テキスト全文
無症状の60代男性の症例紹介
#3. Case: 60代男性 無症状. 検診の腹部超音波で肝腫瘤を指摘された.
腹腔動脈根部のキー画像解析
#4. キー画像(後期動脈相) 腹腔動脈根部 膵頭部下縁 4
#5. キー画像(3D-VR) 側面像 正面像 5
#6. Question この患者の血管に認められる異常を2つ選べ. ①: 内臓動脈瘤 ②: 結節性多発動脈炎(PN) ③: 正中弓状靱帯症候群(MALS) ④: 分節性動脈中膜融解(SAM) 6
#9. キー画像(後期動脈相) 腹腔動脈根部 膵頭部下縁 9
#10. キー画像(後期動脈相) 腹腔動脈根部 腹腔動脈(CeA)根部の狭小化? 膵頭部下縁 前下膵十二指腸動脈(AIPDA)瘤 10
3D-VR画像による血管評価
#11. キー画像(3D-VR) 側面像 正面像 11
#12. キー画像(3D-VR) 側面像 腹腔動脈根部の高度狭小化 正面像 膵十二指腸アーケード拡張 AIPDA瘤 12
正中弓状靱帯症候群(MALS)の診断
#13. 診断 正中弓状靱帯症候群(MALS)+腹部内臓動脈瘤 13
#14. TODAY’S MESSAGE 膵十二指腸アーケードの異常拡張を見つけた場合, MALSを想起して腹部内臓動脈瘤をチェックしよう.
MALSの定義と症状の解説
#17. 正中弓状靱帯症候群(Median Arcuate Ligament Syndrome) 正中弓状靱帯(Median Arcuate Ligament: MAL)による 腹腔動脈(CeA)根部の圧迫によって様々な症状を生じる症候群 文献1より引用,Case courtesy of Dr Matt Skalski, Radiopaedia.org, rID: 36837 17
#18. 正中弓状靱帯症候群(Median Arcuate Ligament Syndrome) Ø MAL: 左右の横隔膜脚をつなぎ, 大動脈裂孔の前面を形成する 線維性靭帯. Ø MALが腹腔動脈(CeA)根部や 神経叢を圧迫し症状を生じる. 文献2より引用 Ø 無症状健常者の5.1%(8/155)に CeA根部の狭小化があるとされ 3) る が,臨床的に問題となるのは ごくわずかの症例に限られる. 18
MALSの血行動態と治療法
#19. 2) MALSの症状 Ø腹痛(94%) Ø食後の腹痛(80%) Ø悪心・嘔吐(55.6%) Ø体重減少(50%) などいずれも非特異的.
#20. MALSの血行動態と動脈瘤形成 腹腔動脈起始部狭窄により,順行性血流が低下. 上腸間膜動脈(SMA)から膵十二指腸アーケードを介した 側副血行路が発達する. 膵・十二指腸領域の内臓動脈瘤(flow related aneurysm)が 時に形成される(破裂で発症することも).
#21. MALSの治療 Ø MALの外科的な切離による 腹腔動脈起始部や腹腔神経叢 の開放が根治的な治療. Ø 動脈瘤破裂に対しては,血管内 治療が積極的に施行されるが, 血行動態の正確な把握と上腹 部臓器への供血路温存が重要. 文献4より引用 21
MALSの画像診断の詳細
#24. MALSの画像診断 ① CeAの形態 ② 呼吸による形態変化 ③ 膵十二指腸アーケード(側副路) ④ 内臓動脈瘤 24
#25. MALSの画像診断(CeAの形態) Ø CeA根部の狭小化と狭窄後拡張 を認め,特徴的な hooked appearance を呈するとされる. Ø 動脈硬化性狭窄との鑑別は 時に困難. 文献5より引用 25
#26. MALSの画像診断(呼吸による形態変化) 深吸気 CeA上面に軽微な圧排像+ 深呼気 CeA根部に高度狭窄+ 文献6より引用 26
#27. MALSの画像診断(呼吸による形態変化) 深吸気 吸気時にも高度狭窄が残存する例 深呼気 種々の問題が生じることあり 文献6より引用 27
#28. MALSの画像診断(膵十二指腸アーケード) Ø CeA根部の高度狭小化に伴い, SMA IPDA SPDA GDA という側副路が発達する. GDA RHA SMA Ø SMAからの血流が膵十二指腸 から肝を逆行性に灌流し,時に 脾臓の血流にも関与する. Ø SMAからの造影で,血行動態を よく評価することができる. 文献5より引用 GDA: 胃十二指腸動脈, IPDA: 下膵十二指腸動脈, RHA: 右肝動脈, SPDA: 上膵十二指腸動脈, SMA: 上腸間膜動脈 28
#29. MALSの画像診断(内臓動脈瘤) Ø SPDA,IPDA,DPAなどに内臓 動脈瘤(矢頭)を形成(flow related aneurysm)する. 文献4より引用 Ø こうした動脈瘤は破裂しやすく, 血管内治療(金属コイルによる 塞栓術など)の適応となるが, 根本的なMALの治療が行われ ないと,別部位に動脈瘤が再発 することがある. DPA: 背側膵動脈, IPDA: 下膵十二指腸動脈, SPDA: 上膵十二指腸動脈 29
#30. MALSの画像診断 ① CeAの形態 ② 呼吸による形態変化 ③ 膵十二指腸アーケード(側副路) ④ 内臓動脈瘤 30
MALS診断の流れと重要メッセージ
#31. MALS診断の流れ(今回の症例) なんかアーケード拡張してない?? CeA根部狭くない? 31
#32. MALS診断の流れ(今回の症例) CeA根部狭い!! アーケード拡張と動脈瘤!! 32
#34. TODAY’S MESSAGE 膵十二指腸アーケードの異常拡張を見つけた場合, MALSを想起して腹部内臓動脈瘤をチェックしよう.
膵十二指腸アーケードの観察ポイント
#35. Ø 膵十二指腸アーケードの血管を確認するクセをつけよう. Ø 膵アーケードの拡張を疑ったら,CeA根部を矢状断や3Dで 観察してみよう.
#36. 参考文献 1. https://radiopaedia.org/articles/coeliac-artery-compression-syndrome?lang=us 2. Kim, Erinn N., et al. “Median Arcuate Ligament Syndrome-Review of This Rare Disease.” JAMA Surgery 151, no. 5 (May 2016): 471–77. 3. Soman, Seethu, et al. “Celiac Axis Compression by Median Arcuate Ligament on Computed Tomography among Asymptomatic Persons.” Indian Journal of Gastroenterology 29, no. 3 (June 2010): 121–23. 4. Lamba, Ramit, et al. “Multidetector CT of Vascular Compression Syndromes in the Abdomen and Pelvis.” RadioGraphics 34, no. 1 (January 2014): 93–115. 5. Horton, Karen M, et al. “Median Arcuate Ligament Syndrome: Evaluation with CT Angiography.” RadioGraphics 25, no. 5 (September 2005): 1177–82. 6. 大田信一. “【Q&Aでおさえるvascular imaging最重要ポイント】腹部 正中弓状靱帯症候群について教えてく ださい.” 臨床画像. (株)メジカルビュー社, 2017.
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