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COVID-19患者へ対応する医療従事者における感染予防 サージカルマスクvsN95マスク

投稿者プロフィール
G-MoreJournal Club

佐賀大学医学部附属病院

14,463

12

概要

国ごとのHRがかなり異なる点が気になりますね。また流行している病原体でも変わってくる可能性がありそうですが、規模の大きさからは貴重な論文であることは間違いなさそうです。2022年12月現在、日本ではN95マスクも充分に利用できますが、またいつ資源枯渇するかわからない(そうならないことを祈りますが・・・)と考えると、覚えておいて損はない結論です。

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医/専門医

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テキスト全文

COVID-19患者への医療従事者のマスク使用に関する研究デザイン

#1.

Ann Intern Med. 2022 Nov 29 : M22-1966. Medical Masks Versus N95 Respirators for Preventing COVID-19 Among Health Care Workers COVID-19患者に対して日常的にケアを行う医療従事者において,サージカルマスクはN95と比較してHRが2倍になることを否定するものであった. 佐賀大学医学部附属病院総合診療部 G-More Journal Club

#2.

Introduction COVID-19患者の日常ケアにおいて、 WHOはサージカルマスクを推奨している 一方 米国疾病対策センターはN95を推奨している サージカルマスクはN95と比べて同程度のCOVID-19予防効果があるかは定かではない

#3.

デザイン:多施設無作為化前向き非劣勢試験 セッティング:カナダ、イスラエル、パキスタン、エジプトの29の医療機関 期間:2020年5月4日から2022年3月29日 参加者:COVID-19確定あるいは疑いの患者を直接ケアする医療従事者1009名 確認方法:RT-PCR発熱(38℃以上)、咳、息切れが出現または、疲労、筋肉痛、頭痛、めまい、痰、咽頭痛、下痢、吐気、嘔吐、腹痛、鼻水、味覚・嗅覚異常、結膜炎、嚥下痛のうち2つ以上 ※当初はワクチンを接種していない看護師において、サージカルマスクがN95より予防効果が劣るかどうかの研究の予定だったが、パンデミックの進展に伴いプロトコルが変更された。(看護師以外も登録できるようにする、12週の追跡を10週にする、組入時にCOVID-19罹患歴がある場合や有効なワクチン接種者を除外する、イスラエル、パキスタン、エジプトを加えるなど) Methods;研究デザイン

参加者の特性と介入方法の詳細

#4.

Population(参加者):COVID-19専門病棟、救急部、内科病棟、小児科病棟、長期介護施設でCOVID-19疑いまたは確定診断を受けた患者に直接ケアを提供した医療従事者が Exposure/Intervention(表出/介入):Medical mask(サージカルマスク)を着用すると Comparison(比較):N95を着用するのと比較し Outcome:10週間の経過で、PCRでCOVID-19が証明されやすいか※非劣勢マージンをHR<2とする ※マスクはユニバーサルマスキングを行う primary endpoint: RT-PCTでCOVID-19が証明されるまでの期間 PICO ●Excluding criteria 24ヶ月以内に有効なフィットテストを受けていないあるいは合格できない場合 COVID-19高リスクの併存疾患(高血圧、心疾患、肺疾患、慢性腎疾患、糖尿病、慢性肝疾患、積極的に治療中の癌、免疫抑制状態など) 組入時に検査で確定したCOVID-19の既往がある場合 循環株に対して50%以上の効果を持つワクチンが1回以上投与されたことがある

#5.

Figure 1.   ITT = intention-to-treat; mRNA = messenger RNA. * Dates of follow-up: Canada (May 2020 to May 2021), Israel (November 2020 to January 2021), Pakistan (June 2021 to December 2021), and Egypt (December 2021 to March 2022).

#6.

Table Participant Characteristics(1/2).  

RT-PCRによるCOVID-19確認のための主要分析結果

#7.

Table Participant Characteristics(2/2).  

#8.

Figure 2. Forest plot of the primary intention-to-treat analysis of RT-PCR–confirmed COVID-19.   There were 86 of 8338 (1%) weekly surveys missing in the medical mask group and 65 of 8468 (0.8%) missing in the N95 respirator group. The subgroup analysis by country was added to show the heterogeneity of treatment effect. HR = hazard ratio; RT-PCR = reverse transcriptase polymerase chain reaction. 医療用マスク群では 8338 件中 86 件(1%)の週間調査の欠落があり、N95 レスピレーター群では 8468 件中 65 件(0.8%)の欠落があった。治療効果の異質性を示すために国別のサブグループ解析を追加した。HR = ハザード比; RT-PCR = 逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応。 The proportional hazards assumption was tested for the primary outcome and was plausible.

#9.

Figure 3. Cumulative incidence of primary analysis of RT-PCR–confirmed COVID-19. RT-PCR = reverse transcriptase polymerase chain reaction. 全施設における累積発生数 Cumulative incidence=累積発生率 Cumulative hazard=累積ハザード

#10.

Figure 3. Cumulative incidence of primary analysis of RT-PCR–confirmed COVID-19. RT-PCR = reverse transcriptase polymerase chain reaction. 全施設における累積発生数 Cumulative incidence=累積発生率 Cumulative hazard=累積ハザード

COVID-19患者への曝露と有害事象の分析

#11.

Figure 4. Cumulative incidence of primary analysis of RT-PCR–confirmed COVID-19 by country. RT-PCR = reverse transcriptase polymerase chain reaction.

#12.

Supplement Table 2: Analyses of secondary outcomes. RT-PCR = reverse transcriptase polymerase chain reaction.

#13.

有害事象 COVID-19の病勢よる入院メディカルマスク群で2名N95群で1名 COVID-19による社会的入院メディカルマスク群2名N95群1名 集中治療室への入院なし死亡例なし その他マスクに関係ある有害事象メディカルマスク群で47例(10.8%)N95群で59例(13.6%) 頭痛 皮膚痛 不快感 マスクに関係ある有害事象

国別の結果の不均一性とその要因

#14.

COVID-19が確定または疑われる患者への曝露COVID-19患者への曝露時間(分)エアロゾル発生手順地域曝露は、研究グループ間で差がなかった 着用遵守率(自己申告制)【いつも】医療用マスク群91.2%、N95呼吸器群80.7%【いつも】あるいは【時々】医療用マスク群97.7%、N95呼吸器群94.4% 暴露環境と着用遵守率

#15.

非劣勢マージンを2以下とし、実際に2以下であったが、このマージンは広く、また、国間の結果の不均一性を考えると非劣性と断定できないかも知れない この国間の違いは多くの理由にもたらされると推定 Discussion/Limitation

#16.

Figure 4. Cumulative incidence of primary analysis of RT-PCR–confirmed COVID-19 by country.(再掲) RT-PCR = reverse transcriptase polymerase chain reaction. 【国間差の理由(discussion中に記載のあるもの)】カナダはHR2.83だが陽性者の絶対数が少ない パンデミック初期の急性期のセッティングで発生率自体が少ないことと関係しているかも知れない イスラエルは大規模アウトブレイクが起きた長期介護施設で暴露率が高い パキスタンやエジプトはパンデミック後期、人口密度高 パキスタンは既に免疫を持っていたエジプトはオミクロンの時期であり、家庭での感染の可能性がある カナダとエジプトのHRの差は、組入時にCOVID-19への抗体を所持していたかの差が影響しているかも知れないが、組入時にCOVID-19への抗体を所持していなかった人でサブグループ解析をしても結果は同様であった

サージカルマスクとN95の比較に関する結論と私見

#17.

COVID-19患者に日常的にケアをする医療従事者にとって、サージカルマスクはN95と比較し、HRは2倍未満である(=非劣性である) Conclusions

#18.

Discussionに示されていない批判的吟味 変異株間での感染力の差を考慮すると、せっかく多数のenrollmentがあっても、2020年時点の株への効果が現在のオミクロン以降に一致するか不明瞭である(しかし、オミクロン期のエジプトにおける組入が一番多く、また、エジプト単体でもHR<2のため、結局当てはまるのか?それとも数が少なく不適切?) 家庭内感染が多いならばN95の効果が過小評価される可能性がある 現在の医療現場のニーズとして求められているのは、ワクチンを接種していない場合の感染予防率ではなく、ワクチンを接種している場合の感染予防率のため、そのまま結果を日常臨床に反映しにくい(今後に期待) 定められたリスク評価に基づいてリスクが高い時はN95を使っても良いことになっていたので、いつでもサージルカルマスクでよいとは言えない?少なくともエアロゾルが発生する場合はN95が必要

#19.

私見 今回の結果をNNT(Number Needed to Treat)と同様に評価するとすると10週間での感染率はサージカルマスク 10.46% N95 9.27%その差は1.19%→サージカルマスクを使うことで、従来のN95よりも1.19%かかりやすくなることができるNNTはその逆数なので1/0.0119=84→84人が10週間サージカルマスクをつけることでN95の時と比べて一人余計にCOVID-19を罹患することができる 1枚あたり サージカルマスク10円 N95 150円とすると1日1枚週5日×10週間でサージカルマスク:42000円N95:630000円差は約60万円実際は一日数回替えるとすると、その数倍かかるので、医療経済の観点(あるいは経営者の立場?)からはサージカルマスクに変えたくなるのも理解できる。 →私個人は、今後もN95が入手可能ならば使用したい。しかし、手に入らない場合もサージカルマスクを着用すれば極端に恐れることはないとは言えそう

研究手法の倫理性と実行可能性に関する考察

#20.

リスク不明、かつ、N95が入手可能なら、この研究手法は許容されないのでは?物資が枯渇している特殊状況だったから許容? Feasibility(実行可能性): Interesting(興味): Novel(新規性):       Ethical(倫理性): Relevant(社会的意義): FINER 物品コストや着替えの煩雑性などから非常に興味がある 規模の問題から難しい。また調査内容も非常に煩雑 COVID-19は現在も現実の脅威であり興味深い この規模の報告はない

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