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咽頭痛へのアプローチと症例紹介
#1. Essential & effortless ‘風邪!’ その前に咽頭痛へのアプローチ 2022/05/25 淡海医療センター
#2. 症例1. 51歳男性 発熱、咽頭痛
喉の痛みが昨日から出現。喀痰は普段からあり、変化はなし。安静にしていたが、咽頭痛が強く、鼻閉に加えて発熱もあり救急要請救急隊によると、脳梗塞の既往有り
搬送後救急車から下車し、救急外来まで徒歩で入室
内服薬:
プラビックス、マニジピン、ニルバジピン、ベザフィブラート、セタプリル
喫煙歴:昨日まで20本以上吸っていた
#3. 身体所見
BT 39.1℃, BP 150/118mmHg, HR 100/min SpO2 96%(RA), RR 20/min
会話可能、シックではない咽頭: 咽頭やや発赤、 扁桃腫脹なし
頸部: 圧痛なし胸部: 呼吸音清腹部: 平坦、軟、圧痛なし、反跳痛無し
血液検査結果と診断の流れ
#4. WBC 18300
RBC 606×104
Hb 18.3
Hct 55.3
MCV 91.3
Plt 22.1×104
CRP mg/dl 4.43 H
TP g/dl 7.4
ALB g/dl 4.6
T-BIL mg/dl 0.7
D-BIL mg/dl 0.3
AST IU/l 18
ALT IU/l 27
ALP IU/l 178
LD IU/L 277 H
γ-GTP IU/L 113 H
CHE IU/L 352
T-CHO mg/dl 215
LDL-C mg/dl 127
Na mEq/l 140
K mEq/l 4.0
Ca mg/dl 10.1
Cl mEq/l 105
BUN mg/dl 10.5
UA mg/dl 4.4
CRE mg/dl 0.78
#6. 上記で脳外科クリニックから耳鼻科に紹介あり。
ファイバーでも咽頭後壁に腫脹あり、外科的排膿試みられたが、明らかな膿は認められなかったため内科に対診。
意識は清明で元気。 症例2. 生来健康な38歳男性 近医の脳神経外科開業医から当院耳鼻科へ紹介
『 昨日昼頃から頸部痛が強くなり、夜間救急病院を受診し鎮痛剤を処方されましたが改善せず、今朝当院を受診されました。左胸鎖乳突筋付近に圧痛があり、頚部MRIを撮影しましたところ、後咽頭間隙に膿瘍を疑う所見を認めました。脊椎・脊髄には異常所見を認めません。お忙しいところ申し訳ありませんが、貴科的な精査加療のほどよろしくお願いします 』
咽頭痛・頸部痛の評価と管理
#8. その他の病歴 昨日はロキソニンとミオナールを処方されたが効果なし
のどが痛くてツバも飲めない
嗄声なし
発熱、鼻汁、咳、痰、呼吸困難なし
普段からよく首をグキグキならしているが、他に事故等の外傷歴なし どうする?
#10. 「のどが痛い」一番に意識すべきことは? Airway assessment 上気道閉塞のリスク評価
→ Airway managementへ
全体的な印象・全身状態
疼痛部位の詳細な診察
特別に考慮すべき病歴・既往はないか
そして原因・鑑別診断だが‥
咽頭痛の鑑別診断と注意点
#12. 2つの軸 1. Must rule out / Worst case scenario
除外すべき最悪のケースを除外
2. Common / probable
風邪症候群、咽頭炎 (ウイルス性上気道炎)
#13. Killer sore throat 頻度は少なめ
#14. まずRed flag signを確認
開口障害(牙関緊急)
呼吸困難・喘鳴(stridor)
流唾や嚥下困難
発語困難や嗄声
Hot potato voice (扁桃周囲膿瘍)
バイタルサインの崩れ(SpO2など)
#15. Strep throatCentor criteria 治療可能な溶連菌性扁桃腺炎のprediction rule
0-1点:迅速検査なし 抗菌薬処方なし
2-3点:迅速検査(Se80-90% ,Sp 90%-)で陽性なら抗菌薬
4点(50%): 抗菌薬処方(検査しても良い):AMPC 1500mg*
その他の咽頭痛の原因と症例
#16. ここまでみてから‘風邪(ウイルス性上気道炎)かな?’と考える
#17. その他の咽頭痛の原因 Infectious Mononucleosis (ARS/HIV含む)
亜急性甲状腺炎
化膿性甲状腺炎 12歳以下で右側に多い
TSS, TSLS
Stevens-Johnson
川崎病
AOSD
唾石症、唾液腺炎
Crown Dens Syndrome, 石灰化頸長筋腱炎 2022/5/27 さらにこんなものも
#18. Question break : 66歳 生来健康な女性
今朝まで特に問題なかった。最近はやや疲れが溜まっており、食事は十分に取れていなかった。スーパーでパートをしており、仕事が終わったときに、急に咽頭違和感が出現し、さらに気分不良・眼前暗黒感・閃光点を認め、しゃがみこんだため周囲が救急要請。
救急隊到着時、介添で歩行は可能であった。
飲酒なし
タバコ 15本/日 18歳~
来院時には咽頭の違和感を訴えるのみでその他の症状なし
滋賀医大救急科 加藤隆之Drの担当症例より
突発性咽頭違和感の症例検討
#19. Question break : 66歳女性 咽頭違和感
BP 142/85mmHg, 91/min reg
意識清明でsickではない、呼吸促迫なし
視診・触診で頚部に明らかな異常を認めない
脳神経: 眼球運動np 上部/下部顔面筋 np 舌運動ok 顔面感覚 np
【L/D】
CBC 特記事項なし WBC上昇なし
電解質、腎・肝機能問題なし
CK上昇なし
【頭部CT】 特記事項なし
【胸部CT】 左乳腺にsoft tissue density mass 乳癌の疑い
#20. 帰宅させられそうだが、見直すと‥ 突発性咽頭違和感で発症した大動脈解離
急性喉頭蓋炎の症例と治療
#22. 症例1: 51歳男性 家族曰く、声がいつもと違うと
#24. 耳鼻咽喉科コール
抗生剤とステロイドで保存的に加療 急性喉頭蓋炎
石灰沈着性頸長筋腱炎の解説
#25. 症例2: 38歳男性 明らかに嚥下時痛あり
MRI所見もあるが、感染ははっきりしない
どうする?
#26. 石灰沈着性頸長筋腱炎 Crown dense syndromeとは違うよ
#27. ハイドロキシアパタイトによって惹起される腱付着部炎
肩関節・腱板におこる石灰沈着性腱炎と同様の病態
比較的若年者、20~50 歳に好発し、急性の項頚部痛、頚部運動制限、嚥下時痛などを認める。血液検査でCRP上昇を認めることもある。
頚長筋腱の過使用に伴い、同部への石灰沈着が起こる。吸収過程で炎症が惹起される。
CTでは頚長筋腱付着部(環椎前)付近の石灰化や後咽頭間隙の拡大を認める。MRI では後咽頭間隙の液体貯留 ないし軟部組織腫脹がT2 高信号域として認められる。
咽後膿瘍などと間違えられるが、外科的処置は必要とせず、安静とNSAIDs により約1-2 週間で治癒し石灰化も消失する 石灰沈着性頸長筋腱炎
解剖と画像評価の重要性
#32. 喉頭蓋炎の画像 USでの評価も試みられている J of Gen and Family Med. 2020
#33. Thumb sign 喉頭蓋の腫脹 (AとBの矢印)
Narrowed vallecula 狭い喉頭蓋谷 (AとBの矢頭) BMJ Case Reports 2016 ©2016 by BMJ Publishing Group Ltd
#34. Take home points
常にKiller sore throat を意識する