#4.
このスライドで伝えたいこと • 多系統萎縮症のイメージを、類縁疾患と比較しつつ掴む! • 診断に必要な知識をつけよう • 治療やケアについて学ぼう
#5.
このスライドで伝えたいこと • 多系統萎縮症のイメージを、類縁疾患と比較しつつ掴む! • 診断に必要な知識をつけよう • 治療やケアについて学ぼう
#6.
多系統萎縮症のとてもざっくりなイメージ • 多系統萎縮症(MSA)は、神経変性疾患であり難病 • パーキンソン病(PD)とよく似た症状が出る • 自律神経障害が強い • 小脳障害も出る • PDの他にも似た症状の病気がいくつかある 正しく見分けて診断し、マネジメントするための知識が必要!
#7.
何がどう「多」系統なのか? Shy-Drager症候群 (SDS) 自律神経系の障害 オリーブ橋小脳変性症 (OPCA) 小脳系の障害 線条体黒質変性症 (SND) 錐体外路系の障害 多系統萎縮症 (MSA) OPCA → MSA-C SND → MSA-P SDS、OPCA、SNDが実は同一の疾患であることが分かり、 自律神経系・小脳系・錐体外路系が障害される疾患概念 としてMSAと命名された。 小脳症状が目立つのはMSA-C、 錐体外路症状が目立つのはMSA-Pと分ける。
#8.
パーキンソン症候群としてのMSA パーキンソン症候群 = 運動緩慢や固縮などを来す疾患 略語 LBD PD DLB MSA SCD PSP CBS NPH 正式名称 レビー小体病 パーキンソン症候群 PD DLB パーキンソン病 レビー小体型認知症 多系統萎縮症 脊髄小脳変性症 PSP LBD CBS NPH 血管性 MSA-P SCD その他 進行性核上性麻痺 皮質基底核症候群 正常圧水頭症 つまりこれらの疾患と対比して 理解することが必要になります。
#9.
MSAの背景病理 • MSAではオリゴデンドログリアに glial cytoplasmic inclusion(GCI)が出現する • GCIの主要構成蛋白はα-シヌクレイン(αSN) • パーキンソン病の レビー小体の構成蛋白もαSN • レビー小体は神経細胞で形成される Glial cytoplasmic inclusions(GCI) https://www.neurologyjp.org/Journal/public_pdf/0511 10838.pdf
#10.
神経変性疾患の病理まとめ 疾患名 多系統萎縮症 レビー小体病 進行性核上性麻痺 特徴的な病理所見 glial cytoplasmic inclusions レビー小体 tufted astrocyte 皮質基底核変性症 astrocytic plaque Pick病 Pick球 アルツハイマー病 老人斑 https://www.jsnp.jp/cerebral_10.htm https://www.jsnp.jp/cerebral_12.htm https://www.jsnp.jp/pdf/cerebral_14.pdf https://www.jsnp.jp/pdf/cerebral_15.pdf https://www.jsnp.jp/cerebral_16_main.htm 見られる場所 オリゴデンドログリア 神経細胞 アストロサイト アストロサイト 神経細胞 神経細胞外 構成蛋白 α-シヌクレイン α-シヌクレイン 4リピート型タウ 4リピート型タウ 3リピート型タウ βアミロイド(主にAβ42) 最終的には剖検脳の病理組織から診断します。 臨床診断と病理診断が食い違うこともありますし、 違う病理なのに非常によく似た臨床像を呈するこ ともあります。
#11.
Shy-Drager症候群(SDS)と Pure Autonomic Failure(PAF) • 純粋に自律神経障害のみが起こっている状態がある • やや定義にバラつきはあるものの、 この状態をPure Autonomic Failure (PAF)という • 症状は起立性低血圧や便秘、排尿障害、 coat hanger pain (起立時の、ハンガーに相当する首や肩などの痛み)が有名
#12.
Shy-Drager症候群(SDS)と Pure Autonomic Failure(PAF) • SDSはMSAの病理で起こるものの一型だが、 PAFはSDSに加えてレビー小体病理で起こるものも含まれる LBD 略語 PAF MSA-P 正式名称 LBD レビー小体病 PD パーキンソン病 DLB レビー小体型認知症 PAF Pure Autonomic Failure SDS Shy-Drager 症候群 MSA 多系統萎縮症 PD DLB SDS MSA MSA-C
#13.
このスライドで伝えたいこと • 多系統萎縮症のイメージを、類縁疾患と比較しつつ掴む! • 診断に必要な知識をつけよう • 治療やケアについて学ぼう
#14.
多系統萎縮症の疫学 多系統萎縮症 (MSA) • 罹患率:10万人年あたり0.6例 • 有病率:10万人中4人 • 発症年齢の平均:54歳 • 診断後の生存期間:6-10年 パーキンソン病 (PD) • 罹患率:10万人年あたり5-35例 • 有病率:10万人中100-200人 • 発症年齢:多くが60歳以上 • 生存期間:健常の余命より数年短い つまりMSAは、PDに比べてかなり数が少なく、年齢がやや低く、予後の悪 い疾患ということになります。MSAの方が経過が速いので、PDの方が発症 年齢が高く見積もられる傾向にある影響があるかもしれません。 なお、海外ではMSA-Pの方が多いのに対し、日本はMSA-Cの方が多いです。
#15.
多系統萎縮症の診断基準 【変更点の概説】 • 起立性低血圧の基準値の変更 • MRA所見も1つ以上必要に • 除外基準の設定 脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018より転載 ただし2022年4月に新しい診断基準が提唱されています。 著作権の関係で表の翻訳・転載は念のため控えますが、 https://doi.org/10.1002/mds.29005 を参照してください。 【変わらないところ】 • 自律神経・小脳・錐体外路の 症候の組み合わせで診断
#16.
運動症状の対比 錐体路徴候 pill rolling様の振戦 首下がりや腰曲がり 小脳性運動失調 嚥下障害 多系統萎縮症(MSA) パーキンソン病(PD) 見られることがある Babinski徴候は30-40% 非典型的 16-42%で出現 進行期には出得るが多くはない 稀 生じる 早期から高度になり得る 見られることがある 生じない 進行期以降で生じる MSAのパーキンソニズムに対して、一過性のレボドパ反応性は約40%で見ら れると言われています。一方で抗パーキンソン病薬誘発性のジスキネジアな どの不随意運動も見られることがあります。
#17.
非運動症状の対比 多系統萎縮症(MSA) パーキンソン病(PD) 自律神経系の異常 早期から重度 見られる 睡眠時無呼吸症候群 声帯開大不全 幻視 約40%と高率に合併 見られる あまり特徴的ではない 見られることがある 基本的に見られない 見られることがある 起立性低血圧 便秘 排尿障害 性機能障害 など
#18.
MSAのMRI所見 被殻外側に、 スリット様の T2 WI 高信号域 宇多野病院関西脳神経筋センター 多系統萎縮症 より転載しました https://utano.hosp.go.jp/outpatient/other_know_neurology_01.html 橋のhot cross bun sign 小脳半球の萎縮
#19.
突然死に要注意 声帯開大不全、脳幹の呼吸調節能、自律神経障害などにより、 多系統萎縮症(MSA)では突然死の危険性がある • 予め突然死リスクの説明が必要 • 声帯開大不全には気管切開で対応できるが、 突然死リスクはゼロにはできない
#20.
神経疾患の臨床診断と病理所見のズレ • 1988年-2014年までのベイジアンメタ解析で、 パーキンソン病(PD)の臨床診断が病理と合致したのは • 全体で80.6% • 非専門家で73.8% • 専門家で79.6%、経過を追うと83.9% • MSAに関するまとまったデータはないものの、 PDと同様、当初の診断と異なることがあり得る • 特に、家族歴のはっきりしない遺伝性脊髄小脳変性症の 可能性がある
#21.
診断告知上の注意 (私見) 臨床診断が一定確率で後に覆る可能性には言及しつつ、 • 基本的には予後の悪い疾患であること • 突然死の可能性があること • 嚥下障害により代替栄養の検討を要する時期がくること • 気管切開や人工呼吸器管理の検討を要する時期がくること について疾患受容の様子を見ながら、 比較的早期からしっかり話していく必要がある これが不十分だと、急変で家族が動転している中で方針を決めることになり、 後々の後悔に繋がりかねません。
#22.
このスライドで伝えたいこと • 多系統萎縮症のイメージを、類縁疾患と比較しつつ掴む! • 診断に必要な知識をつけよう • 治療やケアについて学ぼう
#23.
薬物治療のまとめ • 小脳症状: • 錐体外路症状: • 痙縮: • 起立性低血圧: • 便秘: • 過活動膀胱: • 排尿障害: タルチレリン、プロチレリン レボドパを漸増して反応性を確認 ボツリヌス毒素、ダントロレン、バクロフェン等 ミドドリン、ドロキシドパ モサプリド、大建中湯、酸化マグネシウム等 抗コリン薬、β3受容体刺激薬 コリンエステラーゼ阻害薬、α1ブロッカー等
#24.
血圧変動に対するケア 起立性低血圧対策 • ゆっくりと起き上がる • 弾性ストッキング 臥位高血圧対策 • 日中は仰臥位を避ける • 就寝前に軽く何か食べる • 睡眠時は少し上体を起こす 食後低血圧対策 著しい血圧変動はQOLの低下や、 リハビリの阻害因子となります。 • 水分摂取量を増やす • 一度に過剰なカロリーを摂らないようにする
#25.
呼吸や睡眠に関するケア 夜間吸気性喘鳴や睡眠時無呼吸症候群(SAS)に対して、 • NPPV • 気管切開 が選択され得る REM睡眠行動異常症に対して、 • クロナゼパム が有効なことがあるが、夜間の喘鳴やSASの悪化に注意
#26.
まとめ • 多系統萎縮症は、①自律神経系、②小脳系、③錐体外路系 の異常をきたす神経変性疾患 • パーキンソン病と比べて進行が早く、重症 • 突然死に注意し、早期から代替栄養や気管切開などの方針を 話し合っておく必要がある
#27.
参考文献 • 脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018 • Multiple-system atrophy. Alessandra Fanciulli, et al. N Engl J Med. 2015;372:249-63. • Life expectancy of parkinsonism patients in the general population. Dommershujisen LJ, et al. Parkinsonism relat Disord. 2020;77:94-99. • The Movement Disorder Society Criteria for the Diagnosis of Multiple System Atrophy. Wenning GK, et al. Mov Disord. 2022;37:1131-1148. • 多系統萎縮症の病態と症候の広がり 渡辺 宏久ら. 臨床神経. 2016;56:457-464. • Pure autonomic failure で発症した約4年後にレビー小体型認知症と診断された1例:レビー小体病理の進展課程と前 駆症状について 鵜飼克行. Dementia Japan. 2019;313:243-248. • 多系統萎縮症-シヌクレインと神経細胞 吉田 眞理 . 臨床神経 2011;51:838-842. • Accuracy of clinical diagnosis of Parkinson disease: A systematic review and meta-analysis. Rizzo G, et al. Neurology. 2016;86:566-576.