テキスト全文
医療者のためのLGBT基礎講座の目的と目標 #1.
第2回
明日から使える!
医療者のためのLGBT基礎講座
ほっちのロッヂの診療所
にじいろドクターズ 代表坂井 雄貴
#2.
第2回医療機関・個人で実践できるLGBT支援 2 #3.
目標 LGBTの患者に対してできることを知り、自身や自施設の課題を意識することができる
多様な性に配慮したコミュニケーションの方法を理解し、実践できる
「アライ」「カミングアウト」「アウティング」という言葉を説明できる 3 明日から実践できるLGBT支援の7つの推奨 #5.
推奨 1「LGBTの患者をケアします」というサインを出す 5 #6.
いろいろなサインを組み合わせて差別をしないことを公表する 患者が周りの目を気にしなくていいように
待合室だけでなく、トイレや診察室など
プライバシーの確保されたスペースにも設置する
6 例:ポスター、情報資材、レインボーフラッグ、名札 #7.
全てのジェンダーの人が使いやすいようにトイレの案内を工夫する 例:全ての人が使えることを示す、
トイレのマークを用いる LGBTの人だけにメリットがあるわけではない。
異なる性別の子や障がい者をケアする人にとっても
安心を得られるサインとなる。 7 #8.
推奨 2書類をセクシュアルマイノリティの人にも適したものにする 8 #9.
9 同意書や問診票の表現を見直す 患者が医療機関・施設に抱く最初の印象が決まる。
その印象によって、セクシュアリティについて
どこまで話せるかを判断されるかもしれない。 その他の工夫として、
他の人に見られるのが心配な人のために
Web上で入力できるようにする方法もある 名前 ( )
※通称名の使用をご希望の方( )
性別 ( )
※性別に関してご相談のある方はお気軽にお声がけください 以下の項目は一例
コミュニケーションにおける適切な言葉の使用 #11.
推奨 3コミュニケーションの中で適切な言葉を用いる 11 #12.
相手の性行動や体のことについて勝手に推測しない。
可能なら「開かれた質問」を用いて確認する。 12 避けた方がよい例 (1)
レズビアンの人だから、異性と性的関係を持ったことがなく
子どももいない、などと推測しない
避けた方がよい例 (2)
同伴者との関係を「お兄さんですか?」などと推測しない
#13.
患者が自分のことや関係する人のことを
どのような言葉で表現しているか注意して聞く。
わからない場合は、患者が好む表現について聞いてみる。 13 例1:「夫/妻」は、本人がそう表現しない限りは用いない。
その代わりに「パートナー、配偶者」といった、
ジェンダーにとらわれない言葉を用いる。
例2:小児患者(特に思春期児童)に対して 勝手に「くん」「ちゃん」付けをして呼ばない。
「さん」で呼ぶ、あるいはどう呼んでほしいかを確認する。
相手の言葉を支援者が用いるのは不適切な場合もある。
「おかま」「おねえ」「ホモ」「レズ」などは
自称として使われることがあるが、支援者は使わない方がよい。 #14.
トランスジェンダーの方に配慮できること
・性別で分けられていない院内着、トイレ、お風呂を用意する
・部屋の対応をどうするかを本人と相談する
・身体介助時や身体が露出する場面で配慮する
・多様な家族に備える(面会、インフォームド・コンセント) 入院診療・施設 14 ・患者の呼び入れは、番号を用いる。
難しければ、通称名の使用ができる環境を作る。
・患者が好む名前や通称名を使うよう、スタッフに周知する
・次に来院した時に参照できるように、
(患者の同意を得たうえで)カルテに記載する。 外来診療 多様な性のあり方を支持するための教育と表現 #15.
患者と接する全てのスタッフの教育
1. 患者や患者にとって重要な人について話すときに
多様な性に配慮した言葉を使う
2. 自分の内にある、LGBTに関する偏見を認識し
それにどう対処するかを学ぶ
3. LGBTの健康問題についての基礎知識を身につける
4. LGBTの患者に対応するための指針を作成し、活用する 15 教育プログラムに含めるトピック LGBTに対する差別は人権に関わる問題であると全員に理解してもらう
患者が不適切な対応を受けた時に報告できるシステムを作る #16.
推奨 4多様な性のあり方を支持していることを言葉で表現する 16 #17.
17 良いケアを提供したいと考えていることを伝える
より良いケアのために他に何ができるか、
患者からのフィードバックを求める
誤りに気づいた時は速やかに謝罪する
同僚や他職種にも意思表示をする 「アライ」であることを伝える
(アライ Ally とは:LGBTの支援者、味方) 知識があることが重要ではなく、「関わりたい」「支援したい」と思うことが重要 #18.
推奨 5個人情報をどのように扱うか、患者と話し合う 18 カミングアウトとアウティングの重要性 #20.
アウティング セクシュアリティについて当人の許可なく勝手に他の人に伝えてしまうこと
患者は医療者を信頼して話している断りなく患者のセクシュアリティについて話すことはアウティングに繋がる
カンファレンス、休憩室、臨床実習の場面などでも絶対に許可なく話さない!
信頼関係の問題だけでなく明確な違法行為であり命に関わる重大な問題です 20 #21.
秘密が守られなかったと相手が判断した場合、
信頼関係の崩壊だけでなく、命に関わる可能性があるため細心の注意を払う 21 秘密を保持できない可能性について話し合う 相手から聴いたことを同意なしに他言しないことを保証する。
どのような情報が記録され、誰がその記録を見るのかを伝える。 記録をどのように扱うか話し合う 例:保護者に話をしうる状況で(例えば自殺を考えている場合)、
何を伝え、何を伝えないか? 患者の困りごととセクシュアリティの関連性 #23.
推奨 6患者の困りごととセクシュアリティに関する問題との関連を考える 23 #24.
「勝手に推測しない」ことと「仮説を立てる」こととの
バランスをとる姿勢をもつ
セクシュアリティに関する問題の関連を決めつけないように注意しながら理解する 24 患者をサポートすることを目的に、
患者の抱える問題と背景との関係性について分析する 並行して行う 患者の健康リスクに応じた医療提供 #25.
クリニカル・バイアスを認識する 個人として抱く信条・感情と医療者としてのプロフェッショナリズムは分けて考えることが望ましい
感情が診療に影響することが避けられない場合は、信頼できる病院・施設・同僚に患者を紹介する 25 医療者個人の抱える嫌悪感が 実際の患者の診療内容に影響を与えてしまうこと #26.
推奨 7患者の健康上のリスクに応じて適切な医療を提供する 26 #27.
例)ゲイ・バクセクシュアル男性が抱えうるリスクと健康問題 患者が抱えているリスク因子や健康問題に応じて
カウンセリングや予防医療の提供を行う 問診方法と参考文献の紹介 #28.
問診の方法(セクシャルヒストリーの5P) 28 その情報がなぜ必要かを説明してから聞く。
性行動から性的指向を推測しない #30. 参考文献 ・Kristen L. Eckstrand et al. Lesbian, Gay, Bisexual, and Transgender Healthcare. 1st ed., Springer, 2016
・Bryant K. Smalley et al. LGBT Health: Meeting the Needs of Gender and Sexual Minorities. 1st ed., Springer Publishing Company, 2017
・GLMA. Guidelines for care of lesbian, gay, bisexual, and transgender patients 30 特定非営利活動法人SHIP. Presence キャンペーン
http://presence.ship-web.com/
一般社団法人社会的包摂サポートセンター. よりそいホットライン
http://279338.jp/yorisoi/
だれでもトイレ
https://drive.google.com/file/d/1olWbG8buqLzXdkP2nY0czGzhbAuaacHL/ view?usp=sharing 資料内で取り上げた医療機関で使える患者へのサイン 謝辞と資料作成の背景 #31.
謝辞 今回のスライド資料は、にじいろドクターズで作成したものをもとに構成しています
山下洋充先生(河北ファミリークリニック南阿佐谷)にご支援いただきました 31