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shun@形成外科

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よくあるきずの質問 Part 2 赤いキズアト

  • 形成外科

  • 皮膚科

  • 初期研修医

  • 炎症後色素沈着
  • 肥厚性瘢痕
  • キズアト
  • ケロイド
  • JSW Scar Scale(JSS) 2015
  • コラーゲン
  • 炎症
  • 血管新生
  • 未熟瘢痕

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Award 2022
shun@形成外科

総合病院

内容

「ケロイド体質なんですけど」ってよくいわれませんか?赤いキズアトにも実はいろいろあります。外傷を診るすべての 医学生・研修医・専攻医、キズアトや創傷治癒が知りたい人へ向けて、

正常の傷の経過、肥厚性瘢痕、ケロイドに関して解説していきます。

◎目次

・本スライドの対象者

・キズアトの種類

・正常のキズの経過

・キズアトは時間経過で変化する

・再構築期の経過 コラーゲンの変化

・真皮・皮下縫合時の糸の選択の話

・再構築期の経過 血管新生と赤み

・炎症後色素沈着

・正常のキズの経過 まとめ

・ケロイドと肥厚性瘢痕

・JSW Scar Scale(JSS) 2015 (ケロイド・肥厚性瘢痕 分類評価表)

・ケロイド・肥厚性瘢痕の原因・関連する因子

・ケロイド・肥厚性瘢痕の経過

・ケロイド・肥厚性瘢痕の治療する因子

・肥厚性瘢痕のまとめ

・ケロイドのまとめ

・キズアトのまとめ

・Take home message

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医

参考文献

  • 形成外科診療ガイドライン 2021年版.金原出版,2021.

  • 瘢痕・ケロイド治療研究会. ケロイド・肥厚性瘢痕 診断・治療指針 2018. 全日本病院出版会, 2018.

  • 小川令. 傷あと治療.克誠堂出版, 2021.

  • 荒牧典子. 形成外科医に学ぶ手術手技 消化器・一般外科医が知りたいコツと工夫 Ⅰ. 形成外科の基本知識 1)創傷治癒の基礎知識.手術. 2022, vol.76, no.12.

  • Jeffrey E. Janis, Robert K. Kwon, Donald H. Lalonde. A Practical Guide to Wound Healing. PRS. 2010, vol.125, no.6.

  • 小川令. ここまでできるケロイド・肥厚性瘢痕の予防と治療. 日本医事新報社, 2019.

テキスト全文

  • 1.

    よくあるきずの質問 Part 2 赤いキズアト Q ケロイド体質ってよくいわれるんですけど ・未熟瘢痕 と 成熟瘢痕 ・肥厚性瘢痕 と ケロイド shun@形成外科

  • 2.

    本スライドの対象者 ・外傷を診るすべての 医学生・研修医・専攻医 ・キズアトや創傷治癒が知りたい人 ・こんにちは! shun@形成外科 です ・形成外科は、体表のキズや熱傷、難治性潰瘍を扱います ・ところで「ケロイド体質なんですけど」ってよくいわれま せんか? 赤いキズアトにも実はいろいろあります ・今回は、正常の傷の経過、肥厚性瘢痕、ケロイドに関して 解説していきますね! Twitter ID @shun46618111

  • 3.

    目 次 <Contents> 【目標】キズアトにはいろいろあります 違いを理解できるようになりましょう! ・正常な傷の経過 ・再構築期の話(赤み、硬さ) ・未熟瘢痕 と 成熟瘢痕 ・炎症後色素沈着 ・肥厚性瘢痕 と ケロイド

  • 4.

    キズアトの種類 ① Q 患者さんに「ケロイド体質なんですけど」って良く 言われるんだけど、分からないから教えて! ② ・写真のキズアトをよく見るといろいろありますよね ① 赤く平らな瘢痕 ※瘢痕=キズアト ② 白く平らな瘢痕 ③ 赤く隆起した瘢痕 ④ 赤く周囲に広がっている瘢痕 ③ ・先ほどの問いに答えるためには ① 正常のキズの経過 ② 肥厚性瘢痕 ③ ケロイド について理解する必要があります ④ ・まずはじめに、正常の傷の経過に関して説明します

  • 5.

    正常のキズの経過 え!? キズの経過って、くっついたら抜糸しておしまいじゃないの? 出血・凝固期 炎症期 増殖期(4~14日) 受傷~数分 血小板が止血 3~5日 白血球が創を浄化 線維芽細胞が充填 表皮で傷が閉じる 再構築期 (8日~1年) ※日数は症例で変わる 瘢痕組織が再構築され成熟瘢痕になる ・創傷治癒の過程には①出血期 ②炎症期 ③増殖期 ④再構築期 の4つがありました※Part1も参照 ・これは、足を切った人でみると ① 出血期 = 縫合して止血するまで ② 炎症期 = 足が数日は内出血・発赤・腫れる ③ 増殖期 = 2週間で傷が閉じる=抜糸まで ※日にちに関しては多少幅があります ④ 再構築期= 抜糸後.瘢痕組織は1年かけて成熟する ・キズアトは抜糸してからもゆっくり時間をかけて変化(再構築)していきます 参考文献:荒牧典子. 形成外科医に学ぶ手術手技 消化器・一般外科医が知りたいコツと工夫 Ⅰ. 形成外科の基本知識 1)創傷治癒の基礎知識.手術. 2022, vol.76, no.12. Jeffrey E. Janis, Robert K. Kwon, Donald H. Lalonde. A Practical Guide to Wound Healing. PRS. 2010, vol.125, no.6.

  • 6.

    キズアトは時間経過で変化する じゃあ、抜糸後の変化ってどんなものがあるの? 抜糸時に終診とすることが多いので、その後の経過を知らない先生も多いですよね 実は、時間経過によって、傷の赤さ、硬さ(突っ張り感)などが変化していきます 傷の色の変化 瘢痕は1か月後くらいに、1度赤みが強くなります ※その後、炎症によるメラニン産生で色素沈着(茶色)になることがあります 赤みの推移のイメージ 赤 み ※グラフは私見です 時間の経過とともに徐々に白くなります 赤い瘢痕を未熟瘢痕、白い瘢痕を成熟瘢痕と呼びます 時間経過 傷の硬さ 瘢痕は1か月後くらいに、1度ギュッと硬くなります 硬さの推移のイメージ 硬 さ ※グラフは私見です ※硬いと突っ張り感(拘縮)や圧痛、しこりを訴えることがあります 硬さも時間の経過とともに軟らかくなります ※半年から1年かけて成熟瘢痕になるとかなり軟らかくなります 時間経過

  • 7.

    再構築期の経過 コラーゲンの変化 再構築期の変化をもう少し詳しく見てみましょう。まずはコラーゲンの変化に関してです 再構築期のコラーゲンの量の変化 ・まず、線維芽細胞によって、コラーゲンの合成が約4~5週間かけて おこなわれます 硬さの推移のイメージ 硬 さ ※グラフは私見です ・つまり、コラーゲンの量が増えます 再構築期のコラーゲンの質の変化 時間経過 ・次に、コラーゲンの質の変化であるターンオーバーが受傷後1年程度まで続きます ※コラーゲンのターンオーバーとは、始めはⅢ型コラーゲンの割合が多いが 徐々にⅢ型は減少し、より強いI型コラーゲンへ置き換えられていくことです なるほど、抜糸後も瘢痕の内部が変化しているから、傷の硬さも変わっていくのね 参考文献:荒牧典子. 形成外科医に学ぶ手術手技 消化器・一般外科医が知りたいコツと工夫 Ⅰ. 形成外科の基本知識 1)創傷治癒の基礎知識.手術. 2022, vol.76, no.12. Jeffrey E. Janis, Robert K. Kwon, Donald H. Lalonde. A Practical Guide to Wound Healing. PRS. 2010, vol.125, no.6.

  • 8.

    再構築期の経過 コラーゲンの変化と強度 キズアトが軟らかくなるってことは、瘢痕自体は弱くなるの? Ⅲ型コラーゲンから、より強いⅠ型コラーゲンへの質の変化があるので 柔らかくなりつつ、瘢痕の強さは落ちないとされています 再構築期の強度の変化 ラットの実験ですが、キズアトの強度を調べた実験があります キズアト(1週間後に抜糸した皮膚)と 正常皮膚 の強度を比べた結果 ・1週間後 正常皮膚の 3% ・3週間後 正常皮膚の 30% ・3か月後 正常皮膚の 80% の強度 の強度 の強度 抜糸の時期 ※ラットの実験 皮膚強度の推移のイメージ 皮 膚 強 度 時間経過 ・皮膚の強度が徐々に強くなり、再構築期にも変化していることがわかります ・瘢痕部は、抜糸直後は爪などでぐいっと押すと容易に傷は開くくらい弱いです 抜糸後すぐは傷が開かないように気を付ける必要があります 参考文献:荒牧典子. 形成外科医に学ぶ手術手技 消化器・一般外科医が知りたいコツと工夫 Ⅰ. 形成外科の基本知識 1)創傷治癒の基礎知識.手術. 2022, vol.76, no.12. Jeffrey E. Janis, Robert K. Kwon, Donald H. Lalonde. A Practical Guide to Wound Healing. PRS. 2010, vol.125, no.6.

  • 9.

    真皮・皮下縫合時の糸の選択の話 瘢痕の強度の話は真皮縫合の糸の選択とつながります 真皮縫合の糸の条件 皮膚強度の推移のイメージ 皮 膚 強 度 真皮縫合の糸の条件 ① 体内に残らない吸収糸 非吸収糸は、長期に残存するため縫合糸膿瘍のリスクがある 組織が癒合した後の糸は吸収されることが望ましい ② 抗張力が長い糸 時間経過 抜糸後も瘢痕部の強度が強くなるには時間が掛かる よって、瘢痕部が強くなる(赤線)まで強度が維持できる糸が良い 材質の成分 糸の名前(商品名) 強度持続期間 ポリジオキサノン PDSⅡ・モノディオックス 6週間 バイクリル 4週間 バイクリルラピッド 1~2週間 (5日後50% 14日後0%) ポリグラクチン910 (グリコライド90%・ラクタイド10%) だから真皮縫合は、吸収糸で強度持続期間が長い、ポリジオキサノンの糸がいいのね 参考文献:菊池雄二. 実践!よくわかる縫合の基本講座 形成外科における縫合材料. PEPARS. 2017, 増刊号, no.123. Ethicon. Vicryl Rapid. 製品カタログ.

  • 10.

    再構築期の経過 血管新生と赤み 赤みに関しては、再構築期の経過ってどうなってるの? 未熟瘢痕の赤みは、血管による色なので、圧迫すると赤みが消えます 再構築期の赤みの変化については、血管に注目しましょう 再構築期の血管新生 ・創傷治癒過程の肉芽形成時は ① コラーゲン線維の合成 と一緒に ② 血管新生 によって毛細血管も作られます ※薄い表皮を通して、肉芽の中の血管が透けて赤く見えています ・時間経過により、毛細血管も再構築されていきます ・瘢痕は1か月後くらいに、1度赤みが強くなり(未熟瘢痕) 最終的には数か月~1年程度で白い成熟瘢痕となります ※何らかの原因で炎症が持続すると赤みが残る場合もあります ※赤みが心配という人には、傷を引っぱると赤みが消えるので 最終的にはこんな感じになるよと見せてあげると安心します 参考文献:小川令. 傷あと治療. 克誠堂出版, 2021. 赤みの推移のイメージ 赤 み ※グラフは私見です 時間経過

  • 11.

    炎症後色素沈着 キズアトが茶色になることもあるよね? ・ 日焼けすると、メラニンが産生されて肌の色が茶色になるよね ・ にきびや虫刺されなどの後に、肌の色が茶色になることがあると思うんだけど これを炎症後色素沈着といいます 炎症後色素沈着 ・何らかの刺激(炎症)が原因となり、メラニンが産生されて茶色くなることを炎症後色素沈着といいます ・通常は、日焼けも徐々に白く戻るように、原因が除去されれば改善します ・キズアトの場合は、1か月後くらいに赤みが強くなり、その後に茶色くなって 数か月~半年程度かけて白くなるイメージです ・炎症後色素沈着は、再構築期におこりますが、再構築の話とは少し反れるので誰にでも起こるわけで はありません。 ※ただし、一度なった人はなりやすい印象です ・赤みと茶色が混在していることも多いです どちらかわからない場合、傷を引っぱる(圧迫する)と赤みは消えるので、残りは色素沈着と考えます

  • 12.

    正常のキズの経過 まとめ 抜糸後もキズアトは変化していくことは分かったわ どうやって、患者さんに説明したらいいかしら? ・私は、指にキズアトがあるので、その成熟瘢痕を見せながら 傷の経過を以下のように説明しています ※期間に関しては私見です 「3-4週くらいでキズアトは赤くなり、しこりのように固くなります その後、顔なら3か月~半年、四肢などの緊張のかかる部位であれば 半年~1年程度かけて、最終的には白く柔らかい成熟瘢痕になります たまに、赤みが残る人もいるので、もし傷の経過が気になれば いつでも形成外科を再診してください」 と説明しています 抜糸時に、これからのキズの経過を患者さんに説明してあげれば 患者さんも心配せずに安心できそうね

  • 13.

    ケロイドと肥厚性瘢痕 正常な経過は分かったけど、次はケロイドに関して教えて! ケロイドと似たものに肥厚性瘢痕があります まずは、ケロイドと肥厚性瘢痕がどういうものかイメージをつかみましょう 肥厚性瘢痕 ケロイド 他覚症状 ・もとの傷の範囲を越えない ・赤み、隆起している ・もとの傷の範囲を超えて増大する 自覚症状 ・痒み、痛み、拘縮(つっぱり感) ・同じだが、肥厚性瘢痕より、症状が強い 好発部位 ・傷痕に緊張のかかる部位 ※ 膝・肩などの関節部 ・胸骨部、肩、耳、恥骨部 ※ 全身どこでも発生の可能性はある ・体質はなし(誰でもおこりうる、多い) ・ケロイドほど人種差なし ・いわゆるケロイド体質(人数は少ない) ・有色人種でなりやすい 黒人>黄色人種>白人 人種・体質 参考文献:日本形成外科学会HP. ダンベル型などとも言われる ・肥厚性瘢痕より、赤み・隆起などがより強い

  • 14.

    ケロイドと肥厚性瘢痕 ケロイドと肥厚性瘢痕があるのね。外観は似ているけど区別する必要あるの? ・両疾患とも似ていますよね。両者は炎症の強さや持続時間の違いはありますが 同一病態である可能性も言われています ・しかし、ケロイドでは安易な手術はダメなど、治療や経過に異なる点があるため できるだけ鑑別してから治療をおこないましょう ・ただし、ケロイドか肥厚性瘢痕か、どちらともいえず判断が難しい場合もあります 肥厚性瘢痕 特徴 共通の 治療 手術 ・もとの傷の範囲を越えない ・誰でも手術や外傷の瘢痕におこりえる ケロイド ・もとの傷の範囲を超えて増大する ・体質が関連し、誰でもなるわけではない ・ステロイドによる治療・各種外用剤 ・内服薬(トラニラスト、柴苓湯など) ・安静・固定療法(テープ、ジェルシート) ・圧迫療法(包帯、サポーター、ガーメント)etc ・手術のみでも可 ・手術のみでは再発・増悪するので要注意 ※ 電子線療法など集学的治療が必要 参考文献:形成外科診療ガイドライン 2021年版.金原出版,2021. 瘢痕・ケロイド治療研究会. ケロイド・肥厚性瘢痕 診断・治療指針 2018. 全日本病院出版会, 2018. 小川令. 傷あと治療.克誠堂出版, 2021.

  • 15.

    JSW Scar Scale(JSS) 2015 (ケロイド・肥厚性瘢痕 分類評価表) ケロイド/肥厚性瘢痕/正常瘢痕か、判断に迷う場合には、JSW Scar Scale(JSS) 2015 (ケロイド・肥厚性瘢痕 分類評価表)も参考になります 評価表(治療効果判定・経過観察用) 分類表(グレード判定・治療指針決定用) リスク因子 1.硬結 1.人種 黒色人種(2)/その他(1)/白色系人種(0) 2.隆起 2.家族性 あり(1)/なし(0) 3.瘢痕の赤さ 3.数 多発(2)/単発(0) 4.周囲発赤浸潤 4.部位 前胸部、肩-肩甲部、恥骨上部(2)/その他(0) 5.自発痛・圧痛 5.発症年齢 0-30歳(2)/31-60歳(1)/61歳以上(0) 6.原因 不明(3)/手術を含むある程度のおおきさの傷(0) 現症 7.大きさ 20cm2以上(1)/20cm2未満 8.垂直増大傾向 あり(2)/なし(0) 9.水平拡大傾向 あり(3)/なし(0) 10.形状 不整系あり(3)/その他(0) 11.周囲発赤浸潤 あり(2)/なし(0) 12.自覚症状 常にあり(2)/間欠的(1)/なし(0) ・計 ・備考 0-25 点 0-5 正常瘢痕的性質 (治療抵抗性:低リスク) 6-15 肥厚性瘢痕的性質 (治療抵抗性:中リスク) 16-25 ケロイド的性質 (治療抵抗性:高リスク) なし(0)/軽度(1)/中等度(2)/高度(3) 6.掻痒 ・計 0-18 ・備考 軽度:症状が面積の1/3以下にある、または症状が間欠的なもの 高度:症状がほぼ全体にある、または症状が持続するもの 中等度:軽度でも高度でもないもの <分類表の使用法> ・判定は初診時に行う ※ 治療が開始されている場合は治療前の症状で評価する ・範囲の大きいものでは、症状が最も強い部分を評価する ・複数あるものでは、それぞれ4-12を個別に評価する ※(1-3は共通) 表は以下より改変して引用:小川令, 赤石諭史, 秋田定伯, 岡部圭介, 清水史明, 須永中, 土佐泰祥, 長尾宗朝 , 村尾尚規, 山脇聖子; 瘢痕・ケロイド治療研究会 ケロイド・肥厚性瘢痕 分類・評価ワーキング グ ループ. JSW Scar Scale. Avail

  • 16.

    ケロイド・肥厚性瘢痕の原因・関連する因子 ケロイドと肥厚性瘢痕の原因は何? ・ケロイド・肥厚性瘢痕の原因は炎症です ※ 腫瘍ではありません ※多因子発症、原因不明とするものもありますが、理解しやすいので今回は炎症が原因とします ・炎症がまずあって、炎症に引き続き細胞が増えて、ケロイドや肥厚性瘢痕になります 関連する因子:張力、局所の血流増加、炎症などで増悪するイメージ ・性ホルモン ※血管拡張作用あり ・女性ホルモン(妊娠・思春期で増悪、偽閉経療法で改善) ・男性ホルモン(思春期に増悪) ・高血圧 ・血流の流れがはやくなり、炎症が強くなる ・全身の炎症 ・大きな外傷、手術、熱傷など。全身によるサイトカイン ・張力=物理的刺激 ・瘢痕にかかる皮膚の緊張(引っ張られる部位)、肉体労働、過度な運動 ・生活習慣 ・過度の飲酒、長時間の入浴 ・遺伝的因子 ・1塩基多型(SNPs) ・傷の状態 ・真皮網状層の炎症、創傷治癒遅延、傷の深さ 参考文献:小川令. 傷あと治療.克誠堂出版, 2021. 血管拡張や血流早くなることが関与 形成外科診療ガイドライン 2021年版.金原出版,2021.

  • 17.

    ケロイド・肥厚性瘢痕の経過 ・正常な傷の経過では、創傷治癒の各段階がスムーズに進みます <正常な傷の経過> 出血・ 凝固期 炎症期 増殖期 再構築期→成熟瘢痕へ <ケロイド、肥厚性瘢痕の傷の経過> 出血・ 凝固期 炎症期 増殖期 再構築期→肥厚性瘢痕・ケロイド ・創傷治癒が何らかの影響で阻害されると、炎症期や増殖期が延長して 各段階がなかなか進行しません ・炎症が持続すると、ケロイド・肥厚性瘢痕の原因となります ・そこで、炎症の原因を除去することで、ケロイド・肥厚性瘢痕の予防や ケロイド・肥厚性瘢痕になった場合は、もとの再構築期→成熟瘢痕への段階へと 戻してあげる必要があります

  • 18.

    ケロイド・肥厚性瘢痕の治療する因子 ・治療は炎症を抑えることを行います ・体質はどうしようもないので、我々が関与できる因子を治療していきます ※治療に関してはPart3で解説します 介入でき ないもの ・性ホルモン ・遺伝的因子 ・偽閉経療法は骨粗しょう症などの副作用があるため ケロイド・肥厚性瘢痕の治療では通常しません ・張力=物理的刺激 ・張力を減らす・肉体労働、過度な運動は減らす ・傷の状態 ・デブリ、湿潤環境を整えるなど創傷治癒遅延の原因をなくす 介入でき ・生活習慣 ・過度の飲酒、長時間の入浴は避けるように指導する るもの ・高血圧 ・内科などで治療を ・全身の炎症 ・可及的速やかな治療を心掛ける ※外傷、手術、熱傷など 参考文献:小川令. 傷あと治療.克誠堂出版, 2021. ※ 全身にサイトカインストームを抑える

  • 19.

    肥厚性瘢痕のまとめ ケロイド・肥厚性瘢痕の重要な局所因子は ①創傷の深さ ②治癒かかる時間 ③創傷の部位(真皮にかかる張力)です ・以下のどれかだと肥厚性瘢痕になる可能性があります ① 創傷の深さ :深い熱傷・深くえぐれた傷 ② 治癒かかる時間:治癒に2週間以上かかった傷 ③ 創傷の部位 :膝や肩などの関節部・前胸部や下腹部など張力がかかる部位 ・元の傷の範囲を超えないが、赤く隆起している ・痒み、痛み、拘縮がある 傷が治癒した後も、以上のような点が続く場合は肥厚性瘢痕の可能性が あります。肥厚性瘢痕のイメージを覚えましょう 参考文献:小川令. ここまでできるケロイド・肥厚性瘢痕の予防と治療. 日本医事新報社, 2019.

  • 20.

    ケロイドのまとめ ケロイドの特徴 ・ケロイド体質:誰でもなるわけではない。ケロイドの既往があればなりやすい ・成因 :受傷機転が不明な場合もある(にきびや軽微な外傷など) ※もちろん、ケロイド体質であれば熱傷や手術でもできます ・好発部位 :胸部正中、三角筋部、肩甲部、耳介、耳後部、恥骨上部 ※但し、全身どこでも発生の可能性はある ・元の傷の範囲を超えて増大、赤く隆起している ※張力の方向に拡大し、ダンベル型・カニ型などと言われます ・痒み、痛み、拘縮がある ・手術のみだと再発・増悪するため注意 ・まずは、典型的なケロイドのイメージを覚えましょう ・ケロイドがある場合、手術は放射線治療を併用するなど注意が必要です 形成外科や皮膚科にコンサルトしましょう 参考文献:小川令. ここまでできるケロイド・肥厚性瘢痕の予防と治療. 日本医事新報社, 2019. 日本形成外科学会HP.

  • 21.

    キズアトのまとめ ① ① 未 熟 瘢 痕 ・もとの傷の範囲を越えず、赤く、平坦 ・痒みや痛みはない ・正常な傷の経過の過程によるもので、最終的に成熟瘢痕になる ② 成 熟 瘢 痕 ・未熟瘢痕から最終的に落ち着く炎症の無い瘢痕 ・白く、柔らかく、平坦 ・痒み、痛みなどなし ③ 肥 厚 性 瘢 痕 ・もとの傷の範囲を越えない ・赤く、隆起している ・痒み、痛み、拘縮(つっぱり感)あり ・緊張のかかる部位、深い傷、治癒に時間がかかるとなりやすい ④ ケ ロ イ ド ・もとの傷の範囲を超えて増大する。ダンベル型などとも言われる ・肥厚性瘢痕より、赤み・隆起などがより強い ・体質が関係する(人数は少ない) ② ③ ④ ケロイド体質と言われたら、まずは傷を見てケロイドか確認を 本当にケロイドの人は少ない印象です

  • 22.

    Take home message • 未熟瘢痕は、元の傷の範囲を超えず、赤いが平坦な傷で 正常な過程のものです • 肥厚性瘢痕は、元の傷の範囲を超えず、赤く、隆起する • ケロイドは、元の傷の範囲を超えて増大する 正常な傷の経過、肥厚性瘢痕、ケロイドに関して理解できましたか? 実際の症例では、はっきりとわかりにくい場合も多いです 患者さんの赤いキズをみたら、どれにあたるか考えてみましょう

  • 23.

    参考文献 ・形成外科診療ガイドライン 2021年版. • 形成外科診療ガイドライン 2021年版.金原出版,2021. ・田嶋定夫. 形成外科手術手技シリーズ 顔面骨骨折の治療. • 瘢痕・ケロイド治療研究会. ケロイド・肥厚性瘢痕 診断・治療指針 2018. 全日本病院出版会, 2018. 改訂第2版. 克誠堂出版, 1999. • 小川令. 傷あと治療.克誠堂出版, 2021. ・平野明喜. 形成外科診療プラクティス 顔面骨骨折の治療の実際. 消化器・一般外科医が知りたいコツと工夫 Ⅰ. 形成外科の基本知 • 荒牧典子. 形成外科医に学ぶ手術手技 識 1)創傷治癒の基礎知識 .手術. 2022, vol.76, no.12. 文光堂, 2010. • Jeffrey E. Janis, Robert K. Kwon, Donald H. Lalonde. A Practical Guide to Wound Healing. PRS. ・医学大辞典 第2版. 医学書院, 2009. 2010, vol.125, no.6. • 小川令. ここまでできるケロイド・肥厚性瘢痕の予防と治療. 日本医事新報社, 2019. 次回、 Part 3 ケロイドの治療編. Coming soon

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