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初期研修医が知っておきたい性感染症の正しいアプローチ

投稿者プロフィール
Lemon@感染症

急性期総合病院

43,293

177

概要

性感染症のアプローチに自信をもてない全ての初期研修医へ向けて、性感染症に対する診断・治療・フォローアップについてまとめました。正しい性交渉歴の聴取の方法などの理解に役立ちましたら幸いです。

◎目次

・Take Home Messages

・本スライドのゴール、本スライドの対象

・目次

・性感染症ってどんなイメージ?

・性感染症の主な性器外の症状

・性感染症の正しいアプローチ

・性交渉歴を聴取する時のポイント

・性交渉歴の内容の5P

・オーラルセックスを行う場合の性感染症のリスク

・アナルセックスを行う場合の性感染症のリスク

・20代 男性

・尿道炎の分類

・尿道炎の治療のポイント

・性感染症の治療後の正しいフォローアップ

・他の性感染症のスクリーニング

・再感染予防の患者教育

・パートナーの検査・治療

・よく聞かれるQ&A

本スライドの対象者

研修医/専攻医

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テキスト全文

  • #1.

    初期研修医が知っておきたい 性感染症の正しいアプローチ Lemon@感染症 日本感染症学会専門医・指導医・評議員 twitter: @Dr_lemon_infect

  • #2.

    Take Home Messages 1. 性感染症は、性交渉歴を正しく聴取する 2. 尿道炎は、主に淋菌性と非淋菌性に分かれ、 近年はマイコプラズマ・ジェニタリウムに注 意が必要である 3. 性感染症の治療後は、正しいフォローアップ が重要である

  • #3.

    本スライドのゴール • 正しい性交渉歴の聴取の方法を学ぶ • 性感染症の適切なアプローチ(診断・治療・フォ ローアップ)を学ぶ 本スライドの対象 • 性感染症のアプローチに自信をもてない全ての初期 研修医

  • #4.

    目次 1. 正しい性交渉歴の聴取の方法 2. 主な尿道炎の診断・治療 3. 性感染症の治療後の正しいフォローアップ

  • #5.

    目次 1. 正しい性交渉歴の聴取の方法 2. 主な尿道炎の診断・治療 3. 性感染症の治療後の正しいフォローアップ

  • #6.

    性感染症ってどんなイメージ? 性交渉歴があるヒトの感染症 感染症科や泌尿器科の感染症 性器の症状だけでしょ? • 性感染症は奥が深い • 多くの誤解が存在する • 性感染症を制する者は感染症診療を制する

  • #7.

    性感染症の主な性器外の症状 結膜炎 淋菌、クラミジア、梅毒、単純ヘルペス 咽頭炎 淋菌、クラミジア、梅毒、単純ヘルペス、HIV 関節炎 淋菌、クラミジア、HBV、HCV、HIV 全身の皮疹 淋菌、梅毒、HIV 神経症状 梅毒 肝周囲炎 淋菌、クラミジア 直腸炎 淋菌、クラミジア、梅毒、単純ヘルペス、HIV、 赤痢アメーバ 感染性心内膜炎 淋菌 • 性器外の症状も多い • 非専門医でも性感染症の診療の機会がある!

  • #8.

    性感染症の正しいアプローチ ① 患者背景を理解 性交渉歴を確認 ② 感染臓器を特定 性器外症状も確認 ③ 原因微生物 推定し検査で確認 ④ 抗菌薬の選択 原因微生物に対して ⑤ 適切な経過観察 フォローアップ診療 パートナーの治療 再発予防の教育 • 性交渉歴の確認が最も重要!

  • #9.

    性交渉歴を聴取する時のポイント • 環境を調整して性交渉歴聴取の流れを作る – プライベートな空間、未成年者の場合は保護者は外に • 恥ずかしがらずにズバッと聞く – モジモジせずに淡々と • オープンクエスチョンよりクローズドクエスチョン • なぜこの質問をするのか、理由を説明する • 答えてくれたら、感謝の気持ちを伝える • より良い関係性を構築しよう!

  • #10.

    性交渉歴の内容の5P Partners 性交渉相手の性別・人数、パートナーの性交渉相手の人数 など Practice コンドーム装着の有無、 性交渉のスタイル(オーラル、アナルなど) Prevention of 避妊の方法(コンドーム、ピル、子宮内避妊用具など) pregnancy Protection from STD Past history of STD 性感染症の予防を実施しているか 自身とパートナーの性交渉歴、静注薬物の使用歴 性風俗産業への従事、渡航歴など CDC: Sexually Transmitted Diseases Treatment Guidelines, 2015. MMWR Recomm Rep 64: 1-137, 2015. 一部改変

  • #11.

    オーラルセックスを行う場合の 性感染症のリスク • 口 ー 性器 ・咽頭炎:淋菌、クラミジア、単純ヘルペス、梅毒、HIV ・口腔内潰瘍:梅毒、単純へルペス、HIV ・HPV感染による咽頭癌の前癌病変のリスク • 口 ー 肛門 ・A型肝炎、赤痢アメーバ、ジアルジアなど

  • #12.

    アナルセックスを行う場合の 性感染症のリスク • HIV感染 • 淋菌やクラミジアによる直腸炎 • A型肝炎、赤痢アメーバ、ジアルジア • HPV感染に伴う尖圭コンジローマ、肛門癌 • HIV感染は特に“受け側”のリスクが高い • 性交渉歴の具体的な内容も聴取しよう

  • #13.

    目次 1. 正しい性交渉歴の聴取の方法 2. 主な尿道炎の診断・治療 3. 性感染症の治療後の正しいフォローアップ

  • #14.

    【主訴】排尿時痛 20代 男性 【現病歴】 3日前から排尿時痛を認め、徐々に増悪したため受診 数日前に風俗店を利用し、コンドームなしでオーラルセッ クスのサービスを受けた 【身体所見】 発熱なし 尿道から膿性の分泌物を認める 他に身体診察上の異常所見はない • 病歴と身体所見から感染臓器は尿道と判明 • 次に病原微生物を考える

  • #15.

    尿道炎の分類 淋菌性 クラミジア性 尿道炎 非淋菌性 非クラミジア性 マイコプラズマ・ジェニタリウム ウレアプラズマ・ウレアリチカム 膣トリコモナスなど • 尿道炎の病原微生物は 淋菌、クラミジア、マイコプラズマ・ジェニタリウム に注目

  • #16.

    淋菌 クラミジア マイコプラズマ・ ジェニタリウム 潜伏期間 3~7日間 1~3週間 1~5週間 発症様式 急性 緩やか 緩やか 臨床症状 強い排尿時痛 軽い排尿時痛 尿道掻痒感・不快感 軽い排尿時痛 尿道掻痒感・不快感 尿道分泌物 中等量で膿性 の性状 少量で漿液性~粘液性 少量で漿液性~粘液性 グラム染色 グラム陰性双球菌 不可(細胞内寄生菌) 不可(細胞内寄生菌) 検査 核酸増幅検査 核酸増幅検査 核酸増幅検査 治療 • ドキシサイクリン • セフトリアキソン • アジスロマイシン 1g単回静注 1g単回内服 100mg 1日2回7日間 • ドキシサイクリン 投与後に 100mg 1日2回 7日間 シタフロキサシン 100mg 1日2回7日間 • 非典型例もあるので症状からの診断は難しい • 複数の病原体の感染例もある

  • #17.

    尿道炎の治療のポイント① • オーラルセックスをしている場合は、尿道炎と共 に咽頭炎も併発している可能性も考える • 淋菌性尿道炎にはクラミジア性尿道炎を合併して いることが多い • そのため、淋菌の治療を行う時点でアジスロマイ シンを追加してクラミジア性尿道炎の治療を実施 することもある • 近年、クラミジア性尿道炎に対して、アジスロマ イシンよりもドキシサイクリンの方が有効という 報告もある Lau A, et al. Azithromycin or Doxycycline for Asymptomatic Rectal Chlamydia trachomatis. N Engl J Med. 2021 Jun 24;384(25):2418-2427. Workowski KA, et al. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. MMWR Recomm Rep. 2021 Jul 23;70(4):1-187

  • #18.

    尿道炎の治療のポイント② • 尿の核酸増幅検査を実施し陽性となった時点で治療をする のが最も確実だが、様々な事情で再受診してくれない患者 さんもいるので、疑いの時点で同時に治療してしまう方が 確実な場合もある • 淋菌の診断がついてもクラミジア性尿道炎を見逃さないこ とが大切 • グラム染色で菌体が見えなくても淋菌は否定できないので、 淋菌・クラミジア共に核酸増幅検査を実施して確定診断を つける必要がある • マイコプラズマ・ジェニタリウムは、商業ベースでの診断 体制が整備しつつあるのでしっかり診断して治療を行う Lau A, et al. Azithromycin or Doxycycline for Asymptomatic Rectal Chlamydia trachomatis. N Engl J Med. 2021 Jun 24;384(25):2418-2427. Workowski KA, et al. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. MMWR Recomm Rep. 2021 Jul 23;70(4):1-187

  • #19.

    目次 1. 正しい性交渉歴の聴取の方法 2. 主な尿道炎の診断・治療 3. 性感染症の治療後の正しいフォローアップ

  • #20.

    性感染症の治療後の正しいフォローアップ • 他の性感染症のスクリーニング – 複数の性感染症に感染している可能性がある • 再感染予防を教育 – 性感染症は何度も感染する可能性がある • パートナーの検査、治療を実施 – ピンポン感染を予防しよう • 性感染症ではアフターケアが大事!

  • #21.

    他の性感染症のスクリーニング • 梅毒:RPR、TP抗体 • HIV :HIV抗原・抗体 • B型肝炎:HBs抗原、HBc抗体、HBs抗体 • C型肝炎:HCV抗体 • 性交渉スタイルによっては追加検査を実施

  • #22.

    再感染予防の患者教育 • 特定のパートナーと性交渉をする • コンドームを適切に使用する • ワクチン接種の推奨 – A型肝炎、B型肝炎、ヒトパピローマウイルス • 曝露前予防(HIV) • 曝露後予防(HIV、B型肝炎、HPV)

  • #23.

    パートナーの検査・治療 • ピンポン感染の予防 • 他のパートナーへの感染 • 生殖機能の低下を防ぐ! • 女性の淋菌性子宮頸管炎は40%が無症状 罹患者が妊娠して出産した場合に垂直感染を起こして 新生児結膜炎を発症 • クラミジア性子宮頸管炎も無症状のことがあり、放置 すると卵管炎を起こし、不妊の原因となる • 性性感染症は一人では起こり得ず、患者さんの背後に一人、も しくは複数人の感染者が存在する • パートナーの治検査・治療は性感染症の感染防止策につながる

  • #24.

    よく聞かれるQ&A Q. 性交渉歴を聴取する時はどんな時ですか?教えてください • 性感染症を疑った時に性交渉歴を聴取します • 具体的には以下の状況で性感染症を疑います • 繰り返す口内炎や咽頭炎 • 流行地域への渡航歴がないのにA型肝炎や赤痢アメーバの罹患歴が ある • 若年男性の尿路感染症 • 原因不明の発熱・下痢・皮疹など Q. 性交渉歴の5Pで海外渡航歴も聴取する理由を教えてください • 海外滞在中に危険な性行為を行う可能性が高いからです • 渡航者の約20%が行きずりの性交渉を行い、そのうち約50%がコ ンドームを使用しない性交渉であったと報告もあります • また、A型肝炎や赤痢アメーバなどを診断した時に、性交 渉で感染したのか、それとも流行地域へ渡航したことで感 染したのかを判断する参考になるからです

  • #25.

    よく聞かれるQ&A Q. 尿道炎の中で注意すべき病原微生物について教えてください • 淋菌、クラミジア、マイコプラズマ・ジェニタリウムです • マイコプラズマ・ジェニタリウムの検査を行うと、ウレア プラズマもセットで検査を実施されて陽性になることがあ りますが、ウレアプラズマ感染症は現時点では病的意義は ないと言われています • 薬剤耐性の視点では、淋菌とマイコプラズマ・ジェニタリ ウムが特に問題視されています Q. マイコプラズマ・ジェニタリウムの治療困難例の対応を教えて ください • ドキシサイクリンとシタフロキサシンによる治療失敗例で は薬剤耐性の関与が示唆されます • 研究機関に相談になりますが、薬剤耐性遺伝子の検査を行 います • 薬剤耐性があるようであれば適応外使用になりますが、ス ペチクノマイシン筋注も検討します

  • #26.

    Take Home Messages 1. 性感染症は、性交渉歴を正しく聴取する 2. 尿道炎は、主に淋菌性と非淋菌性に分かれ、 近年はマイコプラズマ・ジェニタリウムに注 意が必要である 3. 性感染症の治療後は、正しいフォローアップ が重要である

  • #27.

    参考文献 • Workowski KA, et al. Centers for Disease Control and Prevention. Sexually transmitted diseases treatment guidelines, 2015. MMWR Recomm Rep. 2015 Jun 5;64(RR-03):1-137. • Workowski KA, et al. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. MMWR Recomm Rep. 2021 Jul 23;70(4):1-187 • Lau A, et al. Azithromycin or Doxycycline for Asymptomatic Rectal Chlamydia trachomatis. N Engl J Med. 2021 Jun 24;384(25):2418-2427.

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