テキスト全文
発熱と不明熱の基本概念
#1. Essential & effortless発熱と不明熱 2022/5/11 淡海医療センター
#2. ダメ!ゼッタイ?薬物乱用 耐性菌
コスト
薬剤副作用
診断エラー
実際は状態によるのですが
#3. 62歳男性 嘱託勤務 入院前日から節々の痛み、悪寒と嘔吐あり。改善せず高熱がでたため救急受診
周囲の人に発熱など異常なし (4月)
上気道・下気道症状なし
腹痛や下痢なし
嘔吐は一回のみで持続的な嘔気なし
熱のせいか、尿は少し出づらいようにも思う
62歳男性の症例と評価
#4. 既往:20年前に膵がんで尾部切除
以来DMでインスリン加療(HbA1c 6台)
高血圧あり
飲酒:ビール500ml/日以上
喫煙なし
#5. 108/64mmHg, p 118/min, BT 38.6℃
身体所見上、あきらかな異常なし
WBC 24890, CRP 13.5, BS 217mg/dl
尿糖 4+, 尿ケトン 2+, 尿沈査異常なし
インフルエンザ迅速検査:陰性 *Covid pandemic前
胸部レントゲン 異常なし
胸腹部CTに大きな問題なし
#6. What to do next ?62歳 元気な糖尿病男性熱源の特定できない急性発熱 どう評価する?
Dispositionは?
不明熱の定義と重要性
#7. 発熱 視床下部の体温調節中枢機能の変調から,熱の産生と放散のバランスが乱れ,平常値よりも体温が上昇を示す現象をいう。
高体温とは区別が必要
#8. 不明熱 FUO Petersdorf らによる古典的な不明熱の定義
「38.3 度以上の発熱が何度か認められる状態が 3 週間を超えて続き,1 週間の入院精査でも原因が不明のもの」
感染症、悪性腫瘍、膠原病
現場でのいわゆる‘不明熱’は真の不明熱ではない‥
どうして3週間以上なの?2週間ではだめ?
古典的ってどういうこと?
#9. FUOヘテロな概念であり、時代とともに変わる
発熱の大原則とアプローチ
#11. 発熱の大原則 ID or not ID × focus
#12. 熱の大原則 「 感染か否か × focus 」 すべての診断は 「原因×解剖・臓器」
発熱・不明熱でも同じコト
急性発熱では、感染症の可能性が高い
3週間以上なら、非感染症の可能性が高い
6ヶ月以上ならさらに感染症らしくない
特に治療可能な細菌感染なら住処があるはず
= focusの検索を徹底する
#13. 「不明熱 → 感染症・悪性腫瘍・膠原病」の一歩先
#14. 発熱・不明熱 アプローチ 1ID 感染症
細胞外(細菌) Top to bottom approach ‘primary survey’
問診と診察で、focusを頭から足までスキャン
そもそも全身をチェックしないで“不明熱”というのはやめよう
細胞内 (Virus, 粟粒結核, Mycoplasma, Rickettsia etc )
focusがわかりにくい、あるいは全身。 検査でも捕まえにくい。
→ 病歴聴取によるリスク評価が重要な武器 (後述)
感染Focusの検索とリスク評価
#15. Focus検索のコツ 盲点‘Secondary survey’ 深頚部・血管内・骨関節・後腹膜・骨盤
1. 特に高齢者で見落とされがちな部位*
2. CTのカバー範囲外
* 口腔周囲
* 骨盤周囲: 生殖器、褥瘡
* 四肢: 皮膚・ 関節 寝たきりおばあちゃんの靴下をめくると蜂窩織炎
#16. 70歳台 脊損で寝たきり 発熱で救急搬送
胸部レントゲン、尿検査に問題なし
両側の大腿後面に発赤と熱感ありと報告あり
蜂窩織炎?として入院
翌日臀部を見ると‥
(筋膜炎ではなかったですが‥)
例えばこんなのも
#17. 感染Focusの検索血液培養から逆算することも S.aureus
S.dysagalactiae
Bacteroides
Bacillus cereus
Coxiella burnetii
Strep. gallolyticus
IE, 皮膚, 骨髄
蜂窩織炎
腹腔内
カテーテル感染
IE
IE+大腸癌 Focusを探し切れていない可能性も踏まえて、とれる培養はとっておく
#18. 病歴:リスク評価 環境: 市中発生 vs. 院内発生
解剖と免疫状態:
既往歴、 薬歴(ワクチン含む)、
デバイス、 手術歴
Sick contact: 発熱や急病の人が周囲にいたか TB contact: 結核またはその疑い例が周囲にいたか Sexual contact: 性行為の有無
Travel history: 海外渡航歴 travelers‘ fever Animal contact: 動物の接触歴
非感染症による発熱のアプローチ
#19. 免疫のインスタント評価
解剖学的異常 (手術含む)
好中球減少
細胞性免疫不全
液性免疫不全
#20. 好中球減少性発熱Febrile neutropenia / Neutoropenic fever 意識して探すべきフォーカス:AIUEOS
Anal
Indwelling catheter
Upper GI
Eye
Oral
Skin, sinus 皮膚は小病変でも生検や培養を
#21. 感染症の原則 症候群
focus・source 薬剤師 細菌検査技師 医師
#22. 発熱・不明熱 アプローチ2Non ID 非感染症 まず薬剤 !!
Malignancy;
熱が出やすい悪性腫瘍: 固形癌では頻度少ない
・ 血液悪性腫瘍
悪性リンパ腫(IVL etc.), 白血病
・ RCC: Internist tumorの別名
・ HCC など
メモ:
多発性骨髄腫では発熱は少ない
No fever,
No splenomegaly
No ALP elevation
特別な発熱の状況と評価
#23. 発熱・不明熱 アプローチ2Non ID 非感染症 Non infectious inflammatory disorder;
Rheumatologic, vasculitis, and granulomatous disease
1. 発熱しやすい疾患 vs. 発熱しにくい疾患
○: SLE, AOSD, 血管炎, 結晶性関節炎
×: 関節リウマチ, SjS, 強皮症
2. 小血管炎(ANCA etc.)はどこかにfocus/臓器障害がある
3. 大~中血管炎の診断が難しい(PAN, GCA, Takayasu)
4. 激レア疾患もありますけど‥(家族性地中海熱 etc.)
RA単独では発熱少ない
末梢関節痛+発熱でRAだけということはない
血管炎や感染の合併を疑う
#24. 発熱・不明熱 To do lists(案) 全身のROS, 診察 focus探索
患者背景, 免疫状態などのリスク評価
発熱以外の徴候はないか? 皮疹・リンパ節など
薬剤の見直し・中断
ルーチン検査
Pan-culture 特にB/C×2 (抗生剤なしで)
CBC 分画 , Chemistry (LDH), CRP, ESR, U/A
CXP, 胸腹部CT(造影)
ANA, フェリチン 〈 sIL2R, TFTs, ANCA, IGRA〉 RF/ACPA
[注意すること]
生検すべき組織はないか? Tissue is issue
詐熱, VB12欠乏, 肺塞栓, DVT,内分泌(甲状腺や副腎不全),
大動脈解離, 血腫の吸収熱, 無汗症など稀な疾患
#25. ここまで評価してなにもなければ 予後良好のはずなので、バイタルに注意して我慢 「何らかのウイルスの可能性が高く、自然治癒が期待できます。 ただし発熱自体は2-3週間位は続くかもしれません」
#26. Flu like syndrome / Viral syndrome/Influenza like illness 高熱のみで(フォーカスに乏しい)急性熱性症候群
Covid19, インフルエンザ
腎盂腎炎, 前立腺炎
高齢者では無症候性細菌尿も多く、症状・身体所見にも乏しいためわかり
にくい。悪寒戦慄や嘔吐は菌血症を示唆する。
キャンピロバクタ―腸炎
若年者で悪寒戦慄を伴う高熱 + 翌日に下痢
Pontiac fever レジオネラ
ODTS 有機粉塵による過敏性肺臓炎の亜型
TSS 発熱・筋痛 +結膜炎、下痢、紅斑、ショック
入院患者での発熱リスト
#27. 特別な発熱の状況院内発症の発熱を中心に(当然、医療行為と関連が多い)発熱と皮疹発熱とリンパ節腫脹海外旅行帰りの発熱:等は別の機会に
#28. 1-1. 入院患者での発熱リスト 院内発熱の5~7D
Drug 入院患者の発熱の5%前後(好酸球・比較的徐脈・皮疹)
Difficile
De痛風
Device
Decubitus ulcer 褥瘡
DVT Dressler (心筋梗塞後)
Debris (胆嚢炎)やdeep abscessなど 入院後48時間以降の発熱
自分なりのチェックリストを用意しておく
#29. 1-2. 入院患者での発熱リスト 院外発症よりも感染症が多い
薬剤熱
DVT/PE
Catheter感染(末梢静脈炎、転移性のIEにも注意)
PMC (偽膜性腸炎、CD associated enterocolitis)
血腫(後腹膜)
肺炎(誤嚥性肺炎、VAP)
SSI/ postcardiotomy
複雑性尿路感染
褥創(からの骨髄炎)
副鼻腔炎・中耳炎(挿管されている患者)
中枢性の熱(高体温)
無石性胆嚢炎(TPNの患者)
内分泌(thyroid storm/ adrenal insufficiency)
#30. 1-3. 入院患者での発熱リスト ~ ICU Infected intravascular catheter
Sinusitis or otitis media (in pts with intranasal devices)
Acalculous cholecystitis
Drug fever
PE / DVT
Hematoma
Central fever (in pts with head trauma)
CD colitis
Postcardiotomy syndrome
Secondary infection by resistant organism / fungal infection
CRPの上昇しない発熱の考察
#31. 2. 抗生剤開始後も遷延する発熱 そもそも感染症ではない (薬剤性など)
【さらに4つのDを確認】
薬剤が届かない delivery
血流不全/臓器
耐性やスペクトラム外 drug resistance
膿瘍形成・外科的介入が必要 debris/drainage
薬剤の量が足りない dosage
#32. 症例: 20歳代男性 交通事故による硬膜下血腫・SAHで緊急搬送
緊急血腫除去手術行うが、以降混迷状態続く
入院2週後から40℃を超える高熱が継続、メロペネムに反応なし
肺炎なし 尿路感染なし 下痢なし
末梢カテーテル発赤なし
WBC 5200, CRP 0.1 血液培養は複数回陰性
抗けいれん薬を中止するが、解熱せず
カルバペネム無効、炎症反応の上昇しない院内発熱
#33. 3. CRPの上昇しない発熱/高体温 髄膜炎/髄膜脳炎 (症例はMRSAによる髄膜脳室炎)
SLE
ウイルス感染症
末期肝不全
薬剤性
副腎不全、甲状腺機能亢進症
VB12欠乏やVB12補充開始後の発熱
熱中症(高体温)
視床熱などの中枢性発熱
被包化された膿瘍
うつ熱: 無汗症・コリン性蕁麻疹 抗コリン薬
詐熱
抗IL6抗体投与患者
#34. メモ: CRPが上昇しない炎症性疾患 基本的には熱性疾患ではない疾患
・ Sjogren
・ IgG4RD (炎症性動脈瘤は別)
・ 乾癬性関節炎(40%程度しか上がらない)
・ Scleroderma
・ HES (CSSとの鑑別点)
発熱の初動と重要ポイント
#37. OPSI・侵襲性肺炎球菌感染症 膵がんの手術時に脾臓摘出を受けていた!
脾臓摘出後重症(肺炎球菌)感染症
Overwhelming post-splenectomy infections
: Post Splenectomy Sepsis (PSS)
薬・手術・処置歴のある患者では、まずそこから!
#38. 免疫の評価(改変再掲)
解剖学的異常 (手術含む)
好中球減少
液性免疫不全:免疫グロブリン
細胞性免疫不全:T細胞
無脾・脾機能低下
補体低下・欠損
#39. Take home points ‘発熱の初動’ 感染症か? 非感染症か?
Top to bottomでfocusさがし
免疫・解剖と曝露のリスク評価
血液培養 + Pan-culture
状態次第では広域抗生剤