テキスト全文
急性期脳梗塞の診断と治療の概要
#2. ・脳梗塞の病型分類
発症機序による分類
臨床カテゴリーによる分類
・発症機序と画像所見
当院の2症例
・発症機序と病歴の特徴
・治療
・検査
・全身管理
#3. 脳梗塞の病型分類 脳梗塞を診療する際は発症機序、塞栓源、閉塞部位を考え、病態に合った治療を行う
脳梗塞の病型分類と発症機序
#4. 発症機序による分類 ①血栓性 ②塞栓性 ③血行力学性 アテローム硬化により狭小化した血管に血栓が形成され閉塞する→白色血栓(血小板血栓) アテローム硬化部にできた血栓や、心腔内血栓が飛んで血管が閉塞する→赤色血栓(凝固血栓) 脳動脈の狭窄がある状態に加えて、血圧低下、脱水などの全身の変化により虚血が生じる
#6. ①血栓性 大脳基底核、放線冠、視床、橋などの穿通枝領域に小さい梗塞巣(15mm未満)が生じる ラクナ梗塞
#7. ①血栓性 動脈硬化による狭窄は緩徐に進行し側副血行路が発達しやすいため皮質は保たれ梗塞巣は狭い アテローム血栓性脳梗塞
#8. ②塞栓性 側副血行路が発達しにくく、閉塞をきたした動脈支配領域全体が虚血に陥り皮質を含む大きな梗塞を起こす 心原性脳塞栓症
#9. 動脈原性塞栓症(A to A embolism)
血小板血栓が断片化し末梢へ流れ、皮質に小梗塞が多発する ②塞栓性 アテローム血栓性脳梗塞
#10. ③血行力学性 アテローム血栓性脳梗塞 分水嶺梗塞
ACA・MCA・PCAなどの灌流境界領域、穿通枝の終末領域に生じる
症例1の詳細と診断
#11. 症例1 80代女性
【現病歴】
構音障害が出現し救急搬送された
JCS1、NIHSS 2点
【既往歴】
高血圧、脂質異常症、糖尿病、脳梗塞
脳梗塞の既往がありクロピドグレル75mgを内服中
#14. 症例1 アテローム血栓性脳梗塞(A to A embolism) ・梗塞巣が多発している
・梗塞範囲が小さい
・動脈硬化のリスクがある
・口径不整を多数認める
狭窄した椎骨動脈、脳底動脈で作られた
血栓が断片化し小梗塞が多発した
#15. 症例1 80代女性
【現病歴】
意識レベル低下、構音障害、右共同偏視、左上下肢麻痺があり救急要請された
JCS100
【既往歴】
心房細動、うっ血性心不全、直腸癌
#18. 症例1 心原性脳塞栓症 ・梗塞範囲が広く皮質まで及んでいる
・主幹動脈が閉塞している
・梗塞範囲が前大脳動脈、中大脳動脈の支配領域に一致する
・心房細動がある
心腔内血栓が内頸動脈を閉塞し広範な脳梗塞をきたした
発症機序と症状の関係
#19. 発症機序と病歴の特徴 ※必ずしも上記のような病歴になるとは限らない
#20. 発症機序と症状 ※アテローム(血):血栓性機序のアテローム血栓性脳梗塞
※アテローム(塞):動脈原性塞栓症(A to A embolism)
急性期の治療法と注意点
#22. 急性期の治療 ※心原性脳塞栓症に抗血小板療法を行なっていないことが多い
※オザグレルナトリウムを含めた抗血小板薬2剤投与に関する有効性や安全性は
確かめられていない
入院中の検査と全身管理
#23. 入院中の検査 ・採血
D-ダイマー、BNP
動脈硬化のリスク評価(中性脂肪・LDLコレステロール・尿酸値・HbA1cなど)
TSH、T3、T4
・頸動脈エコー
・心エコー
ルーチンで行う
・ホルター心電図
心原性脳塞栓症を疑い心房細動未指摘の場合に追加で施行する
#25. 全身管理 ・血圧管理
急性期:降圧薬は基本使用しない。
慢性期:両側内頸動脈高度狭窄や主幹動脈閉塞がある例→140/90mmHg未満
上記所見なし+ラクナ梗塞、抗血栓薬内服中→ 130/80mmHg未満
・脂質管理
LDL<100mg/dLを目標としてスタチンを使用する
・血糖管理
糖尿病のコントロール(血糖126mg/dL未満)が推奨されている
・禁煙指導
急性期脳梗塞のTake Home Message
#26. Take Home Message ・画像所見、現病歴から発症機序、閉塞部位を推定する
・入院中に検査を一通り行い、診断を確定し病態にあった
治療をする
・再発予防には全身管理も重要
参考文献の紹介
#27. 参考文献 研修医のための内科診療ことはじめ
みんなの神経内科
内科学第12版
脳卒中ガイドライン2021
頭部 画像診断の勘ドコロ
臨床画像 2022 vol.38 No.3
画像診断 2020 vol.40 No.14
病気がみえるvol.7 脳・神経(第2版)