#4.
頭に⼊れておきたい⼩児の特殊性 1. 基本的に、診察には ⾮協⼒的 2. うまく ⾔葉で伝えることが苦⼿ 3. 余⼒が⼩さいので、時間経過で 急に悪化する 4. 精神的負荷が⾝体症状に繋がることも多い 5. 年齢によって、好発する病気が変わる 6. 年齢によって、正常な所⾒・検査結果が変わる
#5.
⼩児科は疾患が特殊︖ 確かに、年齢により鑑別疾患は変化する ただ、「⼩児にだけ特別」という鑑別疾患は多くはない 発熱 common disease ⾵邪・胃腸炎・熱中症 誤嚥性肺炎 胆管炎 肺炎 尿路感染症 蜂窩織炎 腹痛 common disease 便秘・⾍垂炎・胃腸炎 腸閉塞 ⾎栓症 膵炎 消化性潰瘍 IBD IBS 頭痛・胸痛 予防接種後 *IBD︓Inflammatory Bowel Disease(炎症性腸疾患) *IBS︓Irritable Bowel Syndrome(過敏性腸症候群) IgA⾎管炎 腸重積 common disease 機能性頭痛・機能性胸痛 ⼤動脈解離 ⼼筋梗塞 頭蓋内出⾎ 胸膜炎 髄膜炎 Precordial Catch 主に成⼈ 年齢問わず 主に⼩児
#6.
なぜこんな時間にこんな軽症で受診︕︖ 夜間救急に軽症の⼩児が受診することは少なくありません ただ、夜間受診の理由はほとんどが 養育者の不安・少しでも早く良くなってほしい愛情 ⽇中に仕事を抜けさせてくれない職場の無理解 受診して良いか葛藤しながら、頑張って受診しています ⼦どもにも家族にも、なるべく配慮していただければ幸いです その上で、#8000 や 受診の⽬安 などの情報提供をお願いします
#7.
もくじ 1. 前情報を把握する 2. 第⼀印象︓主観を意識するPAT法 3. 問診︓客観的な情報を冷静に⾒極める 4. 診察︓こどもの負担を意識する 5. ⾚信号と⻩⾊信号 ⼩ 児 ⼆ 次 救 命 処 置 法 ( PALS) の 体系的アプローチを意識して対応 するとわかりやすいかと思います
#8.
part.1 前情報を把握する 主訴 年齢 その他 性別・周囲の流⾏ 既往歴・家族歴 前情報であらかじめ 鑑別疾患 を絞ることが可能 また、 予想される正常像・診察内容 を何となく思い浮かべておく
#9.
例えば・・・ 腹痛 x 2歳 x 男児 便秘か胃腸炎がほとんどだが、 腸重積 と 急性陰嚢症 は確認しよう 正常は…独歩可、養育者に密着、少し喋られる、診察は嫌がりそう 診察は…まずは養育者に問診し、なるべく啼泣前に聴診から始めよう 腹痛 x 12歳 x ⼥児 便秘か胃腸炎がほとんどだが、 ⾍垂炎 と ⽉経痛 は頭に⼊れておこう 正常は…ほぼ成⼈と変わらないが、思春期で少し診察しにくそう 診察は…本⼈に痛みの性状などを確認、診察は看護師に付いてもらおう
#10.
part.2 第⼀印象︓主観を意識するPAT法 全⾝状態を ぱっと⾒(数秒)で判断する ⼩児評価のトライアングル PAT法 Pediatric Assessment Triangle 外観 呼吸 Appearance Breathing 意識・機嫌・啼泣 努⼒呼吸・喘鳴 循環/⽪膚⾊ Circulation to skin ⽪膚の蒼⽩・チアノーゼ
#11.
主観で感じる ぱっと⾒ 評価のABC Appearance 外観 なんとなく、ある程度は元気ありそう︖ 年齢から感じる許容内の反応はありそう︖ Breathing 呼吸 呼吸に違和感はある︖(呼吸仕事量の異常) 外からも明らかな喘鳴はない︖ 良い 評価 Circulation to skin 循環/⽪膚⾊ 明らかに顔や全⾝の⾊が悪かったりしない︖ 末梢冷感は強くない︖ 悪い 蘇⽣ ⼩ 児 科 コ % ル ‼
#12.
STEP UP (余裕があれば理解しておく) 少し慣れていれば… PATと並⾏して ⼀次評価 まではさっと確認 Airway (気道)︓気道の開通 Breathing (呼吸)︓呼吸数・呼吸パターン・呼吸⾳・SpO2 Circulation (循環)︓⼼拍数・⽪膚⾊・末梢冷感・CRT・脈の触知 *CRT︓Capillary Refilling Time(⽑細⾎管再充満時間) Disability (神経学的評価)︓意識(JCS・GCS・AVPU)・筋緊張 Exposure (全⾝観察)︓外表所⾒ *AVPU ・Alert (意識清明) ・Voice(声に反応) ・Pain(痛みに反応) ・Unresponsive(意識なし)
#13.
第⼀印象はスクリーニング PAT法のABC l” ing wel o d t o n “ (+⼀次評価のABCDE) 異常を感じる 少し気になる 早めに⼩児科コール 速やかに⼆次評価・処置へ 問題なさそう 気になる要素なし 落ち着いて 問診・診察へ進む どう⾒ても状態が良い⼩児であっても、このアプローチを意識しておく 遅すぎるコンサルトより、少し早すぎるコンサルトの⽅が助かります
#14.
part.3 問診︓客観的な情報を冷静に⾒極める ⼩児では、主な問診の対象は 成⼈の養育者 事実だけでなく、憶測・印象が⼊ることに注意 事実 すごい⾼熱で、ぐったりしてます︕ 平熱が35度なので、脳のダメージが⼼配です︕ 事実 嘔吐 2回のみ 排尿 2時間前 38.0度 元気 吐き続けていて、全く⽔分とれません︕ 尿も全然出ていないと思います 不安は共感しつつも、現実にはこの状態に介⼊は不要
#15.
問診時の注意 1. 主訴と主語 をはっきりさせる 受診に⾄った理由、患児の症状・養育者の不安を判別する 2. 医学⽤語 をなるべく避ける 喘鳴、意識障害、アッペ、頓服などの伝わりにくい⽤語を把握する 3. 具体的な数字 を確認する 嘔吐は●回、⾷事は普段の●割、尿は●時が最後など 4. 会話可能な年齢 であれば、 児にも直接問診 する 3-4歳以降は児にも問診する、●●を飲み込んだなどが発覚することも 5. 周囲の流⾏ などの事実も参考になる
#16.
問診時に泣かさないコツ︖ 元気のない⼦が泣くことは、仕⽅ないと理解する ⼤切なのは 児と養育者の 味⽅ である というスタンス 体調が悪い+⾒知らぬ場所 というだけで、こどもには不安が募るもの あえて好かれる必要はないが、安⼼感を与えられる⽴ちふるまいは意識したい ・あいさつをする ・視線をこどもに合わせる ・⾼圧的な話し⽅を避ける ・短時間で必要なことを確認する キャラクターに詳しいのは多少メリットは ありますが、全然必須ではありません
#17.
⺟⼦⼿帳は強い味⽅ ⺟⼦⼿帳から得られる情報 ・周産期歴 ・予防接種歴 ・体重や⾝⻑の推移 ・既往歴 ・養育者の情報 年齢、記載が少ない、検診受けていない、 タバコ臭い、汚れが⽬⽴つも情報の⼀つ 軽症な場合、必ずしも必要ではない情報もあるが 乳幼児の状況把握には極めて有⽤である
#18.
part.4 診察︓こどもの負担を意識する 嫌な診察をすれば、ほとんどのこどもが泣くもの 必要な所⾒を得るには、診察での負担の理解 が必要 こどもの負担 こどもの負担 ⼤ ⼩ 啼泣で評価困難 啼泣でも評価可能 ⿎膜 咽頭・疼痛部位 腹部診察・⼤泉⾨ 聴診・リンパ節 項部硬直など 結膜・⽪疹 網羅的な診察が望ましいが、うまく取れない所⾒を深追いする必要はない 負担の⼤きさと所⾒の必要性を考えて対応することが望ましい
#19.
例えば・・・ 発熱 x 2歳 x 男児 感冒の可能性が⾼く、有⽤性が⾼いのは咽頭所⾒ (極論) 元気+⾵邪症状があれば 網羅的な診察は必須ではない 咽頭は泣いてからでも良いので、視診 → 項部硬直 → 聴診 → 触診 かな ⼿技的に可能なら⿎膜を観察して、最後に咽頭所⾒を評価しよう 腹痛 x 5歳 x ⼥児 腹部所⾒は泣くと評価困難なので、優先度・必要性が⾼い 視診 → 聴診 → 腹部診察 → その他必要そうな部位の診察 かな 脱⽔の評価に⼝腔内の観察は有⽤なので、最後に咽頭も観察しよう
#20.
診察時に泣かさないコツ︖ ここでも、元気のない⼦が泣くことは、仕⽅ないと理解する ⼤切なのは 児と養育者に無理させない 診療スタイル 養育者も、 なるべく泣かせないようにしよう と考えています まずは、どの姿勢でも児の安⼼を優先して⼤丈夫だと伝えましょう ・まず、養育者を安⼼させる ・こどもが安⼼できる姿勢で診察 ・聴診は背中からでも⼤丈夫 ・威圧しないように視線を少し外す 抱っこで⽴ったまま 背中を向けたまま 医師が動けば良いだけ︕ ただ、もちろん泣くときは泣く
#21.
part.5 ⾚信号と⻩⾊信号 全⾝状態が良好そうでも、注意が必要なパターン 要注意︕早めに⼩児科コール ・終始泣き⽌まない → 異常事態︖ ・養育者の感じる強い違和感 ・スタッフの感じる違和感 ・基礎疾患のコントロール不良 (アレルギー疾患や糖尿病など) 注意︕検査の閾値を下げるべき ・診察前からの啼泣 ・乳児、特に⽣後 3 か⽉未満 ・予防接種を受けていない ・ 重症⼼⾝障害児 ・神経発達症児 ・養育困難な家庭環境
#22.
検査をする基準を意識する 第⼀印象 良い 悪い・蘇⽣ 検査の基準 問診 診察 検査・介⼊ 異常なし 帰宅 ⼩児科コール+⼆次評価+検査・処置 (必要に応じて処⽅) 介⼊の基準 ・発熱 3-4⽇⽬以降 ・経⼝摂取不良/尿量減少 ・⽣後3か⽉未満の発熱 ・診察で明らかな脱⽔ ・基礎疾患/既往症の悪化 ・喘息/クループ ・診察での異常所⾒ ・⼊院を考慮する状態 ・特異的な治療のため (インフルエンザや溶連菌) 家族の希望やなんとなくで過度な検査や介⼊を⾏うべきではない
#23.
実際の指導例 1歳 ⼥児 主訴︓発熱 お⼦さんの急な発熱でご⼼配だったかと思いますが、今のところ熱以外に 気になる様⼦はないので、⾃宅で様⼦をみていただいて良いと思います。 症状が続く場合は、明⽇かかりつけ医を受診して下さい。 なお、お⼦さんが熱を出すことは今後もあると思います。早めに救急を 受診しても、残念ながら早く良くなることはほとんどありません。むしろ、 救急に来ている他の患者さんから別のウイルスや細菌をもらってしまうか もしれませんし、逆にうつしてしまうこともあります。 受診するべきか悩ましい場合には、こども救急電話相談の#8000で相談 していただくか、「教えて︕ドクター」などのアプリに受診の⽬安などが 書かれていますので、参考にしていただけると良いかと思います。
#24.
Take Home Message • 診察でのこどもの負担を意識する ▷ 疼痛部位や喉の診察は後でやろう • 泣かれることを仕⽅ない ▷ ⼩児は 視診 と 直感 を意識しよう • 診察前からの啼泣は⻩信号 、注意して診察しよう
#25.
参考⽂献 • PALSプロバイダーマニュアル • 最新ガイドライン準拠 AHAガイドライン2015準拠 ⼩児科診断・治療指針 改定第2版