#4.
閉経・更年期・周閉経期 5年 5年 最終月経
(12ヵ月後に閉経と定義) 更年期 (Climacteric) 閉経後
(Postmenopause) 周閉経期
(Perimenopause) 閉経移行期
(Menopausal transition) 月経周期の変動 閉経:12ヵ月以上の無月経(原則 採血で決めない)
ただし、子宮摘出後の場合は血液検査によるホルモンの値(FSH 40mIU/mL以上かつエストラジオール 20pg/mL以下)
日本人女性の閉経年齢の中央値は50.54歳 12か月 日本の定義では
更年期は
閉経前後の10年間
#5.
更年期障害の成因 生物学的要因
視床下部-下垂体-卵巣系を主体とした
全身の加齢変化 社会的・環境的要因
更年期に特有の環境変化 心理的・性格的要因
生来の気質、精神疾患既往歴など 更年期障害 小川 産科と婦人科90巻増刊号
#6.
更年期症状 多様でありかつ一人の女性が多くの症状を訴え、しかも変動する=不定愁訴
血管運動神経症状(vasomotor symptoms: VMS) ホットフラッシュ(ほてりやのぼせ)、発汗、動悸
精神的症状 うつ、不安、不眠、情緒不安定、意欲低下、集中力低下
尿路性器症状 尿もれ、頻尿、尿意切迫感、繰り返す膀胱炎、性交痛、 腟乾燥感・灼熱感(閉経関連尿路性器症候群)
その他 関節痛、めまいなど 女性医学ガイドブック 更年期医療編より作成
#7.
更年期に特徴的な症状:血管運動神経症状(VMS) ホットフラッシュ
(国際的に明確な定義はない 一般的に)通常1〜5分持続するほてりのエピソード
軽度では一過性のあたたかさ
重度のほてりは、突然の熱が上半身や顔全体に
広がり、皮膚の発赤、大量の発汗を伴う
就寝中に生じると寝汗となる 日本人女性の40〜70%が経験との報告 Rossmanith, et al. Gynecol Endocrinol. 2009 May;25(5):303-14
Menopause Practice A Clinicians Guide 6th edition
女性医学ガイドブック 更年期編 VMS: vasomotor symptoms
#8.
更年期障害の鑑別診断 女性更年期外来診療マニュアル TDCメソッド 改変
#9.
更年期障害を疑ったとき行う検査 主体は問診(初回は時間をかけて問診することが原則)
患者は更年期に相当するのか? 閉経移行期の診断は、年齢、月経不順の有無、VMSの有無に基づいて行う
Crandall, et al. JAMA 2023
困っている症状
日常生活への影響
他疾患除外のための検査
ー更年期障害を診断するためのバイオマーカーは無い 婦人科的診察 肝機能、血糖、脂質、甲状腺機能、女性ホルモン(E2, LH, FSH) (ただしホルモンレベルで閉経移行期の診断は行わない) 女性更年期外来診療マニュアル
#10.
更年期障害の診断 治療法の決定 実際の処方(使い分け) フォローアップ
#11.
更年期障害に対する主な治療法 生活習慣改善
サプリメント カウンセリング
心理療法 ホルモン補充療法
HRT 漢方療法 抗うつ薬(SSRI/SNRI) 非薬物療法 薬物療法 演者作成
#12.
更年期女性によく用いる漢方処方 婦人科三大処方
当帰芍薬散 やせ、むくみ
加味逍遥散 更年期障害全般
桂枝茯苓丸 冷えのぼせ、頭痛、肩こり イライラ
抑肝散 (+不眠)
桃核承気湯 (+便秘) 冷え
四物湯
温経湯
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(+しもやけ) 食欲低下・元気が出ない
補中益気湯
人参養栄湯 気持ちの落ち込み
加味帰脾湯(うつ)
半夏厚朴湯(のどのつかえ) むくみ
五苓散 胃の不調
六君子湯
半夏瀉心湯(ストレス) 肩こり
葛根湯 めまい
苓桂朮甘湯
半夏白朮天麻湯(+冷え、頭痛)
#13.
ホルモン補充療法(HRT) エストロゲン欠乏に伴う症状の治療や疾患の予防を目的に考案された療法で、閉経移行期以降の女性にエストロゲン製剤を投与する治療の総称。 産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第5版 ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版
#14.
ホルモン補充療法(HRT)の禁忌と慎重投与 ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版 禁忌にあたらないか
最初に問診票などでチェックする。
問診票はホルモン補充療法ガイドライン
に掲載されています 禁忌症例
重度の活動性肝疾患
現在の乳癌とその既往
現在の子宮内膜癌、低異型度子宮内膜間質肉腫
原因不明の不正性器出血
妊娠が疑われる場合
急性血栓性静脈炎または静脈血栓塞栓症とその既往
心筋梗塞および冠動脈に動脈硬化性疾患の既往
脳卒中の既往 慎重投与あるいは条件付きで投与が可能な症例
子宮内膜症の既往
卵巣癌の既往
肥満
60 歳以上または閉経後 10 年以上の新規投与
血栓症のリスクを有する場合
冠攣縮性狭心症および微小血管狭心症の既往
慢性肝疾患
胆嚢炎および胆石症の既往
重症の高トリグリセリド血症
コントロール不良な糖尿病
コントロール不良な高血圧
子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症の既往
片頭痛
てんかん
急性ポルフィリン症
全身性エリテマトーデス(SLE)
#15.
HRT施行前検査 必須項目
血圧、身長、体重
血算、生化学検査(肝機能、脂質)、血糖
内診および経腟超音波診断、子宮頸がん検診(1年以内)、子宮内膜がん検診(困難な場合は超音波で子宮内膜厚測定)
乳がん検診
任意項目(以下の項目はオプション検査として考慮してもよい)
・骨量測定 ・心電図 ・腹囲 ・甲状腺機能検査 ・他の生化学検査・E2, FSH ・心理テスト ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版
#16.
更年期障害の診断 治療法の決定 実際の処方(使い分け) フォローアップ
#17.
HRT開始時の実際の流れ 更年期障害に対する
治療の選択肢
それぞれの利点・欠点 HRT問診票 使用する製剤の
選択 処方
注意事項説明 HRTにします 禁忌
なし 検診の
必要性など
#18.
HRTの基本 子宮摘出後 エストロゲン単独(ET) 子宮あり エストロゲン・黄体ホルモン(EPT) ※子宮頸癌放射線治療後も子宮があればEPT
※子宮内膜症術後は子宮全摘後でもも黄体ホルモンが必要との
意見がある
#19.
HRTの投与方法 ● ET:エストロゲン単剤 子宮摘出後の女性に対して使用 いずれかのエストロゲンを持続的に使用する ● EPT: エストロゲン+黄体ホルモン 子宮のある女性に対して使用
1)周期的併用投与法 2)持続的併用投与法 いずれかのエストロゲンを持続的に使用し、28日間のうち12〜14日間は黄体ホルモンを併用する。
黄体ホルモンを中止したのちに消退出血が起こることを説明する。※エフメノ®、デュファストンは14日間 E E
P エストロゲン・黄体ホルモン配合剤、またはいずれかのエストロゲンと黄体ホルモンを組み合わせ
持続的に併用する。不正出血が起きる可能性について説明する。 E
P 女性更年期外来診療マニュアル 周閉経期〜
閉経後早期 閉経後数年経過や
周閉経期からの
切り替え 子宮体癌予防のため、黄体ホルモンが必要
#20.
HRTに伴うリスクや副作用の説明 開始後に起こることがあるマイナートラブル
不正出血
乳房のはり、痛み
むくみなど
長期的な合併症
血栓症 肥満の人や高齢者で起きやすい
他に、長期の使用によりリスク上昇
心筋梗塞 60歳未満の開始で10年以内の使用なら増加無しない
乳がん 黄体ホルモン製剤によりリスクが異なる
#21.
HRT処方の実際 女性更年期外来診療マニュアル改変
#22.
エストロゲンの投与ルート 皮膚から吸収され
すぐに血中へ 肝で代謝されてから
血中へ 経皮 経口 肝臓初回通過がないので血栓リスクに
影響しない
#23.
60歳未満女性に対するHRTのベネフィットとリスク(WHI研究) Manson, et al. JAMA. 2;310(13):1353-68, 2013, Menopause. 29(7):767-794, 2022 赤点線以下なら
“まれなリスク” エストロゲン単独 EPT VTE PE 心疾患 脳卒中 乳がん 大腸がん 全がん 全骨折 死亡 DM
#24.
ホルモン補充療法(HRT)をすると乳がんになる? HRTによるリスク上昇は生活習慣(アルコール摂取や喫煙など)によるリスク上昇と
同等かそれ以下で、とても低い 最近はさまざまな製剤が出ており、乳がんリスクに関係しない製剤も選択可能 つまり、乳がんを心配してHRTを躊躇する必要はありません! しかし、乳がんの罹患率は高く、女性の9人に1人が乳がんに
罹患、しかも罹患率は上昇し続けています HRTをしてもしなくても、
すべての女性は乳がん検診を受けることが重要!
#25.
更年期障害の診断 治療法の決定 実際の処方(使い分け) フォローアップ
#26.
HRT施行中・施行後の検査 HRT施行中
年に1〜2回必須項目
血圧、身長、体重
血算、生化学検査(肝機能、脂質)、血糖
1年ごと・婦人科がん検診、超音波検査・乳がん検診
HRT終了後
HRT終了後5年までは1〜2年毎の婦人科がん検診および乳房検査を勧める
ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版
#27.
いつまでHRTを続けるか?HRTガイドラインでは必要に応じ長期間継続可能とされている CQ403 HRTはいつまで継続可能か?
Answer: HRTの継続を制限する一律の年齢や投与期間はない。
<解説>
・HRT施行の明確な目的があり、ベネフィットがリスクを上回る
・患者が継続を望んでいる
・リスクについてインフォームドコンセントが取れている
以上の場合は、いつまでもHRTは継続可能 (少なくとも1年毎に上記を再確認) ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版 北米閉経学会 2017 hormone therapy position statement 60歳以上でHRTを継続するかは、リスクの適切な評価、潜在的なリスクとベネフィットについて
カウンセリングを行い、継続的管理のもとに、QOL、VMSの持続、骨量や骨折予防効果を鑑みて
患者ごとに決定されるべき