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敗血症まとめ

投稿者プロフィール
山口裕崇

飯塚病院

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0

投稿した先生からのメッセージ

とっつきにくく、ときに難解な敗血症をまとめてみました。

概要

敗血症診療は得意だよ!っていう人は、読まないでください。

本スライドの対象者

研修医/専攻医

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テキスト全文

敗血症の基本概念と重要性

#1.

2025 “ Antaa Slide ” Christmas Edition 敗血症 まとめ Iizuka Hospital “ General Internal Medicine ” Hirotaka Yamaguchi

#2.

敗血症は感染症だけではない 敗血症とは「きっかけ」に生体で起きている現象である。 当然ながら菌血症であることも前提にしていない。 大切なことは検査値に拘泥することではなく、目の前の患者の生体反応に気づき、自らアクションを起こすことである。 ある格言のように「昨日元気で今日ショック」というプレゼンテーションは、特定の原因微生物によっては起こり得る。 とはいえ、心原性/閉塞性/出血性ショックほど唐突に現れるということはない。 つまり、典型的には数日前から何かしらの先行する出来事があり、予兆があって敗血症に至る場合が多い。 現在に至るまでの患者の物語を「映像化できる」までに収集すべく尽力することが敗血症に気づくための初めのステップとなる。

#3.

呼吸数が最も大切 敗血症では呼吸様式が荒々しい。 不穏に代表されるような意識状態の変化と併せて「診るものをゾワゾワさせるような騒がしい雰囲気」という表現が良いかも知れない。 敗血症や心不全の症例の院内死亡前の呼吸指標の推移データでは、酸素化悪化の前に呼吸数が上昇することが示されている。 (参考文献 PMID: 21314935) 血圧は確認するものの、低血圧ではないからといって血行動態が安定しているとは限らない。 脈拍数もβ遮断薬や頻脈性不整脈などの修飾因子が多い。 SpO2は低酸素血症の大事な指標だが、それ単独でアクションが大きく変わることはない。 低体温であれば重症度こそ上がるが、発熱の有無そのものはバイタルサインの中で最も重要度が低い。

敗血症の診断基準とトライアングル

#4.

qSOFA のみに頼らない ①意識状態 ②頻呼吸 ③低血圧 …を確認する。 そのうち2〜3項目で該当する場合は敗血症として対応することが勧められる。 とはいえ、これも敗血症を覚知するための「きっかけ」のひとつでしかない。 qSOFA score 単独では敗血症を確定も除外もできない。 数あるバイタルサインのうち最重要項目である呼吸数が含まれており、かつ、発熱が組み込まれてないことは注目に値する。

#5.

感染症診療のトライアングル 若手に限らず、感染症診療を苦手とする医師は珍しくない。 人体構造や専門臓器に通じることはもちろん。 病原微生物のことを知り、 それらと戦わねばならない。 敗血症のケアバンドルにしても、いち早く「抗菌薬を投与しなさい」の部分に傾倒するのではない。 いち早く「感染症診療のトライアングルを構築しなさい」というのが実のところ大前提なのである。

#6.

頭のてっぺんから足先まで 初学者であったり、もしも敗血症診療に慣れていなければ、こちらをお勧めする。 すべての状況において最善の方策とは言えないが、大きく失敗しないための戦略でもある。 頻度が高い3大感染症を想定して、重要度が高い培養検査を提出する。 そして一般的な血液/尿検査を行い、胸部レントゲン画像も確認する。 もちろん設備が許せば、グラム染色した塗抹標本を確認すべきである。 その上で「頭のてっぺんから足先まで」感染巣や熱源となり得る所見がみつからないか、くまなく日々の診察を繰り返す。 (1回きりの診察で終えずに、繰り返し診ていく姿勢が大切) この「3×3の鉄則」を実行したら、患者背景に照らして蓋然性が高そうな感染巣および病原微生物から考える。 決して網羅的に「のっぺりとした鑑別診断を絨毯爆撃的に」並べ挙げることで満足してはいけない。 初期評価で感染巣が判然としない院内発熱ではカテーテル関連血流感染を優先的に考慮する。 広域抗菌薬の暴露歴や外科術後で高カロリー輸液を受けていれば侵襲性カンジダ症も想定される。 膵頭十二指腸切除術後で胆道変更されていれば肝胆道系酵素に異常が見られなくても胆管炎としての病原微生物を考える。

感染症診療における全身管理の重要性

#7.

原因微生物の考察と想定が難しい トライアングルのうち、患者背景や感染臓器/感染巣はひと通りの診療で情報収集し得る。 ほとんどの病原微生物そのものは目に見えないので、細菌検査室に足を運んで五感を総動員して学ぶ。 まず検体のグラム染色標本を顕微鏡で確認して、その所見について検査技師さんと協議を重ねる。 そして臨床情報を検査技師さんと共有して、病原微生物への考察を深める。 検体を提出した翌日には、寒天培地に発育したコロニーの色味や性状と臭気に照らして菌種を想定する。 それらを日々愚直に反復することで、知識を実践するためのシナプスが紡がれていく。 経験的治療と、盲目的な広域抗菌薬を行うことは同義ではない。 さらに、患者が重症であることと、原因微生物が耐性菌であることは何ら関係ない。 多くの感染症ではひとつの感染臓器にひとつの病原微生物がひとり勝ちなのである。 診断なくして抗菌薬治療なし(No Diagnosis, No Antibiotics !)。 ざっくりと考えれば、グラム陽性球菌はバンコマイシンを併用するか否かなので、耐性傾向が強く抗菌薬選択が難しい病原微生物というのはグ ラム陰性桿菌である場合が多い。ひと昔前のSPACE(Serratia / Pseudomonas / Acinetobacter / Citrobacter / Enterobacter)という括りから は訣別して、①ESBL産生の頻度が高い3菌種(E. coli / Klebsiella / Proteus)、②AmpC型βラクタマーゼを考慮すべき3菌種(Enterobacter / Serratia / Citrobacter)、③多剤耐性など薬剤感受性が様々な3菌種(Pseudomonas / Acinetobacter / Stenotrophomonas)に分けて考える。

#8.

全身管理の質が明暗を分ける 抗菌薬のスペクトラムが原因微生物を外していたから(=カバーできていなかったから)病状が悪化することは少ない。 抗菌薬は当たっていたのに救命し得なかったり、治療に難渋することが多い。 つまり 抗菌薬で原因微生物を叩くだけでは敗血症から患者を救命し得ず、その後の全身管理の質が明暗を分けるのである。 特殊な状況を除けば、メロペネムに代表されるようなカルバペネム系抗菌薬を使う必要は無いし、それと並ぶ超広域抗菌薬であるピペラシリン/ タゾバクタムを初期治療から選択することは無い。これは、それらの抗菌薬が不要であると唱えているのではない。 超広域抗菌薬が必要な状況にはいつか必ず遭遇しうるので、そこで惜しみなく使える抗菌薬を温存しておくべきだと言える。 そのような戦略は、医療界全体でみる耐性菌の拡大や増加といった観点のみならず、患者単位でみる個々のメリットもある。 初期治療からメロペネムなど腸管内の偏性嫌気性菌を駆逐してしまうような広域抗菌薬を投与するよりも、そうではない抗菌薬を用いた方が患 者予後が良いというデータが揃ってきているのは、腸内細菌叢を壊さないことの重要性を表しているし、腸管内の偏性嫌気性菌が腸内細菌目に よるバクテリアルトランスロケーションを防いでいることも既に1987年の文献で示唆されている。(参考文献 PMID: 3666959) 抗菌薬治療は当たっているはずなのに…患者を救えないことがあるのは、上述の通りである。 それを打開するための条件は、ドレナージやデブリードマンといった感染巣の制御と、支持療法としての全身管理である。 敗血症によりホメオスタシスが破綻した身体において、ひとつひとつのシステムと精緻に向き合い介入していく。

#9.

院内感染を防ぐ 末梢/中心静脈カテーテル、尿道カテーテル、気管チューブなど、重症患者では様々なデバイスや「管もの」が挿入される。 それらは院内感染の侵入門戸や温床となり得る。 そもそもデバイスを挿入しないか、不要となればすみやかに抜去することが前提である。 中心静脈カテーテル刺入部に発赤や排膿などの徴候が見られなくとも、実は目の前の患者には血流感染が起こっているかも知れない。 尿閉が無く、厳密に尿量測定しないなら尿道カテーテルは不要である。 もし排尿障害がある場合は離床や薬物的介入も検討すべきである。 気管挿管され人工呼吸器管理下の患者は鎮静され排痰が不十分なことが多く、呼吸器回路内の水滴が下気道へ流れ込むことで肺炎をきたす。 fi MRSAやCD(Clostridioides dif cile)関連腸炎の発症とその伝播も、適切な手指衛生と接触感染対策を行うことで防ぎ得る要素である。

#10.

全身を診る 敗血症を診るためには患者の全身を診る必要がある。 それゆえ 敗血症診療とは 究極の総合診療だと言える。 全体像が大切ということはもちろん、生体システムとしての臓器それぞれを診るということである。 神経・循環・呼吸が最も重要であることは論を俟たない。 敗血症では腎障害や電解質異常をきたすことも多いし、酸素需給バランスの是正に輸血が必要かも知れない。 栄養なくして生命維持はできないが投与するべき熱量には計画性が必要だし、耐糖能異常が顕在化することもある。

DNARと緩和ケアの考え方

#11.

救命至上主義からの脱却 目の前の患者に医療を提供するにあたり、その目指すところはどこなのかを常に考え続けなくてはいけない。 病気を治せるかどうかという単純なものではない。 その先にあるものが、患者の価値観や死生観に見合うのか。時代はもはや、救命至上主義からの脱却である。 患者やその家族と病状を共有して認識のギャップを埋め(ステージ1) ↓ 患者や家族の価値観に照らしてケアのゴールを考え(ステージ2) ↓ 価値観に合った治療方針と過ごす場所を提案する(ステージ3)という段取りを意識する。 とはいえ、敗血症など致命的状況はゆったり話している時間が無いことが多い。 まずは15〜30分間を目安として、 急いで結論を得ることに固執しない。 ステージ1もしくはステージ2を省いたり、いずれかが曖昧なまま次のステージへ無理やり進めることは慎む。

#12.

DNARかどうかではない まず「緩和ケア≠終末期」である。患者の苦しみや辛さに寄り添う緩和ケアは、雨ではなく傘の役割である。 当たり前の医療+αで行うものであり、それは患者の残された時間を短くしない。 さらに「DNAR ≠ 治療しない」 ということではない。 略語は医療者間でも理解にズレがある可能性を前提に話し合うべきである。 DNARという指示だけでは役に立たず、なぜそうなったのかという背景や真意を確認することが大切である。 もはや「DNARを取る」という表現は死語ですらある。 患者や家族と急変時や病状悪化時の対応を話し合うことが本質であり、よくありがちな「急変時DNAR」という指示も書いてはいけない。 ” Cure sometimes, Treat often, Comfort always ” とも言われるように、良い医師とは治療(Cure)と緩和(Care)の両立を目指す人である。

通過障害と損傷部位の評価

#13.

通過障害(腎盂腎炎と胆管炎) 腎盂腎炎を想起した場合は、CTを撮影することは必須ではない。 まずは簡便なエコーで 腎盂や尿管の拡張が無いかを確認する。 もしも尿管結石や腫瘍などの閉塞部位があれば、泌尿器科へ依頼して尿管ステントを挿入する。 支持療法で全身状態が安定してから尿管ステントを挿入するというのは本末顛倒である。 血液検査で肝胆道系酵素とビリルビン値が上昇していれば胆管炎を想起する。 状態が許せば、肝膿瘍の合併や他疾患など全体像の評価をすべく造影CTの撮影が望ましい。 胆道の結石や腫瘍による閉塞部位があれば、消化器内科へ依頼して胆管ステントを挿入する適応ではある。 内視鏡的処置による状態悪化の危険性が大きい場合は、PTGBD(経皮的経肝胆嚢ドレナージ)で急場を凌ぎ、待機的内視鏡処置の戦略もある。

#14.

損傷部位(消化管穿孔と腸管壊死) 急性腹症のうち、腹膜刺激症状をともなうような、いわゆる「外科腹」では緊急手術を要するかも知れない。 憩室炎や虫垂炎が穿孔したり、あるいは悪性腫瘍による結腸穿孔で2次性腹膜炎を来した場合は敗血症となるので、外科に介入を依頼する。 塞栓症で腸管壊死に陥っていれば 外科的切除が根本介入となる。 腸管以外の原因で、例えば敗血症による臓器灌流不全としての腸管虚血を来した場合は必ずしも腸管切除の対象となるとは限らない。 救命のためとはいえ術後合併症や短腸症候群で苦しみを負うことを強いられる患者は珍しくない。 上述の通り、ケアのゴールについての協議が根本である。

#15.

デブリードマンが必要なとき 壊死性筋膜炎やフルニエ壊疽のようなNSTIs(壊死性皮膚軟部組織感染症)では局所所見や疼痛はもちろん、その様相は敗血症である。 原因の除去が肝要である。 切開や切断を含むデブリードマンが必要とされる。 その処置をどの診療科が担当するかは施設ごとに異なるだろう。 整形外科が担当することが多いように思われるが、それが形成外科や皮膚科であることもある。 どの診療科であろうとも、経験のある医師に処置を依頼できることが最善である。 そうでなければ、血液検査所見やスコアリングに加え試験切開や画像検査など情報収集を重ねた上での交渉が必要かも知れない。

合併症の回避と介入のタイミング

#16.

合併症を回避する(血流路感染) 感染性心内膜炎ではクライテリアにこだわり過ぎず、まず初動を急ぐ必要がある。 黄色ブドウ球菌の菌血症(SAB)では バンドル(SAB bundle)に従って診療を進める。 その他の原因菌においても、持続菌血症の場合は合併症としての心内膜炎の評価が必要である。 心臓弁膜症やそれにともなう心不全あるいは塞栓症状を来す前に、まず経胸壁心エコー検査を実施する。 経食道心エコー検査の実施や心臓外科へコンサルトするか否かに関して循環器内科と協働する。 脳梗塞や頭蓋内出血を来してしまってからでは治療介入の時期を逸してしまう。 患者を救うためには、常に2手3手先を読んだ段取りと戦略が大切である。

#17.

Macro circulation われわれがモニタリングして管理できるのはマクロの循環(Macro circulation)である。 ミトコンドリアレベルの障害を含め微小循環(Micro circulation)は直接的には介入できない。 敗血症を覚知したら まず、晶質液を投与する。 おおよそ1000mLを投与し終わるまでに昇圧を目的としたノルアドレナリンを使用すべきか否かを検討する。 ショック状態であれば、末梢ルートからでも低用量のノルアドレナリンを投与することが提唱されている。 蘇生早期からのノルアドレナリンは、体血管抵抗を上げて昇圧するほか… 心拍出量に関与しない静脈血(Unstressed volume)を心拍出量に寄与する静脈血(Stressed volume)へ移行させる。 心拍出量を増やす効果も相まって蘇生効率を良くする。 ノルアドレナリンは0.2γあたりから昇圧効果が乏しくなっていくことが示されている(参考文献 PMID: 37169282)。 ひとつの目安とされている0.25γに達する前にバソプレシンの追加を検討しても良い。

#18.

どこに介入すれば良いか 観血的動脈圧ライン(通称 A-line)は、血圧の数値をモニタリングする以上に動脈圧波形を評価するために挿入すべきデバイスである。 動脈圧波形の傾き(dP/dt)からは心収縮性を推察でき、その高さから心拍出量を、さらに dycrotic notch からは体血管抵抗を推察する。 ショックを想起したら乳酸値を測定する。 されに、同時にScvO2も評価する。 敗血症であれば高心拍出状態(Hyperdynamicstate)にあることが多い。 平均動脈圧(MAP)を保つように体血管抵抗を管理すれば血行動態は改善して乳酸値は下降していくはずである。 その経過が芳しくない場合は、ScvO2の再評価を行いながらフローに照らして判断する。 それでもどこに介入すれば良いか判然としない場合は、追加のパラメーターとしてCO2ギャップを確認する。 混合静脈血酸素飽和度とScvO2は4つの同じ要素(心拍出量、Hb、SaO2、酸素消費量)に影響され、臨床的互換性があるとみなされている。 混合静脈血酸素飽和度は、上下大静脈や冠静脈洞という全身静脈血を反映しているため、酸素供給と酸素消費のバランスを示す。 ScvO2はそのバランスの局所的指標(頭頸部と上肢)で、正常な状態ではScvO2は混合静脈血酸素飽和度よりもわずかに低い。 ショック状態ではその関係が逆転し、ScvO2が混合静脈血酸素飽和度より約7%ほど高くなるとされる。

輸液管理と血管作動薬の使用

#19.

その輸液は何を改善しうるのか 血圧が低いから輸液する、という日常でありふれた光景は正しいようでもあり、必ずしも正しいとは限らない。 まず、輸液の4つのフェーズのうち初めの2つ(Rescue phase 〜 Optimization phase)に重きを置く。 血管内皮のグリコカリックスが障害されている状態では、投与した輸液は理論通りのコンパートメントへの分布に必ずしも従わない。 “ Context sensitive ” 膠質液(コロイド)であっても、投与数時間後、その血管内残存率は晶質液(クリスタロイド)とほとんど変わらない。 乳酸を添加したラクテートリンゲルや酢酸を添加したアセテートリンゲルを用いることが推奨されている。 腎障害のリスクを考慮して、クロールイオン(Cl-)を高濃度に含んできる生理食塩水の投与は勧められない。 とはいえ、晶質液(クリスタロイド)を投与することは、単純には「塩水を静脈に注入する」という行為である。 有益でない輸液は有害となりうる危険性を孕む。 過剰に投与された晶質液は血管外に「余剰な塩水」として浮腫の原因となったり、うっ血腎に至ったり、肺うっ血にともなう肺水腫を来す。 制限輸液を基本戦略として、必要な時に必要なだけ最低限の晶質液を「オンデマンド」で追加投与していくことをお勧めしたい。 目的が判然としない「外液」の投与は「害液」なのである。 意図した輸液でなくとも、薬剤の溶解に用いる生理食塩水が嵩んでゆき、知らぬ間に体液過剰に陥ってしまう Fluid creep にも注意したい。

#20.

血管作動薬 Vasopressor 循環作動薬は大きく「血管作動薬」と「強心薬」に分け、どこのチャネルに作用させ何を狙って使っているのか意識して使う。 ◯ノルアドレナリン(NAd);ノルアドリナリン 代表的なα刺激薬であり、血管作動薬(vaopressor)に分類され、若干のβ刺激も要素もある。血管平滑筋のATP(アデノシン三リン酸)感受性カリ ウムチャネル(KATPチャネル)に作用して、細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させることで血管平滑筋を収縮させ、体血管抵抗を上げる。当該施 設のルールに則るのが望ましいが、5アンプルを生理食塩水に溶解して合計50mL(0.1mg/mL)の組成にすると、体重50kgの患者さんに5.0mL/hで 投与していたら0.17γに相当するので、それ以上にNAdを増量したくなる状況であればバソプレシン(AVP)の併用を検討していく。 (NAd 0.17γで即座にAVPを併用することはないが、薬剤をオーダーして薬剤部に準備してもらい投与できる形まで準備するのには時間を要するた め)投与中のNAdを増減するときは、患者の体重に照らして0.02〜0.05γずつ調整するのがやりやすいと思われる。 ◯バソプレシン(AVP);ピトレシン こちらも血管作動薬(vaopressor)に分類される。上記のNAdと異なり、V1受容体に作用して、血管平滑筋細胞内のカルシウム濃度を上昇させるこ とで平滑筋を収縮させ、体血管抵抗を挙げる。NAdの使用時間が長くなるほどKATPチャネルの感受性が悪くなること、そして、特に高齢者では ショックが遷延すれば内因性バソプレシンが欠乏するので、単純な昇圧ということ以上にホルモン補充の目的もある。使用する場合は、1.8単位/hの 用量固定で開始して、血行動態が安定してNAdが不要になった後にAVPを漸減していく。 ®︎ ®︎ 漸減していく量に決まりは無いが、0.6単位/hずつ調整するとやりやすい。

強心薬とステロイド補充の考察

#21.

強心薬 Inotropic Agent ◯ドブタミン(DOB);ドブポン 代表的なβ1/2刺激薬であり、強心薬(inotropic agent)に分類される。 手作業で溶解して作るよりも、プレフィルド製剤(3mg/mL)を使うのが簡便かつ間違いが無く確実である。 おおよそ3γから開始して、心拍出量と酸素需給バランスに照らして用量調整を行う。敗血症でDOBを用いるべき状況は少ないが、そもそも低心 機能であったり、治療経過で敗血症性心筋症による低心拍出症候群へ陥ったときである。 ◯アドレナリン(Ad);ボスミン 血管作動薬(vaopressor)と強心薬(inotropic agent)の両方の作用を強力に併せ持つ。 循環作動薬の最終兵器であり、上記のNAdと同様の組成(0.1mg/mL)で用いることが多いと思われる。 ®︎ ®︎ 既存の循環作動薬に追加する場合は、0.1〜0.5mL/hから開始する。必発という程ではないが致死的不整脈の出現と、乳酸値上昇に留意する。

#22.

ステロイド補充 Corticosteroid (Mineralocorticoid) ◯ハイドロコルチゾン(HCS);ソル・コーテフ ステロイドを補充すると血圧が上がりやすいことが示唆されているが、その理由は定まっていない。 敗血症においてHCSを投与すべきかどうかは “ never ending controversy ” とも言われている。薬液投与路に余裕があれば持続投与の200mg/ dayを用いるが、間欠投与の場合は1回100mgを1日3回(合計300mg/day)を用いる。 いずれもショックからの離脱を早める効果は優劣ないが、持続投与の方が血糖値が安定しやすい。 耐糖能異常が著しい場合は持続投与をお勧めする。 ®︎ もともとステロイドを内服している患者でも、同様の用量で補充を行う。

β遮断薬の使用と注意点

#23.

その他 β-blocker ◯ランジオロール(LND);オノアクト 静注で用いるβ遮断薬で、上記のDOBと同様に3mg/mLの組成にすると使いやすい。 おおよそ3γを目安に使用して、最大でも5γを上限にする。敗血症の患者で頻脈性心房細動(AF w/RVR)をともなって血行動態が不安定な場 合、その頻脈を制御するのが良いのかどうかは判然としない場合が多い。 AF w/RVRを管理する上で適正な脈拍数は定まっていない。(というか、定められない) ®︎ 適切な代償として頻脈になっているだけということもあるので、その場合にβ遮断薬を投与すると低心拍出に陥ってしまう懸念がある。

#24.

2025 “ Antaa Slide ” Christmas Edition おしまい

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