テキスト全文
出血傾向の症例と検査結果
#1. Essential & effortless 出血傾向 医仁会 武田総合病院
淡海医療センター
#2. 症例1: 80歳代男性 COPDで吸入しているが、その他の服薬なくADL自立
10日ほど前から四肢に内出血斑が多発するようになった。打撲なし
発熱なし 血便なし 次に何を確認する? 上肢の広範な内出血
#3. 急性の出血傾向のある80代男性 WBC 11600/μl 分画問題なし
Hb 11.3 g/dL (MCV 101 fl)
Plt 357000/μl
PT-INR 1.04
APTT 97.2秒
フィブリノーゲン 437 mg/dl
AT3活性 113%
Dダイマー 7.9 μg/ml 何を調べる?
急性出血傾向の鑑別診断
#6. 急性の出血傾向のある80代男性 APTT単独の延長
診断: 後天性血友病A
第8因子凝固活性 < 1.0% (78-165)
第8因子インヒビター 56.0 BU/ml (≦1.0)
高齢者の出血傾向と治療法
#7. 極論:高齢者の突然の出血傾向+APTT延長≒後天性血友病
#8. (内因系)バイパス療法ステロイド等による免役抑制と別に 障害部位を外して凝固因子を補充する
ノボセブン rFⅦa 活性型第7因子製剤
ファイバ aPCC 血漿由来活性型プロトロンビン製剤
Cf. ケイセントラ 4Factor PCC
ヒトトロンビン複合体製剤
FFPより迅速に拮抗
低栄養と出血傾向の関連
#9. 症例2: 90歳代女性 重度の認知症で寝たきり・発語なし
ここ数ヶ月経口摂取も極端に低下しており、最小限の末梢点滴でお看取りの予定となっている
数日前から急に口腔粘膜や体幹(前胸部など)に著明な内出血が多発(打撲歴はない) 一部改変・創作あり
#10. 低栄養の認知症高齢女性口腔内出血++ 歯もボロボロ 血小板数・PT・APTTは異常なし → どうする?
#11.
アスコルビン酸濃度: 測定感度以下
壊血病=ビタミンC欠乏
ヒドロキシプロリンの合成低下から組織間をつなぐコラ-ゲンや歯の象牙質、骨の間充組織
の生成保持に障害を受ける。さらに微小血管の損傷につながり出血の原因となる。
後天性血友病とその診断
#12. 【症例報告】
22歳⼥性。1年前から軽症全⾝性エリテマトーデスの既往あり。全⾝倦怠感や疲労感などの全⾝症状がメイン。
⾝体症状では、両腕の外側および下腿前⾯に”Corkscrew”様の縮れ⽑を認めた。⽩⾝⾁および加⼯⾷品を主体とする⾷事が主だった。 Cleve Clin J Med. 2015 Apr;82(4)
#13. 症例3. 83歳 認知症男性 重症大動脈弁狭窄, 心不全などで循環器フォロー中
進行性の貧血で上部消化管内視鏡施行
十二指腸などに多発性の血管拡張を認めた
血小板、PT/APTTは正常
なんでしょう?
#14. 後天性von Willebrand syndrome
VWFが減少 or 高分子量VWFが減少 VWマルチマー解析で鑑別
① VWFに対する自己抗体の産生
リンパ増殖性疾患や自己免疫疾患
② 高分子量VWFマルチマーの減少
本態性血小板血症や真性多血症
(血小板数の著増に伴うvWF消費・低下)
③ ずり応力亢進によるADAMTS13のVWF分解促進 → 次頁
弁膜症 、人工心臓
大動脈弁狭窄 (Hyde症候群)
④ VWF因子の産生並びに分泌障害
甲状腺機能低下症
抗生剤によるビタミンK欠乏
#16. 症例4. 69歳 糖尿病男性 化膿性脊椎炎、腎膿瘍で入院
血液培養からMSSA検出
CEZで保存的治療中だが治療抵抗性
経口摂取不良で低栄養進行(Alb 1.3 g/dL)
ルーチンの採血で以下の異常を認めた
PT-INR 8.66 APTT 77.7秒
出血傾向なし 血小板減少なし
どうする?
#17. 抗生剤起因性ビタミンK欠乏 CMZのようなN-methyl tetrazole thiol基(NMTT基)を含むLMOX, CPZ, CMX, CTT, CMDなどで多く起きるが、CEZでも報告がある
診断のための検査は?
→ PIVKAⅡ 24806 mAU/ml
抗生剤変更、VitK投与で直ちに改善
出血傾向の評価と分類
#19. 機序による分類 1. 皮膚粘膜・血管の脆弱性 (忘れられがち!)
ステロイド・クッシング症候群、高齢(老人性紫斑)、壊血病(VitC)
アミロイド-シス
Osler weber rendu(遺伝性出血性末梢血管拡張:HHT)
エーラス・ダンロス、マルファン症候群、 IgA血管炎(HSP)
2. 一次止血: 血小板の機能的・量的低下
産生低下・消費・破壊: AA/MDS, ITP, HIT, TTP/HUS, DIC
薬剤(可逆性・不可逆性)
3. 二次止血: 凝固系 PT, APTTに変化がでる事が多い
血友病、vWD、後天性血友病
#20. 評価:問診・身体所見 出血の家族歴
→ 血友病、vWD
家族歴+患者における顔面,口唇,口腔または鼻粘膜,および指趾先端の毛細血管拡張
→ 遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT=OWR)
下肢の触知可能紫斑
→ アレルギー性紫斑病(HSP)
皮膚および粘膜など表層部位からの出血
→ 血小板の量的もしくは質的な障害
または血管障害(例,アミロイドーシス)
深部組織への出血(関節出血,筋肉血腫,後腹膜出血)
→ 凝固障害
血小板と凝固因子の検査
#21. 検査の第1歩 血小板: 血算 末梢血塗沫
凝固: PT, APTT
出血時間: 特異性に欠けるため施行されない
血算、PT, APTTが(ほぼ)正常であれば
vWD, HHT , 13因子欠損
などの稀なものも考えられる
#22. 血小板減少症 (詳細は別に) 凝集: 混和不十分など
EDTA: EDTA依存性偽性血小板減少症
まず確認と再検査 (キャップ裏で凝集のことも)
入院患者(薬剤性・HIT) vs. 外来患者(ITP)
IPF 幼若(網)血小板比率
出血傾向の治療とポイント
#25. 出血傾向の治療 (略) 原因治療
輸血 大量出血での輸血
トランサミン
ワーファリンのビタミンK拮抗
凝固因子補充 PCC ケイセントラ
#26. Take home points 出血傾向を見たら
まず出血部位と性状を確認
皮膚、粘膜、血管の問題はないか?
血小板(IPF) 、 PT / APTTを測定
凝固系延長パターンのいずれかを判断
(PT, APTT延長の組み合わせ)