テキスト全文
救急診療の案内図と研修医の役割
#1. 救急診療の「案内図」 -研修医が救急外来で⾃信を持つために必要なこと- *Part 1*
#2. 三次救急病院での勤務を経て、 初期研修を過ごした 地元沖縄の⼆次救急病院で働いています 救急外来から沖縄・地域を⽀えられる このスライドを 作った⼈ 「⽇本⼀優しい救急医」を⽬指して頑張ります ⼆次救急病院だからこその充実した研修を 初期研修医に提供したいです 千々和 可怜(ちぢわ かれん) @沖縄協同病院/救急集中治療科 追記︓⽝とランニングが好きです
#3. 本スライドの対象 ●下記に当てはまる研修医 ・これから救急当直に⼊る ・救急診療に苦⼿意識がある ・救急⾞+ウォークイン対応をどちらもする救急外来で研修している ・効率よく救急診療をしたい ●救急診療に興味がある⼈なら誰でも
研修医の成長を促す方法
#4. 今回のテーマ ● 救急外来で研修医が 成⻑を感じられるためには︖ ● First Touchでまず何をする︖
#5. どうやったら救急ができるって⾔えるの︖ <上級医や先輩は⾔う…> 「成⻑」あるのみ︕
救急診療における成長の方程式
#7. 本Lectureは、救急診療における研修医の 「成⻑」を⾔語化する するチャレンジです︕
#9. 救急診療における研修医の成⻑を表す「⽅程式」 「基本」 ができる + 「経験値」 を積む =「成⻑」
#10. 救急診療における研修医の成⻑を表す「⽅程式」 「基本」 ができる 【理想】研修医を開始して 半年〜1年で到達したい + 「経験値」 を積む 研修医期間中ずっと 重ねていくもの
成長スピードを上げるためのポイント
#11. 研修医の救急外来での成⻑は指数関数曲線的 なかなか伸びない この時期が⾟い
#12. 研修医の救急外来での成⻑は指数関数的 この期間を短くしたい︕
#13. 時間をx軸、成⻑をy軸とすると 「経験値」 「基本」 ここまでは「基本」 ここからは「経験値」 「基本」の⼟台の上に「経験値」が積み上がっていくことで 成⻑が進んでいく
#14. 成⻑スピードが遅い期間を早く抜け出すには︖ 「基本」 ができる ▶ ここに早く到達する ことが必要︕
SOAP思考プロセスの重要性
#16. 「成⻑」のために必要なプロセス S O A P SOAPに基づいた思考プロセスを何度⾏ったか ▶それが「成⻑」につながる
#17. ❸いつか考えた SOAPを取り出して S O A ▶ ❶診療に悩むとき P ▶ ❷頭の中の引き出しから ❹今回も 適⽤できそう︕
#18. S O A P この流れがスムーズにできるようになったときに 「成⻑」を感じられるはず
SOAPの実践と重症患者の評価
#19. S O A この思考プロセスの中で ●「基本」としてできること ●「経験値」を積むことでできること を分けて考えてみる P
#20. 救急診療も芸術やスポーツと⼀緒で 「型」を⾝につけることが⼤事︕
#22. 【ご提案】 1回の診療で SOAPを 3回 繰り返す︕ 1 2 3
ぱっと見SOAPの手順と実践
#23. SOAPの 3 step 1. ぱっと⾒ SOAP 2. じっくり SOAP 3. ふりかえり SOAP ぱっと⾒ じっくり ふりかえり
#24. 今回のテーマとして、 ぱっと⾒ SOAP/じっくり SOAP の 「基本」 ができる、 そんな研修医になりましょう
#25. ぱっと⾒SOAP <⽬的> 重症患者を⾒逃さない
#26. 重症患者を⾒逃さないためには ぱっと⾒ SOAP 「第⼀印象」で ささっと重症度評価を⾏う
#27. ⾔語化すると ぱっと⾒ SOAP ・ABCDEの評価 ・トリアージ を頭の中で1分以内に⾏う
#28. ぱっと⾒SOAPの⼿順 <最初の30秒で︓S/Oをチェック> ・「わかりますか︖」「お名前は︖」(話しかけてAとDを評価) ・胸部/腹部に⽬をやり異常呼吸、⼝唇チアノーゼも観察(B) ・⽪膚と橈⾻動脈に触れ、循環(C)と体温(E)を観察 ・顔⾯蒼⽩、冷や汗をチェック▶重症疾患が背景にあるかも *救急⾞搬⼊、診察室⼊室してから30秒以内に評価できるように。
#29. ぱっと⾒SOAPの⼿順 <次の30秒で︓A/Pの決定> ・S/OでひとつでもABCD(E)の異常を確認したら ※Eの異常︓著明な⾼体温(発熱ではない)、低体温には注意 単なる発熱だけならトリアージの優先順位は低い A︓重症患者の可能性があると判断 P︓救急⾞搬⼊なら優先的に診察 ウォークインなら救急外来に移動させる ▶ABCDEへの必要な介⼊を(これについてはまた今後学びましょう)
#30. ぱっと⾒SOAPを何度も繰り返すことで 頭の中の引き出しに 重症患者の特徴が蓄積 S 今回もその特徴と ⼀致する︕ O 救急診療で重症患者を ▶ すばやく⾒抜く 「第六感」が養われる
じっくりSOAPの目的と考え方
#31. ぱっと⾒SOAPで重症と判断したら ●基本的には上級医と診療を⾏う *研修医のうちは重症患者を 研修医だけで抱えない⽅が安全 「応援を呼ぶ」こともスキルのうち
#32. ぱっと⾒SOAPで重症じゃないと判断したら ●研修医が⽇常診療で悩むのはきっと 上級医との診察が必ずしも必要ではない 「軽症〜中等症」の患者 ▶Second stepのじっくりSOAPで
#33. じっくりSOAP <⽬的> 軽症〜中等症の 患者の⽅針決定を⽬指す
#34. まずはSOAPの概念をくつがえそう SOAP → S POA にシフトチェンジ︕
#35. P を先に考える理由 「⼊院になりそうかどうか」を 最初から考えておくことが⼤事だから
#36. なぜ「⼊院になりそうか」を先に考えると良いのか ① ERでは、より多くの 救急患者を診療するために、 常に「効率」を考えているから
入院の可能性を考慮した診療の流れ
#37. ●「⼊院になりそうな患者」に対するERの動き⽅がある 例)・診療の優先順位を上げる →「マンパワーを多く配置」「検査を早めに施⾏する」など ・⼊院ベッドの確保を前もって⾏う →⼊院決定時に「ベッドがない」ことで⽣じるタイムロスを防ぐ *最終的に⽅針が変わっても良いので、 ⼊院になりそうならその「⾒込み⽅針」を周りに共有しておく
#38. なぜ「⼊院になりそうか」を先に考えると良いのか ② ⾃分の有限のキャパシティの中で どの患者にどの程度の時間を割くか 配分を考えながら診療する必要があるから
#40. *⼊院になりそうな患者 *帰宅可能そうな患者 ・詳細な問診聴取 ・必要最低限の問診 ・複数の検査の施⾏ ・簡便な検査の施⾏ ▶⽅針決定までの時間が⻑い ▶⽅針決定までの時間が短い
#41. 救急診療の時間軸(例) S O A P S O A P S O 始業 A P 終業 「⼊院になりそうな患者」の診療の合間(例えば検査待ち時間など)に 「帰宅になりそうな患者」を診察を⾏う ▶ 診療の効率化
#42. 効率よく診療するには「経験値」が必要 まずはその第⼀歩となる 「⼊院」or「帰宅」(P)の予測をできるようになりたい
#43. P の予測に必要ことは︖ <P の予測の簡易⽅程式> 患者背景 × 主訴 =⼊院 or 帰宅(P)の予測
#44. P の予測簡易⽅程式の覚え⽅ 患者背景 主訴 ▶ この患者が ▶ この主訴で 帰れるんだろうか︖
患者背景の聴取とチーム医療の重要性
#45. だから、S の聴取でまずルーチンにしてほしいこと P の予測簡易⽅程式のはじめの 患者背景 をしっかり聞いてほしい
#46. どのように患者背景を聞いていくのか 患者の1⽇の⽣活⾵景を 具体的にイメージできることを⽬指していく
#47. 「患者背景のイメージ」構築のために最低限必要な情報 どこに住んでいる︖ 移動はどうしてる︖ 誰と住んでいる︖
#48. どこに住んでいる︖ Q︓「⾃宅︖ or 施設︖」 ・⾃宅 → ⼾建て︖ or 集合住宅︖ (エレベーターは︖階段は使う︖) ・施設 → 特養︖⽼健︖サ⾼住︖など (施設によって機能がさまざま)
#49. 移動はどうしてる︖ Q︓「⾃⼒歩⾏できる︖ or できない︖」 ・できる → 伝い歩き、杖や歩⾏器使⽤の有無 ・できない → ⾞椅⼦︖ベッド上から動かない︖
#50. 移動はどうしてる︖ *詳しい移動の状況を聞くときに効果的な⾔葉 Q︓「トイレまではどうやって⾏っている︖」 ▶ベッドからトイレまでの移動の様⼦をすべて聞くと、 移乗・移動の状況が細かくわかる
#51. 誰と住んでいる︖ Q︓「⼀⼈暮らし or 誰かと住んでいる︖」 ・独居 Q︓「最寄りの家族は『誰』で『どこ』にいる︖」 「どのくらいの頻度で家族が会いにくる︖」 →患者が普段どれくらい「⼀⼈」なのかを聞いておく
#52. 誰と住んでいる︖ ・同居家族がいる Q「家族構成は︖」 →同居家族がご⾼齢なら、その家族のADLも簡単に聞く *同居家族の介護⼒の確認のため
#53. 誰と住んでいる︖ ・同居家族がいる Q「家族とどれくらい顔を合わせる︖」 →「1⽇中⾯倒を⾒ている」「⽇中は会わない」など ここでもやはり、 患者が普段どれくらい「⼀⼈」なのかを聞いておく
#54. この最低限の情報を押さえると どこに住んでいる︖ 移動はどうしてる︖ 誰と住んでいる︖ 物理的・マンパワー的に帰宅可能かを検討できる
#55. P の予測簡易⽅程式を⽴てるための「主訴」のポイント 主訴 患者の⽣活が この「主訴」のせいで どう変わって しまったか︖
#56. P の予測簡易⽅程式を⽴てるための「主訴」のポイント 特に、 主訴 この主訴のせいで 「何かできなくなったことはある︖」
#57. 「主訴」+α(できなくなったこと)の聴取例 主訴︓腰痛 主訴︓感冒症状 ▶ 歩けなくなった ▶ 全く起き上がれなくなった ▶ 仕事に⾏けなくなった ▶ ぐったりして動けなくなった
#58. P の予測簡易⽅程式の例 80代⼥性、⾃宅 患者背景 トイレまでは伝い歩き 独居で家族は県外 主訴︓腰痛 転倒後の腰痛で 起き上がれなくなっている ⼊院になりそう
#59. P の予測簡易⽅程式の例 50代男性、⾃宅 患者背景 何も使わず⾃⼒歩⾏可能 妻と⼆⼈暮らし 主訴︓腰痛 転倒後の腰痛で 起き上がるときに助けが必要 起き上がれたらなんとか歩ける (痛みが取れたら)帰れそう
#60. P の予測簡易⽅程式の例 患者背景 80代男性、⽼健 ⾞椅⼦、移乗には介助が必要 ・トイレに⾏けずオムツ使⽤に 主訴︓発熱 ・発熱で⽔分もご飯も 摂れなくなっている (施設とも相談しつつ)⼊院になる可能性はありそう
#61. <P の予測の簡易⽅程式> 患者背景 × 主訴 =⼊院 or 帰宅(P)の予測 最初から⼀⼈で解を出すのは難しいけど、 “あとで変わっても良い”ので⾃分で考えてみることが⼤事︕
#62. 患者背景 × 主訴 そして、このふたつをしっかり聞けていたら ⾃分よりも経験のある周りのスタッフが アドバイスをくれるはず
#63. 救急診療はきっと最も「チーム医療」が求められます ⾃分の考えをこまめに周りに共有することで 診療がスムーズになり、⾃分も成⻑できます
#64. Take Home Message ● 救急診療にも「型」がある 「型」が⾝に付くまでは「向いてない」と決めつけない︕ ● 重症患者を⾒逃さないためのぱっと⾒SOAPを ● 患者のDispositionを予測するために、 詳細な⽣活背景と主訴に伴う⽣活の変化をまず聴取︕