#4.
「過活動膀胱を疑う」ってどんな状態? • 「尿意切迫感」が必須! • 過活動膀胱症状スコア(OABSS)の質問3(尿意切迫感)で2 点以上が必須! 尿意切迫感とはどんな症状か?=急に起きる強い尿意
#5.
過活動膀胱症状スコア(OABSS) 質 問 症状 1 朝起きたときから寝るまでに、何回く らい尿をしましたか(昼間頻尿) 2 夜寝てから朝起きるまでに、何回くら い尿をするために起きましたか (夜間頻尿) 3 急に尿がしたくなり、我慢が難しいこ とがありましたか (尿意切迫感) 4 急に尿がしたくなり、我慢できずに尿 を漏らすことがありましたか (切迫性尿失禁) 点数 0 1 2 0 1 2 3 0 1 2 3 4 5 0 1 2 3 4 5 頻度 7回以下 8~14回以上 15回以上 0回 1回 2回 3回以上 なし 週に1回より少ない 週に1回以上 1日1回くらい 1日2~4回 1日5回以上 なし 週に1回より少ない 週に1回以上 1日1回くらい 1日2~4回 1日5回以上 質問3が2点以上が過活動膀胱、5点以下が軽症、6-11点が中等症、12点以上が重症 過活動膀胱診療ガイドラインより
#6.
基本評価(必須) • 自覚症状の問診(頻尿・尿もれについて、出にくさの 有無についてなど) • OABSS • 病歴・既往歴・合併症・服薬歴 • 水分摂取習慣 • 身体所見、神経学的所見 • 検尿 • 残尿測定 過活動膀胱診療ガイドライン 第3版より
#7.
自覚症状の問診のときに気をつけること • 近い、尿がもれる、間に合わない、トイレにかけこむなど、過 活動膀胱のキーワードを聞き取る。 • 痛みがある、咳やくしゃみでもれる、尿がでにくい、などの場 合は単純な過活動膀胱ではなく、他の病気の可能性があるので 泌尿器科医へ紹介を。 • 夏は症状が軽くなり、冬は悪化することが多い。 • 夜起きてトイレにいくとき、台所仕事をするときに尿意切迫感 は出やすいので、そのあたりを聞くとわかりやすい。
#8.
基本評価(症例により選択) • その他の症状質問表(国際前立腺症状スコア: IPSS、主要下部尿路症状スコア:CLSSなど) • 排尿日誌 • 尿培養 • 超音波検査 • 血清クレアチニン • PSA(男性)、台上診(女性)、直腸診(男性) 過活動膀胱診療ガイドライン 第3版より
#9.
基本評価で血尿を認めた場合は専門医へ • 過活動膀胱ガイドラインでは血尿(肉眼的・顕微鏡的)、尿潜 血陽性の場合、専門医の診察が必要とされている。 • 膀胱癌、腎盂尿管癌などの尿路上皮癌などの尿路悪性腫瘍が疑 われる。 • 特に尿路上皮癌のリスク因子である、40歳以上の男性、喫煙、 有害物質への曝露、泌尿器科疾患の既往などを有する顕微鏡的 血尿患者では、侵襲的検査である膀胱鏡を含めた尿路悪性腫瘍 スクリーニングを行うべきとされる。(血尿診断ガイドライン 2013) 過活動膀胱診療ガイドライン 第3版より
#10.
膿尿を認めた場合 • 膿尿に血尿、排尿痛を伴う場合は、下部尿路の炎症性疾患と尿 路結石を鑑別する必要がある。 • 膀胱や前立腺の急性細菌性感染症の場合は、「抗菌薬による治 療」を行う。 • なお、標準的な抗菌薬治療により改善が認められない、あるい は尿路感染症を反復する場合には、専門医の診察が必要である。 過活動膀胱診療ガイドライン 第3版より
#11.
膿尿の治療 • 検尿で膿尿を認めた場合には、以下*のガイドラインに従って 抗菌薬治療を行う。 *尿路管理を含む泌尿器科領域における感染制御ガイドライン第2版、 JAID/JSC感染症治療ガイド2019 • 膿尿も症状も残存する場合には専門医へ紹介する。 • 膿尿は消失したが、過活動膀胱症状が残存する場合にはアルゴ リズム7残尿測定へ進む。 • 再発性尿路感染症、男性の症候性尿路感染症に関しては、抗菌 薬投与で「有効→終了」ではなく、複雑性尿路感染症として専 門医による基礎疾患の精査を考慮する必要がある。 過活動膀胱診療ガイドライン 第3版より
#12.
基本評価:残尿測定 • 残尿量が多いと機能的膀胱容量が減少するため、頻尿となる。 • 残尿量が100ml以上の場合は専門医へ紹介する。 • 高齢者では安全域性を考慮して残尿量が50ml以上の場合は専門 医へ紹介する。 過活動膀胱診療ガイドライン 第3版より
#13.
いろいろな残尿測定法 b 超音波検査使用 リリアム α-200 ブラダースキャン
#14.
残尿測定 D216-2 超音波によるものは55点 前立腺肥大症、神経因性膀胱または過活動膀胱の患者一人につき月2回 に限り算定できる。 日本排尿機能学会 過活動膀胱ガイドライン作成委員会 編:“2..診療ガイドライン” 過活動膀胱診療ガイドライン 第1版 ブラックウェルパブリッシング株式会社:52, 2005 [L20060227036]
#15.
行動療法について • 行動療法:一次治療法である。 • 行動療法には、生活指導、膀胱訓練・計画療法、理学療法(骨 盤底筋訓練、バイオフィードバック訓練)、行動療法統合プロ グラム、その他の保存療法が含まれる。 • 生活指導の中の体重減少、膀胱訓練、骨盤底筋訓練、行動療法 統合プログラムは推奨グレードA,バイオフィードバック訓練は 推奨グレードBである。 過活動膀胱診療ガイドライン 第3版より
#16.
行動療法について(実際のところ) • 実際に外来でゆっくり指導するのはかなり大変。 • 現実的には製薬会社のパンフレットなどを渡して自分でやって もらう、製薬会社のホームページなどをみて自分でやってもら うように伝える程度になってしまうことが多い。 • 患者さんも「すぐに効果のある」治療を希望することが多いた め、「薬以外の治療をしたい、そのためにはある程度努力した い」ガッツのある患者さんを見極めて指導する必要あり。 • 肥満のある患者さん→体重の5%を目安にダイエット • 水分やカフェイン摂りすぎの患者さん→少し控えてもらうなど
#17.
薬物療法について • 薬物療法:二次治療法である。 • 女性:β3受容体作動薬もしくは抗コリン薬の単独投与を行うことができる。混合性尿失 禁に対しても、切迫性が主体であればβ3受容体作動薬あるいは抗コリン薬の投与は推奨 される。 • 男性:50歳未満と50歳以上に分けて方針を立てる。 • 50歳未満の男性の過活動膀胱:比較的若年男性の過活動膀胱では、背景に神経疾患や前 立腺炎などを合併していることがあるので、泌尿器科専門医に紹介することが推奨され る。 • 中高齢(50歳以上)の男性の過活動膀胱:前立腺肥大症に合併する過活動膀胱の可能性 が高いので、排尿症状および前立腺肥大症の存在を確認したなら、α1遮断薬あるいは PDE5阻害薬(タダラフィル)の投与を最優先する。過活動膀胱症状の改善が得られない 時には抗コリン薬やβ3受容体作動薬などを併用することもできるが、残尿量増加や尿閉 などのリスクがあるため、泌尿器科専門医への紹介が望ましい。 過活動膀胱診療ガイドライン 第3版より
#18.
薬物療法について • β3受容体作動薬:ミラベグロン、ビベグロン 推奨グレードA • 抗コリン薬:オキシブチニン経皮吸収型製剤、プロピベリン、 トルテロジン、ソリフェナシン、イミダフェナシン、フェソテ 過活動膀胱診療ガイドライン ロジン 推奨グレードA 第3版より • いずれもはじめに2週間程度処方し、再診時に効果、有害事象 の有無などを確認後有効な場合は継続する。
#19.
患者さん説明に役立つトーク集 • 症状からは過活動膀胱のようです。他に原因になっている病気 があるといけないので、尿検査・超音波検査・残尿検査をして 調べましょう。 • (特に何もなければ)過活動膀胱として治療をはじめることが できます。自分でする体操やダイエットなどをしてもよいです が、時間がかかるので、すぐに治療したければ飲み薬の治療を おすすめします。 • お薬を処方しますね。はじめに2週間飲んで、よければまた続 けるかどうか相談しましょう。 • (効果があった場合)よくなってよかったです。ただ、お薬を やめるとまたもとの症状に戻ってしまうので続けましょう。
#20.
患者さん説明に役立つトーク集2 • (効果がなかった場合)効果があるはずのお薬を処方しました が、あまりよくならなかったようです。こちらではあまり何種 類も出すのは難しいので、専門の先生にご紹介しますね。 • (抗コリン薬で口渇、便秘などの副作用があった場合)お薬の 副作用で口が渇いたり便秘になることはあります。一度そう いった症状の出にくいお薬に変えてみましょう。→ β3受容体 作動薬に変える。 • (真夏に症状がなくやめていいか聞かれたら)今の季節はおや すみして、また寒くなる頃に再開でもいいですよ。その頃に予 約をしますね。
#21.
Q&A Q1:過活動膀胱の診療はあまり経験がなく、薬の処方も心配です。 A1:60-70代女性の血尿、膿尿のない過活動膀胱に限ってβ3受容 体作動薬で経過をみるのはどうでしょうか。 Q2:過活動膀胱で薬物治療をしていますが、このあと専門医に送 るタイミングはどこになるでしょうか? A2:切迫性尿失禁や頻尿が残存し、患者さんが希望するのであれ ば専門医に紹介されるとよいでしょう。 Q3:過活動膀胱はすべて治療しなくてはならないでしょうか? A3:治療希望のない患者さんには治療は不要です。
#22.
泌尿器科専門医へ送るべき状況 • 基本評価で問題がある場合:肉眼的血尿、高度の排尿困難、尿 閉の既往、再発性尿路感染症、骨盤部の手術歴・放射線治療の 既往、神経疾患の合併または後遺症、腹圧性尿失禁、骨盤臓器 脱、膀胱痛、前立腺癌の疑い、超音波検査での異常(膀胱内に 結石、腫瘍などの病変を疑わせる所見を認める)など • 顕微鏡的血尿、尿潜血がある場合 • 膿尿があり抗菌薬治療をしても膿尿、症状が残存する場合 • 残尿が100ml以上ある場合 • 過活動膀胱で治療を行なっても効果不良の場合 過活動膀胱診療ガイドライン 第3版より
#23.
実際にあったこんな疾患・状態に気をつけよう • 浸潤性膀胱癌で漫然と抗コリン薬を処方されていたケース • 腹圧性尿失禁なのに過活動膀胱と診断されて過活動膀胱治療薬 を処方されていたケース • 膀胱瘤で過活動膀胱と診断されて治療薬を処方されていたケー ス • 前立腺肥大症で過活動膀胱治療薬が処方され、残尿が増加して いたケース →どれも実際に経験したケースです。後医は名医ともいいますが、 こういったケースも念頭におかれて診療をされてください。
#24.
参考文献 • 過活動膀胱診療ガイドライン 第3版 2022年9月