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非運動症状マネジメントでパーキンソン病を総合的に治療しよう

投稿者プロフィール
ばりすた@脳神経内科医

総合病院

24,243

103

概要

パーキンソン病治療において非運動性マネジメントが大切である背景と、睡眠障害、便秘、排尿症状への対応についてまとめています。神経に興味のある初期研修医、パーキンソン病のマネジメントを学びたい内科専攻医、神経が専門ではないが脳神経疾患を診ることがある内科医の先生を対象としたスライドです。

◎目次

・このスライドを作った人

・このスライドの対象

・このスライドで伝えたいこと

・パーキンソン病は全身病

・多彩な非運動症状

・非運動症状はずっと前からある

・睡眠障害にも色々ある

・不眠の一般的な注意点

・運動症状もチェック

・PD特有のうつの特徴がある

・うつには抗うつ薬を考慮

・日中過眠はアゴニスト減量を

・むずむず脚症候群(RLS)

・REM睡眠行動障害(RBD)

・RBDの治療

・不眠の対処のまとめ

・腸の病理が先行している

・便秘の治療は緩下剤を軸に

・PDでは過活動膀胱が多い

・PDの排尿症状の治療

・全体のまとめ

本スライドの対象者

研修医/専攻医

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テキスト全文

非運動症状マネジメントの重要性と対象者

#1.

非運動症状マネジメントで パーキンソン病を 総合的に治療しよう ばりすた☕脳神経内科医

#2.

このスライドを作った人 ばりすた☕脳神経内科医 脳神経内科専門医 総合病院勤務 Twitter:@bar1star 分かりやすい医療情報発信 フォロワー3万7000人↑ コーヒーインストラクター検定2級(そんなに凄くない)

#3.

このスライドの対象 01 03 初期研修医 積極的に病棟管理をしたい、 神経に興味のある研修医に 神経が専門じゃない内科医 神経は専門じゃない でも常勤に脳神経内科医は居ない そう、私がやるしかない! な人に 02 内科専攻医 神経が得意でも苦手でも、 専攻医としてパーキンソン病の マネジメントを学びたい人に

非運動症状の背景と治療法

#4.

このスライドで伝えたいこと 01 03 背景 なぜ非運動症状マネジメントが 大切なのか 便秘 食物繊維・水分・運動を軸に 刺激性下剤の使い過ぎに注意 RLS:むずむず脚症候群 RBD:REM睡眠行動障害 02 04 睡眠障害 不眠症、RLS、RBD、うつ 病態に適した治療を 排尿症状 過活動膀胱には抗コリン薬、 β3刺激薬を考慮

#5.

01 背景

#6.

パーキンソン病は 全身病 振戦、固縮、運動緩慢、 姿勢保持障害などの 運動症状だけに困っているわけではない うつや便秘などの非運動症状は、 全身・多岐にわたる 運動症状より先に生じていることがある 非運動症状をいかに改善できるかが、 パーキンソン病診療の鍵!

睡眠障害の種類と治療アプローチ

#7.

多彩な非運動症状 今回はココのお話 睡眠障害 排尿・排便障害 うつ 性機能障害 認知機能障害 起立性低血圧 など・・・

#8.

非運動症状はずっと前からある 前駆期 進行期 早期 精神異常 障害の程度 症状の日内変動 ジスキネジア 運動緩慢 筋強剛 振戦 便秘 REM睡眠行動障害 -20 -10 日中過眠 嗅覚障害 うつ 0 期間(年) 嚥下障害 姿勢保持障害 すくみ足 転倒 運動症状 非運動症状 疼痛 疲労 軽度認知障害 10 合併症 20

#9.

02 睡眠障害

#10.

睡眠障害にも色々ある • 一般的な「不眠」 • 背景にうつ • 日中過眠 • むずむず脚症候群(RLS) • REM睡眠行動障害(RBD)

パーキンソン病特有のうつ症状と治療

#11.

不眠の一般的な注意点 • 入眠障害?中途覚醒? • 日中の活動量アップ、日中の日光、 夜の消灯で概日リズム形成を • うつの背景は? • SASの確認 → 適応あればCPAP • 睡眠薬のエビデンスは乏しいが、 非BZDの使用が無難 SAS:睡眠時無呼吸症候群 BZD:ベンゾジアゼピン系薬剤

#12.

運動症状もチェック • 日中の活動量低下・抑うつ → Undertreatment? • 寝返り困難・夜間の手足の痛み → Wearing off? 抗パーキンソン病薬の調整が必要! Undertreatment:病状に対して抗パーキンソン病薬が不十分なこと Wearing off:進行期に複数回のL-dopaを服用しても効果の切れ目が出現すること

#13.

PD特有のうつの特徴がある • 疾患受容や、病勢進行に対する反応性うつ → 丁寧な説明による病状理解が重要 • アンへドニア、不安、アパシーが多い • 罪業感、自己非難、自殺念慮は少ない PD:パーキンソン病 アンへドニア:ポジティブな感情・快楽の消失 アパシー:無気力・無関心

#14.

うつには抗うつ薬を考慮 • 活動量低下、Undertreatment 、Wearing off なら、 抗パーキンソン病薬の調整 • 抗うつ薬はTCA、SSRI、SNRIを考慮 患者さんの特徴に合わせて漢方を 使うこともありますが、テーラーメイド的 (悪く言うと汎用性が極めて低い)です。 TCA:三環系抗うつ薬 SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬 SNRI:セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬

REM睡眠行動障害(RBD)の理解と対策

#15.

日中過眠はアゴニスト減量を • ドパミンアゴニスト(レキップ®、ミラペックス®、 ニュープロパッチ®など)が日中過眠を引き起こすことがある • アゴニスト使用中の日中過眠では減量を考慮 • モダフィニル(保険適用外)も有効とされる • DLBは意識の変動が大きいので、 日中寝ているように見えることもある (劇的な改善は難しい) DLB:Lewy小体型認知症 減量後の運動症状悪化に注意!

#16.

むずむず脚症候群(RLS) • 夕方~夜の脚の不快感、動かさないと気がおさまらない • アゴニスト、ガバペンチン、プレガバリン(保険適用外) の効果が証明されている • ただし「PDに合併したRLS」の治療のエビデンスは乏しい • クロナゼパムも有効 PD:パーキンソン病 特発性RBDに比べて、 必要なクロナゼパムの量が 多いかもという話があります。

#17.

REM睡眠行動障害(RBD) • REM睡眠中の夢内容に一致した行動をとってしまう (強盗から逃げる夢を見て実際に走り出してしまう etc.) • 特発性RBDから神経変性疾患への移行リスクは、 5年で17.7%、10年で40.6%、12年で52.4% • RBDを有するPDは認知症発症リスクが高い PD:パーキンソン病

#18.

RBDの治療 • クロナゼパム0.5mg~2.0mgが経験的に有効(保険適用外) • リバスチグミン・メマンチンも有効の報告(保険適用外) • ただし「PDに合併したRBD」の治療のエビデンスは乏しい 仮にRBDが起きてしまっても ケガに繋がらないように、 寝具周りの整頓やクッションの 整備をするのも良いでしょう。 PD:パーキンソン病 RBD:REM睡眠行動障害

便秘の病理と治療法の考察

#19.

不眠の対処のまとめ • うつ、日中過眠、RLS、RBDなどの有無を確認する • 患者の「不眠」の解像度を高く理解し、適切な薬剤を • Undertreatmentなら抗パーキンソン病薬の調整 • 日中の活動による概日リズム形成を促す • 睡眠薬は非BZDが無難 RLS:むずむず脚症候群 RBD:REM睡眠行動障害 BZD:ベンゾジアゼピン系薬剤

#20.

03 便秘

#21.

腸の病理が先行している • 便秘はPDの約7割に見られる • PDの運動症状発症の10-20年前から便秘が先行する • 腸のLewy小体病理は脳に先行するという報告も 神経筋疾患に伴う便秘から、 イレウスや直腸潰瘍を起こすことがあります。 脳神経内科医は排便コントロールの大切さを 身をもって知っています。

#22.

便秘の治療は緩下剤を軸に • 十分な運動、水分と食物繊維の摂取を促す • それでもだめなら酸化Mgなどの緩下剤 • 次にモサプリド、六君子湯、大建中湯などで蠕動を促進 • センノサイドなどの刺激性下剤は使い過ぎに注意 • 新規便秘薬は、エビデンス少ないが刺激性下剤よりは良さそう

排尿症状の特徴と治療戦略

#23.

04 排尿症状

#24.

PDでは過活動膀胱が多い • PDの排尿症状は27-64% • 夜間頻尿60%以上、尿意切迫感33-54%、日中頻尿16-36% • 膀胱抑制的に働く基底核の機能低下、前頭葉機能低下が原因? • 男性は前立腺肥大症の合併の確認が必要 睡眠障害が主体で、トイレはついでに 行くだけというパターンもあるので注意! PD:パーキンソン病

#25.

PDの排尿症状の治療 • 骨盤底筋群の筋力増強 • OABにはバップフォー®・ウリトス®(抗コリン薬の中でも認知 機能障害の懸念が少ない)、ベタニス®を考慮 • 次点でSSRI、SNRIを検討 • 中途覚醒が主な場合は睡眠障害の治療 • 尿閉になるような排尿障害はMSAの鑑別を PD:パーキンソン病 OAB:過活動膀胱 SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬 SNRI:セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 MSA:多系統萎縮症

#26.

全体のまとめ • 非運動症状は多彩で、長期にわたり、QOLの低下をきたす • 睡眠障害の解像度を高め、病態に合わせた治療を • 下剤は緩下剤を中心にして、刺激性下剤は極力控える • 過活動膀胱に対しては抗コリン薬やβ3刺激薬を考慮

参考文献と今後の展望

#27.

参考文献 • パーキンソン病診療ガイドライン2018 • Lorraine V Kalia, et al. Parkinson’s disease. Lancet 2015; 386: 896-912 • Postuma RB, et al. Qualifying the risk of neurodegenerative disease in idiopathic REM sleep behavior disorder. Neurology 2009; 72: 1296-1300 • 北村ら. パーキンソン病と抑うつ. 精神経誌 2013; 115: 1135-1141 • 村田ら. パーキンソン病とうつ. 日老医誌 2013; 50: 752-754 • 榊原隆次. レヴィー小体型便秘とパーキンソン病. 自律神経 2020; 57: 176-180 • 榊原隆次. 夜間頻尿:Parkinson病を中心に. 神経治療 2017; 34: 412-417

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