#4.
このスライドで伝えたいこと 1 2 3 背景 失語になる病気は何があるか? 原発性進行性失語とは? どんな症状が出るのか? 評価 とった所見をどうまとめて 分類すればよいのか?治療は?
#5.
このスライドで伝えたいこと 1 2 3 背景 失語になる病気は何があるか? 原発性進行性失語とは? どんな症状が出るのか? 評価 とった所見をどうまとめて 分類すればよいのか?治療は?
#6.
まずは失語評価のおさらい • 自発話から評価を始め、失構音、錯語、 喚語困難、失文法、復唱、聴理解をチェック とてもざっくりした失語の古典的な分類 失構音 聴理解 復唱 運動性失語 ある 良い できない 超皮質性運動性失語 ある 良い できる 感覚性失語 ない 悪い できない 超皮質性感覚性失語 ない 悪い できる 伝導失語 ない 割と良い できない ニガテな高次脳機能評価を克服しよう!失語編① のAntaaスライドをまずは見てみてくださいね。
#7.
失語を来す疾患は? • 脳卒中 • てんかん 発作後のTodd麻痺のような状態で失語が遷延することがあります • 原発性進行性失語(Primary Progressive Aphasia: PPA) (その他の認知症や神経変性疾患の1つの症候としても表れます) 脳梗塞はtPA静注療法や血栓回収により、 「ダメージを受けたところと助かったところ」の組み合わ せのバリュエーションが増えました。 脳のやられた機能と助かった機能の組み合わせも増えるの で、細かい評価が必要になります。
#8.
疾患によって経過が違う • 脳卒中は重い症状が出た後、リハビリなどで 徐々に代償され得る → 失語の要素が改善することがある • 変性疾患では、初期は軽い症状から始まり、 徐々に進行したり、別の要素が障害される → 原発性進行性失語(PPA)がこのパターン PPAなどの神経変性疾患では、 疾患の進行により症状が重くなったり、 別の症候が出るようになる
#9.
このスライドで伝えたいこと 1 2 3 背景 失語になる病気は何があるか? 原発性進行性失語とは? どんな症状が出るのか? 評価 とった所見をどうまとめて 分類すればよいのか?治療は?
#10.
原発性進行性失語(PPA)とは • 早期からの失語が特徴的な神経変性疾患の総称 • 病理診断名ではなく臨床病名 • 以下の3タイプに分類 • 進行性非流暢性失語(PNFA) • 意味性認知症(SD) • ロゴペニック型進行性失語(LPA) 最近の英語文献では、 • nonfluent-agrammatic variant PPA(nfvPPA) • semantic variant PPA(svPPA) • logopenic variant PPA(lvPPA) という分類ですが、今回は認知症診療ガイドライン2017の表記に合わせています
#11.
臨床病名?病理名? • 病理なのか臨床病名なのか異なることがある のが神経変性疾患の病名のややこしいところ 臨床病名 皮質基底核症候群 前頭側頭型認知症 原発性進行性失語 あり得る背景病理 皮質基底核変性症 アルツハイマー病 進行性核上性麻痺 etc. 前頭側頭葉変性症 これから説明! 脳病理は基本的に死後の剖検でしか確認できないので、熟練した 脳神経内科医が〇〇病だと診断しても結果的に背景病理とズレる ことがあります。これはどうにもできないので、臨床診断名と病 理の病名を分けて考える必要があるのです。PPAは臨床病名です。
#12.
原発性進行性失語の定義 • 言語の困難さが最も顕著な症状 • 失語が日常生活における障害の主たる要因 • 発症時・病初期の主たる症状が失語 の3つを満たす必要がある。 エピソード記憶、視覚性記憶、視知覚、行動の 初期の顕著な障害はPPAでは見られない。 PPAの初期は言語障害があるが、他の認知機能は保たれている
#13.
各論の前に、認知症とは? 認知症診療ガイドライン2017より ざっくり言うと、 • 多岐にわたる認知機能のうち1つ以上の障害で • 自立的な日常生活に支障が出ている状態
#14.
進行性非流暢性失語 中核的特徴 支持的項目 ・失文法 ・発語失行(≒失構音) PNFA≒nfvPPA 大体この辺りの障害 ・統語理解の障害 ・単語理解の保存 ・対象物知識の保存 診断基準 中核的特徴が1つ 支持的項目が2つ以上 背景病理 • FTLD-tau 大脳皮質基底核変性症や 進行性格上性麻痺を含む • FTLD-TDP 前頭側頭型認知症(FTLD)は解剖学的な診断名。中でもタウが 蓄積するFTLD-tauがPNFAの背景として多いと言われています。
#15.
意味性認知症 SD≒svPPA 中核的特徴 支持的項目 診断基準 背景病理 • 呼称能力の低下 • 語義理解の障害 • • • • 大体この辺りの障害 対象物知識の障害 表層失読・失書 復唱能力の保存 発話表出能力の保存 中核症状が2つ 支持的項目が3つ以上 FTLD-TDPが多い FTLDは解剖・病理的な病名ですが、前頭側頭型認知症(FTD) は臨床病名です。FTDの中で行動異常の目立つbv-FTDに移行 していく例が、SDで見られることがあります。
#16.
ロゴペニック型進行性失語 中核的特徴 支持的項目 診断基準 背景病理 • 語想起障害 • 短文復唱障害 • • • • LPA≒lvPPA 大体この辺りの障害 音韻性錯語 単語理解の保存 発話表出能力の保存 統語表出能力の保存 中核症状が2つ 支持的項目が3つ以上 アルツハイマー病が多い おなじみの話の流れですが、アルツハイマー病(AD)はアミロイ ドβの沈着などを特徴とする病理診断名、アルツハイマー型認知 症は臨床病名です。ADの表現型がLPAにもアルツハイマー型認知 症にもなり得るということですね。
#17.
このスライドで伝えたいこと 1 2 3 背景 失語になる病気は何があるか? 原発性進行性失語とは? どんな症状が出るのか? 評価 とった所見をどうまとめて 分類すればよいのか?治療は?
#18.
PNFAを疑うエピソード • 「てにをは」を間違える • 言葉が思ったように出ない • 話のスピードがゆっくりになる などの症状から始まりやすい • 長い言葉を喋る時や朗読で詰まる • 言葉を喋るのに努力してる様子 • 筆談に頼ろうとする • コミュニケーションが上手くいかない苛立ち もよく見られる
#19.
SDを疑うエピソード • 単語を聞くと「〇〇って何?」と質問 • 「これ、あれ」などの指示語が増加 • 発語は流暢 ただしエピソードのみでは、異常に気付かれに くかったり、単なる”もの忘れ“として処理され てしまったりすることがある
#20.
LPAを疑うエピソード • 「これ、あれ」などの指示語が増加 • 「たばこ」→「たびこ」などの音韻性錯語 • 音韻性錯語で正しく言えず、何度も同じ単語を 繰り返してしまう 指示語の増加はSDとも重複しており、エピソードのみで病型を 分けるのは困難です。このため、正しい知識で能動的に言語の評 価をする必要があります。 なお音韻性錯語は特徴的な症状ではあるものの、前述の診断基準 のとおり、診断の必須項目ではありません。
#21.
失語評価は自発話から 失語を評価する際の流れは、 ①患者に話をさせてそれを聞く(自発話) ②ものの名前を答えさせる(物品呼称) ③検者の言葉を真似させる(復唱) ④検者の言葉の理解度を確認する(聴理解) とすると良い。さらに ⑤文字を読む(読字) ⑥文字を書く(書字) も評価できるとなお良い
#22.
PNFAの診断に有効な評価 • 自発話における失構音を確認 (しばらく失構音のみで経過するパターンも) • 失構音の誘発には、長文の朗読が有効 • 「てにをは」の間違いや、 能動態⇔受動態の切り替え課題も確認 • 進行例ではパーキンソン様症状を認めることも
#23.
SDの診断に有効な評価 • 物品呼称が有効 • 「ブルドッグ」などの低頻度語では 「あ…ほらあの…犬の…」という反応 • 健忘性失語と異なり、語頭音効果が見られない 検者「ブ…?ブル…?」→ 患者「……」 • 「具合はどうですか?」→「具合って何?」 などと言葉を聞き返す反応(反問性反響語) • 復唱は保たれる!
#24.
LPAの診断に有効な評価 • 復唱障害は特徴的だが、 PNFAでも復唱障害が生じることがある • SDほどの語義理解障害はないが、 まったく無いわけではない • 音韻性錯語が特徴的だが、 全例で生じるというわけではない • 少し進行した例では、言語障害だけでなく 視空間認知障害や片麻痺を来す例もある 特徴的なエピソードや診察所見でパッとLPAを診断できる、 というわけではないのが難しいところです。
#25.
まとめ • 原発性進行性失語は、失語を来す神経変性疾患 • PNFA、SD、LPAの3タイプに分かれる • PNFAでは失構音や失文法に注目 • SDでは呼称の評価と、聞き返しに注目 • LPAは復唱障害や音韻性錯語に注目
#26.
参考文献 • 高次脳機能障害の理解と診察 平山和美 中外医学社 2017 • 原発性進行性失語 – 分類, 診断と臨床経過 – 西田勝也ら IRYO 69:267-274, 2015 • Primary progressive aphasia: a clinical approach. Charles R. Marshall, et al.Journal of Neurology 265:1474–1490, 2018 • 認知症診療ガイドライン2017 日本神経学会 医学書院 2017 • 進行性非流暢性失語の症候と経過 大槻美佳 高次脳機能研究 35:297-303, 2015 • 前頭側頭葉変性症(FTLD)の概念と分類 update 中野今治 臨床神経 52:844-847, 2011 • 意味性認知症と見誤り易い症候について 小森憲治郎ら 高次脳機能研究 36:350-360, 2016 • Logopenic progressive aphasia(LPA)とはどのような症候群か?(2020 年版) 小川七世 神経心理学 37:152-163, 2021