小児PALSアプローチ診断学/両親への声かけ/抗菌薬の使い方

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田中 雄一郎

田中 雄一郎

国立成育医療研究センター

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PALSアプローチを用いた診断学とこどもだけでなく家族の味方になる両親への声かけに関して解説しています。診断学の武器である3C2MからPALSアプローチを紹介。第一印象(意識、呼吸、皮膚色)、一次評価(ABCDE)と二次評価(SAMPLE、的を絞った身体診察)を詳しくみたあと症例ベースでさらに深掘りしていきます。最後は抗菌薬の選び方について表をのせています。

小児PALSアプローチ診断学/両親への声かけ/抗菌薬の使い方

1. 初期研修医、若手小児科医そして母・父になるあなたへ小児科診療の基本のき 成育医療研究センター総合診療部 小児科医 田中雄一郎
2. 今日の目標 小児の診療の仕方を学ぶ こどもだけではなく家族の味方になる 抗菌薬の考え方を学ぶ 両親への声かけ~究極のサービス精神と科学的根拠~ PALSアプローチを用いた診断学
3. 小児の診療で大切な事 主訴・所見が分かりづらい 大多数を占めるcommon disease         でも急変・死亡する 稀少疾患が本当に稀少 検査に時間・危険が伴う 検査閾値高い 対症療法が多い 介入&緊急度の把握を用いた診断学
4. 診断学の武器 Semantic Qualifier 症状や所見→医学用語 3歳の男の子  昨日から足が痛い →3歳男児    急性単関節炎 VINDICATE!!!-P Vascular Infection Neoplasm Degenerative Intoxication Congenital Auto-immune Trauma Endocrinopathy Iatrogenic Idiopathic Inheritance Psychogenic OPQRST Onset Palliative/ provocative factor Quality/quantity Region/radiation    /related symptom Severity Temporal characteristics Illness script
5. 小児で必須の診断学の武器 3C Common Critical Curable 2M Most likely Must rule out 介入&緊急度の把握
6. 勝負は出逢うまえから始まっている   問診票:年齢・主訴・現病歴 天気・季節・周囲流行 診察室の前の様子  元気さ(遊んでいるか、ぐったりしているか)  咳嗽や啼泣の様子(乾性・湿性・犬吠様) 診察室に入れる時には 問診・身体所見を決めておく 胸部→腹部→…→口腔の順番
7. 介入&緊急度の把握 PALSアプローチ Pediatric Advanced Life Support(PALS) 米国心臓協会American Heart Association(AHA)が 米国小児科学会American Academy of Pediatrics(AAP)と            協力して提唱している、小児二次救命処置法 米国やカナダで小児科レジデンシーを開始もしくは修了するには、 原則として PALS を習得していることが義務付けられており、 現在では世界標準的なプロトコール
8. PALSアプローチ 第一印象 生命を脅かす状態か否かを2-3秒で判断 判定 評価 ・一次評価 ・二次評価 ・診断的検査 介入 心肺蘇生 良い・悪い 蘇生 とにかく 繰り返す
9. 第一印象  意識 意識なし、易刺激的、意識清明 呼吸 呼吸努力の増加/消失 聴診なしで聴こえる異常音 皮膚色(循環) チアノーゼ、蒼白、まだら模様
10. 評価 第一印象で“蘇生”であればCPR  “良い” “悪い”であれば評価へ     “悪い”であれば、人・酸素投与・モニターを準備しながら評価を行う
11. 評価 一次評価 Airway 上気道 Breathing 呼吸 Circulation 循環 Disability 神経 Exposure 全身 ABCDEの順に評価 ABCDEのどれが異常か ・ 呼吸・循環障害を分類
12. 評価 一次評価 Airway 10秒以内:上気道の異常は急変のリスク   正常 ・ 簡単な処置で開通維持 ・ 開通維持不能に分類 胸腹部の動き 気流・呼吸音 陥没呼吸 いびき・吸気性喘鳴 気道音・呼吸音↓
13. 評価 一次評価 Breathing 30秒:乳児の周期性呼吸は10-15秒の呼吸停止がある   正常 ・異常に分類 呼吸数 呼吸パターン 胸郭挙上 聴診 SpO2
14. 評価 一次評価 Circulation 循環   CRT:Capillary refill time:毛細血管再充満時間 2秒以下が正常 HR・リズム 中枢・末梢の脈 皮膚色・皮膚温 CRT 血圧 正常 ・異常に分類
15. 評価 一次評価 Disability 神経   Alert意識清明、Voice声に反応、Painful痛みに反応、Unresponsive反応なし AVPU GCS 瞳孔対光反射
16. 評価 一次評価 Exposure 全身   体温 外表(外傷・発疹・出血斑)
17. 評価 一次評価のまとめと分類 Airway 上気道 Breathing 呼吸 Circulation 循環 Disability 神経 Exposure 全身 ABCDEのどれが異常か
18. 評価 二次評価一次評価で明らかになった病態の原因検索 Signs & Symptoms Allergy 食物・薬物 Medications 近医処方・鎮咳去痰薬 Past medical history 既往・予防接種・(家族歴・周囲流行) Last meal 最終摂取時刻・内容 Event 現病歴・随伴症状(Review of system) 病態に的を絞った病歴聴取 SAMPLE 病態に的を絞った身体診察
19. A-Eの異常のまとめ PALSでは これらの原因を検索する 評価 二次評価一次評価で明らかになった病態の原因検索
20. 実臨床では様々な病態が 一次評価の異常を示す 評価 二次評価一次評価で明らかになった病態の原因検索 A-Eの異常のまとめ
21. PALSアプローチを用いた診断学 を練習しよう!!
22. 8か月男児 発熱・咳嗽 一次評価 A 開通  B 呼気性喘鳴  C 頻脈 末梢暖 sBP80  D A/AVPU  E BT38.1度  第一印象:開眼、息が苦しそう、チアノーゼなし  
23. 8か月男児 発熱・咳嗽 二次評価 S 発熱・咳嗽 A なし M 鎮咳去痰薬 P 既往なし 予防接種済 L 30分前ミルク80ml E 3日前鼻汁   昨日から発熱   本日咳嗽 大泉門陥凹なし 口腔内湿潤 wheezes+ crackles- CRT1sec   wheezesに対してβ刺激薬吸入 → 呼吸数・wheezes改善
24. 8か月男児 発熱・咳嗽 二次評価 S 発熱・咳嗽 A なし M 鎮咳去痰薬 P 既往なし 予防接種済 L 30分前ミルク80ml E 3日前鼻汁   昨日から発熱   本日咳嗽 大泉門陥凹なし 口腔内湿潤 wheezes+ crackles- CRT1sec   ウイルス性細気管支炎>感冒に伴う初回喘息発作>>肺炎、心筋炎
25. 1歳男児 痙攣 一次評価 A バギングで開通  B ラ音なし SpO2:100%  C HR180 sBP100  末梢冷 CRT3sec        D U 4/4 鈍/鈍  E BT39.2度  第一印象:開眼、呼吸不整、口唇チアノーゼ  
26. 1歳男児 痙攣 二次評価 S 発熱・痙攣 A なし M 解熱薬 P 既往なし 予防接種遅れ L 1時間前に離乳食半量 E 12時間前から発熱   寝入りに突然痙攣した   大泉門陥凹なし 口腔内湿潤 ラ音なし 心雑音なし 四肢の痙攣は頓挫 HR160 3/3 鈍/鈍 GCSE1V2M5 CRT2sec   熱性痙攣>髄膜炎・脳炎脳症・sepsis>>sickdayの代謝アタック
27. 1歳女児 発熱  一次評価 A 開通  B ラ音なし SpO2:100%  C HR180 sBP80  末梢やや冷 CRT2sec        D A   E BT38.2度  第一印象:少しぐったり、呼吸異常なし、チアノーゼなし  
28. 1歳女児 発熱 二次評価 S 発熱 A なし M なし P 既往なし 周囲流行なし  L 3時間前にジュース E 昨日から発熱 他症状なし   口腔内やや乾燥 ラ音なし 心雑音なし 腹部平坦 圧痛なし HR180 sBP80  末梢やや冷 CRT2sec   熱源不明 → w/u 脱水・発熱・不快による頻脈否定の為に補液・解熱薬
29. 1歳女児 発熱 外液10-20ml/kg bolus後 一・二次再評価  HR170 sBP80 BT38   機嫌変わらず  胸部レントゲン異常なし  迅速抗原検査陰性   尿グラム染色陽性 UTI/urosepsisの疑い→抗菌薬・入院
30. おまけ1 カルテの一例
31. おまけ2 救急現場で役立つ魔法の言葉集 ➀初療時  SAMPLE + 年齢・体重 ②気管内挿管時の物品確認  SOAP ME サクション・O2・Airway物品・pharmaceuticals・モニター・物品 ③人工呼吸器・気管切開患者の急変対応 確認事項  DOPE Displacement・Obstruction・Pneumothorax・Equipment failure
32. 両親への声かけ~究極のサービス精神と科学的根拠~
33. 小児医療の実際 ・殆どは対症療法か入院加療 ・検査閾値が高い ・診察に時間がかかる ・確定診断や治療にかかる時間は様々 家族への声かけ 適切な受診行動への促し 3C Common Critical Curable 家族の希望 ・早く治してほしい ・何の病気なのか知りたい ・早く帰宅したい ・心配な時は入院したい  けど早く退院したい 暫定診断3Cとそれぞれのclinical course 再診タイミング 今後どう診断していくか まずは家族の気持ちに心を傾ける 何か心配な点はないか、最後に確認
34. 抗菌薬をどう選ぶかの一例  参考資料:抗菌薬の考え方,使い方 Ver.2        小児感染症マニュアル 2012        成育アンチバイオグラム 2016
35. 抗菌薬を使うときには ・三角形の3要素をプレゼンテーション出来るように診断する ・抗菌薬選択は表(感受性ではなく一般的適応) + アンチバイオグラム を参考に ・投与量/方法(例.300mg/kg/day Q6hr)は参考資料を併記する 重症度 微生物 感染臓器 抗菌薬 患者背景(年齢・性別・基礎疾患・device・市中or院内) 病歴・身体所見・検査 どの臓器・微生物までカバーするか RIMS Risk, Infection site Microbiology, Severity
36. グラム染色 細菌の分類 ブドウ球菌 肺炎(双)球菌 連鎖球菌系 (腸球菌 含む) モラクセラ 髄膜炎菌 淋菌 緑膿菌 大腸菌 クレブシエラ インフルエンザ菌 キャンピロバクター 便
37. 抗菌薬スペクトラムを意識した細菌の分類の例 セファロスポリンが効力なし
38. 外来で抗菌薬治療を行う感染症の例 ・溶連菌咽頭炎 AMPC,セフェム系 ・中耳炎 AMPC,セフェム系 ・元気な市中肺炎 AMPC,マクロライド ・学童期等の尿路感染症 AMPC,セフェム系 ・全身性発熱のない蜂窩織炎 セフェム系
39. 重症・基礎疾患あり ≠ 珍しい菌・耐性菌 珍しい病原微生物や耐性菌 ≠ 病原性強く重症になるのではなく 重症な時や基礎疾患がある場合は     カバーを外した場合に手遅れになるのでカバー範囲を広げる escalation *菌名や抗菌薬は一例です 円の大きさ(起因頻度)は年齢や基礎疾患で変わる
40. ※1 : 混合感染、膿瘍、悪臭、敗血症性血栓性静脈炎 抗菌薬の選択の一例であって、感受性表ではありません
41. 耐性菌に対する抗菌薬
42. 静注抗菌薬
43. 内服抗菌薬