#4.
術前〜準備時に⼤切なこと ⿇酔は備えあれば憂いなし 術前に問題点を把握し、 起こりそうなリスクを想定して 準備をしておくことが重要
#5.
術前の情報収集 1 ⿇酔は準備から始まっています 全⾝状態の評価をして問題点を確認し、 何が起こるか予測して⿇酔計画を⽴てることが重要です まずカルテをチェックしてから、患者に⾯接をして情報収集をします 機能別系統 カルテチェック項⽬ 循環器系 1 ⼼機能 呼吸器系 1 呼吸機能 内分泌系 1 糖尿病 2 甲状腺機能亢進、低下などの内分泌疾患 3 関節リウマチなどの膠原病 腎機能・肝機能 1 透析導⼊ 貧⾎・出⾎傾向 1 Hb・Ht値 2 狭⼼症、⼼筋梗塞 2 喘息、COPD 3 弁膜症 3 上気道感染 2 BUN・Cr・K・GFR値 2 APTT・PT-INR値 4 ⾼⾎圧 4 喫煙歴 5不整脈 5 胸部X線写真 3 肝逸脱酵素・ビリルビン値など
#6.
術前の情報収集 2 患者からのヒアリング項⽬ • • • • • 既往歴 最終飲⾷の時間・内容(緊急⼿術時のフルストマック確認) アレルギーの有無 家族歴(悪性⾼熱症の発症者がいないかどうか) ⿇酔経験者は、合併症や術後疼痛などの有無 患者の状態のチェック項⽬ • • • • 気道確保・挿管困難を予測する問題点 (開⼝は3横指以上あるか・⻭⽛の状況や頚部の可動性低下・下顎後退など) ライン確保の有無 認知症や発達障害などの有無・従命が⼊るかどうか 硬膜外⿇酔穿刺や術中での体位が取れるかどうか
#7.
情報を⼊⼿した上で、 何を準備すればいいかな︖ 例えばこのように考えます • ⾼齢者、DM、⾼⾎圧、脱⽔のある患者 ⿇酔導⼊時に⾼度に⾎圧が下がるかも → 事前に昇圧剤を⽤意しておこう • ⼿術内容で、出⾎が多い、時間が⻑いことが予想される場合 輸液負荷や輸⾎が必要かも バイタル変動や頻回の採⾎にも備えておこう → 末梢ルートやA-lineの回路の準備をしておく • 重い合併症がある場合 ⼼機能が悪かったら、カテコラミンを使うかもしれないな → シリンジポンプやCVルートの準備をしよう
#8.
導⼊前の準備編 1 1. ⿇酔器の点検 2. ⿇酔器具の準備 • • • • • • • • • 喉頭鏡 挿管チューブ テープ キシロカインスプレー スタイレット バイトブロック カフ⼊れ注射器 呼吸回路フィルター マスク • • • • L字コネクター 蛇管⽴て 胃管 シリンジポンプ • その他必要に応じて 末梢回路 A-line CVキット 緊急薬品カート エコーなど ⿇酔回路のリークチェックは必ず⾃分で⾏うこと 回路の接続が緩んでいたり、⽳が空いていることもあります 呼吸を⽌めた後で換気ができない状況になると⼤惨事です︕
#9.
導⼊前の準備編 2 3. 薬剤の準備 • 鎮静薬 プロポフォール1A セボフルランorデスフルラン(液体を気化器に補充をしておく) • 鎮痛薬 レミフェンタニル(2mgバイアルは⽣⾷20mlで溶解する) フェンタニル 1A • 筋弛緩薬 ロクロニウム 1バイアル • その他、必要に応じて準備する薬剤 昇圧剤など(エフェドリン、ネオシネジンはtotalで10mlになるように) 薬は必ず薬品名を油性ペンで記⼊するか、アンプルについているシールを貼ること 何を吸ったかわからないシリンジは使⽤しないこと︕ ⿇薬は扱いに注意︕アンプルを割ってこぼすと始末書を書くことになります
#10.
導⼊〜維持期に⼤切なこと バイタルサインだけでなく 患者や術野の状況など、 様々な情報を 五感を使って確認しよう
#11.
全⾝⿇酔の3要素 全⾝⿇酔は、3つの要素の役割を持つ薬を組み合わせながら⾏います 1つの薬で全てをまかなうことはできません これをバランス⿇酔と呼びます 鎮静 鎮痛 不動 吸⼊⿇酔薬 静脈⿇酔薬など オピオイド鎮痛薬 ⾮ステロイド系鎮痛薬 局所⿇酔の併⽤ 筋弛緩薬 バイタルの変化や術野の動きに合わせ、 どの作⽤が必要か、または作⽤の増強をするべきかを常に考えましょう ただ⿇酔薬をかけて寝かしておくだけでは良い⿇酔とは⾔えません
#12.
⼀般的な導⼊の流れ 1 1. 硬膜外⿇酔が必要な時は、全⾝⿇酔をかける前に意識下で⾏う 2. マスク下に酸素投与(通常6L/分)開始 通常、SpO2>96%はあることを確認 3. フェンタニル(2~4μg/kg)投与 もしくはレミフェンタニル(0.5μg/kg/分)持続投与開始 4. プロポフォール(1.0~2.0mg/kg)を投与 5. ⼊眠後、呼吸が⽌まったらマスク換気が可能なことを確認 6. 挿管をする場合、ここでロクロニウム(0.6mg~1.0mg/kg) を投与 就眠前に筋弛緩薬を⼊れないようにしましょう 筋弛緩だけ作⽤すると⾦縛り状態です︕
#13.
⼀般的な導⼊の流れ 2 7. 筋弛緩薬の効果が出るまでマスク換気を続ける 8. 喉頭展開をしてキシロカインスプレー投与後に気管挿管 9. カフの注⼊後、蛇管を接続し、呼吸⾳とカフ漏れを確認 10. 呼気終末⼆酸化炭素濃度(ETCO2)の波形を確認 11. チューブの固定 12. ⼈⼯呼吸器に接続する 挿管を成功させることに意識が集中してしまいがちですが、 導⼊中はバイタル変化が⼤きいので注意しましょう
#14.
挿管のワンポイント ここでは挿管時のちょっとしたコツを挙げておきます • ⼿術台の⾼さを、⾃分の肘が90度くらいの⾓度で操作ができるよう調整すること • 喉頭展開の際、患者の顔に近づき過ぎないように ⼝の中を覗き込まずに、むしろ少し視点を引いて⾒た⽅が声⾨は確認しやすい • 喉頭鏡を持っている際、ハンドルを⼿前に倒さないように⼿⾸は固定しておく • ブレードの先で喉頭蓋を引っ掛けるのではなく、喉頭蓋の根元を ⻑軸⽅向に押す • 挿管チューブは真ん中から挿⼊しようとすると声⾨を 遮ってしまうので、右⼝⾓から進める • ⼗分に声⾨が観察できなければ、 介助者に輪状甲状軟⾻を後上⽅右側に圧迫してもらう
#15.
マスク換気のワンポイント 左⼿で下顎挙上をして、若⼲顔を右に傾けるとマスクがフィットしやすい マスクのフィットは親指と⼈差し指で調整し、下顎挙上はその他の3指で⾏う 気道が通りづらい際は、下顎を受け⼝気味にすると換気がしやすくなる ⼿が⼩さいために換気が難しい場合は、ヘッドバンドを使⽤し右側を固定する と良い • ⻭が抜けてしまって頬がこけている⼈は、両頬にガーゼを詰めて復元すると フィットしやすくなる • • • • マスク換気ができていれば、挿管ができなくても気道は確保されているので、 緊急時も焦らず時間稼ぎができます︕ おろそかにされがちですが、⾮常に重要な⼿技なので確実にマスターしましょう
#16.
⼿術開始前の注意点 • 導⼊〜加刃まで、術者の⼿洗いや準備などで時間がかかることも 多いので、⾎圧低下に注意が必要 適宜、昇圧剤(エフェドリンやネオシネジン)を投与する 輸液速度を上げる • 加刃時は痛いので、⿇酔深度をあげておく レミフェンタニルの持続量アップ フェンタニル追加投与 吸⼊⿇酔薬(セボフルレン、デスフルラン)濃度調節 筋弛緩薬(ロクロニウム)追加
#17.
⼀般的な⿇酔の維持⽅法 • 吸⼊⿇酔薬の設定(硬膜外⿇酔やレミフェンタニル併⽤時) セボフルラン1.2%前後・デスフルラン4%前後 • プロポフォールで維持する場合 TCIポンプ*1を使⽤し、⽬標⾎中濃度2.0~5.0μg/mlで維持 個⼈差が⾮常に⼤きいので、必ずBISモニター*2を使⽤すること • 鎮痛薬の設定 レミフェンタニル0.25μg/kg/分持続静注し、適宜増減する 痛みを感じている場合は、⾎圧・脈拍数・呼吸数などが上がる →フェンタニルを50~100μg投与・レミフェンタニルの持続投与量増加 • 筋弛緩薬の追加 筋弛緩モニターで評価し、ロクロニウムを10mgずつ追加投与 *1 Target controlled infusion ⾎中濃度を予測し⾃動で流量を 変化させるポンプ *2 Bispectral index 脳波を解析し、鎮静度を測る
#18.
術中のバイタルチェック 最低でも5分間隔おきに、⾎圧などバイタルをチェックし記録すること 変動が激しい時は、さらに短時間でチェックし、A-line挿⼊も考慮しよう モニターチェック • • • • 呼吸 循環 SpO2・ETCO2の波形と数値・呼吸パターン 呼吸回数・換気量 ⾎圧・脈拍数・不整脈・尿量 筋弛緩モニター 体温 モニター以外の確認事項 ・ 右図のように5分ごとに⼀通りチェックする モニター 患者 術野 出⾎量 ⿇酔器 尿量 輸液
#19.
モニター上の数値だけではなく 患者のどこに気を配ればいいかな︖ 患者の状況 • チアノーゼ・浮腫・⽪膚の⾊(蒼⽩・紅潮) • 末梢の冷感・発汗 • 尿の量・⾊・速度 • 呼吸の状態(⾃発呼吸の有無・胸郭の動きの左右差・カフもれ⾳ i-gelなどのデバイスのずれ・wheeze⾳) • 体位のずれはないか • 点滴もれ・輸液の交換
#20.
術野にも気を配り ⼿術内容や進⾏度合いを把握しよう 術野の状況 • どのような術操作がされているか常に把握しておく (剥離、切除、⾎管吻合、再建など) • 出⾎をしていないか確認する 術野がなんとなく⾚いなと思ったら要注意︕ 吸引されている出⾎量だけでなく、覆布に染み込んでいたり、 床に垂れている出⾎量が多いことも • ⼿術の操作や時期によって、鎮痛薬を増やすなどの 調節をする
#21.
覚醒〜帰室時に⼤切なこと 帰室後の容態や術後管理まで考慮し、 覚醒状態、体温保持、術後疼痛 などに気を配ろう
#22.
覚醒〜抜管時の流れ 抜管時の基準を 挿管チューブ内 満たしているか 吸引後、⼝腔内 確認する も吸引する 陽圧をかけて カフ圧を抜き、 肺虚脱を防ぐ 抜管する 抜管時の基準 • 筋弛緩薬の残存がない ロクロニウムが残存している時には、スガマデクス2~4mg/kgで拮抗 • 意識状態が回復している ⽬を開ける、⼿を握るなどが可能・従命が⼊る • 呼吸状態が良い ⾃発呼吸が安定しており、深呼吸が可能・ETCO2、SpO2が正常値 • 循環動態が安定している
#23.
帰室時チェック項⽬ 容態の急変が起こらないように、また術後管理の⼿間がかからないように 患者の状態が安定していることを確認してから帰室しましょう 具体的な項⽬ 意識の状態 昏睡、興奮状態ではない 簡単な命令に従える 呼吸抑制がないか 気道閉塞がない・SpO2>90%・深呼吸が可能 呼吸⾳に問題がない 循環動態は安定しているか 術前の⾎圧の±30%以内の変動・出⾎に問題がない 頻脈、徐脈、不整脈がない 体温低下・シバリングの有無 深部温>36℃ シバリングがない 痛み・悪⼼・嘔吐の有無 痛みが許容範囲内 悪⼼、嘔吐がない
#24.
Take Home Message 準備〜導⼊時は、備えあれば憂いなし 導⼊時にバイタルが荒れそうな患者の事前情報収集が⼤切 あらかじめ起こりそうなリスクを想定して準備をしましょう 維持期はバイタルサインだけでなく、術野の状況や、患者の体位、 顔⾊、ルート類など五感を使って確認しましょう 覚醒〜帰室時には、帰室後の容態や術後管理を考慮し、 術後疼痛や体温管理などにも気を配りましょう
#25.
参考⽂献 • 讃岐美智義. ⿇酔科研修チェックノート改訂第5版. ⽺⼟社. 2016 • 永井良三ほか. ⿇酔科研修ノート改訂第3版. 診断と治療社. 2018 • 筑波⼤学附属病院⿇酔科. ⿇酔科レジデントマニュアル基本編. https://www.md.tsukuba.ac.jp/clinicalmed/anesthesiology/pdf/manual2basics110325.pdf (参照2022-02-28)