提示の明確さは、ガイドラインの言葉遣い、構成や形式に関する事項である(項目 15-17)
領域5.適用可能性は、ガイドラインの導入にあたっての阻害因子と促進因子、ガイドラインの利用を促す戦略、ガイドラインの適用に際しての資源に関する事項である(項目 18-21)
領域6.編集の独立性は、推奨作成が利益相反により不正に偏っていないかどうかに関する事項である(項目 22-23) https://minds.jcqhc.or.jp/docs/evaluation/evaluation-tools/agree/agree2.pdf 倫理的問題とCOIの取り扱い #17.
倫理的な問題・・・COI COI; conflict of interest(利益相反)
Minds 診療ガイドライン作成マニュアル 2020 ver. 3.0 第2章 p19 #18.
個人的COIへの対応 診療ガイドライン作成組織の編成前に,候補者から経済的COIおよび学術的 COI などの経済的COI以外のCOIの自己申告書を診療ガイドライン統括委員会に提出してもらい,作成組織への参加の適否を検討する。診療ガイドラインの内容と関連する企業/団体などから資金提供を受けている候補者は診療ガイドライン作成上のいかなる役割も担わないなどの対応が必要である。特に診療ガイドライン統括委員長,診療ガイドライン作成グループ責任者は,本ガイドラインに関連するCOIの視点から,作成の中立性が担保できるか否か,外部からの疑念の対象にならないかについて,学会理事会などが十分検討を行った上で,適切な人物を選出する必要がある。
学術的COIなどの経済的COI以外のCOIへの対応としては,診療ガイドライン作成グループの構成員が特定の専門領域・関係者に偏らないように配慮する必要がある。 Minds 診療ガイドライン作成マニュアル 2020 ver. 3.0 第2章 p19 #19.
COIにおける報酬の多寡 第三者組織・団体との連携による生命科学・医学系研究が適正にかつ透明性と公明性を持って推進されることは当然であるが, 企業・団体などからの金銭的な報酬や助成金は多寡を問わず,当該研究者に潜在的なCOI状態が発生する. 日本医学会 COI管理ガイドライン 2022 p38-39 #20.
批判的吟味におけるCOIの扱い方 著者のCOI状態とエビデンスの質は無関係である。
不適切なCOI行為がなければCOI状態にあることに問題はないが、推奨内容に影響を与えている可能性については吟味するのがよい。
EBMの患者への適用とナラティブアプローチ #21.
EBMは問題解決の方法論 EBMの5 steps(EBiMに陥らないためのツール)
問題の定式化 PICO Patient, Intervention, Comparison, Outcome
2.問題についての情報収集 二次資料の上手な利用
3.情報の批判的吟味 内的妥当性の評価(アセスメント)
4.情報の患者への適用 外的妥当性の評価(アセスメント)
5.1~4のstepの振り返り 自分自身への批判的吟味
※ EBiMに陥らないためには、3. 〜5. のStepがとても大切! #22.
患者への適用 Step 3で吟味した「エビデンス」を目の前の患者・問題に適用できるか考える。
「患者の病状と周囲を取り巻く環境」「患者の意向や価値観」に関する情報を十分に集める。
最終的には「医師の臨床経験」を元に、患者が最良の決断を出来るよう方針を提案する。
このStep 4がEBM 5 Stepsの中で最も大切!
日内会誌 106: 2545~2551, 2017 #23.
ナラティブ・アプローチ "倫理には「最低限の倫理」と「最大限の倫理」があり、その区別に呼応する形で、専門家にも「患者を幸せにしにくい専門家」と「患者を幸福にしやすい専門家」がいると私は考えている。患者を幸せにしにくい専門家とは、端的に言うならば、最低限の倫理に留まる専門家のことである。法律を守っている限り、専門家は自分達は守られるがしかし、向こう側にいる患者は幸せになることができない(win-winになりにくい)というのが、最低限の倫理の特徴である。(中略)これに対して最大限の倫理とは、法律(最低限の倫理)を守ることだけに満足することなく、「患者と医療者双方が幸福になる選択(物語)が何か?」を関係者が症例毎に頭を絞って考えることである。
日本内科学会雑誌2023/12「日常の内科外来にどうナラティブアプローチを組み込むか」から抜粋
#24.
EBMは問題解決の方法論 EBMの5 steps(EBiMに陥らないためのツール)
問題の定式化 PICO Patient, Intervention, Comparison, Outcome
2.問題についての情報収集 二次資料の上手な利用
3.情報の批判的吟味 内的妥当性の評価(アセスメント)
4.情報の患者への適用 外的妥当性の評価(アセスメント)
5.1~4のstepの振り返り 自分自身への批判的吟味
※ EBiMに陥らないためには、3. 〜5. のStepがとても大切! EBMの振り返りとまとめ #25.
振り返り Step 1〜4が適切に行えたか?
自分の医療行為で目の前の患者はどうなったか?
改善すべき点はなかったか?
あるとすれば,どのように改善すれば良かったか? #26.
まとめ EBMの5 steps(EBiMに陥らないためのツール)
問題の定式化 PICO Patient, Intervention, Comparison, Outcome
2.問題についての情報収集 二次資料の上手な利用
3.情報の批判的吟味 内的妥当性の評価(アセスメント)
4.情報の患者への適用 外的妥当性の評価(アセスメント)
5.1~4のstepの振り返り 自分自身への批判的吟味
※ EBiMに陥らないためには、3. 〜5. のStepがとても大切!