#4.
腎生検でわかること・わからないこと 4 わからないこと 年齢
性別
Cr
尿タンパク
尿初見
治療反応
薬剤性腎障害の被疑薬 このような基本的パラメータは
分からない検査である わかること 病名(ex. IgA 腎症)
組織学的重要度 このように意外と少ない 腎生検は、臨床的なパラメータと組み合わせて判断する のが重要 腎予後:残存している糸球体、間質障害などから
治療反応:「MCNSなら反応は良いだろう」「Selectivity Index が低い膜性腎症だから反応がいいだろう」 …なんてことを考えながら行う なので、「腎病理の病名」だけで判断するレベルだと腎生検はあまり生かせない → 病理だけで色々言うのもナンセンス(学問的には良いと思う)
#5.
腎生検による「メリット>リスク」が適応 5 全ての医療行為はゼロリスクではないので、「メリット>リスク」で適応を考えるのが妥当だと思う
腎生検によるメリット → 前のページ 年齢やADLで明確にカットオフよりは
自分の祖父母だったら?父母だったら?兄弟だったら?
などのコモンセンスの方が大事。
#6.
腎生検の適応 6 まあ、絶対適応
若年の血尿タンパク尿
非糖尿病のネフローゼ症候群
治療優先でOK(だけど、将来を考えると・・・・)
RPGN(急速進行生糸球体腎炎)
突然発症のネフローゼ(MCNS想定)
これらにADLや禁忌が関係していく
強いて言うならば
eGFR>35
尿タンパク≧0.5−1.0g/gCre
が1つの目安(年齢が低いほど
尿タンパクをタイトに)
血尿単独はあまり食指が伸びない
免疫抑制かけるか?を考える
非ネフローゼならば、エンピリカルに
ARB+SGLT2阻害薬まではしてもいいかも
#7.
症例 01 7 ADL 自立
既往歴:特記事項無し、糖尿病無し
感冒後 3 週間してから、下腿浮腫 → 全身浮腫で来院
Alb = 1.9 g/dL、尿タンパク 6.3 g/gCre、ANCA 陰性、GBM 陰性、補体正常、 90歳 女性 主訴:浮腫 ※症例は個人がわからないように改変しています 90 歳だから腎生検はしない??
#8.
他の検査 8 M蛋白(免疫電気泳動)
軽鎖(κ/λ)
とはいっても、MGRSなのか、LCDD(Light Chain Deposite Disease),HCDD (Heacy Chain Deposite Disease),LHCDDなどもある→これらだった治療するか??
非保険
PLA2R・・膜性腎症に多いと言われる特異抗体(非保険なら測定可)
ネフリン抗体・・・微小変化型ネフローゼ症候群に多いと言われる特異抗体(まだ研究レベル、医師主導治験中)
→陽性だったら、診断して良さそうだが、陰性だったときのプランは?
#9.
症例 01 9 年齢を考えステロイドパルスのみ → 完全緩解
その後はステロイドを漸減し、最小量 PSL = 0.05 mg/kg/day(2mg/日)
再発なく経過 → 2年間再発なく、かかりつけ医にこのまま紹介(再発したときは ADL や認知機能で相談) 腎生検:MCNS であった 余談:驚くべきことに腎病理では動脈硬化性病変なし!
#10.
症例 02 10 ADL は寝たきり(自分で寝返りできない)、自発語もない
既往歴:特記事項無し、糖尿病ははっきりしない
Cr = 0.8 mg/dL、Alb = 2.3 g/dL、尿タンパク 13.3 g/gCre、ANCA 陰性、GBM 陰性、補体正常 82歳 女性 主訴:浮腫 ※症例は個人がわからないように改変しています どうする?
#11.
症例 02 11 腎生検:アミロイドーシスであった 家族に上記を説明 → 「治らない病気であれば積極的な治療希望しません」
元いた施設に戻った(腎予後の見立てをつけた、紹介状を嘱託医へ) 腎臓への治療反応は悪いと考えます
腎予後は 2〜3 年だと思います
また、心臓などの問題が起きると思います(不整脈や心不全) 余談:体液量管理はしました 結局主治医が変わってさらに高齢になって紹介なったりする
#12.
症例 03 12 全身浮腫で来院
既往歴:これまで全く検診などを受けたことはない
180cm、121kg、腎臓は 11×5 cm、左右差なし、輝度はやや高輝度、アキレス腱反射(-)
Cr = 1.1 mg/dL、Alb = 2.9 g/dL、尿タンパク 8.7 g/gCre、Hb = 10.9 g/dL、HbA1c = 7.1%、ANCA 陰性、GBM 陰性、補体正常 36歳 男性 主訴:全身浮腫 ※症例は個人がわからないように改変しています どうする??
とりあえず、全身浮腫なのである程度コントロールするとして、ネフローゼ症候群に対してどう介入する?
#13.
症例 03 13 腎臓の状態を見ると、腎予後は 2 年程度と考えた
本人はショック受けていたが、治療を頑張って 5 年後に血液透析導入となった(腎移植待機)
本人の「もっと早く分かっていれば・・・」→ 健診で早期発見が重要!
ただし、スコアによる腎予後が全てではなく、「頑張れば腎予後伸びる人がいる」と言う事も重要です(「戦うべき相手をはっきりさせるために腎生検しましょう」と話します) 腎生検:糖尿病性腎症であった 余談:糖尿病性腎症のスコアがあります ※『糖尿病性腎症と高血圧性腎硬化症の病理診断への手引き』p.4
#14.
腎生検のリスク 01 14 日本のアンケート結果 (腎臓学会が 2018 年に行ったもの) ▶ 低発生率で、しかも腎生検の手技とは無関係と書いてある (15,657 例回収)
#15.
腎生検のリスク 02 15 知っておいたほうがいいこと 出血に伴うインターベンションの 65% が 24 時間以内 に起こるが、20% は 1 週間以上経ってから 起きている → なので、腎生検後はしばらく注意が必要 Clin Exp Nephrol. 2020 ;24(5):389-401 私は「次の外来までは無理しないでね」と話します 血腫が大きい(>30 mm)と 5〜7 日後に 70% で発熱する → なので、血腫が大きい場合にはカロナールなどを退院処方で出しておく Medicine 2016;95:e4754
#16.
そもそも、どのくらい出血するの? 16 腎生検の出血量は中央値が 38 mL(90% 以上が <100 mL の出血) → ただし、べき乗の分布でロングテールがあるので 1,000 mL 以上出血する人は必ず出てくる 出血を増やす因子は穿刺回数のみ(4 回以上は慎重に)※予断 Clin Kidney J. 2017;10:9-15.
日腎会誌 1986;28:821-828 大事なのは 出血量≠合併症 → 当然「体格が小さい」「もともと貧血がある」「全身状態が悪い」などは合併症を起こしやすい (出血のリスクと合併症のリスクを混同している人が多い)
#17.
※腎生検の論文 17 腎生検の出血量は中央値が 38 mL(90% 以上が <100 mL の出血) Clin Kidney J. 2017;10:9-15.
日腎会誌 1986;28:821-828 腎臓学会の英文誌に出したら「やり過ぎ」といわれましたが。海外の雑誌の表紙を飾りました。学会であったこの雑誌のチーフエディターと撮影→ このあたりの経緯を書いた本が↓
#18.
出血のリスクを減らすことはできますか? 18 術後の手技などで減らすことは おそらくできなさそう 用手圧迫:迷走神経反射↑(出血は 10 mL 程度減るが、臨床的意義があるか?)
アドナ®:効果なさそう
「さらし」や砂嚢:まともな論文すら無い Clin Exp Nephrol. 2018 Oct;22(5):1100-1107 日腎会誌 2020;62:45‒51 術後の超音波での観察と患者の状態をチェックしたほうがいい
#19.
これって禁忌ですか? 19 片腎 これはそれほど問題ないと考えている(腎摘出した人がいないから) 皮質が薄い 明確なエビデンスはない。糸球体の取れ高がすくない。CKDである事は多い 意思疎通ができない 呼吸を合わせればなんとかなる。(なんなら人工呼吸器ついている人でもしたことある) うつ伏せになれない 側臥位でできますよ、最近虎の門から論文でました。Clin Kidney J. 2026 Feb 12;19(4):sfag038.
#20.
そんな私でも諦めた症例 20 LVAD(左室補助人工心臓) PT-INR=2.0−2.5が必須→全麻下で開放腎生検してもらいました。 BMI=51 針が届かない、、、、座位ならできそうだったが、出血の対応が難しいと考え断念。
#21.
腎生検する前に考えて欲しいこと 21 具体例には、「少なくとも2年ステロイドを使う患者か?」は意識
一番駄目なこと:何も考えずにエンピリカルに治療
→無効で、ステロイドの副作用のある状態で透析導入など。
「この患者にどのような病理結果だったらどうするか?」をイメージ ※「一応」や「念のため」でする検査ではない 「この患者に腎生検の結果で治療方針が変わるか?」を常に意識する
#22.
Xの症例どうする? 22
#23.
色々な意見あってOK 23 方針:腎生検はOK
いつする?
仕事の都合は??(他にも家族の都合や、資格試験勉強中とか、有給どれだけあるか?
妊娠出産考えている?
こういう症例は、とりあえずARB+SGLT2阻害薬で治療しておくなんてあり。(腎生検しないと難病は通らないが、、、)
妊娠希望であったら、尿タンパクある状態だと腎機能低下のデメリットがあること話しておく。
SLEは見逃さない、RPGN、ネフローゼであれば治療優先と話しておくなど。
#24.
Q & A: SGLT2阻害薬の導入 24 Q: ①SGLT2を入れるタイミングについて
②SGLT2導入後の尿所見の経過の見方(専門医紹介するタイミング)
A:尿蛋白が出ている患者では、原則としてSGLT2阻害薬を考える流れになっています。
導入後はeGFRが10-15%さがることがあり、そこは許容範囲として患者さんにも説明しておくとよいです。
尿路感染・外陰部症状には注意し、おむつ使用中の女性などでは慎重に考えます。導入後も尿蛋白が十分減らない場合は、専門医紹介を考えてよいです。
#25.
【事前質問】 Q:無症候性尿路感染で検尿異常と考えて治療を先にして潜血、蛋白が消えるか確認することはありますか? Q & A : エンピリカル治療 A:尿路感染症ならば膀胱炎などとしてエンピリカルに治療することあります。腎炎に対しては、RPGNなどで無い限りエンピリカルにはしないです(免疫抑制は「行きはよいよい、帰りは怖い」です)
#26.
Q & A:MGRSの診断のコツ Q:MGRSの初期診断のコツ A:高齢者、特に60歳以上ではM蛋白の頻度が上がるため、ネフローゼや原因不明の腎障害では免疫電気泳動を確認したいです。κ/λ比なども有用ですが、開業医レベルではレセプト上難しいこともあり、専門医側で評価する形でもよいです。
MGRSでは軽鎖(light chain)、重鎖(Heavy Chain) 、アミロイドなど多様な病態があり、結果をどう扱うかは難しいため、疑った段階で専門医に相談するのが現実的です。
※ MGRS(Monoclonal Gammopathy of Renal Significance)
#27.
Q & A:電解質異常について Q:今回のテーマとは関係ないのですが、電解質異常を見たときに腎臓内科医に相談すべきタイミングなどはありますでしょうか。 A:中々ケリがつかないときなどに相談してみてはいかがでしょうか?(もちろん腎臓内科医の中にもそれほど電解質得意ではない、という人もいます)
#28.
Q & A:悩ましい尿タンパクの変化 Q:糖尿病歴が長いのでDM腎症っぽく見えるけど、蛋白尿の増え方が急だったり、血尿があったりすると、本当にそれだけで説明していいのか迷います A:その違和感は腎臓内科医側でも悩むポイントです。糖尿病性腎症に膜性腎症、IgA腎症、アミロイドーシスなどが合併していることもあります。普段の経過と比べて蛋白尿が急に増える、血尿が出るなど「いつもの糖尿病性腎症と違う」と感じたら、紹介してもらってよいです。腎生検しない限りは闇の中です。
#29.
Q & A:検尿異常+Crの上昇が早い症例 Q:今診ている患者ですが77歳女性、3年前から尿潜血+、半年前から尿潜血3+、Cr0.8→2.5、どんな疾患がかんがえられますか? A:一番考えやすいのはIgA腎症ですが、ANCA関連血管炎などもありますので精査した方が良いです。
このような症例で意外と多いのが、腎動脈狭窄で片腎になってしまうことです(尿赤血球は欠席や膀胱炎などのことがある)
#30.
Q & A:腹臥位がとれない Q:ADLが悪い時には伏臥位が取れないという理由で腎臓内科から腎生検を断られることが過去にあったのですが、そうでもないのでしょうか? A:ごにょごにょ・・・ですが。ここでの回答としてはADL不良だけで一律に腎生検不可とは考えておらず、寝たきりでも動かず安全にできると判断すれば腎生検を行うことはあります。
認知機能、体動、患者・家族への説明、得られるメリットとのバランスで判断します。
#31.
Q & A:BMI高値の腎生検 Q:症例3(BMI=51)のように大柄な人の場合、針が届くのか不安になり腎生検を積極的に勧められない、もしくは開放腎生検をできる施設を紹介する事が多いのですが、どの程度の肥満や体格まで経皮的腎生検を行いますか? A:体格だけで即断はしませんが、腎生検そのものができそうでも、出血時にIVRなどで対応できるかまで考えます。BMI 51程度の症例では、腎生検だけならできそうでも、出血時対応を考えて断念しました。開放腎生検は「絶対に止血してきてほしい」場合に泌尿器科へ依頼する選択肢ですが、単に開放なら安全というわけではない、と考えてほしいです。
#32.
Q & A:RAA系の適応 Q:ACEiやARB/SGLT2iを開始する判断基準となる尿検査や血液検査の値があれば知りたいです。 A:ACEi/ARBは、糖尿病がある患者、尿蛋白が出ている患者では基本的に入れた方がよいという考えです。心不全、とくにHFrEFでも適応になります。治療・腎予後を考えるうえでは尿蛋白が非常に重要で、まず尿蛋白を中心に見ていくのがよいです。
#33.
Q & A:糖尿病関連腎臓病が進行しやすい人 Q:糖尿病内科専攻医です。HbA1cが長年悪い人は数多くいますが、意外と腎機能はずっと大丈夫という方もいれば、提示いただいた症例のように一気に悪くなり、透析に至る症例もあると思います。ACRなども当然あるとは思いますが、先生のご経験でこういう方は悪くなりやすいなどありますでしょうか? A:経験上、血圧が十分にコントロールできない。喫煙者、肥満などの症例は進行し易いととらえています。
#34.
Q & A:紹介のタイミング Q:外来で尿蛋白±〜1+が続く併存症や肥満のない30代男性を紹介したら尿蛋白2+and/or尿潜血2+以上が2か月以上続いたら再紹介くださいと返ってきました。
待っていても大丈夫か不安です。先生はどのようにお考えでしょうか。 A:大体待てます。IgA腎症はそういうタイプの疾患です。高齢者であればANCA関連血管炎などを見逃さないこと、若年者であればSLEを見逃さないことが大事です。
IgA腎症であっても検尿の発見から治療介入が早いほど尿所見の寛解率がよいので、早期発見早期治療が大事です。