テキスト全文
パーキンソン病の否定と診断の重要性
#1. Daisuke Yamamoto
Department of Neurology, Shonan Kamakura General Hospital みんなの脳神経内科実践編
―神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS― TIPS
「パーキンソン病の否定」は
できない。診断には
「時間」を味方につける。
#2. みんなの脳神経内科実践編
―神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS― 私たちの行動を変える・支える「言葉」があります。
知識はAIが教えてくれます。
TIPSの価値は、知識でなく、「生きた言葉」を伝えることです。
行動を変えるACTION TIPSを伝えていきます! Daisuke Yamamoto
Department of Neurology, Shonan Kamakura General Hospital
#3. TIPS
「パーキンソン病の否定」はできない。
診断には「時間」を味方につける。
症例紹介と診断の難しさ
#4. 症例 80歳女性。歩行障害を主訴に受診。2年前から歩行の緩慢さを自覚しているという。診察室での評価では、歩行はやや緩徐で、小刻み歩行のようにも見えるが明らかな所見とは言い難い。上肢の振りはやや減少しているようにも見えるが、左右差ははっきりしない。安静時振戦は認めない。筋強剛も明確ではなく、全体としては「何とも言えない」所見である。確かに少し遅い感じもする。無動といえば無動といえるのかもしれない。 みんなの脳神経内科 実践編
神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS!!
#5. 症例 しかし、これをパーキンソン病と断定できるかどうかは自信が持てない。
どちらかというと違う気もする。
さて、この症例をどのように評価すべきだろうか。 みんなの脳神経内科 実践編
神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS!!
#6. 「パーキンソン病の診断は難しい」
です。 これは素直に、正直に、専門医としても患者さんに伝えるべき内容だと考えます。患者さんが訴える運動障害の原因が「パーキンソニズム」によるものなのか、それともそれ以外の原因によるのかを明確に判断できない場面は少なくありません。 みんなの脳神経内科 実践編
神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS!!
無動症状の多様性と誤診のリスク
#7. 無動症状は多彩 無動症状一つをとっても、その表現形は多様であり、どこまでを無動と判断するかは必ずしも容易ではありません。したがって、「明確な無動がある」と自信を持って言い切ること自体が難しい場面は、臨床ではしばしば経験します・。無動とは複合要素の組み合わせです。その組み合わせの程度によって、臨床像は変わってくるわけです。ですから、その結果としての表現型は多様です。 みんなの脳神経内科 実践編
神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS!!
#8. PDの可能性を否定しない このような状況において重要なのは、安易に「その可能性を否定しない」ことです。パーキンソン病かどうか?の判断に迷う場合には、無理にその場で結論を出そうとせず、外来で経過観察しながら慎重にその評価を続けていく姿勢が求められます。実際に、当初はパーキンソン病かどうかの判断に迷ったものの、経過を追う中で最終的にパーキンソン病と診断される症例は少なくありません。逆に言えば、初回診察のみで診断を確定しようとすること自体が、不正確な判断につながる可能性があります。 みんなの脳神経内科 実践編
神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS!!
#9. PDはプロでも誤診 パーキンソン病の臨床像は多様であり、非典型例も少なくありません。そのため、典型像のみに当てはめて判断することは適切ではありません。また、パーキンソン病の誤診は一定の頻度で起こりうることが知られており(約20%)、その場合類似疾患として多系統萎縮症(MSA)や進行性核上性麻痺(PSP)などのパーキンソン症候群も常に念頭に置く必要があります。 みんなの脳神経内科 実践編
神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS!! Rizzo G, et al. Neurology. 2016;86:566–576. PMID: 26764028.
診断バイオマーカーの限界と時間の重要性
#10. バイオマーカーも不安定 さらに、パーキンソン病は現時点では確立した診断バイオマーカーは存在せず、DaTスキャンやMIBG心筋シンチグラフィーの評価にも限界があります(特に発症早期には、画像上『正常範囲内』と出てしまう偽陰性が少なくありません)。したがって、診断においては時間経過そのものが重要な情報となる場合があります。 みんなの脳神経内科 実践編
神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS!! Postuma RB, et al. Mov Disord. 2015;30:1591–1601. PMID: 26474316.
#11. 時間を味方につける パーキンソン病の診断においては、「今、診断する」のではなく、「時間を味方につけて診断していく」という視点を持つことが重要です。初回判断だけですべてを決めるのではなく、経過を追いながら慎重に評価を続ける。その丁寧さこそが、診断の精度を高めることにつながります。 みんなの脳神経内科 実践編
神経診療が楽しくなる、明日から使えるACTION TIPS!!
#12. このTIPSを元に、以下を行動のルールにしてください。
無動評価は、自身の比較的主観的な判断に依存する側面もあります。
初回判断であっさり、無動ではない、とは判断しないことが「大人な」診療です。
経過を追っていく事で、所見の再評価や顕在化によって確かな診断に
つながることも度々経験します。 POINT
時間を味方にした診断の進め方
#13. 初回判断でパーキンソン病を否定しない。次に会ったら印象は違うかもしれない。
症状の進行性の変化が、まさに変性疾患らしさでもある。
よって、時間を味方につけて診断を行うことが、患者さんの利益につながるはず。 ACTION
#14. TIPS
「パーキンソン病の否定」はできない。
診断には「時間」を味方につける。