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外来でのくも膜下出血の概要と症状
#1. 外来でくも膜下出⾎を 疑ったときの対応 Oreo@脳神経外科 脳神経外科専⾨医 脳卒中専⾨医 神経内視鏡技術認定医
#2. くも膜下出⾎とは くも膜下腔に存在する脳⾎管が破裂して起こる出⾎ 出⾎する原因の約80%は脳動脈瘤破裂 予後はとても悪い (死亡23.4%、後遺症45.3%、⾃⽴31.3%) ⼩林祥泰(編). 脳卒中データバンク2015. 中⼭書店. 2015. 頭痛症例で⾒逃したくない疾患の⼀つ 図は、典型的なCT画像
#3. くも膜下出⾎とは 以下の典型的な症状は、全て現れるとは限らない • 突然発症 特徴的な頭痛症状 • ⼈⽣で最悪の頭痛 • 意識消失 • 嘔気/嘔吐 病歴聴取・問診が⼤事 • 項部硬直 「突然発症の頭痛」に注⽬! など ⾒逃さないようにしたい 図は、典型的なCT画像
救急外来における頭痛患者の注意点
#4. 救急外来を受診する頭痛患者には要注意 • 救急⾞で病院を受診する⽅の 1000⼈中32⼈(3.2%)が頭痛が原因で救急⾞を呼び、 そのうち半分以上(53.6%)が⼆次性頭痛、 そのうち1⼈(8.1%)がくも膜下出⾎であった、という報告あり 横⼭雅⼦ら. ⽇本頭痛学会誌. 2001. • くも膜下出⾎の⾒逃し率は、5.4〜32%と⾔われる Edlow J, et al. NEJM. 2000. Kowalski R, et al. JAMA. 2004.
#5. 頭痛に対して詳しく問診をとろう! ①突然発症か 問診例:「何時何分に発症したか、覚えていますか? 」 「何をしていたときか具体的に⾔えますか? 」 ②⼈⽣最⼤の頭痛か 問診例:「これまで経験した頭痛の中で⼀番ひどいですか? 」 「頭が割れそうなくらい痛い頭痛ですか?」 これらの質問を全て、曖昧に答える、あるいは「いいえ」と答える場合は、 くも膜下出⾎の疑いは、おおよそ否定的
#6. 頭痛に対して詳しく問診をとろう! さらに、Ottawa SAH Ruleという診断基準も使って確認しよう ①40歳以上 ②頸部痛または項部硬直 ③⽬撃のある意識消失 ④労作時発症 ⑤雷鳴頭痛 ⑥頸部屈曲制限 6項⽬中、全て陰性であれば、くも膜下出⾎は否定的 (感度100%、特異度12.7%) Perry JJ, et al. CMAJ. 2017.
くも膜下出血の診断と検査の流れ
#7. くも膜下出⾎の診断・検査の流れ 病歴聴取・問診から、くも膜下出⾎を疑う 頭部CTを撮像 なし くも膜下腔に出⾎ 頭部MRI 腰椎穿刺 出⾎あり あり 脳神経外科 コール
#8. くも膜下出⾎を⾒逃さないための CT読影ポイント ①シルビウス裂の左右差はないか ②脳槽周囲の正常の低吸収域が消失していないか ③⽔頭症(側脳室下⾓の開⼤など)はないか ③ どれかに異常があれば くも膜下出⾎の疑いあり ① 図は、 健常症例の CT画像 ②
#9. 発症から時間が経過するにつれて CTでの診断は難しくなる CT検査でくも膜下出⾎の検出可能な確率 100 80 96.7% 92.8% 84.8% 60 77.8% 73.7% 72.7% 40 20 0 発症当⽇ 発症後1⽇⽬ 発症後2⽇⽬ 発症後3⽇⽬ 発症後4⽇⽬ 発症後5⽇⽬ Kassell NF, et al. J Neurosurg. 1990
MRIとCTによるくも膜下出血の読影ポイント
#10. 診断の⾒逃しが増えてしまう因⼦ ①頭痛の訴えなし/ごく軽度 ②ウォークインの患者 ③典型的なCT画像ではない ④椎⾻動脈解離 ⑤貧⾎ ⑥頸部屈曲制限 ・・・などさまざまある CT検査で陰性でも、MRI検査か腰椎穿刺を追加 朽⽊秀雄ら. 脳卒中の外科. 2014.
#11. MRIと腰椎穿刺どちらがよいの? MRI メリット:FLAIRやT2スター(T2*)の条件であれば、信号変化によって出 ⾎がわかりやすい デメリット:MRI撮像には時間がかかるため、バイタル不安定な症例には向 いていない 腰椎穿刺 メリット:⾎性髄液が得られれば、診断可能 デメリット:頭蓋内圧亢進時は危険。また、穿刺がうまくいかない場合、 頻回の穿刺によって、痛みや⾎液混⼊の問題が⽣じる 検査⽅法は状況に応じて、選択するしかない
#12. くも膜下出⾎を⾒逃さないための MRI読影ポイント 基本的にはCTと同じ ①シルビウス裂の左右差はないか ②脳槽周囲の正常の低吸収域が消失していないか ③⽔頭症(側脳室下⾓の開⼤など)はないか ① ② 図は、 くも膜下出⾎症例 (同⼀⼈物) FLAIRやT2スター(T2*)の条件が有⽤ • FLAIRでは、出⾎が⾼信号(⽩⾊に⾒える) • T2スターでは、出⾎が低信号(⿊⾊に⾒える) MRIで出⾎の診断は難しくない 上:CT 下:MRI(FLAIR) CTでやや不鮮明に ⾒える部位(囲い 点線)は、FLAIRで は出⾎(⽮頭)を ⽰している
くも膜下出血の診断における重要なメッセージ
#13. Take Home Message • くも膜下出⾎をしっかりと診断することは難しい • 病歴から頭痛の性状をしっかりと確認しよう いつから発症したか、痛みの性状などを確認しよう • CT検査陰性でも、突然発症したひどい頭痛なら、 くも膜下出⾎の可能性を否定しづらい MRI検査や腰椎穿刺など追加検査を考慮しよう