#4.
目次 ①欧米は放射線療法、日本は精緻な手術と側方郭清 ②放射線療法を加えると肛門温存はできる確率が上がるが、肛門機能に問 題あり ③ ブラジルからの使者!直腸温存療法(watch and wait)で手術をしな い直腸がんの治療誕生 もっと勉強したい方はスライド添付の Pubmed ID で論文もチェック!
#5.
日本と欧米の大きな違い (特に下部直腸がんにおいて) ※基本手術⇒TME(total mesorectal excision) (肛門管直上までの直腸間膜をすべて切除) PMID:8094488 日本:TME+側方郭清 欧米:TMEに補助放射線療法
#6.
なぜTME単独ではないのか? ※TME以前の腫瘍再発のパターン 一般的な大腸がんと比べて… 結腸癌 直腸癌 米国 日本 米国 日本 肝臓 35% 36% 29% 25% 肺 19% 19% 27% 23% 局所再発 15% 16% 34% 31% TMEで局所再発は減ったが、直腸癌では PMID:8697383/1729745 遠隔転移だけでなく局所再発も多かった(特に下部直腸癌) ⇒補助療法が必要
#7.
欧米の治療展開 局所再発するなら、放射線治療±化学療法で、微小病変を叩けばいい 25Gy/5Frの放射線治療単独をする方法と 50.4Gy/28Frで5-FU系統薬剤(5-FU持続静注/カペシタビン内服) を併用する化学放射線療法とがある。どっちかというと欧州が前者、米国が後者) 腫瘍が7割ぐらい縮小する⇒肛門温存の可能性! 術前、術後照射を行う ⇒化学放射線療法で、両者を比較すると 局所制御・有害反応・肛門温存率などで 術前照射が有利 PMID:15496622
#8.
CAO/ARO/AIO-94 study CRT(化学放射線療法)は術前か術後か 術前CRT 術後CRT P値 生存期間 5年全生存 76% 74% 0.8 局所制御 5年局所再発 6% 13% 0.006 有害反応:急性 期 重篤なもの (Grade3/4) 27% 40% 0.001 有害反応:晩期 重篤なもの (Grade3/4) 14% 24% 0.01 肛門温存 温存率 39% 19% 0.004 赤字は優位差あり この結果から 術前照射が標準に PMID:15496622
#9.
日本の治療展開 下部直腸進行癌では、骨盤のリンパ節に15%程度の転移がみられる (内外腸骨リンパ節、閉鎖リンパ節、総腸骨リンパ節etc.) このリンパ節を郭清すれば局所制御率があがるのでは? 大腸癌治療ガイドラインでは 「肛門下縁が腹膜反転部より肛門側にありかつ壁深達度がT3より深い症例」 に側方郭清を行うよう推奨されている
#10.
腹膜反転部より肛門側にありかつ壁深達度がT3以上とは? この図は男性だが、女性だとこの部分はダグラス窩 RS(直腸S状部):岬⾓の⾼さより第2仙椎下縁の⾼さまで Ra(上部直腸):第2仙椎下縁の⾼さより腹膜反転部まで Rb(下部直腸):腹膜反転部より恥骨直腸筋付着部上縁まで 癌が固有筋層を越えて浸潤しているのがT3以上 要は、Rbかつ固有筋層を超えて浸潤が疑われる直腸癌 ⇒ 側方郭清
#11.
側方郭清のイメージ 適応症例は、腸間膜のリンパ節だけでなく 側方リンパ節を郭清する ※神経叢や勃起・排尿にかかわる神経のそば
#12.
JCOG0212 側方郭清(神経温存)の意義を問う臨床試験 下部直腸のStageII/IIIで、画像診断上側方リンパ節腫大なし ME(mesorectal excicion)に側方リンパ節郭清を加えるか、加えないか の二群ランダム化比較試験 プライマリーエンドポイントは無再発生存率 側方郭清しない群と、する群を比べしない群が非劣勢かを調べるデザイン ※側方郭清なし群がハザード比1.34を超えて劣っていないかどうか (5年無再発生存割合で8%の差より下回るかどうかに相当)を検証
#13.
JCOG0212 側方郭清追加群 側方郭清なし群 Hazard Ratio 5年無再発生存率 73.4% 73.3% 1.07(0.81-1.41) 5年生存率 92.6% 90.2% 1.25(0.85-1.84) 5年局所再発率 87.7% 82.4% 1.37(0.98-1.93) 結論として 非劣性仮説に対する片側p値=0.0547であり、 ME単独群の側方郭清群に対する非劣性は証明されなかった 日本では側方郭清が標準! ⇒ PMID:28288057
#14.
JCOG0212無再発生存率の カプランマイヤーカーブ 青が側方郭清追加群、赤が側方郭清なし群 正直これだけ見ると…有意な差とはいいがたい…
#15.
JCOG0212の局所再発 吻合部 骨盤中枢部(側方領域以外) 側方領域 側方郭清あり群 側方郭清なし群 8 3 14 14 4 23 側方領域再発に有意差あり。他は優位差なし。 ⇒郭清した部位の再発が減った
#16.
目次 ①欧米は放射線療法、日本は精緻な手術と側方郭清 ②放射線療法を加えると肛門温存はできる確率が上がるが、 肛門機能に問題あり ③ ブラジルからの使者!直腸温存療法(watch and wait)で 手術をしない直腸がんの治療誕生 もっと勉強したい方はスライド添付の Pubmed ID で論文もチェック!
#17.
放射線療法を加えると 肛門温存率は上がるが… 放射線治療を加えることのメリット ・局所再発の減少 ・腫瘍縮小にともなう肛門温存率上昇 ・縫合不全は増加しない 放射線治療を加えるデメリット ・治療期間の長期化 ・会陰創感染の増加 ・放射線照射にともなう長期合併症(慢性疼痛,晩期骨盤骨折,二次発癌) ・女性の場合、妊孕性の消失 ・術後肛門機能の悪化(手術だけでも起こるが、) 漏れる・回数増加・肛門狭窄・粘液排出etc. ⇒せっかく肛門温存したが、QOLが悪くて人工肛門を希望する方も…
#18.
側方郭清も… 排尿機能・性機能の低下が報告されている しかし、日本で行われた側方郭清の意義を確認するJCOG0212では 通常の手術に側方郭清を加えて有害事象は増えなかった。 熟練した外科医が行えば側方郭清は安全、というのが日本の立場 人工肛門回避の手術として内肛門括約筋切除術 (ISR)の導入(肛門温存手術)
#19.
実際のところ… オランダのTMEのみの成績 5年局所再発率 12.9% 日本の手術(側方郭清あり) 5年局所再発率 6.9% オランダの手術+CRT 5年局所再発率 5.8% PMID: 19212175 側方郭清と、CRTの局所制御率はほぼ同等と考えられた。 日本ではあまり術前(化学)放射線治療は副作用が多いとされ行われず、側方郭清を行う手術が標準
#20.
しかし 欧米では「側方郭清は予後を改善せず、合併症が増える」としてCRT・RTが標準 治療として続けられてきた そして、思わぬところから 予想だにしなかった新たな展開が始まる!!
#21.
目次 ①欧米は放射線療法、日本は精緻な手術と側方郭清 ②放射線療法を加えると肛門温存はできる確率が上がるが、 肛門機能に問題あり ③ ブラジルからの使者!直腸温存療法(watch and wait)で 手術をしない直腸がんの治療誕生 もっと勉強したい方はスライド添付の Pubmed ID で論文もチェック!
#22.
術前(化学)放射線療法の 病理学的評価 術前治療を入れた群で、術前治療後TMEをすると… 10-30%程度で病理学的完全奏功(pCR)が出ることが分かってきた 多数のメタ解析ではpCRの中央値は18% 術前療法でpCRが得られたなら… 予後は極めて良いことも分かってきた pCRまで行かなくても、responseがある人はない人より予後が良い
#23.
pCR例とpCRじゃない例の差 pCR例 non-pCR例 オッズ比 オッズ比の95%信頼区間 P値 局所再発 0.7% 2.6% 0.45 0.22-0.9 0.03 遠隔転移 5.3% 24.1% 0.15 0.07-0.31 0.0001 5年生存 92.2% 73.4% 3.6 1.84-7.22 0.002 5年無再発生存 86.9% 63.4% 3.53 1.62-7.72 0.002 PMID:22434243 局所が良く効いた症例は、遠隔転移も少ない!
#24.
ブラジルから 世界は変わった! Habr-Gama A(ブラジルの女性外科医) 術前治療で腫瘍が消えてし まった(ように見える) 患者さんは 一定数手術しなくても よいかもしれない!
#25.
衝撃の論文発表 CRTでStage0になった下部直腸がんの手術療法と非手術療法の比較 PMID:15383798 ※後ろ向き報告なのに1881件(スライド作成当時)も引用されている!
#26.
論文の要旨 期間中に265人の患者がおり 71人(26.8%)臨床的にcomplite response(cCR)、 この群とcCRではなかったが、 手術をして病理学的にcomplete responseした22人(8.3%)群を比較 両群に背景因子の差はなし 手術群は9/22で永久人工肛門 両群3例が遠隔再発、cCR群のうち2例が局所再発 無病生存率、全生存率でもcCR群が劣ることはなかった 化学放射線療法後、cCRの一定の割合の人が手術不要
#27.
その後複数の同様の試み (watch and wait) が行われる 2017年にDossaらが23試験の867人の直腸癌CRT後 cCRの患者さんについてメタアナリシスを行った cCR率はかなり幅があり、11-78%と報告によってばらつきあり 2年間の局所再発率は15.7% 局所増大に関しては95.4%で救済療法ができた cCR後に注意深い経過観察(watch-and-wait)で管理された患者と 切除を行い、病理学的完全奏効が確認された患者の間には、 がん特異的死亡・全生存率に関して有意差はなかった PMID: 28479372
#28.
Watch and Waitの利点 人工肛門を避けられる 手術しないことで、手術による有害事象を防ぐことができる ※直腸癌の手術後は「排便回数が増える」「排便を我慢できなくなる」 「便やガスが意に反して漏れる」などの排便障害が起こることがある ⇒低位前方切除後症候群(Low Anterior Resection Syndrome :LARS) 有害事象もなくなりQOLも良好 局所再発はほとんどが腸内で、おおむね2年以内に発生する 遠隔転移の比率は手術した場合とおおむね変わらない 局所再発はほとんど救済治療でき、予後に影響しない PMID: 29976470
#29.
Watch and Waitをする上で 問題点となっていたこと cCRに至る患者が予測できない cCR率は幅があるものの、決して⾼くはない 局所制御は良くなって、直腸を温存できるが遠隔転移の問題 局所再発してしまうと、サルベージ治療で排便機能は悪くなる どのようなフォローをすればよい? どのような基準でcCRと判断すればよいか?
#30.
前編まとめ 日本では手術を中心に側方郭清、精緻な手術で根治を目指す方向に。 下部直腸でも根治性を損なわず、 「肛門温存」を目指す (内肛門括約筋切除術:ISR) 欧米では術前治療としてCRT/RTが行われてきた 術前治療でcCRになった患者さんの8割ぐらいは手術が必要なく、 注意深く観察して、再発したとしても生存が悪くならないことが 分かってきた。 「直腸温存」を目指す
#31.
後編に続く… 後編予告 ①TNT(total neoadjuvant therapy)の登場で爆発的に直腸温存の現実味が アップ、予後も改善 ②MSI-Hなら手術も放射線もいらなくなる可能性が ③ 手術ラインがMRIで見えるように… リスクに応じた最適治療の模索がすすんでいきそう