すたば総合病院
働き方改革って何ですか?
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最終更新:2022年7月20日
知っておこう、銃創・爆傷
#爆傷 #弾道学 #銃創 #ヒドロキソコバラミン #テロ対策 #ターニケット #放射線被爆 #クラッシュ症候群
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REBOA入れられますか?
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妊娠・授乳中の薬の考え方
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産婦人科にコンサルトすべき女性の腹痛 救急編③〜その他〜
#腹痛 #産婦人科 #救急科 #悪性腫瘍 #異所性妊娠 #卵巣茎捻転 #不妊治療 #卵巣出血 #PID #Fitz-Hugh-Curtis症候群
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初期研修医のための月経歴問診の奥義
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産婦人科にコンサルトすべき女性の腹痛 救急編②〜卵巣茎捻転〜
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〜異所性妊娠〜産婦人科にコンサルトすべき女性の腹痛 救急編①
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最終更新:2022年2月7日
産婦人科にコンサルトすべき女性の腹痛 〜月経痛〜
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チームで救おう産科危機的出血 救急医が知っておくべき知識まとめ すたば
あれ、結構出血してるな... 血圧も少し下がってきてるぞ.やばいやばい. 救急医の先生呼んでおこ〜 産科の先生 分娩後の出血って何すればいいの? 普通の大量出血患者としての対応で いいのかな... 産後のお母さん 産後の出血多量で呼ばれた時、どうしますか? 今回は分娩後異常出血の治療で救急医が知っておくべきことについて 一緒に勉強しましょう!
日本の妊産婦死亡 2019年 妊産婦死亡率 1万3千人に1人 (比較)一般女性の死亡 妊産婦死亡の原因別事例数の年次推移 妊産婦死亡の原因別頻度 産科危機的出血 18% 2000人に1人 100 90 80 70 60 脳出血 15% 50 40 30 20 心肺虚脱型羊水塞栓 11% その他 10 産科危機的出血 0 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 n=407 妊産婦死亡も産科危機的出血での死亡例も低下傾向ではあるが、 ゼロではない. 日本産婦人科医会 妊産婦死亡報告事業2019より
4.
産科異常出血とは 時期による分類:分娩前、分娩時、分娩後 • 分娩前異常出血(原因:前置胎盤、常位胎盤早期剥離、前置血管など) 分娩前からリスクがわかっていることもあるため 分娩時にはすでに救急、麻酔、輸血部などに声が掛かっていることが多い • 分娩時異常出血(原因:産道裂傷、子宮収縮不全、胎盤遺残、凝固障害など) • 分娩後異常出血(postpartum hemorrhage : PPH) 胎盤娩出後から産後12週までの出血 (特に24時間以内をprimary PPH) 原因は以下 • 子宮収縮不全 • 子宮仮性動脈瘤 • 腟壁・外陰血腫 • • 子宮内反症 産道裂傷 など リスクがなく正常の出産過程であっても一定の頻度で起こり得る.
5.
産科危機的出血とは 特にPPHは 経腟分娩で1L以上、帝王切開で2L以上という目安はあるものの 出血と羊水が混ざるため正確な出血量の把握が難しい. 診断の遅れと出血の持続が産科危機的出血につながる 出血持続と出血性ショック(乏尿、末梢循環不全)の所見 or 以下いずれか ・Shock Index(SI)≧1.5 ・低フィブリノゲン血症(フィブリノーゲン<150mg/dL) ・基礎疾患をベースとした産科DIC(disseminated intravascular coagulation ) スコアが8点以上 ①危機的出血になる前にできること ②危機的出血が起こった時にできること 起こる前の予防と起こってからの迅速な対応が重要です.
6.
①産科危機的出血になる前にできること • 自分の施設が産科危機的出血に対応できる施設なのかを把握 搬送が必要な施設にいる 搬送先になる高次施設にいる • 高次施設への母体搬送 • ハイリスクは事前に情報共有 (出血リスクありorまれな血液型(Rh-など)) (救急科、麻酔科、輸血部) • 搬送先を事前に確認、連携 • 搬送時の体制を平時から確認 救急医だと高次施設にいることの方が多いかもしれませんが、 外勤先などでは産科のマンパワーを確認しておきましょう. 産科危機的出血になってしまった時の外科的止血術やIVR、大量輸血などの治療 が可能かどうかも確認が必要です. 普段から産科の先生とコミュニケーションを図っておくと(理想は急変時のシ ミュレーションなどを定期的に開催)スムーズです.
7.
• バイタルサインを把握し評価する 特に循環の指標になる血圧、脈拍数に加えSIを重視するのは日本独特. 海外でも産科危機的出血の対応ガイドラインがありますがSIの記載はない. Shock Index(SI)= 心拍数 収縮期血圧 SI>1でショックと判断、SI≧1.5だと産科危機的出血と判断. SI=1で出血量1.5L、SI=1.5で2Lという説もあるが、エビデンスはないが わかりやすい指標になっている. SIのエビデンスとしてはSI≧1.12でRBC19単位以上の輸血を要する(感度51%、特異度94%)という研究はある. Era S.J Obstet Gynaecol Res.2015;41:39-43. • 院内でのマニュアル化、プロトコル化しておく 産科危機的出血への対応指針2022や周産期救急コースとしてALSO(Advanced Life Support in Obstetrics)、J-MELS、周産期初期診療PC3などで対応の流れ を確認し(コース受講は救急•産科•助産師などチームで受けるのがおすすめ) 自分の施設がどの段階で母体の急変時対応をすることが多いのかを把握し、 施設のキャパシティに合わせて現実的な対応をできるようにプロトコル化して おく
8.
②危機的出血が起こった時にできること できれば大量出血でバイタルサインが崩れる前に介入したいところですが、 実際には血圧が下がってすでにSI>1.5を超えていたり、いわゆる急変で呼ばれます. 危機的出血で呼ばれたら、どうしますか?一緒に考えてみましょう. • まずは指揮命令系統を確立 私がリーダーです! 急変で人は増えるが場が混乱しやすい リーダー医師はできれば手技などを行わない方が全体把握はしやすい. 難しい場合にはリーダーが患者さんの頭側にいて気道確保などをすると 全体をコントロールがしやすくなる
9.
• 気道、呼吸、循環(Airway-Breathing-Circulation)の安定化 ついつい出血しているところばかり気になりますが、まずは全身管理 • 輸血と止血 分娩後異常出血 ☑血液検査(血算凝固、特にフィブリノゲン値) ☑子宮腔内バルーンで圧迫止血 ☑輸血の考慮、準備 ☑トラネキサム酸投与 危機的出血になる前にすでに行われていることが多いですが、 漏れがないかチェックしましょう. それでも止まらない 産科危機的出血 Bakri®バルーンなど 子宮腔内バルーン
10.
• 輸血はRBC:FFP:PC=1:1:1 RBC(Red Blood Cells) FFP(Fresh Frozen Plasma) PC(Platelet concentrates) 血圧が下がると焦って晶質液や濃厚赤血球輸血RBCばかりいきがち. 希釈性の凝固障害を起こすため、特にFFPは積極的に補充する. 外傷診療での大量輸血療法であるMassive Transfusion Protocol(MTP)が すでに院内で整備されていると便利. Massive Transfusion Protocol(MTP) 大量出血をしている患者に事前に設定した輸血製剤セット(量と比率)を先制的 に使用して救命を目的とした輸血戦略.血漿:赤血球比率は1:1か1:2以上. 重症外傷ででてきた概念で、産科危機的出血でも有効ではないかといわれている. (エビデンスはまだ乏しく、比率も暫定的) MTP初回輸血の内容はRBC 6-10単位、FFP 6-10単位(PC 10単位) が一般的. 大量出血症例に対する血液製剤の適正な使用のガイドライン. 齋藤伸行.JJAAM.2017;28:787-93. 血液型などが判明していても、緊急時は必ずしもこだわらない (クロスマッチなどで輸血投与時間が遅れてはならない)
11.
• フィブリノゲン製剤を使用 大量出血や希釈による低フィブリノゲン血症の補正の目的でのFFPは役不足 FFP 4単位で理論上はフィブリノゲン40mg/dLほど上昇すると言われているが、 大量出血時には投与と同時に消費される. 例えばフィブリノゲン100mg/dLの場合FFP 8単位で150mg/dLを上回る可能性があるが 960mlを短時間で投与せざるを得ず、現実的には難しい (血管内のボリュームという意味では良いが、逆に容量負荷によるリスクも) そこで、フィブリノゲン150mg/dL以上を目標にフィブリノゲン製剤を推奨 フィブリノゲン濃縮製剤 クリオプレシピテート フィブリノゲン濃縮製剤は供給が少ないものの、令和3年から危機的出血に伴う 後天性低フィブリノゲン血症に対して保険で使えるようになった.
12.
クリオプレシピテートとは 新鮮凍結血漿FFPを4℃で24-30時間かけて穏やかに解凍し、遠心分離して フィブリノゲンを濃縮させた製剤. (製造過程は日本輸血・細胞治療学会誌で共有) 凍結したクリオプレシピテート(以下クリオ)は10分ほどですぐ溶け、 FFP-LR 480ml(4単位)から40-50mlほどのクリオ製剤(フィブリノゲン回収 率60%ほど)ができるため、速やかに投与できる. フィブリノゲン濃度はFFPの10倍.(もとのFFPに依存) クリオ製剤に含まれる主な因子 • • • • • 第VIII因子 von Willebrand因子 第XIII因子 フィブロネクチン ビトロネクチン フィブリノゲン濃縮製剤の方がフィブリノゲン濃度が 一定で(フィブリノゲン1g/50ml/1バイアル)血液型の 適合が不要、各施設での製造も不要などのメリットが ある. 一方、クリオはフィブリノゲン以外の凝固因子を含み 線溶亢進の病態(産科DICを含む)の改善効果も期待 される.(まだエビデンスはない) FFP 12-16単位がおよそクリオ3-4パックほど(含有フィブリノゲン2-3g) 投与でフィブリノゲン値が約100mg/dL上昇すると考えられる. 山本晃士.出血治療におけるクリオぷレシピテートの臨床的意義.2020.より 第VII因子製剤(遺伝子組み替え活性型血液凝固第7因子 ノボセブン®)も選択肢の一つではあるが、 保険適応外で血栓リスクなどもあることから、産科危機的出血で現時点では積極的に推奨できる方法 ではない(適用外使用で有効性を示す論文は複数あり)
13.
出血源の検索 • 輸血管理を含む全身管理と同時に、出血源を検索 • 出血源の4Ts Tone 頻度 弛緩出血 70% Trauma 産道裂傷、子宮内反、子宮破裂 20% Tissue 胎盤遺残、癒着胎盤 10% 凝固障害 1% Thrombin 内診や子宮底の位置確認、エコーなどで出血源検索をする 外傷診療では出血源検索のエコーはFAST(Focused assessment with sonography for trauma)を行いますが、産科領域ではFASO(Focused assessment with sonography for obstetrics) やFASP(FAS for perinatal sate)と呼ばれています. 子宮腔内と胸部腹部の致死的出血部位に焦点を合わせて所見の有無を確認しま しょう.
14.
Tone:弛緩出血 子宮の収縮不全 危険因子は遷延分娩、多胎、羊水過多、巨大児 子宮筋腫、前置胎盤など 治療は子宮収縮を促すこと • ルート確保、できれば血管内治療を見越して動脈シースも早めに確保 (ショックで動脈が攣縮すると、シース確保が難しくなることもある) • 子宮収縮薬アトニン® • 子宮底部の輪状マッサージ • 冷罨法(アイスノン®で下腹部(子宮)を冷却) • 導尿で膀胱を空にして圧迫しやすくする • 子宮双手圧迫、子宮内腔バルーン(※成功率80%といわれている) 凝固障害を補正すること • • 抗線溶薬トラネキサム酸1g投与 輸血療法やフィブリノゲン製剤の使用
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Tone:弛緩出血 それでも止まらない場合 • REBOA/IABOで止血術までのつなぎ(切迫心停止を防止する) REBOA:Resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta IABO: Intra aortic balloon occlusion メインは子宮動脈(内腸骨動脈からの分岐)からの出血のため、 ZONE3(腎動脈〜大動脈分岐部)でのバルーン閉塞でコントロール可能 (であることが多い) ZONE 3 REBOA • 動脈塞栓術 総腸骨動脈 内腸骨動脈 子宮動脈 子宮 • • 子宮動脈塞栓術,弛緩出血での動脈塞栓術成功率は88%と高い. 子宮動脈本幹から両側塞栓が基本. 場合によっては卵巣動脈やその他側副血行路からの塞栓も追加. ゼラチンスポンジでの塞栓が基本だが、凝固障害のため止血困難な場合 には生体凝固能に依存しないNBCA(n-butyl-2-cyanoacrylate 瞬間接着 剤.令和4年よりヒストアクリル®が保険適応)を使用. 子宮止血縫合(帝王切開時など) 産褥子宮全摘術(最終手段な上に、高度な凝固障害があると止血困難なことも)
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Trauma 産道裂傷 会陰裂傷、腟壁裂傷、頸管裂傷、子宮破裂などがある. リスク因子は鉗子・吸引分娩などの急速な分娩進行、軟産道強靭、巨大児、 回旋異常など. 産道裂傷で産褥血腫(外陰・会陰血腫、腟壁血腫、後腹膜血腫)に進展すると 産後の創部疼痛などでマスクされ、発見が遅れることがある. 縫合可能であれば縫合 縫合困難で持続出血の場合は動脈塞栓術 主に内陰部動脈、腟動脈、閉鎖動脈だが、側副血行路として対側の動脈、外腸骨動脈の 子宮円索動脈、卵巣動脈、下腸管膜動脈などからの出血も注意 産科危機的出血に対するIVR施行医のためのガイドライン2017もあります.
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Trauma 子宮内反 子宮体部の内膜面が外方に反転し腟内や腟外に露出した状態. リスク因子は胎盤の子宮底部付着、癒着胎盤、巨大児、多胎、子宮異常など. 強い痛みと大量出血が主な症状だが、発症初期には痛みによる迷走神経反射で 血圧の割に徐脈になりShock index(SI)が上がらないこともある. 非間欠的用手整復術+子宮収縮抑制薬(整復後は子宮収縮薬) 不成功なら間欠的整復術(手術的整復) 子宮破裂 子宮手術の既往がない場合は15,000分娩に1例と稀(帝王切開後などではリスク) 破裂部の縫合か単純子宮全摘 強い痛みと大量出血を起こすので、救急医としては特に疼痛管理(ショックなら鎮痛・ 鎮静をして気管内挿管も)と輸血管理で産科の先生たちの手技をサポートしましょう.
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Tissue:胎盤遺残、癒着胎盤 胎盤遺残 嵌頓胎盤:胎盤娩出前に子宮口が閉じて、子宮内に胎盤が残る 付着胎盤:胎盤が単純に子宮内にとどまるものの、用手剥離で剥離可能 癒着胎盤:胎盤の一部が子宮筋層に食い込んで、子宮内に胎盤が残る 癒着胎盤のリスクになる前置胎盤(前置癒着胎盤)や帝王切開歴があるなどの 場合には、術前に癒着胎盤を診断できることもある. →術前に予防的に動脈塞栓術や両側内腸骨動脈バルーン留置など 胎盤剥離方法で剥離しなければ用手剥離 動脈塞栓術(分娩後の癒着胎盤の診断後、出血前に予防的に子宮動脈塞栓術を行うと出血な く用手剥離できることもある.大量出血時は止血目的に子宮動脈塞栓術を行う) 止血困難であれば単純子宮全摘
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Thrombin:凝固障害 分娩後の出血原因としては頻度は低いものの、大量出血の原因になる. 出血や希釈による凝固障害もあるが、obstetrical disseminated intravascular coagulation:産科DICは特に重篤な出血傾向を起こす. 産科DIC 妊娠による生理学的な凝固系活性化に加え、 産科的基礎疾患(常位胎盤早期剥離、羊水塞栓症、DIC型後産期出血、子癇)によって起こるDICで 臓器障害と線溶亢進による出血傾向となる. DIC型後産期出血は子宮型羊水塞栓症が主な原因で、羊水中の胎児成分や組織因子が子宮筋層の静脈内に 流入しDICを発症している可能性が最近注目されている.子宮型羊水塞栓症は弛緩出血の原因にもなる. 通常の弛緩出血の場合、子宮平滑筋疲労→子宮収縮薬で改善 羊水塞栓症は羊水に対するアナフィラクトイド反応*→補体系・キニンカリクレイン 系の活性化により血管透過性が亢進 →子宮の急性炎症と間質浮腫による子宮弛緩→子宮収縮薬の効果は低い *アナフィラキシー、即時型反応 疲れはてた子宮 もともと知られている心肺虚脱型(古典的)羊水塞栓症は死亡率20-60%、妊産婦死亡をおこす 重篤な疾患で、全身性炎症反応症候群に似た病態を起こし、呼吸不全や循環虚脱を起こします.
20.
Thrombin:凝固障害 治療 DICと大量出血 治療はDIC治療、循環補助、止血術 DIC治療 • 凝固障害の補正としてFFP投与、追加でPC輸血(P10-12に準ずる) • 抗凝固療法としてアンチトロンビン製剤 • 線溶抑制としてトラネキサム酸2-4g/発症早期(産後出血の発症早期の • トラネキサム酸1g+追加投与1gはWOMAN trialでエビデンスあり、産科DICに対するトラネキサ ム酸2-4g自体はエビデンスは不明) ウリナスタチン、トロンボモジュリンα(リコモジュリン®)、羊水塞栓症の場合にはアナ フィラクトイド反応の抑制目的でC1-インアクチベータ製剤(ベリナートP®)も有効ではないか といわれている(高額かつ保険適応なし) 止血術 (基礎疾患の治療にもなる.ただしDICでの止血は通常は困難.動脈塞栓術や手術療法などを組み合わせる) DICに陥ると本来の子宮動脈以外の部分からのじわじわした出血を起こします.凝固障害の補正と NBCAの使用や、手術自体も止血のためのパッキングのみで一時閉腹し、ICUに一旦帰室して全身状 態を持ち直してから再手術することもあります.(Damage control surgery)
21.
まとめ 最初の症例に戻りましょう. スライドで勉強した今、きっと適切に対応できるはずです. 結構出血してるな... 特にリスクない出産だったけど、人を集めよう. 採血して救急部、輸血部、麻酔科に連絡しておこう 産科の先生たち リスクのない妊婦産で産後1時間だけど出血が続いていて血圧も 少し下がっているみたい. 挿管セットや動脈シースの急変セットを持っていこう.REBOAカテ も持っていこうか.バイタルチェックして問題あれば、救急部も 追加でスタッフを集めよう. 産後のお母さん MTPでるかも.準備しておこう. 輸血部 救急スタッフ 血管塞栓術になるかも、部屋開けておこう 放射線部 麻酔科、手術室 ICUスタッフ などなど
22.
Q&A:REBOAと両側内腸骨動脈バルーン閉塞の違いはなんですか? 血管内治療には動脈塞栓術とバルーン閉塞術があります.産科出血に対するREBOAは 腹部大動脈ZONE3でバルーン閉塞をしますが、産科出血の場合には主な出血源は子宮 動脈を含む内腸骨動脈系の出血のため、両側の総腸骨動脈や内腸骨動脈内を選択して、 バルーン留置を行うこともあります.(Internal Iliac Artery Balloon Occlusion: IIABO) REBOA ZONE 3 • • • 緊急時に非透視下で留置可能 外腸骨動脈系なども出血制御可能 その代わり、虚血が進行 IIABO • • 予防的に透視下で留置 選択的に内腸骨動脈系の出血のみ 制御できるため、下肢虚血のリス クが低い バルーンカテ 両側の大腿動脈からアプローチして、図のように対側の内腸骨動脈にバルーンを留 置します.IIABOは癒着胎盤が疑われる症例や前置胎盤の帝王切開での予防的な使用 や、緊急時には子宮摘出前の出血コントロールなどにも用いられます. 産科出血に対する血管内治療は出血制御のためのよい手段ではありますが、施設に よって手技を誰がやるのか、手術と血管内治療いずれを優先されるのかが変わって きます.また、急速にDICに陥るリスクが高いため一つの治療法に固執せずに、柔軟 な対応が求められます.
23.
Take home message • 分娩後異常出血での院内対応を再確認し、 事前に緊急時の院内シミュレーションをしておこう • フィブリノゲン製剤を組み込んだ輸血戦略、 RCC:FFP:PC=1:1:1の割合で、特に凝固系の推移に注意 • 一時止血のためREBOAなどバルーン閉塞も上手に活用し 圧迫、IVR、手術などの止血戦略を組み立てよう