#4.
卵巣茎捻転は緊急オペ疾患 ü 卵巣茎捻転は異所性妊娠と並ぶ 婦⼈科で緊急オペが必要になる代表的な疾患 婦⼈科疾患は診断が難しいこともあり、 夜間に緊急の判断をすることは専⾨医でも それなりのハードルがあります。 ※ 異所性妊娠と卵巣茎捻転以外で緊急オペをすることは稀です。 もちろん珍しいことが起きるのが常ではありますが・・・ 判断のポイントは激痛と特徴的なCT所⾒
#5.
卵巣・卵管の病気は確定診断が難しい ※卵巣と卵管をまとめて“付属器“と呼んでいます。 p そもそもが⼩さい臓器 p CTやエコーで正常でも⾒えないことがある p ⾎液検査でも特異的なマーカーはない p CTなどの画像検査は1cmくらいまでが診断能⼒の限界 p 癌や境界悪性腫瘍など組織型や悪性度の判断も難しい 産婦⼈科医は必ず、「卵巣茎捻転の疑い」など“疑い“を強調して説明をしている。 術後の病理診断で癌と判明することもあるので、その旨も説明している。
#6.
⼿術の⽬的はまずは診断 「現時点で可能な限りの検査を⾏ったところ、卵巣茎捻転の疑いがあります。」 「症状もかなり強いので、まずは診断のために、 腹腔内をカメラで直接確認する必要があります。」 「実際には卵巣とは違うものがねじれていたり、 破裂していたりの可能性もあります。」 「もし卵巣腫瘍であれば捻転を解除して、 嚢腫だけをくり抜いてくる予定です。」 「⼿術で切除してとったものは病理検査でどういったものか検査します。 その診断によっては追加治療などの可能性もあります。」
#7.
産婦⼈科医が⼿術を決めるポイント ü 激痛があることが⼀番⼤事。 そうでない場合も奇形腫なら、亜捻転などもありうるためオペは考慮する。 ポイント p アセリオやロピオン、ソセゴンなどの鎮痛薬にほとんど反応しないくらいの 激痛がある p CTやエコーで奇形腫の所⾒がある p 患者本⼈が⼿術してでも痛みをとってほしいと納得している 卵巣が壊死しても命に関わることは稀です。 卵巣機能は落ちて、痛みは⻑引くけれど、 ⼿術しないという選択をする患者もいます。 産婦⼈科以外の医師がやるべきことは︖
#8.
卵巣茎捻転は難しい ü 卵巣腫瘍の中でも “捻転しやすいもの” と“破裂しやすいもの”がある。 → “捻転”なら鎮痛や卵巣機能温存のため⼿術も検討。 “破裂”なら鎮痛剤や抗⽣剤での治療が可能なことが多い。 破裂でも激痛にはなる ü 最終的には⼿術をしない限り確定診断はできないが、 ⼿術をするならば、術前診断と術後診断が違ったときに、 トラブルにならないように対応することは必須(逆も然り)。 ⼀番は患者⾃⾝が “⼿術になっても納得できる”くらいの激痛があること が⼿術の同意を得る上では重要となる。 ※ 奇形腫以外でも卵巣に腫瘍があり激痛があるなら産婦⼈科に相談してください
#9.
腹部の激痛がある⼥性がきたら p バイタルの確認と安定化 p 尿中HCGでの簡易妊娠検査で陰性を確認 → 妊娠中にも捻転は起こるが、妊娠中ならCTなどは基本的に控える。 妊娠なら産婦⼈科にすぐ相談でOK。 p 鎮痛+術前検査+CT検査 → 問診でも今まで婦⼈科で「卵巣が腫れてる」と⾔われたことがないかを確認しよう︕ ü CTで⼦宮や卵巣周囲に腫瘤や嚢胞があれば婦⼈科疾患は可能性はあり ü 産婦⼈科医がいるならその時点で相談でOK ü もし産婦⼈科がいないときは患者とも相談だが、奇形腫の所⾒があれば 産婦⼈科のいる施設に相談した⽅が良い
#10.
卵巣腫瘍は種類毎に疑う状態が違う︕ 例えば 茎捻転のほとんどがこのパターン︕︕ ü 成熟嚢胞性奇形腫+激痛 ≒ 卵巣茎捻転 ü 卵巣内膜症性嚢胞+腹痛 ≒ 腫瘍破裂(micro rupture) 画像では卵巣が腫れていることだけでなく、 どのタイプの卵巣腫瘍なのかを⾒極める必要がある。 ※ ゴールドスタンダードはMRI だが夜間救急では困難
#11.
奇形腫は脂肪成分があれば診断できる ü 多くの卵巣疾患ではエコーとMRIがスタンダードだが、 奇形腫に関しては、CTで⼗分に診断はできる。 ⼀度はCT所⾒を確認しておこう︕ 卵巣腫瘍の中⾝が、⽪下脂肪と同じ濃度で⿊く抜けることが、 脂肪成分がある奇形腫であることの証明になる。 https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/18291 (参考︓画像診断café) 卵巣茎捻転は、ほとんどが成熟嚢胞性奇形腫のため、 CTで奇形腫の診断+激痛 であれば 捻転の疑いがかなり強い と判断ができる ※ もちろんそれ以外で卵巣に腫瘍がある場合も産婦⼈科に相談してOK
#12.
成熟嚢胞性奇形腫は “捻転” しやすく “破裂” しにくい ü 卵巣茎捻転は “どんなタイプの卵巣” でも可能性はある。 p “正常卵巣”の捻転 p “卵巣癌”の捻転 p “内膜症性嚢胞”の捻転 など ü また、⼿術したら違うものだった、ということもある。 p 卵管捻転 p 漿膜下筋腫の捻転 p ⾍垂炎 成熟嚢胞性奇形腫なら良性です︕ (腫瘍の表⾯がツルツルで被膜が硬い︕) など ü 本当ならMRIなどで、どんな性質の卵巣腫瘍なのかは確認したい。 万が⼀、卵巣境界悪性腫瘍や卵巣癌などであれば標準術式も変わってしまう。 ただ、“捻転しやすい” かつ ”破裂しにくい“ というのは、 成熟嚢胞性奇形腫の特徴 なので、緊急⼿術を決める際には ⼤事な所⾒の⼀つ︕ ※ もちろん激痛を伴う卵巣腫瘍なら、他の腫瘍でも緊急⼿術にすることはあります
#13.
症例紹介 ※医師国家試験110D39を改変 23歳⼥性。右下腹部痛のため救急⾞で搬送された。2時間前に右下腹部痛が突然出現した。病院到着 時には右下腹部痛の強さは発症時に⽐べ半減していた。 臨床所⾒ 意識は清明。体温36.7℃。脈拍14/分。SpO296%(room air)。 眼瞼結膜と眼球結膜に異常を認めない。 内診で右付属器に径6cmの腫瘤を触知し圧痛を認める。⼦宮と左付属器に異常を認めない。 経膣超⾳波像を別に⽰す。 この患者への対応として適切なのはどれか。 a 経過観察 b 腫瘍摘出 c 抗菌薬投与 d 経膣穿刺吸引 e ⻩体ホルモン療法
#14.
症例紹介 ※医師国家試験110D39を改変 23歳⼥性。右下腹部痛のため救急⾞で搬送された。2時間前に右下腹部痛が突然出現した。病院到着 時には右下腹部痛の強さは発症時に⽐べ半減していた。 臨床所⾒ 意識は清明。体温36.7℃。脈拍14/分。SpO296%(room air)。 眼瞼結膜と眼球結膜に異常を認めない。 内診で右付属器に径6cmの腫瘤を触知し圧痛を認める。⼦宮と左付属器に異常を認めない。 経膣超⾳波像を別に⽰す。 この患者への対応として適切なのはどれか。 a 経過観察 b 腫瘍摘出 c 抗菌薬投与 産婦⼈科医なら内診や経膣超⾳波をすぐ⾏いますが、 救急外来では⼀般的な問診や⾎液検査、画像検査が 先になると思います。 d 経膣穿刺吸引 e ⻩体ホルモン療法 婦⼈科疾患ではない可能性もある病歴なので、 ⼀般的な救急対応の中で、どう診断して⾏くかを考えましょう
#15.
症例紹介 追加問診 ⽉経は28⽇型で順。⽉経痛はロキソニン内服で過ごせるくらいで今回ほど痛いことはない。 今まで婦⼈科の受診歴はない。 性交渉歴はあるが、避妊はしている。 すでに⼦宮卵巣に何か異常を指摘されているのかどうか は診断の助けになる︕ 追加検査・対応 妊娠反応は陰性を確認した。 ⾎液検査を⾏う。採⾎時に点滴ルートを確保し、アセリオの点滴投与を開始した。 ⾎液検査は軽度の炎症反応上昇のみ(術前検査は念のため提出済み)だが、 ⾎液検査の結果を待つ間もアセリオの点滴投与では有効な鎮痛が得られなかった。 → 単純CTを⾏った。
#16.
症例紹介 単純CT ⽉経は⾻盤内に6cm⼤の腫瘍があり、内部は⼀部、脂肪の濃度で⿊くぬける所⾒を認めた。 ⽅針 卵巣奇形腫と診断 し、卵巣茎捻転の疑いがあると判断した。 ロピオンの点滴投与でさらなる鎮痛を図りつつ、産婦⼈科医へコンサルトを⾏った。 経過 産婦⼈科で緊急オペとなり、b 腫瘍摘出 を⾏なった。
#17.
Take Home Messages 1. 卵巣茎捻転の症状は腹部の激痛 2. 卵巣茎捻転の原因は 成熟嚢胞性奇形腫 が 最も多く、他は稀である 3. 奇形腫の特徴的なCT所⾒(脂肪成分)を 覚えておこう︕
#18.
余談 ü 成熟嚢胞性奇形腫は “⽪様嚢腫” ともいう。 嚢腫の中⾝は汗(脂肪分)や⽑髪など、 表⽪から分泌されるものが多い ため “⽪様” 嚢腫 ü 奇形腫は神経成分のある“未熟奇形腫”という悪性に分類される組織型もある。 また、成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化もある。 → 術前診断は難しいことも多い。 ü 奇形腫は抗NMDA受容体抗体脳炎に合併することがあり、 特に未熟奇形腫の神経成分との関連が考えられている。 急な精神症状では脳炎の可能性も考える︖ その際は 体幹部の画像精査 も検討する。