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リンパ節腫脹へのアプローチ

投稿者プロフィール
島田利彦

医仁会武田総合病院

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投稿した先生からのメッセージ

リンパ節腫脹の患者さんをみたときの評価戦略を身につける。初期研修医向け

概要

リンパ節腫脹を見たときの最初の考え方、動き方について。

本スライドの対象者

研修医/専攻医

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テキスト全文

リンパ節腫脹へのアプローチと症例紹介

#1.

Essential & effortless リンパ節腫脹へのアプローチ 医仁会 武田総合病院 淡海医療センター

#2.

  72歳男性   高血圧以外に著患なし 数ヶ月前から右鼠径部にしこりを触れるようになり、少し大きくなっているような気がしたために内科受診 疼痛なし。最初は入浴中に偶然気づいた 他に何を確認する?

#3.

72歳男性   発熱や体重減少などの全身症状なし 排尿・排便に著変なし 鼠径部触診  :水平方向に2つ 2cm, 2.5cm大のリンパ節を触知   弾性硬で圧痛なし はっきりした癒着はない 骨盤部診察異常なし  爪白癬あり 採血:特記事項なし  CRP上昇なし 腹部~骨盤CT:リンパ節腫大を除いて特記事項なし   この症例をどのようにマネージメントするか?

リンパ節腫脹の評価と戦略

#4.

リンパ節腫脹に対する2大戦略Biopsy   +   Generalized / Localized  1. 生検を必要とするか?(早急に)       Observation over time は可能?       ≒ 悪性腫瘍のRed flag signはない?               侵襲や美容面から、いったん経過をみる余裕があるかどうか  2. 全身性か、局所性か

#5.

1. 悪性の可能性をどう評価するか?「硬さ、癒着・可動性、圧痛…」 の一歩先 

#6.

正常・良性リンパ節 頸部や腋窩のリンパ節は直径1cm、鼠径リンパ節は直径1.5cm(特に素足で生活している人)までは正常範囲。滑車上リンパ節は0.5cm以下が正常(触れれば異常) 扁平でなく球形の場合、2cm以上の場合には異常の可能性が高い 2~4週間以内に消退するものは感染症、1年以上の経過は非特異的な原因の場合が多い(悪性は少ない)。 過去にその近傍で感染症を起こしたことがある場合、リンパ節を触知しやすい。 小児では成人に比較してリンパ節を触知することが多い(2-10歳でリンパ節が最大)

悪性リンパ節腫脹のリスク評価と疾患

#7.

悪性かどうか 加齢に伴い頻度が上昇(50歳以上では良性は40%程度、30歳未満では80%良性)。男性もリスク 鎖骨上リンパ節、複数のリンパ節腫脹はリスク大 固形癌で全身性リンパ節転移は稀(全身性転移の多くは血液悪性腫瘍) Am Fam Physician 2002;66:2103-10

#8.

Z score 生検を行うか?= 5 (X1) – 5 (X2) + 4 (X3) + 4 (X4) + 3 (X5) + 2 (X6) - 6     1点以上で生検施行が推奨される           (掻痒感はホジキン病を想定、特異度はあまり良くない)   合計 - 6 = Z score  Medicine(Baltimore).2000

#9.

2-1. 全身性リンパ節腫脹

#10.

C →  Cancers:  Hematologic malignancies: Hodgkin‘s disease, Non-Hodgkin’s lymphoma, Leukemia   Metastatic: Breast tumor, Lung, Kidney etc. H →  Hypersensitivity syndromes:  Serum sickness, Drugs, Vaccine I →   Infections:   Viral (EBV, CMV, HIV), Bacterial (TB), Fungal, Protozoan(Toxoplasmosis), Rickettsia C →  Connective Tissue disorders: SLE, RA, Dermatomyositis A →  Atypical lymphoproliferative disorders: Castleman’s Disease, Wegener G →  Granulomatous:     Histoplasmosis, Mycobacteria, Cryptococcus, Berylliosis, Cat scratch fever O → Others: Kikuchi lymphadenatis, Rosai-Dorfman disease CHICAGO    全身性リンパ節腫脹をきたす疾患 Am Fam Physician. 2001;63(1):138-140より改変

全身性リンパ節腫脹の原因と評価方法

#11.

全身性リンパ節腫脹をきたす疾患

#12.

全身性リンパ節腫脹をきたす疾患 一覧表は臨床の問題解決 に使いにくい

#13.

全身性リンパ節腫脹高頻度、重篤、治療可能な疾患から考える リンパ節腫大の評価: 病歴 (随伴症状とリスク評価)    リンパ節腫大の分布、脾腫や扁桃腫大 CBC, 好酸球分画, CRP, LDH, ウイルス抗体価, sIL2R, ANA, IGRA, STS/TPHA

若年男性のリンパ節腫脹の症例分析

#14.

Question break20歳代前半 男性  【現病歴】 X月上旬、4㎝大の両側鼠径リンパ節腫脹に気が付き2週間ほど様子をみていた。しかし大きさに改善なく、前医を受診した際に頸部のリンパ節腫脹も指摘されたため同月24日に紹介受診。 発熱や盗汗などの全身症状、陰茎や睾丸の変形、腫脹、疼痛はないとのこと 今月上旬に一過性に鼻水が出ていた。熱、咳はなし 【既往歴】 アトピー性皮膚炎 【内服】 レボセチリジン5㎎ 以前から内服 【アレルギー】 抗生剤でアナフィラキシー 【生活】 一人暮らしの学生   喫煙なし      sexual contactなし 動物接触なし 海外渡航なし

#15.

Vital sign 特記事項なし 右頸部  2㎝大のリンパ節触知 圧痛なし、可動性良好 右鎖骨上 2㎝程のリンパ節腫脹 滑車上リンパ節 触知せず そけい部      扁平で軟らかい4㎝超えるリンパ節を数個縦方向に触知    圧痛なし、可動性良好 (アトピー皮膚炎) 全身苔癬化伴い発赤++  掻痒感強く掻爬痕多数

#16.

WBC 8500  NEUT% H 75.4  LYMPH% L 9.0  MONO% 6.7  EO% H 7.6  BASO% 1.3 RBC 477 Hb 14.1 MCV 89 PLT 30.9 CRP   0.07 TP 7.3 T.BiL 0.4 AST 22 ALT 9 ALP 75 LDH P 564 γ-GTP 11 AMY 53 T-Chol 136 TG 55 BUN 14.6 CRE 0.72 UA 5.1 Na 138 K 3.7 Cl 105 Ca 9.1 血糖 88 ALB 4.0

皮膚病性リンパ節腫脹の理解

#17.

フェリチン  37 IgG H 1783 IgA 182 IgM 68 IgG4 H 322.0 HIV-1/2抗体 0.1 IL2レセプター   H 822 抗核抗体 <40

#18.

若年男性の多発リンパ節腫脹 どう考える?

#19.

「全身性で大きく圧痛もない」生検してもよいリンパ節の性状だが‥患者さんと相談し生検はpendingアトピー性皮膚炎の治療を強化さらにデュピルマブ(IL4/13受容体抗体)開始皮膚所見の改善とともにリンパ節縮小 診断は?

#20.

皮膚病性リンパ節腫脹Dermatopathic lymphadenopathy (慢性)皮膚疾患からリンパ節腫脹をきたす アトピー性皮膚炎 悪性腫瘍(菌状息肉症, Sezary, HTLV)でも

局所性リンパ節腫脹の解剖と評価

#21.

2-2. 局所性リンパ節腫脹 まず解剖を考える 「どこからのリンパ流を受けているか?」

#22.

局所性リンパ節腫脹 シンプルにすると

#23.

Site predilection 部位と比較的特異的につながるモノ

#24.

Am Fam Physician 2002 1. 頸部リンパ節腫脹

部位別リンパ節腫脹の病態と疾患

#25.

頭頸部リンパ節腫脹 比較的部位と関連のある病態・疾患   

#26.

菊池藤本病=亜急性壊死性リンパ節炎のillness script本邦ではcommon diseaseかも‥ 遷延性高熱と頸部リンパ節腫脹 20代 女性>男性 リンパ節腫脹の部位、個数→片側頸部が70%以上         ‘片側頸部+数珠状’ 白血球減少気味    CRPも軽度上昇~陰性にとどまる ALPも低下傾向 [鑑別] SLEや悪性リンパ腫

#27.

2. 鎖骨上リンパ節腫脹 鎖骨上リンパ節は深吸気させながらふれると触れやすい 左鎖骨上リンパ節は胸腔内、および腹部からのリンパの流れをうけるため、触知した際は悪性腫瘍の可能性が高い(咽頭炎単独で左鎖骨上リンパ節腫脹はない)

#28.

3. 上肢のリンパ節 ・ワクチン接種後(Covid) ・腋毛剃毛処理 ・大胸筋に沿ったリンパ節腫脹 では乳癌の可能性 Am Fam Physician 2002 一部追加

深部リンパ節腫脹のリスクと原因

#29.

滑車上リンパ節 (Journal of Ultrasound (2010) 13, 168-174)  上腕骨滑車から4-5cm上方に位置し, 主に第3-5指, 手からのリンパ流を受ける. 通常 1-2個である事が多く, 4個は稀. 径0.5cm以上で腫大と判断する.  指先, 手の局所の問題が無い場合には全身性のリンパ節腫大を反映している (=手指に問題がなくて、滑車上が腫れると言うことは全部腫れているかも…)  HIV感染症の診断において0.5cm以上で臨床的意義が高くなる (感度84%、特異度81%、陽性尤度比4.5、陰性尤度比0.2)  その他に 猫引っ掻き病, Leprosy, Leishmaniasis, TB, メラノーマ, サルコイド, RA, リンパ腫, 木村病など   (J Infect Dev Ctries 2011; 5(11):820-824.)

#30.

4.  鼠径・大腿のリンパ節腫脹水平(悪性)か、 垂直(下腿感染)か Am Fam Physician 2002

#31.

深部リンパ節の腫脹: 腹腔内・傍大動脈リンパ節腫脹  悪性疾患のリスクが大  消化管悪性腫瘍、悪性リンパ腫

#32.

5.  薬剤、 その他の稀な原因 リンパ節腫大を来しうる薬剤  アロプリノール,   カルバマゼピン, フェニトイン,  ST合剤    アテノロール,  カプトプリル, 金製剤,  ヒドララジン, ペニシリン   Primidone,  Pyrimethamine,  Quinidine,  Sulindac 皮疹や肝機能障害、好酸球上昇を伴うDIHS, DRESSなどの表現型をとることも

薬剤によるリンパ節腫脹と症例のまとめ

#33.

5.  薬剤、 その他の稀な原因 稀なリンパ節腫大の原因 (S H A K )         American Family Physician 2002    Sarcoidosis  Silicosis/berylliosis  Storage disease (Gaucher病, Niemann-pick, Fabry, Tangier病)  Hyperthyrodism  Histiocytosis X  Hypertriglyceridemia  Angiofollicular lymph node hyperplasia; Castleman’s disease  Angioimmunoblastic lymphadenopathy  Kawasaki病  Kikuchi’s lymphadenitis(菊池藤本病)     本邦ではよく見る  Kimura’s disease

#34.

最初の72歳の症例では 患者と相談のうえでリンパ節生検を施行 ここで「扁平上皮癌」の診断を得た 原発は明らかでなかったが原発不明扁平上皮癌として化学療法と放射線療法を計画 初診から2ヶ月ほどして陰茎亀頭部に隆起性病変が出現してきた 最終診断:    「原発不明癌で発症した陰茎癌」 Z scoreは低い

#35.

おまけ: 急に左腋が腫れてきた30歳代男性 何を訊く?  堺市立総合医療センター 浅川 麻里先生 ちなみにCovidワクチンはうっていません(pandemic 前です…)

#36.

“子ネコに咬まれました”Cat-scratch disease

#37.

Take home points   生検:        解剖: 原因については、随伴症状とリスク評価から           Watchful waitできるか        vs.  リンパ節生検 か(急いで) 局所性 regional/localized   源流はどこ?      vs. 全身性 generalized

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