テキスト全文
小児COVID-19の特徴と感染対策
#1. 小児の新型コロナウイルス感染症(COVID-19) について 群馬県立小児医療センターアレルギー・感染免疫・呼吸器科清水 彰彦
#2. 本スライドの目標 子どものコロナウイルス感染症の特徴を知る
コロナウイルスの感染対策を知る
学校や家庭で適切な感染対策ができるようになる
#3. 本日のテーマ 子どもが新型コロナウイルスに感染するとどうなるの?
子どもは感染しやすい?させやすい?
教育現場における感染対策
国内外のCOVID-19の現状
小児患者の症状と重症化のリスク
#8. 子どもの症状 Coronavirus Disease 2019 in children – United States February 12 – April2, 2020 (%) 子どもは症状が出にくい
普通の風邪と区別がつかない
#9. 年少児と年長児の比較 Coronavirus Disease 2019 in children – United States January 22 – May 30, 2020 (%) 発熱を除き、年少児は年長児より症状が出にくい
#10. 子どもの重症者の特徴 米国・カナダでPICU入院した48名→多くが基礎疾患あり Shekerdemian LS, et al. JAMA Pediatr. 2020 May 11. 1歳未満が多い
小児におけるCOVID-19の影響
#12. まとめ 子どもにとって新型コロナウイルス感染症はほとんど「ただの風邪」
もともと病気を持っているお子さんと1歳未満の乳児は注意が必要
☆過剰に心配しなくても大丈夫☆
家庭内感染と学校での感染事例
#13. 本日のテーマ 子どもが新型コロナウイルスに感染するとどうなるの?
子どもは感染しやすい?させやすい?
教育現場における感染対策
#14. 子どもは感染しにくい 新型コロナの患者と接触した時大人と比較し、子どもが感染する確率は約半分 Russell M, et al. JAMA Pediatr. 2020 Sep 25.
#15. 子どもは家庭内で感染 Coronavirus Disease 2019 in children – United States February 12 – April2, 2020
Zachariah P, et al. JAMA Pediatr. 2020
Wu Q, et al. Pediatrics. 2020;146
Liguoro I, et al. Eur J Pediatr. 2020;179:1029
日本小児科学会 「データベースを用いた国内発症小児COVID-19症例の臨床経過に関する検討」 多くは家庭内曝露がある→多くは成人から小児へ感染
*米国の報告のみ地域内曝露を含む 家庭内曝露ありの割合 (%) *
学校生活における感染対策
#16. 学校生活での感染事例 ・感染経路:学校・幼稚園・保育園からの感染は多くない 日本小児科学会「データベースを用いた国内発症小児COVID-19症例の臨床経過に関する検討」
#17. 子どもから大人への感染は多くない 家庭内の初発患者(index case)の濃厚接触者を追跡
家庭内の大人へ感染する可能性はあまり高くない Park YJ, et al. Emerg Infect Dis. 2020; 26 Index caseの年齢 (歳) 感染率(%) 平均 11.8%
#18. 学校と家庭で感染する確率 保育園・幼稚園・学校の二次感染率 0.4-2%くらい(濃厚接触者が100人いても感染者は1人くらい)
家庭内での二次感染率は10%くらい Macartney K, et al. Lancet Child Adolesc Health. 2020;S2352
#19. まとめ 子どもは家庭内の大人から感染する事が多い
家庭と比較し学校などでは感染事例は少ない☆大人が家庭に持ち込まないことが大事☆
感染経路と予防策の実践
#20. 本日のテーマ 子どもが新型コロナウイルスに感染するとどうなるの?
子どもは感染しやすい?させやすい?
教育現場における感染対策
#22. 飛沫感染への対策 咳やくしゃみで生じる飛沫は1-2mくらい飛ぶ
基本は「飛沫を飛ばさない・浴びないこと」
咳エチケット・マスク着用
新型コロナウイルスは無症状の人からも感染する
→みんながマスクを着用 身体的距離の確保 (ソーシャルディスタンス) He X, et al. Nature Med. 2020; 26:627 発症日 感染力 発症2-3日前から感染力がある
#23. マスクをしなくて良い時 半径2m以内に人がいない時
熱中症のリスクがある時
乳幼児(特に2歳未満) 2m
学校閉鎖の意義と影響
#26. 学校における感染対策 ・感染対策を徹底しても、感染リスクはゼロにはならない
・「新しい生活様式」の導入
・感染者が確認されたときの、迅速かつ的確な対処
・感染者や濃厚接触者への差別・偏見・いじめの予防 学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル〜「学校の新しい生活様式」〜 学校教育活動の可否やあり方は、地域の蔓延状況により判断するべき
#27. 学校閉鎖の意義 英国では学校閉鎖により重症患者数はわずかに減る (7.2-12.7%減少)
他にもっと有効な対策がある (感染者の隔離、濃厚接触者対策、ソーシャルディスタンス)
Abdollahi E, et al. BMC Med. 2020; 18: 230Ferguson, et al. London: Imperial College. 2020 何もしない 学校閉鎖 感染者の隔離 感染者の隔離+濃厚接触者対策 感染者の隔離+濃厚接触者対策+高齢者のソーシャルディスタンス 10万人あたりICUベッド占拠数 ICUのキャパシティ
#28. 子どもは強いストレスを感じている 第2回 コロナ✕こどもアンケート
コロナ✕こども本部 成育医療研究センター 子どもたちの不安・心配・ストレスを受け止める必要
#29. 保護者も強いストレスを感じている 第2回 コロナ✕こどもアンケート
コロナ✕こども本部 成育医療研究センター 子どもも困っているが、親も困っている
#30. 日本小児科学会の見解 ・子どもの教育、福祉、健康の源である保育所・幼稚園・学校は、 子どもにとって最も基本的かつ大切な活動です
・休所・休園・休校の問題点としては、 子どもの教育の遅れ、生活習慣の乱れ、運動不足、栄養の偏り、 食環境の変化、家庭内虐待の増加、福祉活動の低下、 保護者の就労困難・失業、祖父母など高齢者と接触機会増加 などがあげられる 新型コロナウイルス感染症に対する保育所・幼稚園・学校再開後の留意点について 日本小児科学会 学校閉鎖のデメリットをもっと認識するべき
学校での感染対策とその重要性
#31. 学校でのクラスター イスラエルの学校での大規模クラスター学校再開後に、健康調査、手洗い、マスクなど感染対策
再開9日後に、1例目の患者発生その後、学生 153名 (13.2%)、職員 25名 (16.6%)が感染
アウトブレイクの原因・高い気温→密閉し冷房・マスクなしを認めた・発熱・頭痛などの症状があるのに登校
→国内で大きなクラスターは無いが、学校での感染対策は必要 Stein-Zamir C, et al. Euro Surveill. 2020;25:2001352
#32. 学校での感染対策 ① 学校に感染者を入れない
② 学校内での伝播を無くす
③ 学校閉鎖:感染者が急増した場合に、 他の対策とともに行う最終手段 (感染者が出た時、保健所が濃厚接触者を 把握するまでの一時的な閉鎖は必要) European Centre for Disease Prevention and Control
COVID-19 in children and the role of school settings in COVID-19 transmission ① ②
#33. ①学校に感染者を入れない これまでの慣習・伝統の見直し・発熱など風邪症状がある場合、遠慮せず休む(生徒も先生も) →毎日の検温、健康チェックシートなど活用・皆勤賞は必要?
IT技術の活用・オンライン授業やオンデマンド授業 学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル〜「学校の新しい生活様式」〜 発症前から感染性があるため、完璧にはできない
#34. ②学校内での感染を減らす 学校でも「新しい生活様式」を実践 ①身体的距離の確保 (少人数クラスや座席配置の工夫) ②マスクの着用 (外していいタイミングを判断できるように) ③手洗いを習慣に
清掃と換気 (特別な消毒液や空気清浄機は不要)
濃厚接触者を減らす:学年行事や全校行事の必要性を検討
学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル〜「学校の新しい生活様式」〜 多くの生徒がいるので接触は避けられない
#35. 学校で感染者が出ても、「ほぼ重症化しない・学校でクラスターは多くない」なるべく普通の学校生活を送れるようにするべき
一方、重症化リスクの高い生徒や職員への配慮は必要
修学旅行・運動会など、伝統的な学校行事に関しては、地域の流行状況に応じて内容を検討すると良い 学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル〜「学校の新しい生活様式」〜
旅行関連業における新型コロナウイルス対応ガイドラインに基づく国内修学旅行の手引 一律の正解はないが、感染対策を言い訳に
子どもの学ぶ権利・学校に行く権利を制限してはいけない
#36. まとめ 保育園・幼稚園・学校は子どもにとって大切な場所
学校での感染を100%防ぐことは無理☆感染対策と学校生活を両立する☆